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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第10章 再び南へ

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第207話 一瞬の旅

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」


「うん!」


 ルナが元気よく頷いた。


「ヴィクトルさん、きっと驚くよ!」


「そうだね。私たちもこんなに採れるとは思わなかったもんね」


 フェリシアが笑った。


 俺は《収納》に入れた群晶石を思い浮かべた。


 七十七個。


 予備としていくつか残しても、かなりの数を売ることができそうだ。


「ワフ!」


「キュ!」


 テリーとステフも元気いっぱいだ。


 今日は二匹とも、ずいぶん頑張ってくれた。


 途中で危ない場面もあったけど、戦い方も少しずつ覚えてきたみたいだ。


「じゃあ、三十階層の転移石まで戻ろう」


 俺たちは来た道を引き返し始めた。


 ◇


 三十六階層へ向かう途中、《魔力感知》に反応があった。


「……魔物がいるね」


「何体?」


 ルナが尋ねる。


「二体だよ」


 通路の奥から、黒い甲殻に覆われた魔物が現れた。


【ダークビートル】


 またこの魔物か。


 今度は二匹に任せてみようかな。


「テリー、ステフ。もう一度戦ってみる?」


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹が元気よく答えた。


「でも、周りをよく確認してね」


「ワフ!」


「キュ!」


 テリーが地面を蹴った。


 シュンッ!


 ダークビートルの正面へ向かう。


 魔物が前脚を振り上げた。


 しかし、テリーはすぐに速度を落とし、横へ回り込んだ。


 そして。


 ガブッ!


 甲殻の隙間に噛みつく。


 そのまま身体をひねり、魔物を地面へ叩きつけた。


 ドンッ!


 ダークビートルが動かなくなる。


「やった!」


 ルナが笑った。


 でも、テリーはすぐにこちらを振り向かなかった。


 もう一体の魔物を確認してから、俺たちのところへ戻ってくる。


「テリー、ちゃんと周りを見てたね!」


「ワフ!」


 嬉しそうに尻尾を振った。


 一方、ステフは上空を旋回していた。


 二体目のダークビートルが前脚を持ち上げる。


 ステフは翼を傾け、攻撃が届かない位置へ移動した。


 そして、魔物の背後へ回り込む。


「キュウウウッ!」


 ボオッ!


 短い炎が、甲殻の隙間に命中した。


 グギャアッ!


 ダークビートルが地面へ崩れ落ちた。


 ステフはすぐに炎を止め、上空から周囲を確認する。


 ほかに魔物がいないことを確かめてから、俺の肩へ戻ってきた。


「ステフも上手だったよ!」


「キュ!」


 得意そうに翼を広げた。


「二匹とも、さっき教えたことを覚えているんだね!」


 フェリシアも嬉しそうだ。


「うん。これなら少しずつ安心して任せられそうだね」


 俺は二体のダークビートルを《収納》へ入れた。


 ◇


 その後も来た道を進み、三十一階層へ到着した。


 そこで、二体のシャドーウルフと遭遇した。


「テリー、ステフ。どうする?」


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹とも戦うつもりらしい。


「分かった。じゃあ、お願い!」


 テリーが地面を蹴り、シャドーウルフの側面へ回り込む。


 魔物が振り向いた瞬間、素早く跳びかかった。


 ガブッ!


 シャドーウルフが地面へ倒れる。


 その間に、ステフはもう一体の上空へ移動していた。


 敵の動きを確かめながら、高度を保っている。


「キュウウッ!」


 ボオッ!


 赤い炎がシャドーウルフを捉えた。


 魔物が地面を転がり、やがて動かなくなる。


「やったあ!」


 ルナが両手を上げた。


「二匹とも、もう一人前みたいだね!」


「うん。でも、まだ練習は必要だと思うよ」


 俺が言うと、テリーとステフがこちらへ駆け寄ってきた。


「ワフ!」


「キュ!」


「よく頑張ったね!」


 二匹の頭を撫でる。


 嬉しそうだ。


 俺たちは倒した魔物を回収し、三十階層へ向かった。


 ◇


 三十階層の転移石が見えてきた。


「やっと着いたね!」


 ルナが言った。


「うん。ここからなら入口まで一瞬だね」


 フェリシアが頷く。


 ……一瞬か。


 そういえば。


「……あっ!」


「どうしたの、アレン?」


 ルナが振り向いた。


「そういえば、《会員》で《転移》っていうスキルが買えたんだった!」


「《転移》?」


 フェリシアが首を傾げた。


「うん。オリハルコン会員になったときに、購入できるスキルの中にあったんだ」


「それって、好きな場所へ移動できるの?」


「どうなんだろう。ちょっと確認してみるね」


 俺は《会員》を開いた。


【オリハルコン会員】


【保有:353,220P】


 固有スキルの一覧を開く。


 そこには、以前から気になっていたスキルがあった。


【《転移》 300,000P】


 ……三十万Pか。


 高いなあ。


 でも、今なら買える。


「アレン、どう?」


「買えるみたい。でも、三十万Pも必要なんだ」


「三十万!?」


 ルナが驚いた。


「かなり高いね!」


「うん。でも、移動時間を短くできるなら便利だと思うんだ」


 フェリシアが頷いた。


「そうだね。ミナリアからここまでだって、歩いて二日かかったもんね」


「そうなんだよ」


 これからも、いろいろな場所へ冒険に行くことになる。


 そのたびに何日も歩くのは大変だ。


 もし《転移》が使えたら、移動にかかる時間を大幅に減らせるかもしれない。


「ちょっと、使い方を調べてみるね」


 俺は《転移》の詳細を開いた。


【《転移》】


【自分の魔力印を残した場所へ移動できる】


【転移先の魔力印を感知し、そこへ魔力を流すことで発動】


【術者に触れている者も一緒に転移可能】


 ……なるほど。


 あらかじめ魔力印を残しておく必要があるんだな。


 でも、一度訪れた場所へ簡単に戻れるなら、十分便利だ。


「どうだった?」


 フェリシアが尋ねた。


「自分の魔力印を残した場所へ移動できるみたい。それに、俺に触れていれば、みんなも一緒に転移できるんだって」


「本当!?」


 ルナが目を輝かせた。


「じゃあ、私たちも一瞬で移動できるの!?」


「うん。そうみたいだね」


「それは便利だね!」


 フェリシアも嬉しそうだ。


 俺はもう一度《会員》の表示を見た。


 三十万P。


 購入すれば、残りは五万Pほどになる。


 かなり減ってしまうけど……。


 今後の冒険を考えれば、それだけの価値はありそうだ。


「よし。買ってみよう!」


 俺は《転移》を選択した。


【《転移》を購入しますか?】


【必要:300,000P】


 迷わず、購入することに。


【《転移》を購入しました】


【300,000Pを使用しました】


【保有:53,220P】


「買えた!」


「やったね!」


 ルナが喜んだ。


「でも、どうやって使うの?」


「まずは魔力印を残さないといけないみたい」


 フェリシアが少し考えた。


「じゃあ、ダンジョンの入口に残しておくと便利だね」


「そうだね!」


 ここから入口までは転移石で戻れる。


 そのあと、入口に魔力印を残せばいい。


「じゃあ、行ってみようか!」


「うん!」


 俺たちは転移石に触れた。


 シュンッ!


 次の瞬間、見慣れたダンジョンの入口へ戻ってきた。


 ◇


 ダンジョンの外へ出ると、青い海が広がっていた。


「ここに魔力印を残すんだね?」


 ルナが尋ねた。


「うん。でも、入口のすぐ前はやめておこうかな」


「どうして?」


「ほかの冒険者がいたら危ないからね」


 転移した先に人が立っていたら、どうなるか分からない。


 人目につく場所で突然現れるのも、騒ぎになりそうだ。


「少し離れた場所を探そう」


 俺たちは入口から少し歩き、岩壁の陰にある平らな場所を見つけた。


 周囲に人はいない。


 足元もしっかりしている。


「ここなら大丈夫そうだね」


 フェリシアが言った。


「うん。じゃあ、試してみる」


 俺は目を閉じた。


 足元に魔力を集中させる。


 そこへ、自分の魔力を少しずつ残していく。


 しばらくすると、地面に自分の魔力が固定されたような感覚があった。


「……できたかな?」


 俺は少し離れてから、《魔力感知》を使った。


 ……あっ!


 確かに、さっきの場所から俺の魔力を感じる。


「できたみたい!」


「本当?」


「うん。ちゃんと魔力が残ってるよ」


「じゃあ、次はミナリアだね!」


 ルナが言った。


「そうだね」


 でも、ミナリアにはまだ魔力印を残していない。


 今回は歩いて帰るしかないな。


「じゃあ、出発しようか!」


「うん!」


 こうして、俺たちは再び海沿いの街道を歩き始めた。


 ◇


 二日後。


 俺たちはミナリアへ戻ってきた。


「着いたあ!」


 ルナが両手を伸ばした。


「やっぱり二日も歩くと疲れるね!」


「そうだね」


 俺も笑った。


 でも、これからは《転移》が使えるかもしれない。


「まずは魔力印を残しておこうか」


「どこにする?」


 フェリシアが尋ねた。


「人が少ないところがいいと思うんだ」


 大通りには、荷馬車や商人、冒険者たちが行き交っている。


 ここで突然転移したら、大騒ぎになってしまうだろう。


 それに、人や荷物にぶつかる危険もある。


「路地裏を探してみよう」


 俺たちは大通りから外れ、人通りの少ない場所へ向かった。


 しばらく歩くと、使われていない倉庫の裏に、少し開けた場所があった。


 周囲の建物からも見えにくい。


「ここならよさそうだね」


 フェリシアが周囲を確認する。


「うん。誰もいないみたい」


 俺は足元に魔力を集中させた。


 さっきと同じように、地面へ自分の魔力を残していく。


 ……よし。


「じゃあ、ちゃんと残っているか確認してみるね」


 俺は《魔力感知》を使った。


 まず、足元から自分の魔力を感じる。


 そして。


 ……あっ!


 ずっと西の方にも、もう一つ反応があった。


 さっきダンジョンの入口近くに残した魔力印だ!


「……すごい!」


「どうしたの?」


 ルナが俺を見た。


「二つとも感じるんだ!」


「二つ?」


「うん。ここに残した魔力印と、ダンジョンの入口に残した魔力印!」


「ええっ!?」


 ルナが目を丸くした。


「そんな遠くの魔力まで分かるの!?」


「うん。自分の魔力だからなのかな。場所がはっきり分かるんだ」


 フェリシアも驚いている。


「じゃあ、本当に転移できるかもしれないね!」


「そうだね」


 俺は二人を見た。


「ねえ、一回試してみない?」


「《転移》を?」


「うん。ここからダンジョンまで!」


「やってみたい!」


 ルナがすぐに答えた。


「私も!」


 フェリシアも嬉しそうに頷いた。


「じゃあ、みんな俺に触れてね」


 ルナが俺の左腕につかまる。


 フェリシアは右腕へ。


 テリーは俺の脚に身体を寄せ、ステフは抱き上げた。


「ワフ?」


「キュ?」


 二匹とも何が始まるのか分からないみたいだ。


「じゃあ、行くよ」


「うん!」


 俺は目を閉じた。


 遠くに感じる自分の魔力印。


 ダンジョンの入口近くに残した魔力だ。


 そこへ意識を集中する。


 そして、魔力を流した。


 次の瞬間。


 ふっと、足元の感覚が消えた。


 一瞬だけ、身体が宙に浮いたような不思議な感覚がする。


 そして。


 トンッ。


 足の裏に、硬い地面の感触が戻ってきた。


「……えっ?」


 俺は目を開けた。


 目の前には、青い海。


 潮の香りを含んだ風。


 そして、見覚えのある岩壁。


「……ここって」


 フェリシアが周囲を見回した。


「ミナリア西ダンジョン!?」


「……着いた?」


 ルナが呆然としている。


「うん。着いたみたいだね」


「えええっ!?」


 ルナが大きな声を上げた。


「本当に一瞬だったよ!?」


「そうだね!」


 俺も思わず笑った。


 さっきまでミナリアにいたのに。


 今はダンジョンの入口近くにいる。


 歩けば二日もかかる場所なのに!


「……すごいね」


 フェリシアが驚いたように呟いた。


「本当に移動できちゃったんだ」


「うん!」


「ワフ!?」


「キュッ!?」


 テリーとステフも驚いている。


 テリーは周囲をきょろきょろと見回し、ステフは俺の腕の中で何度も首を傾げた。


「二匹とも、びっくりしたよね!」


 ルナが笑った。


「ワフ!」


「キュ!」


 ……それにしても。


 三十万Pは高かったけど、これは本当に便利だな。


「ねえ、アレン!」


「何?」


「もう一回やろう!」


 ルナが目を輝かせた。


「今度はミナリアに戻るんでしょ?」


「そうだね」


 俺は《魔力感知》を使った。


 遠くに、ミナリアで残した魔力印を感じる。


「ちゃんと向こうの魔力印も分かるよ」


「じゃあ、帰ろう!」


「うん。でも、その前に周りに誰もいないか確認しようね」


 俺たちは岩陰へ戻り、近くに人がいないことを確認した。


「じゃあ、もう一度!」


 ルナとフェリシアが俺につかまる。


 テリーとステフも、さっきと同じように身体を寄せた。


 俺はミナリアの魔力印へ意識を集中した。


「《転移》!」


 ふっ。


 景色が切り替わる。


 次の瞬間。


 目の前には、さっきの倉庫の壁があった。


 足元は石畳だ。


「……戻ってきた!」


 ルナが声を上げた。


「本当だね!」


 フェリシアも嬉しそうだ。


 俺は周囲を確認した。


 幸い、誰もいない。


 ちゃんと同じ場所に戻れたんだ。


「これなら、またダンジョンへ行くときも一瞬だね!」


 ルナが笑う。


「そうだね。もう二日も歩かなくていいんだ!」


「それに、いろいろな街に魔力印を残しておけば、もっと便利になるかもしれないね」


 フェリシアが言った。


「うん。でも、人が入ってこない安全な場所を選ばないとね」


 それにしても、本当にすごいスキルを買えたな。


 これからの冒険が、ずっと楽になりそうだ。


 ◇


 その後、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。


「あっ、アレンさん! 皆さん、お帰りなさい!」


 いつもの受付の女性が声をかけてきた。


「こんにちは。群晶石の採取依頼の報告に来ました」


「ありがとうございます! 無事に採取できましたか?」


「はい。たくさん採れたんだよ!」


 ルナが嬉しそうに答えた。


「それはよかったです! 何個くらいでしょうか?」


「七十個です」


「……え?」


 受付の女性が固まった。


「な、七十個?」


「はい」


「七個ではなくて?」


「七十個だよ!」


 ルナが笑った。


「…………」


 女性はしばらく俺たちを見つめていた。


 そして、小さく息を吐いた。


「……アレンさんたちには、毎回驚かされますね」


「すみません」


「いえ! むしろありがとうございます!」


 女性が笑った。


「それでは、数量と品質を確認させてください」


「はい」


「少し数が多いので、解体場で確認しましょうか」


「お願いします」


 ◇


 解体場へ移動した俺たちは、用意された大きな作業台の前に立った。


「それでは、こちらへお願いします」


「はい」


 俺は《収納》を開いた。


 シュンッ!


 青白く輝く群晶石が、作業台の上に現れる。


 一個、二個と並べていく。


 十個。


 二十個。


 三十個。


 さらに四十個。


 やがて、作業台の上には七十個の群晶石が並んだ。


「……本当に七十個あるんですね」


 受付の女性が呆然としている。


「はい。全部で七十個です」


「前回、五個採れた場所をもう一度調べたら、大きな鉱脈が見つかったんだよ!」


 ルナが説明した。


「なるほど……」


 女性は群晶石を一つずつ確認し始めた。


「ヴィクトルさんも喜んでくださるといいですね」


「きっと喜ばれると思いますよ」


 女性も微笑んだ。


「それから、魔物の素材も買い取っていただけますか?」


 俺が尋ねた。


「もちろんです。今回は何体くらいでしょうか?」


「十体です」


「……十体?」


「はい。シャドーウルフとダークビートルです」


 女性は少しだけ目を閉じた。


「……分かりました。どうぞ」


 ……あれ?


 何だか、前より落ち着いているな。


 俺は《収納》から魔物を取り出し始めた。


 まず、シャドーウルフ。


 続いてダークビートル。


 次々と並べていく。


 シュンッ!


 シュンッ!


 やがて、解体場の床に十体の魔物が並んだ。


「……今回も、すごい量ですね」


「そうでしょうか?」


「はい。普通の冒険者の方でしたら、これだけ持ち帰るのも大変ですよ」


 女性が苦笑した。


「でも、先日のアビスベヒーモスを見せていただいたあとですから……」


 そうだった。


「少しだけ慣れてきました」


 女性が笑った。


「それならよかったです」


 俺も笑い返した。


 ◇


「おや? アレンじゃないか!」


 聞き覚えのある声がした。


 振り向くと、ヴィクトルさんが解体場の入口に立っていた。


「ヴィクトルさん!」


「久しぶり……というほどでもないか」


 ヴィクトルさんが笑った。


「群晶石の採取依頼が進んでいるか、確認しに来たんだ」


「ちょうど今、納品していたところです」


「本当か!」


 ヴィクトルさんが作業台へ近づいた。


 そして。


「……ん?」


 群晶石の山を見て、足を止めた。


「……ちょっと待ってくれ」


「どうしました?」


「これ、全部群晶石か?」


「はい」


「何個あるんだ?」


「七十個です」


「……七十?」


 ヴィクトルさんが俺の顔を見た。


「七十個!?」


「はい」


「……ははは!」


 ヴィクトルさんが笑い出した。


「いやあ、参ったな!」


「え?」


「俺は確かに、できるだけ多く欲しいと言ったけどな」


 ヴィクトルさんが群晶石を手に取った。


「まさか、一度で七十個も集めてくれるとは思わなかったよ!」


「大きな鉱脈を見つけたんです」


「そうなのか!」


 ヴィクトルさんは嬉しそうに頷いた。


「これだけあれば、いろいろな研究ができるな!」


 そして、俺たちを見た。


「アレン。七十個全部、俺に買わせてもらえないか?」


「はい。そのつもりで持ってきました」


「本当か! ありがとう!」


 ヴィクトルさんの表情が明るくなった。


「もちろん、ギルドを通して正式に買い取るよ。値段についても、きちんと相談させてもらう」


「よろしくお願いします」


「フェリシアも、これだけ売って大丈夫なのか?」


「はい。予備として七個残してありますので」


「そうか。それならよかった」


 ヴィクトルさんは満足そうに頷いた。


「それにしても、こんなにたくさんの群晶石を一度に持ち帰れるなんてな……」


 そう言って、今度は床に並んだ魔物を見た。


「……こっちも全部、アレンたちが倒したのか?」


「はい。テリーとステフも頑張ってくれたんです」


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹が元気よく鳴いた。


「ははは。そうか。二匹とも立派な冒険者だな!」


 ヴィクトルさんが笑った。


 ◇


 その後、受付の女性が品質確認のために別の職員を呼びに行った。


 その間、ヴィクトルさんが俺の近くへやって来た。


「それにしても、アレンの《収納》はすごいな」


「ありがとうございます」


「これだけの魔物や石を、簡単に運べるんだからな」


「そうですね。俺もいつも助かっています」


 ヴィクトルさんは少し声を落とした。


「……そういえば、前に話した俺の親友も、似たような魔法を使えるんだ」


「リオンさんですか?」


「ああ。亜空間収納っていう魔法なんだけどな」


「へえ……」


「荷車何台分もの荷物でも運べるんだ。最初に見たときは驚いたよ」


「それは便利ですね!」


「ああ。俺にも使えたら、商売がずいぶん楽になるんだけどなあ」


 ヴィクトルさんが苦笑した。


「残念ながら、俺は使えないんだ」


「そうなんですね」


「だから、こうして運んでくれる冒険者がいると本当に助かるよ」


 そして、ヴィクトルさんは人差し指を立てた。


「ただ、リオンの魔法については内緒にしておいてくれよ。あいつも、あまり人前では使わないようにしているから」


「分かりました」


「うん。ありがとう」


 ヴィクトルさんが笑った。


 それにしても、リオンさんか。


 男爵なのに、そんな珍しい魔法まで使えるなんて。


 どんな人なんだろうな。


 ◇


 しばらくして、受付の女性が戻ってきた。


「アレンさん、お待たせしました」


「はい」


「群晶石七十個の数量は確認できました。魔物の素材についても、これから査定いたします」


「ありがとうございます」


「ただ、今回もかなりの量ですので……」


 女性が申し訳なさそうに頭を下げた。


「先日お預かりした査定分と合わせて、明日まとめてお支払いする形でもよろしいでしょうか?」


「はい。大丈夫です」


「ありがとうございます!」


 ヴィクトルさんも頷いた。


「群晶石の七十個は、ローデン商会ですべて買い取らせてもらう。ギルドを通して手続きを進めてくれ」


「承知しました」


 女性は記録用紙に書き込んだ。


「それから、深層調査の報酬についても、明日まとめてご案内できるようにいたします」


「よろしくお願いします」


「はい!」


 女性は笑顔で書類を確認した。


「では、群晶石七十個の納品を確認しました。採取依頼、達成です!」


 その瞬間。


【依頼達成を確認しました】


【100P獲得】


【保有:53,320P】


【累計獲得P:1,110,530P】


 よし!


 百P獲得だ。


 《転移》を買ったから、保有Pはかなり減ってしまった。


 でも、これからの移動時間を考えると、買ってよかったと思う。


「ねえ、アレン!」


 ルナが俺の袖を引っ張った。


「何?」


「明日は、いくらもらえるのかな?」


「そうだね。群晶石も七十個あるし、魔物の素材もたくさんあるからね」


「楽しみ!」


 ルナが嬉しそうに笑った。


 フェリシアも頷く。


「それに、アビスベヒーモスの査定もあるんだよね」


「そうだったね」


 あの巨大な魔物、いったいいくらになるんだろう?


「俺も楽しみだな!」


 ヴィクトルさんが笑った。


「群晶石の研究も、これから本格的に始められそうだ」


「そうですね」


「また何か分かったら、連絡するよ」


「ありがとうございます」


 俺たちはヴィクトルさんと別れ、ギルドを出た。


 今日もいろいろあったな。


 テリーとステフは、また一段と強くなった。


 群晶石も七十個売ることができた。


 それに、何より《転移》を使えるようになった。


 これからは、訪れた場所に魔力印を残しておけば、何日もかかる道のりを一瞬で移動できる。


 今までより、ずっとたくさんの場所へ冒険に行けるかもしれない。


「アレン! 早く帰ろう!」


 ルナが振り向いた。


「うん!」


 俺はフェリシアと顔を見合わせて笑った。


 さて。


 明日の査定結果も楽しみだけど、その次はどこへ冒険に行こうかな?


【保有:53,320P】

【累計獲得P:1,110,530P】


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― 新着の感想 ―
収納スキルは珍しいけど認知はされているから、隠す必要はないんだよな その辺のズレが気になるな
アレン様御一行が依頼達成して帰って来ると その日は残業が確定する件
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