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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第10章 再び南へ

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第218話 帰るべき場所

 翌朝。


 俺たちは宿の裏庭に集まっていた。


「じゃあ、もう一回確かめてみようか!」


「うん!」


 フェリシアが元気よく頷いた。


 昨日、俺は四十万Pを使って、フェリシア、ルナ、テリー、ステフに《共有》していた能力とスキルを《譲渡》した。


 おかげで、四人は俺の《共有》がなくても、今までと同じように能力やスキルを使えるようになった。


 でも、念のため、もう一度確認しておきたい。


「じゃあ、まず私からね!」


 フェリシアが両手を広げた。


 すると。


 ふわり。


 八つのオービットが、彼女の周囲に浮かび上がった。


 八つのオービットは、フェリシアの周囲をゆっくりと回り始めた。


 そして、彼女が指を動かすと、一斉に方向を変えた。


「うん! ちゃんと動くよ!」


「すごいね!」


「しかも、昨日までと全然変わらない!」


 フェリシアが嬉しそうに笑った。


「じゃあ、次は私!」


 ルナが弓を取り出した。


 裏庭の隅に置いた小さな的を狙う。


 ギリッ。


 弦を引き絞り、矢を放った。


 ヒュンッ!


 トスッ!


 矢は的の中央に命中した。


 続けて、もう二本。


 ヒュンッ! ヒュンッ!


 トスッ! トスッ!


 三本とも中央に集まっている。


「うん! 私も大丈夫!」


「さすがルナだね!」


「えへへ!」


 ルナが嬉しそうに笑った。


「ワフ!」


 今度はテリーが前へ出た。


 足元の影へ飛び込んだかと思うと、次の瞬間には庭の反対側に現れた。


「おおっ! 《シャドウステップ》だ!」


「ワフ!」


 テリーが得意そうに尻尾を振った。


「キュ!」


 ステフも負けじと羽ばたいた。


 小さな体がふわりと浮き上がり、庭の上空を一周して戻ってくる。


「キュッ!」


「うん! ステフも元気いっぱいだね!」


 俺は二匹の頭を撫でた。


 四人とも、ちゃんと自分の力で能力やスキルを使えている。


 俺は《会員》を開いた。


【共有対象者:0名】


【会員本人負担率:0%】


 うん。


 昨日と変わっていない。


 これで安心だ。


「アレン、本当にありがとう!」


 フェリシアが笑った。


「私も! こんなにすごい力をもらっちゃって、何だか申し訳ないくらいだよ!」


 ルナも嬉しそうだ。


「いいんだよ! みんなにはいつも助けてもらってるからね!」


「じゃあ、これからもいっぱい冒険しよう!」


「もちろん!」


「ワフ!」


「キュ!」


 俺たちは顔を見合わせて笑った。


 やっぱり、みんなと一緒にいるのは楽しいな。


 ◇


 朝食を済ませた俺たちは、王都の冒険者ギルドへ向かった。


 昨日は、王都北ダンジョンの第四十階層まで攻略した。


 その報告と、持ち帰った魔物の素材を預けるためだ。


「おはようございます!」


 受付の女性が笑顔で迎えてくれた。


「おはようございます!」


「本日はどうされましたか?」


「王都北ダンジョンの攻略報告に来ました!」


「かしこまりました。前回は第二十階層まででしたね」


「はい! 昨日、第四十階層まで行ってきました!」


「……第四十階層?」


 女性の手が止まった。


「はい!」


「……階層主は?」


「倒しました!」


「……アレン様のお話を聞くと、毎回驚いてしまいますね」


「そうですか?」


「はい。でも、もう少し慣れることにいたします」


 女性が苦笑した。


 そのあと、俺たちは解体場で持ち帰った魔物を預けた。


 第三十階層主の地裂ベヒモスと、第四十階層主の黒晶スコーピオンも含まれている。


 職員たちは驚いていたけど、以前にも大量の魔物を持ち込んでいるので、今回は手際よく保管場所を用意してくれた。


「査定には少々お時間をいただきます」


「はい! よろしくお願いします!」


 俺たちは受付へ戻った。


 そのときだった。


「アレン様。少々よろしいでしょうか?」


 先ほどの受付の女性が声をかけてきた。


「はい。何でしょう?」


「実は、皆様にお願いしたい依頼があるんです」


「依頼ですか?」


「はい。従魔の護送依頼になります」


 従魔?


 俺はテリーとステフを見た。


「ワフ?」


「キュ?」


「どんな依頼なんですか?」


 すると、女性は一枚の書類を取り出した。


「少し事情が複雑なので、順番にご説明いたしますね」


 ◇


「ドラン帝国の一部地域で、反帝国組織が武装蜂起したという報告が届いています」


「……反帝国組織?」


 ルナが首を傾げた。


「はい。帝国の支配に反対する人々が、各地で活動を始めているそうです」


 女性は続けた。


「詳しくはわかりませんが、そのうちの一つが帝国軍と関係のあった魔物研究所を襲撃したんです」


「魔物研究所……」


 俺は思わず呟いた。


 魔物を使った実験。


 そして、捕らえられた魔物たち。


「もしかして、ドラン帝国が戦争で魔物を使っていたことと関係があるんですか?」


「ご存じでしたか?」


「はい。サハル王国での戦争で、実際に見ました」


 テリーのお母さんも、帝国に薬を使われて暴走させられていた。


 あのときのことは、今でも覚えている。


「その研究所では、各国から連れ去られた魔物を使って実験をしていたそうです」


「……やっぱり」


 フェリシアが顔を曇らせた。


「さらに、魔物の誘拐や輸送を手引きしていた商会の拠点も襲撃され、組織としての活動ができなくなったと報告されています」


「そうだったんですね……」


「研究所に捕らえられていた魔物たちも、多数保護されました」


「……よかった!」


 ルナが胸を撫で下ろした。


「はい。ただ、問題もあります」


 女性は書類をめくった。


「魔物たちは、もともとさまざまな国から連れてこられた個体なんです。保護できても、元の場所へ返すのが難しくて……」


「なるほど……」


「そのうち、飼い主が確認できた従魔の一部が、国境を越えた引き渡しを経て、セルヴァン王都の従魔組合に運ばれてきました」


「へえ!」


「そして、その中に、ミナリアで誘拐された大型の従魔が一匹いるんです」


「……ミナリア?」


 俺たちは顔を見合わせた。


 ミナリアなら、俺たちが以前滞在していた街だ。


「その子をミナリアへ連れていってほしいという依頼なんですか?」


「はい。ですが、少し難しい事情がありまして……」


 女性が書類を俺たちに見せた。


【大型従魔護送依頼】


【護送先:ミナリア従魔組合】


【対象:グランドバイソン一頭】


【推奨:Aクラス以上】


「グランドバイソン?」


「はい。非常に大きく、強い魔物です。もともとは荷物の運搬などに使われていた従魔なのですが……」


「何かあったんですか?」


「長い間、研究所に閉じ込められていたため、人を警戒するようになってしまったそうです」


「……そうなんだ」


「万が一暴れた場合、普通の護衛では対応できません。そこでAクラス以上の冒険者に限定しているのですが、なかなか引き受け手が見つからないんです」


「なるほど……」


 俺は書類を見た。


 ミナリア。


 グランドバイソン。


 誘拐された従魔。


 ……ずっと帰れなかったんだな。


「飼い主さんは、見つかっているんですか?」


「はい。ミナリアの従魔組合から、登録記録と飼い主の証言が届いています」


「じゃあ、帰る場所はあるんですね!」


「はい!」


 女性が頷いた。


「飼い主の方は、ずっと帰りを待っているそうです」


 ……そうか。


 それなら。


「ねえ、みんな」


 俺はフェリシアとルナを見た。


「この依頼、受けてみない?」


「うん!」


 フェリシアがすぐに頷いた。


「早くご主人のところに帰してあげたいね!」


「私も賛成!」


 ルナも笑った。


「テリーのお母さんのこともあったし、放っておけないよ!」


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹も元気に鳴いた。


「じゃあ、決まりだね!」


 俺は受付の女性へ向き直った。


「俺たちに、その依頼をお願いします!」


 女性は驚いたように目を開いた。


「本当によろしいのですか?」


「はい!」


「ありがとうございます! それでは、従魔組合へご案内いたします!」


 ◇


 従魔組合は、冒険者ギルドから歩いて十分ほどの場所にあった。


 大きな建物の裏には、広い飼育施設がある。


 柵で囲まれた運動場や、魔物を運ぶための荷車も並んでいた。


 案内された先には、頑丈な鉄の檻が置かれていた。


「……大きい!」


 ルナが目を丸くした。


 檻の中には、見上げるほど大きな牛に似た魔物がいた。


 黒っぽい毛並み。


 太い四本の脚。


 そして、左右に大きく伸びた二本の角。


 体長は四メートル近くありそうだ。


「この子がグランドバイソンです」


 従魔組合の男性職員が説明してくれた。


「もともとミナリアの運送業者の老人が飼育していた個体で、名前はバルドといいます」


「バルド……」


 俺は檻へ近づいた。


「グルルル……」


 バルドが低く唸った。


 大きな角をこちらへ向けてくる。


「アレン、気をつけて!」


 フェリシアが声をかけた。


「うん。大丈夫だよ」


 俺は少し離れた場所でしゃがんだ。


「こんにちは、バルド」


「……グルル」


「怖がらなくていいよ。俺たちは君をミナリアへ連れていくために来たんだ」


 もちろん、言葉が通じるかは分からない。


 でも、少しでも安心してもらえたらいいな。


 すると。


「ワフ……」


 テリーがゆっくりと檻へ近づいた。


 バルドがテリーを見た。


「……?」


 テリーは吠えずに、その場へ伏せた。


「ワフ」


 尻尾をゆっくり動かしている。


 バルドはしばらくテリーを見つめていた。


 そして、少しだけ頭を下げた。


「……あっ!」


 ルナが小さく声を上げた。


「ちょっと落ち着いたみたい!」


「本当だね!」


 フェリシアも笑った。


 男性職員が驚いたように言った。


「この子が、知らない従魔にこんなに落ち着いて接するなんて……」


「テリーは優しい子ですから!」


「ワフ!」


 テリーが嬉しそうに鳴いた。


 俺はもう一度バルドを見た。


 よく見ると、脚や首元には古い傷がいくつもあった。


 研究所で何をされたのかは分からない。


 でも、きっと怖い思いをしたんだろうな。


「……早く帰ろうね」


 俺は小さく呟いた。


 ◇


「ところで、ミナリアへはどのように護送されるご予定ですか?」


 男性職員が尋ねた。


「《転移》を使おうと思っています!」


「……転移?」


「はい。俺、ミナリアへ移動できるんです」


「……そんなことができるんですか?」


「はい!」


 男性職員は驚いたようだったけど、すぐに真剣な表情になった。


「それでしたら、移送中の危険は大幅に減らせそうですね」


「そうですね。ただ、一つ確認したいことがあるんです」


「何でしょう?」


「俺の《転移》は、俺に触れている人や従魔なら一緒に移動できるんです。でも、こんなに大きな檻ごと転移できるかは、まだ分からなくて……」


「なるほど」


 男性が檻を見た。


「それなら、檻を開けてバルドを直接連れていく必要がありますね」


「はい」


「ただ、今のバルドは人を怖がります。檻から出すには慎重な準備が必要でしょう」


「分かりました」


 俺は少し考えた。


 それに、もう一つ問題がある。


 ミナリアに残した魔力印は、使われていない倉庫の裏にある。


 バルドほど大きな魔物を転移させるには、場所が狭いかもしれない。


「……あっ!」


「どうしたの?」


 ルナが尋ねた。


「先に俺だけミナリアへ行って、広い転移場所を探してくるよ!」


「なるほど!」


 フェリシアが頷いた。


「それなら、バルドも安全に移動できそうだね!」


「うん!」


 俺は男性職員へ向き直った。


「少しだけ時間をもらえますか?」


「もちろんです。こちらでも移送の準備を進めておきます」


「ありがとうございます!」


 ◇


 俺は一度、宿の裏手に戻った。


 そして、ミナリアの魔力印へ意識を集中させた。


「《転移》!」


 シュンッ!


 次の瞬間、景色が変わった。


 見覚えのある倉庫。


 石畳の道。


 そして、遠くから聞こえる商人たちの声。


「……よし! ミナリアだ!」


 何度使っても便利だな、このスキル!


 俺はさっそくミナリアの従魔組合へ向かった。


 事情を説明すると、組合の職員は驚きながらも協力してくれた。


「バルドが見つかったんですか!?」


「はい! 今、セルヴァン王都で保護されています」


「……よかった。本当によかった!」


 職員は何度も頷いた。


 そのあと、俺は職員と一緒に、街の外れにある従魔の運動場へ向かった。


 広い柵に囲まれた草地で、周囲には十分な空間がある。


「ここなら大型従魔を移動させても問題ありません」


「ありがとうございます!」


 俺は人のいない一角を確認し、地面へ自分の魔力を残した。


 ……よし。


 新しい魔力印ができた。


 これで、転移先は確保できたな。


「では、これからバルドを連れてきますね!」


「はい! こちらでも受け入れの準備をしておきます!」


 俺はもう一度《転移》を使い、王都へ戻った。


 ◇


 従魔組合へ戻ると、フェリシアとルナが出迎えてくれた。


「お帰り、アレン!」


「どうだった?」


「うん! 広くて安全な場所を確保できたよ!」


「よかった!」


 二人が嬉しそうに笑った。


 男性職員も頷いた。


「それでは、こちらも準備を始めましょう」


 俺たちは組合の敷地内にある、広い運動場へ移動した。


 大きな檻は、丈夫な荷車に固定されている。


 職員たちが慎重に荷車を動かし、運動場の中央へ運んだ。


「ここなら大丈夫でしょう」


 男性職員が言った。


「ただ、バルドが暴れた場合は、皆様に対応をお願いすることになります」


「分かりました!」


 俺は檻へ近づいた。


 バルドは、じっとこちらを見つめている。


「バルド。これからミナリアへ帰るよ」


「……グルル」


「すぐだからね」


 俺はゆっくりと手を伸ばした。


 すると、バルドは大きな頭を下げた。


「……あっ」


 檻の隙間から、鼻先が近づいてきた。


 俺の手の匂いを嗅いでいる。


「……ふふっ」


 俺はそっと鼻先を撫でた。


「大丈夫だよ」


 バルドは逃げなかった。


 ……よかった。


 これなら、何とかなりそうだ。


 男性職員が頷いた。


「扉を開けます。皆様、十分に気をつけてください」


 ガチャリ。


 重い錠が外された。


 檻の扉が、ゆっくりと開く。


 バルドはしばらく動かなかった。


 でも、俺が声をかけると、一歩だけ前へ出た。


「そうそう。ゆっくりでいいよ」


 一歩。


 また一歩。


 やがて、巨大な体が檻の外へ出てきた。


「……出てきた!」


 フェリシアが小声で言った。


「うん!」


 俺はバルドの首元へ手を添えた。


 太い毛並みが、手のひらに触れる。


「じゃあ、みんな。俺に触れてね」


「うん!」


 フェリシアが俺の右腕につかまった。


 ルナは左腕へ。


 テリーは俺の脚に体を寄せ、ステフは肩に乗った。


「ワフ!」


「キュ!」


 バルドは、じっと立っている。


 ……よし。


 みんな、ちゃんと俺に触れているな。


「それじゃあ、行くよ!」


「うん!」


 俺は、ミナリアの運動場に残した魔力印へ意識を集中した。


「《転移》!」


 シュンッ!


 ふっと、足元の感覚が消えた。


 そして。


 次の瞬間、俺たちは広い草地に立っていた。


「……着いた!」


 フェリシアが周囲を見回した。


「本当に一瞬だね!」


 ルナも笑った。


「ワフ!」


「キュ!」


 テリーとステフも元気よく鳴いている。


 そして。


「……ブルルル……?」


 バルドが大きな鼻を鳴らした。


 ゆっくりと頭を上げる。


 周囲に広がる草地。


 遠くに見える街並み。


 そして、ミナリアの風。


「……どうしたのかな?」


 フェリシアが尋ねた。


「もしかして、覚えてるのかな?」


 ルナが言った。


 バルドは何度も鼻を動かしている。


 ……そうだといいな。


「バルド。ミナリアに帰ってきたよ!」


「……ブルルッ!」


 バルドが大きく鳴いた。


 ◇


 組合の職員たちが、慌てて運動場へ駆け寄ってきた。


「……本当に連れてこられたんですか!?」


「はい!」


「こんなに早く到着するとは……!」


 職員は驚きながら、バルドの首元に残された登録票を確認した。


「……間違いありません。バルドです!」


「よかった!」


「飼い主の方にも、すぐにお知らせします!」


 職員が建物へ走っていった。


 俺たちはバルドと一緒に、運動場で待つことにした。


 バルドは静かに草を食べている。


 さっきまで檻の中で唸っていたのが嘘みたいだ。


「……落ち着いてるね」


 フェリシアが言った。


「うん。やっぱり、慣れた土地だからかな?」


 ルナが笑った。


「早くご主人に会えるといいね」


「そうだね」


 そのときだった。


「……バルド!」


 遠くから、声が聞こえた。


 振り向くと、一人の老人が運動場へやってきた。


 その後ろには、小さな女の子もいる。


「バルド!」


 女の子が叫んだ。


 その瞬間。


「……ブルルッ!?」


 バルドの耳がぴくりと動いた。


 ゆっくりと顔を上げる。


 そして。


「ブオオオオッ!」


 大きな声で鳴いた。


「……バルド!」


 男性が駆け寄る。


 バルドも、大きな体を揺らしながら男性へ近づいていった。


「お前……本当に……!」


 男性はバルドの首へ両腕を回した。


「よかった……! 生きていてくれたんだな……!」


 バルドは大きな頭を下げ、男性の肩へそっと押しつけた。


 すると、女の子も駆け寄ってきた。


「バルド! バルド!」


「……ブルル……」


 バルドはその場に伏せた。


 大きな体を低くして、女の子に顔を近づける。


 女の子が、その鼻先をぎゅっと抱きしめた。


「……ずっと待ってたんだよ……!」


 女の子の声が震えている。


「もう会えないかと思った……!」


「……ブルル……」


 バルドは、女の子の頬をそっと舐めた。


「……ふふっ……くすぐったいよ……!」


 女の子は泣きながら笑っている。


「……よかったね」


 フェリシアが小さく呟いた。


「うん……」


 ルナも頷いた。


 二人とも、少し目が潤んでいる。


「ワフ……」


「キュ……」


 テリーとステフも静かに見守っていた。


 ◇


 しばらくして、男性が俺たちのところへやって来た。


「……あなた方が、バルドを連れてきてくださったんですね」


「はい!」


 俺が答えると、男性は深く頭を下げた。


「本当に、ありがとうございます」


「いえ! 無事に帰ってこられてよかったです!」


「バルドは、うちの大切な家族なんです」


 男性が続けた。


「荷物を運ぶ仕事をずっと手伝ってくれていて、孫娘が生まれたころから一緒に暮らしていました」


「そうだったんですね」


「ある日、仕事場から突然いなくなってしまって……」


 男性はバルドを見た。


「ずっと探しました。でも、見つからなかったんです」


「……」


「もう二度と会えないかと思っていました」


 男性の声が震えた。


「本当に……ありがとうございます」


「……よかったですね」


 俺は笑った。


 バルドのそばでは、女の子が嬉しそうに話しかけている。


「ねえ、バルド! 今日はいっぱいご飯を食べようね!」


「ブルルッ!」


「それから、もうどこにも行っちゃだめだからね!」


「……ブルル」


 バルドが大きな頭を上下に動かした。


 まるで、返事をしているみたいだった。


「ふふっ!」


 女の子が笑った。


 俺たちも、思わず笑顔になった。


 ◇


 そのあと、従魔組合で引き渡しの手続きを済ませた。


 登録票を照合し、飼い主の確認も完了した。


「これで、護送依頼は正式に達成となります」


 職員が笑顔で言った。


「ありがとうございます!」


 その瞬間。


【依頼達成を確認しました】


【100P獲得】


 おっ!


 百Pもらえた!


 さらに、冒険者ギルドの代わりに従魔組合から依頼報酬の九十万ジェニーも受け取った。


「今日も稼げたね!」


 フェリシアが笑った。


「うん! でも……」


 俺は運動場の方を見た。


 そこでは、女の子がバルドに寄り添っていた。


「今日は、それより嬉しいことがあったかな」


「……うん!」


 ルナが頷いた。


「私もそう思う!」


 フェリシアも笑った。


 俺はもう一度、バルドを見た。


 あの子は、ずっと帰りたかったんだろうな。


 住み慣れた街へ。


 大好きなご主人のところへ。


 ……よかった。


 ちゃんと帰れて。


 俺はテリーとステフの頭を撫でた。


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹が嬉しそうに鳴いた。


「ねえ、アレン!」


 ルナが声をかけてきた。


「何?」


「せっかくミナリアに戻ってきたんだし、今日はここに泊まらない?」


「あっ、いいね!」


 フェリシアも賛成した。


「久しぶりに、前のお店にも行ってみたいな!」


「そうだね!」


 俺も笑った。


 ミナリアには、まだまだ知り合いがいる。


 せっかく戻ってきたんだし、少しくらいゆっくりしてもいいだろう。


「じゃあ、今日はミナリアに泊まろうか!」


「やった!」


「ワフ!」


「キュ!」


 俺たちは笑いながら、ミナリアの街へ歩き始めた。


 ……そういえば。


 俺も、昔は帰る場所がなくなったと思っていたな。


 でも、今は違う。


 みんなと一緒なら、どこへ行っても楽しい。


 帰る場所も、これから行きたい場所も、たくさんある。


 それが、今はとても嬉しかった。



【保有:22,120P】

【累計獲得P:1,479,330P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

従魔組合と冒険者ギルドは密接な関係なので、冒険者ギルドで受けた依頼の報酬は従魔組合でもらえることにしました。

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― 新着の感想 ―
もっといろんなスキルを共有したあとで譲渡したほうがよかったんじゃなかろうか・・・ちょっと譲渡のタイミングが早すぎる気がしました。
悪人でも斬ることを嫌がる残念なアレン君だが私のなかでは何段階か評価が上がったよ バルド良かったね~ 。・゜・(ノ∀`)・゜・。 もの言えぬ従魔たち ム〇ゴ〇ウさんの「もの言わぬスターたち」を思い出した…
キャバ嬢に貢いで良い気持ちになってる感が凄いですね
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