第216話 みんなのためのP
王都北ダンジョン。
昨日に続いて、俺たちは再び地下へ潜っていた。
入口の転移石で二十階層の奥へ到着した。
「よし、行こう!」
「うん!」
「ワフ!」
「キュ!」
階段を下りていく。
◇
第二十一階層。
そこは、黒い岩肌が続く広い洞窟だった。
壁の鉱石が青白く光っている。
「……雰囲気が変わったね」
ルナが弓を構える。
俺も《魔力感知》を使った。
「右の曲がり角に三体いるよ」
「じゃあ、アレン。お願い!」
「任せて!」
岩のように硬い牙を持つ狼型の魔物が現れた。
三体が同時に飛びかかってきた。
「はっ!」
俺は一体目の攻撃をかわし、竜爪剣を振るった。
ザンッ!
続けて二体目の横をすり抜ける。
ザシュッ!
背後へ回ろうとした最後の一体も斬り上げる。
ザンッ!
三体が、ほぼ同時に倒れた。
【岩牙ウルフ三体を討伐しました】
【6,300P獲得】
おおっ! 一体で二千P以上もらえるのか!
「アレン、相変わらず一瞬だね」
「うん! この調子なら、かなりPが稼げそう!」
魔物を《収納》へ入れ、先へ進んだ。
◇
二十二階層から先にも、強い魔物が次々と現れた。
刃のような脚を持つ巨大なムカデ。
硬い甲羅で体を守る岩甲トカゲ。
大きな爪で岩を削る、穴掘りの魔物。
以前なら苦戦しただろう。でも、今は《剣神》がある。
「そこっ!」
ザンッ!
刃甲ムカデの脚の間へ踏み込み、胴体を斬り裂く。
「次は左だよ、アレン!」
ルナの声に合わせて振り向くと、岩甲トカゲが飛び出してきた。
「ありがとう!」
甲羅を避け、首元へ剣を通す。
ザシュッ!
魔物は一撃で倒れた。
「……また強くなったね、アレン」
フェリシアが笑う。
「みんなが周りを見てくれてるから、安心して戦えるんだよ!」
二人は嬉しそうに笑った。
第二十四階層を抜けるころには、討伐した魔物が十二体になっていた。
ここまでの獲得Pは、二万五千二百P。
いい感じだ!
◇
「ちょっと休憩しようか」
広くなった通路で、俺たちは腰を下ろした。
水を飲み、テリーとステフにも食事を分けた。
「ねえ、みんな。ちょっと話しておきたいことがあるんだ」
「どうしたの?」
フェリシアが首を傾げる。
「俺、あと三十万Pくらい稼ぎたいと思ってるんだ」
「三十万!?」
ルナが目を丸くした。
「何か欲しいスキルを見つけたの?」
「うん。新しく出てきた《譲渡》っていうスキルだよ」
「ああ! 十万Pで買えるって言ってたね!」
「そう。でも、買うだけなら今のPでも足りるんだ」
俺は、テリーとステフも見た。
「《譲渡》を使えば、今みんなに《共有》している能力やスキルを、みんな自身のものにできるみたいなんだ」
「……自分のものに?」
「うん。そうなれば、いつか俺と離れた場所にいても、使えるかもしれない」
フェリシアとルナは、黙って俺の話を聞いていた。
「ただ、詳しい条件はまだわからない。だから、まずは購入して確かめたいし、必要なら新しい能力も買い足しておきたいんだ」
「それで、あと三十万P?」
「うん。四人に何を渡すか考えると、そのくらいは用意しておきたくて」
「……アレン」
ルナが、少し心配そうに俺を見た。
「でも、せっかく頑張って貯めたPだよ? 私たちのために使っちゃっていいの?」
「そうだよ。アレン自身が欲しいスキルもあるんじゃない?」
フェリシアも尋ねる。
……そうだな。
今までは、自分が強くなるためにPを使ってきた。
でも。
「俺がこうして冒険を楽しめているのは、みんなのおかげだからね!」
二人が顔を上げた。
「一人だったら、こんなに楽しくなかったと思う。それに、これから先、何があるかわからないでしょ?」
俺は続けた。
「だから、今できることをしておきたいんだ。みんなの役に立つことがしたいから!」
「……そっか」
フェリシアが微笑んだ。
「ありがとう、アレン」
「私も嬉しい!」
ルナが笑った。
「それなら、三十万P稼げるように、私たちも全力でサポートするね!」
「うん! 魔物を倒すのはアレンに任せて、私たちは動きを止めたり、周りを守ったりするよ!」
「ありがとう!」
「ワフ!」
「キュ!」
テリーとステフも、元気に鳴いた。
みんなとなら、きっと届く。
◇
第二十五階層。
ここから、戦い方が変わった。
「アレン、正面に二体! 右からもう一体来るよ!」
《風読み》を使ったルナが、魔物の動きを知らせてくれる。
「右は私が止める!」
フェリシアの八つのオービットが、一斉に動いた。
魔弾が岩鎧オーガの足元を撃ち、進路を塞ぐ。
俺は正面の二体へ踏み込んだ。
「はあっ!」
ザンッ! ザシュッ!
続けて、動きを止めたオーガにも一撃。
ザンッ!
【岩鎧オーガを討伐しました】
【3,300P獲得】
「やったね、アレン!」
「うん! すごく戦いやすい!」
テリーは新しく身につけた《シャドウステップ》で魔物の背後に回り、注意を引いてくれる。
ステフは少し高い位置から通路を見渡し、遠くの魔物を見つけると鳴いて知らせた。
「キュッ!」
「ありがとう、ステフ!」
討伐Pは、最後に倒した俺だけに入る。みんなは俺がとどめを刺しやすいように動いてくれた。
第二十六階層。
第二十七階層。
第二十八階層。
そして、第二十九階層。
魔物を次々に倒して進む。
第二十五階層からここまでに倒したのは、十八体。
獲得Pは、五万九千四百Pになった。
「……もう三十階層だね!」
ルナが、目の前の巨大な石の扉を見上げた。
「いよいよ階層主かな?」
「うん。みんな、準備はいい?」
「もちろん!」
「ワフ!」
「キュ!」
俺は扉に手をかけた。
◇
ゴゴゴゴ……。
石の扉が開くと、奥には円形の大広間が広がっていた。
太い石柱が並び、床には大きな爪痕が走っている。
そして、部屋の中央に、巨大な魔物がいた。
「……うわあ。でっかい!」
思わず声が出た。
四本の太い脚。岩のような皮膚。頭には短い角、背中にはごつごつした突起。
魔物が一歩踏み出すだけで、床が震えた。
「……あれが三十階層の階層主?」
フェリシアが息を呑む。
《魔力感知》の反応は、目の前の一体だけだ。
《鑑定》で確認する。
「地裂ベヒモス……か」
俺は皆に声をかける。
「気をつけて! 地面を揺らすほどの力があるって!」
その直後。
「グオオオオオッ!」
ベヒモスが吠え、地面を蹴った。
ドドドドッ!
「うわっ、速い!」
巨体が猛烈な勢いで突進する。
「アレン! 左に避けて!」
ルナの声に合わせて横へ跳んだ。
直後、ベヒモスの角が石柱を砕いた。
ガラガラッ!
「……危なかった!」
「私が足を止めるね!」
フェリシアが八つのオービットを広げた。
魔弾がベヒモスの前脚を狙って連続で放たれる。
ドンッ! ドンッ!
巨体が、わずかによろめいた。
「今だよ、アレン!」
ルナの矢が、ベヒモスの顔のすぐ横をかすめた。
テリーが影から飛び出し、注意を引く。
「ワフッ!」
ステフも頭上で羽ばたき、視線を引きつけた。
「キュ!」
俺は、ベヒモスの横腹へ一気に踏み込んだ。
硬い皮膚。でも、竜爪剣なら斬れる。
剣へ魔力を流し、全力で振り抜いた。
ザンッ!
ベヒモスの巨体に、深い斬撃が走る。
「グ……オオ……!」
魔物は二、三歩よろめくと、そのまま横倒しになった。
ドォォン!
土埃が舞い上がる。
【地裂ベヒモスを討伐しました】
【28,000P獲得】
「……やった!」
「すごい! もう倒しちゃった!」
フェリシアとルナが駆け寄ってきた。
「みんなが隙を作ってくれたおかげだよ!」
「えへへ! でも、最後の一撃はやっぱりアレンだね!」
「うん! ありがとう!」
俺は倒したベヒモスを《収納》に収めた。
《会員》の表示を開く。
今日、二十一階層から三十階層までで倒した魔物は三十一体。
獲得したPは、全部で十一万二千六百Pだった。
【保有:232,020P】
【累計獲得P:1,289,230P】
「……おおっ!」
一日で、こんなに増えた!
「どうだった、アレン?」
「十一万P以上も稼げたよ!」
「やったね!」
ルナが飛び跳ねた。
「目標の三十万Pに、ぐっと近づいたね!」
「うん! あと十八万七千四百Pだ!」
フェリシアが笑う。
「どうする? このまま先へ進む?」
ルナが聞いてきた。
「そうだね……」
俺は二人と、テリーとステフを見た。
皆、余裕がありそうだ。
「じゃあ、このまま先へ進もうか」
……。
以前の俺は、強くなりたくてダンジョンに潜ってきた。
でも、今は少し違う。
これからは、みんながそれぞれの力で歩いていけるようにしたい。
だから、これからも頑張ろう。
【保有:232,020P】
【累計獲得P:1,289,230P】
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