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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第10章 再び南へ

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第211話 圧倒的な実力

 天井に張りついていた巨大蜘蛛が、一斉に動き始めた。


 カサカサカサッ!


 石造りの通路に、不気味な音が響き渡る。


「……来るよ!」


 ルナが弓を構えた。


 次の瞬間。


 シュッ!


 天井から白い糸が飛んできた。


「危ない!」


 俺は竜爪剣を振り、飛んできた糸を切り払った。


 さらに別の蜘蛛が、フェリシアに向かって糸を吐き出す。


「させないよ!」


 フェリシアの周囲に浮かぶ八つのオービットのうち、一つが動いた。


 パシュッ!


 放たれた魔力弾が、蜘蛛の頭部を正確に撃ち抜く。


 ドサッ!


 巨大蜘蛛が天井から落下した。


「……えっ?」


 負傷した冒険者が驚いた声を上げた。


「い、今の魔物を……一撃で?」


「アレン、右!」


 ルナの声が響いた。


 俺はすぐに振り向く。


 そこには、別の巨大蜘蛛がいた。


 しかし。


 ヒュンッ!


 俺が剣を振るうよりも早く、ルナの矢が飛んできた。


 ドスッ!


 矢は蜘蛛の頭部を貫き、そのまま壁へ突き刺さった。


 巨大蜘蛛が動かなくなる。


「よし!」


 ルナが小さく頷いた。


 ……相変わらず、すごい命中精度だな。


「ワフッ!」


 そのとき、テリーが地面を蹴った。


 一瞬で巨大蜘蛛の背後へ回り込む。


 ガブッ!


 テリーが蜘蛛の脚に噛みついた。


 体勢を崩した蜘蛛に、フェリシアの魔力弾が命中する。


 ドンッ!


 三体目も倒れた。


「……な、何なんだ、お前たちは……」


 負傷した冒険者が、呆然とした表情で俺たちを見つめていた。


「大丈夫ですか?」


 俺が尋ねると、男性は慌てて頷いた。


「あ、ああ……。それより、今ので三体も倒したのか?」


「はい」


「……信じられん」


 男性が天井を見上げた。


「俺たちは、あの蜘蛛にずいぶん苦戦したんだぞ……」


「そうだったんですね」


「突然、上から何本もの糸を飛ばされてな。仲間を守ろうとしたところを囲まれたんだ」


 なるほど。


 暗闇で不意打ちされたら、Aクラス冒険者でも対応が難しいかもしれない。


「その蜘蛛は、奥にもたくさんいるんですか?」


「ああ。もっと広い場所に巣がある。仲間も作業員たちも、そこに連れていかれたはずだ」


「分かりました」


 俺はフェリシアとルナを見た。


「みんなを助けに行こう」


「うん!」


「もちろん!」


 男性は驚いたように俺たちを見つめた。


「……本当に行くのか?」


「はい。そのために来たんですから」


「だが、奥にはもっと大きな蜘蛛もいるぞ」


「気をつけます」


 俺が答えると、男性は少し考えてから頷いた。


「……分かった。俺も案内する。足を痛めているが、肩を借りれば歩ける」


「無理はしないでくださいね」


「ああ。すまない」


 俺たちは男性を支えながら、さらに奥へ進んだ。


 ◇


 しばらく進むと、通路が急に広くなった。


 ランタンを掲げる。


「……うわあ」


 俺は思わず声を漏らした。


 そこには、広い地下空間があった。


 天井は高く、奥には太い石柱が何本も並んでいる。


 そして、その石柱の間には、大量の白い糸が張り巡らされていた。


「……蜘蛛の巣だね」


 フェリシアが呟いた。


「うん。かなり大きいね」


 ルナが周囲を警戒している。


 すると。


「……おい!」


 負傷した冒険者が声を上げた。


「あそこだ! 仲間たちがいる!」


「えっ?」


 俺はランタンを向けた。


 すると、石柱の近くに、白い糸でぐるぐる巻きにされた人たちがいた。


 一人、二人、三人……。


「……六人いる!」


 ルナが言った。


 なるほど。


 作業員三人と、残りの冒険者三人だな。


 ……よかった。


 全員見つかったみたいだ。


 ただ、まだ安心はできない。


 人々の周囲には、何体もの巨大蜘蛛が動き回っていた。


「……どうする?」


 フェリシアが小声で尋ねた。


「まずは、人質を傷つけないようにしよう」


「そうだね。ここで大きな魔法を使うのは危ないよ」


 ルナも頷いた。


 蜘蛛の巣が張り巡らされているうえ、周囲には古い石柱が並んでいる。


 強力な魔法で建物を壊してしまったら、大変なことになる。


「フェリシア、魔力弾を小さくして、蜘蛛だけを狙える?」


「うん!やってみる!」


「ルナは、離れた場所にいる蜘蛛をお願い」


「任せて!」


「テリーとステフは、捕まっている人たちを守ってね」


「ワフ!」


「キュ!」


 よし。


「じゃあ、行こう!」


 俺は竜爪剣を抜き、蜘蛛の巣へ向かって走り出した。


 ◇


 カサカサカサッ!


 俺たちに気づいた巨大蜘蛛たちが、一斉に動き始めた。


 天井から、何本もの糸が飛んでくる。


 しかし。


「遅い!」


 俺は剣を連続して振るった。


 シュシュシュッ!


 飛んできた糸が、次々と切れていく。


 そのまま石柱の間を駆け抜けた。


 蜘蛛が俺の行く手を塞ごうとする。


 でも。


 パシュッ! パシュッ!


 フェリシアの魔力弾が、蜘蛛の頭部だけを正確に撃ち抜いた。


 ドサッ! ドサッ!


 二体の蜘蛛が倒れる。


「……すごい……」


 後ろからついてきた冒険者が呟いた。


「魔力弾を、あんなに正確に……」


 さらに、天井に張りついた蜘蛛が動いた。


 しかし。


 ヒュンッ!


 ルナの矢が飛んできた。


 ドスッ!


 蜘蛛の頭部を貫く。


 続けてもう一射。


 ドスッ!


 別の蜘蛛も天井から落ちた。


「よし。これで右側は大丈夫!」


 ルナが声を上げた。


「ありがとう!」


 俺は石柱の近くへ到着した。


 捕まっている人たちが見える。


 ……みんな、意識はあるかな?


「助けに来ました!」


 俺が声をかけると、糸に巻かれた男性の一人が、かすかに顔を上げた。


「……た、助け……」


「大丈夫です。今、助けます!」


 俺は竜爪剣を振った。


 シュッ!


 体を傷つけないよう、慎重に糸を切り裂く。


 一本、二本、三本。


 硬い糸が次々と切れていった。


「……すごい」


 男性が呟いた。


「あんなに硬い糸を……」


「もう少しです!」


 俺が最後の糸を切ると、男性の体が自由になった。


「……助かった……」


「立てますか?」


「あ、ああ……何とか……」


 よかった。


 男性はかなり疲れているようだけど、命に別状はなさそうだ。


「アレン、こっちは任せて!」


 フェリシアが近づいてきた。


 彼女の周囲では、八つのオービットが別々の方向を向いている。


 パシュッ! パシュッ!


 近づいてくる蜘蛛を次々と撃退していた。


 俺は安心して、残りの人たちを助け始めた。


「ワフ!」


 テリーが作業員に近づこうとした蜘蛛を牽制する。


「キュッ!」


 ステフは石柱の間を飛び回り、別の蜘蛛の注意を引いた。


 炎を使わなくても、十分に役に立っている。


 その間に、俺は一人、また一人と糸を切っていった。


 やがて。


「……よし!」


 最後の一人を助け出した。


 これで六人全員だ!


 ◇


「……まさか、全員助けてもらえるとは……」


 最初に助けたAクラス冒険者が、呆然と呟いた。


「本当に、ありがとうございます」


 別の冒険者も頭を下げた。


「いえいえ。みんな無事でよかったです」


 俺は笑った。


 すると、奥から大きな物音が聞こえてきた。


 ガサガサガサッ!


「……何?」


 フェリシアが振り向いた。


 ランタンを向ける。


 そこには、今までの蜘蛛よりも一回り大きな魔物がいた。


 太い脚。


 真っ黒な体。


 そして、赤く光る八つの目。


「……あいつだ!」


 負傷した冒険者が叫んだ。


「俺たちを襲った中で、一番大きな蜘蛛だ!」


「そうなんですね」


 巨大蜘蛛は、俺たちを威嚇するように脚を広げた。


 その直後。


 シュシュシュッ!


 何本もの糸が一斉に飛んできた。


 ……速い!


 でも。


「ルナ!」


「分かってる!」


 ヒュンッ!


 ルナの矢が、蜘蛛の頭部を狙った。


 巨大蜘蛛が体をひねり、矢をかわす。


 しかし、その直後。


「今だよ!」


 フェリシアが声を上げた。


 八つのオービットが、一斉に蜘蛛へ向いた。


 パシュシュシュシュッ!


 八発の魔弾が、別々の角度から巨大蜘蛛へ襲いかかる。


 蜘蛛は糸を吐こうとした。


 しかし、間に合わない。


 ドドドドッ!


 魔力弾が次々と命中した。


 巨大蜘蛛の体が大きく揺れる。


 そして。


 ドォン!


 その場に倒れた。


「……やった!」


 フェリシアが嬉しそうに笑った。


 ルナも弓を下ろした。


「これで最後かな?」


「うん。ほかに動いている蜘蛛はいないみたいだね」


 俺は周囲を確認した。


 天井にも、石柱の間にも、魔物の姿は見えない。


 テリーとステフも警戒を続けているけど、どうやら大丈夫そうだ。


「……終わったのか?」


 負傷した冒険者が呟いた。


「はい。もう大丈夫だと思います」


「…………」


 男性はしばらく俺たちを見つめていた。


 そして。


「……すごすぎるだろ……」


「え?」


「俺たちは、あの蜘蛛の群れに全く歯が立たなかったんだぞ……」


 男性が倒れた巨大蜘蛛を見た。


「それなのに、お前たちは……あっという間に全部倒してしまった……」


「みんなで協力したからですよ」


 俺が答えると、男性は首を横に振った。


「いや、それだけじゃない」


 そして、フェリシアとルナを見た。


「あんな精密な魔法攻撃も、暗闇での正確な弓術も、そう簡単にできるものじゃない」


「……ありがとうございます」


 フェリシアが少し照れたように笑った。


「私たちも、いろいろ経験してきたからね」


 ルナが答えた。


「……それに、その剣技だ」


 男性が俺を見た。


「糸をあれだけ正確に切り、捕まっていた人間を一人も傷つけないなんて……」


「いえ、何とかできてよかったです」


「……本当に、何者なんだ?」


 俺は少し考えた。


「ええと……普通の冒険者ですけど」


「普通なわけあるか!」


 男性が思わず声を上げた。


 周囲の冒険者たちも笑い始めた。


「ははは……。まったくだ」


「俺たちも、ずいぶんいろんな冒険者を見てきたが……」


「こんな連中、初めて見たぞ……」


 まあ、みんな無事だったんだから、それで良しとしよう。


 ◇


 俺たちは救出した人たちに水を渡し、少し休憩してもらった。


 特に作業員の三人は、長い間捕まっていたせいで、かなり衰弱しているようだった。


 幸い、全員意識はある。


 少しずつ水を飲んでもらい、落ち着いたところで帰る準備をした。


 歩けない人は、俺たちで支えることにする。


 救出された冒険者たちも、動ける者は作業員を手伝ってくれた。


 こうして、俺たちは来た道を戻り始めた。


 しばらく進むと、あの古い点検口が見えてきた。


「……あっ、出口だ!」


 フェリシアが嬉しそうに声を上げた。


 やがて、俺たちは地下水路の入口へ到着した。


 そこでは、ギルド職員たちとハサが待っていた。


「……アレンさん!」


 ハサが駆け寄ってきた。


「父さんは!? 父さんはいましたか!?」


「うん。いたよ!」


「……本当ですか!?」


 俺は後ろを振り返った。


 すると、作業員の男性が一人、ゆっくりと前へ出てきた。


「……ハサ」


「……父さん!」


 ハサが走り出した。


 そして、父親に抱きついた。


「父さん! よかった! 本当によかった!」


「……ハサ……心配をかけたな……」


 父親も、震える腕でハサを抱きしめた。


「もう帰ってこないかと思った……」


「……すまなかった……」


 ハサの目から、涙がこぼれ落ちている。


 その様子を見て、フェリシアが小さく笑った。


「……よかったね」


「うん」


 ルナも頷いた。


「無事に会えて、本当によかった」


 俺も二人を見つめた。


 すると、父親が俺たちに頭を下げた。


「……皆さん、本当にありがとうございました」


「いえ。無事で何よりです」


「ハサから聞きました。あの子のスキルを信じて、探してくださったそうですね」


「はい。ハサ君のおかげで、閉鎖された通路を見つけられたんです」


「……ハサのおかげで?」


 父親が驚いた。


「うん!」


 ハサが涙を拭いながら頷いた。


「僕の《ナビ》が、役に立ったんだ!」


「……そうか」


 父親はしばらくハサを見つめていた。


 そして、優しく頭を撫でた。


「よくやったな、ハサ」


「……うん!」


 ハサが嬉しそうに笑った。


 その笑顔を見て、俺も嬉しくなった。


 ◇


 救出した七人は、ギルド職員たちの手配で治療を受けることになった。


 俺たちもギルドへ戻り、救助活動の報告を行った。


「……七人全員を救出したのか!?」


 ギルド本部の責任者が驚いた。


「はい。作業員三人と、捜索に向かった冒険者四人です」


「しかも、巨大蜘蛛の群れも討伐したと……」


「はい」


 男性はしばらく言葉を失っていた。


 すると、救出されたAクラス冒険者が口を開いた。


「……俺からも報告させてください」


「ああ。頼む」


「今回、俺たちは作業員を見つけたものの、蜘蛛の群れに囲まれ、救出に失敗しました」


「そうだったのか……」


「ですが、アレンたちは違いました」


 男性は俺たちを見た。


「一体一体を正確に倒し、捕らわれた人たちを一人も傷つけずに救出したんです」


「……ほう」


「それも、ほとんど時間をかけずに」


 男性は大きく息を吐いた。


「正直、同じ冒険者として、あまりの実力差に驚きました」


「……そうか」


 責任者が頷いた。


「さすが、第五十階層を踏破した冒険者たちだな」


「本当にそのとおりです」


 救出された冒険者が笑った。


「俺も、もっと鍛え直さないとな」


「そんなことないですよ」


 俺は慌てて答えた。


「皆さんが先に調査してくれたおかげで、俺たちも危険を知ることができましたから」


「……ありがとう」


 男性は嬉しそうに頷いた。


 そのあと、ギルド本部の責任者がハサを呼んだ。


「ハサ君」


「……はい」


「今回は、君の《ナビ》が大きな手掛かりになったそうだね」


「……はい!」


「閉鎖された通路の先に道があると教えてくれたおかげで、全員を救出できた」


 男性は微笑んだ。


「君にも、心から感謝しているよ」


「……ありがとうございます!」


 ハサが大きく頭を下げた。


 俺はその様子を見ながら、少しだけ昔の自分を思い出した。


 《会員》というスキルを授かったとき。


 俺も、何の役にも立たないと思われていた。


 でも、今は違う。


 この力のおかげで、たくさんの仲間に出会えた。


 そして、今日も誰かを助けることができた。


 ハサ君の《ナビ》も、きっとそうなんだろうな。


 使い方次第で、いろいろな人の役に立つはずだ。


「アレンさん!」


 ハサが俺のところへ駆け寄ってきた。


「どうしたの?」


「僕、もっと《ナビ》を使いこなせるようになりたいです!」


「うん。いいと思うよ」


「いつか、困っている人を助けられるようになりたいんです!」


 俺は笑った。


「きっと、できるよ」


「……はい!」


 ハサも嬉しそうに笑った。


 こうして、王都で出会った小さな事件は、無事に解決した。


【保有:53,320P】

【累計獲得P:1,110,530P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
今回の地下水路探索編を拝読していて思いました。初期に紹介されていた「会員」スキルで取得可能だった「暗視」や「危険察知」とかにアレンが価値を見出だしてくれたらなぁ、とw 確か5000p位だったので敷居…
気にしちゃいけないんだろうけど、アレンたちが通ったルートは頑丈に閉じられていたんだから、助けた7人はどこから入ったんだろうか。
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