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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第10章 再び南へ

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206/210

第206話 二匹の新しい力

新連載もよろしくお願いします!

『平民出身の転生執事、最強王女を育成する』という作品です。

お手すきの際に是非!

https://ncode.syosetu.com/n5173mx/1からご覧いただけます。

 ヴィクトルさんと群晶石について話した翌日。


 今日も冒険者ギルドに来ている。


「アレン! あれ見て!」


 ルナが依頼掲示板を指差した。


「何かあった?」


「ヴィクトルさんの依頼だよ!」


 俺は掲示板に近づいた。


 そこには、新しい採取依頼が貼り出されていた。


【群晶石の採取】


【依頼主:ローデン商会】


【採取場所:ミナリア西ダンジョン深層】


【推奨ランク:Aランク以上】


【報酬:採取した群晶石の数量と品質に応じて支払い】


「本当だ。もう依頼が出てるんだね」


「ヴィクトルさん、早速動いたんだね!」


 フェリシアも嬉しそうだ。


 それにしても、Aランク以上か。


 群晶石が採れた三十七階層まで進める冒険者は、あまり多くないんだろう。


「ねえ、アレン。これ、私たちが受けるのはどうかな?」


 フェリシアが尋ねた。


「群晶石の採取依頼?」


「うん。ほら、テリーとステフの戦闘訓練もしたいって言ってたでしょ?」


「あっ、そうだったね」


 二匹は《共有》によって大幅に強くなった。


 でも、まだその力を十分には使いこなせていない。


「ダンジョンなら、採取しながら練習もできると思うよ」


「それはいいね!」


「私も賛成!」


 ルナが元気よく手を上げた。


「テリーとステフがどれくらい強くなったのか、見てみたい!」


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹もやる気満々みたいだ。


「じゃあ、受けようか!」


「うん!」


 俺たちは受付へ向かった。


 ◇


「あ、アレンさん、おはようございます」


 受付の女性が声をかけてきた。


「昨日の素材ですが、査定に時間がかかっていますので、もう少々お時間を頂けますでしょうか?」


「はい。それより今日は群晶石の採取依頼を受けたいのですが」


「群晶石の採取依頼ですね。ありがとうございます!」


 受付の女性が依頼書を取り出した。


「ローデン商会の方から、できるだけ多く集めたいと伺っています」


「そうなんですね」


「はい。ただ、深層まで探索できる冒険者の方は限られていますので、なかなか受注される方が見つからなそうなんです」


「そうだったんですね」


「だったら、たくさん集めてきていいんだよね?」


 ルナが尋ねた。


「はい。もちろん、無理のない範囲でお願いします」


「任せて!」


 ルナが胸を張った。


「それから、採取した群晶石は、こちらで買い取っていただけるんですか?」


 フェリシアが尋ねた。


「はい。ローデン商会との取り決めに従って、数量と品質を確認したうえで報酬をお支払いします」


「分かりました」


 俺は依頼書を受け取った。


 よし。


 今回の目的は群晶石の採取と、二匹の戦闘訓練だ。


 どちらもうまくいくといいな。


 ◇


 それから二日後。


 俺たちは再びミナリア西ダンジョンの入口へやって来た。


「また来ちゃったね!」


 ルナが笑った。


「うん。でも、今回は五十階層まで行く必要はないからね」


「そうだね。三十七階層に行けばいいんだよね?」


 フェリシアが確認する。


「うん。前に群晶石を五個見つけた場所があるから、そこをもう一度調べてみようと思うんだ」


 ただ、その前に二匹の訓練をしておきたい。


「テリー、ステフ。今日は二匹にも戦ってもらうよ」


「ワフ!」


「キュ!」


 元気な返事が返ってきた。


「でも、危ないと思ったらすぐに下がってね。俺たちも近くで見ているから」


「ワフ!」


「キュ!」


「よし!」


 俺たちはダンジョンへ入った。


 そして、転移石を使って第三十階層へ移動する。


 そこから階段を下り、三十一階層へ向かった。


 まずは以前戦ったシャドーウルフを相手に練習してみよう。


 ◇


 三十一階層に入ってしばらくすると、《魔力感知》に反応があった。


「……いるね」


「魔物?」


 ルナが弓を構える。


「うん。五体かな」


 通路の奥から、黒い毛皮に覆われた狼のような魔物が現れた。


【シャドーウルフ】


 暗い場所で素早く動き、群れで襲ってくる。


「テリー、あの魔物と戦ってみる?」


「ワフ!」


 テリーが勢いよく頷いた。


「じゃあ、まずは一体だけ狙ってみよう。ほかの魔物は俺たちが警戒しているからね」


「ワフ!」


 俺は竜爪剣を抜き、いつでも助けられる位置に立った。


 フェリシアとルナも周囲を警戒する。


 シャドーウルフの一体が、こちらへ駆け出した。


「テリー、お願い!」


「ワフ!」


 シュンッ!


 ……えっ?


 テリーの姿が、一瞬で見えなくなった。


 次の瞬間。


 ドンッ!


 シャドーウルフの身体が横へ吹き飛んだ。


 岩壁にぶつかり、そのまま地面へ落ちる。


「……速い!」


 俺は目を丸くした。


 《共有》によってテリーの敏捷が大幅に上がったことは知っていた。


 でも、実際に動いているところを見ると、想像以上だ。


 ところが。


「ワフッ!?」


 テリーは勢い余って、そのまま地面を滑ってしまった。


 ザザザッ!


 慌てて前脚を踏ん張り、ようやく止まる。


「テリー、大丈夫?」


「ワフ!」


 元気に振り向いた。


 怪我はしていないみたいだ。


「速すぎて止まれなかったんだね!」


 ルナが笑った。


「そうみたいだね」


 テリーは少し恥ずかしそうに尻尾を振った。


「でも、すごい速さだったよ。次は少し手前で減速してみようか」


「ワフ!」


 そのときだった。


「……テリー! 後ろ!」


 ルナが叫んだ。


 別のシャドーウルフが、岩陰から飛び出してきた。


 テリーはまだ俺たちの方を向いている。


 背後に迫る魔物には気づいていない!


 シャドーウルフが大きく口を開いた。


 鋭い牙が、テリーの首元へ迫る。


 まずい!


 俺が地面を蹴ろうとした瞬間。


 ヒュンッ!


 一本の矢が、テリーのすぐ横を通り過ぎた。


 ドスッ!


 矢はシャドーウルフの首に突き刺さった。


 グギャッ!


 魔物が地面へ倒れ込む。


「テリー!」


 ルナが駆け寄った。


「大丈夫!?」


「ワフ……」


 テリーは少し驚いた様子で、倒れた魔物を見つめている。


 それから、ルナの顔を見上げた。


「ワフ!」


「よかったあ!」


 ルナがテリーを抱きしめた。


「もう!敵がいるのに、こっちばっか見ちゃ駄目だよ!」


「ワフ……」


 テリーが申し訳なさそうに耳を伏せた。


「でも、最初の攻撃はすごかったよ!」


 ルナが笑顔で頭を撫でた。


「次は周りにも気をつけようね!」


「ワフ!」


 テリーが元気よく答えた。


 俺もほっと息を吐いた。


「ルナ、ありがとう。よく間に合ったね」


「うん! 《風読み》で魔物の動きが分かったんだ!」


「そうだったんだ」


 やっぱり、ルナも強くなったな。


 それにしても、テリーは速く動けるようになったけど、まだ戦い方を覚えている途中だ。


 敵を倒したあとも、周囲への警戒を忘れないこと。


 それも教えていかないといけないな。


 ◇


「じゃあ、もう一度やってみようか」


「ワフ!」


 テリーが元気よく頷いた。


 残るシャドーウルフたちは、俺たちを警戒しながら距離を取っている。


 そのうちの一体が、低い唸り声を上げて近づいてきた。


「テリー、今度は周りも見ながらね」


「ワフ!」


 テリーが地面を蹴った。


 シュンッ!


 今度は、さっきより少し速度を落としている。


 シャドーウルフの手前で素早く方向を変え、横へ回り込んだ。


 魔物が振り向く。


 しかし、もう遅い。


 ガブッ!


 テリーが首元に噛みついた。


 ドサッ!


 シャドーウルフが倒れた。


 その直後。


 テリーはすぐに飛び退き、残る魔物たちへ顔を向けた。


「……あっ!」


 俺は思わず笑った。


「今度はちゃんと周りを見てるね!」


「ワフ!」


 テリーが嬉しそうに尻尾を振った。


「やったね、テリー!」


 ルナも笑っている。


 残る二体は、仲間が倒されたのを見ると、通路の奥へ逃げていった。


「よし。テリーの練習は成功だね」


「ワフ!」


 テリーはルナのところへ駆け寄り、嬉しそうに飛び跳ねた。


「ふふふ。よく頑張ったね!」


 ルナが頭を撫でる。


 さっきは少し危なかったけど、ちゃんと教訓を活かせたみたいだ。


 よかった。


 ◇


「次はステフだね」


 俺が言うと、ステフが小さな翼を広げた。


「キュ!」


 ふわっ。


 緑色の身体が、軽々と浮かび上がる。


 そして。


 シュンッ!


 ステフは一気に天井近くまで上昇した。


「わあ! 速い!」


 ルナが見上げた。


 ステフは翼を傾けると、通路の上空を大きく旋回した。


 右へ。


 左へ。


 岩壁に近づくと、身体をひねって滑らかに方向を変える。


 そして、ほとんど速度を落とさず、俺たちの頭上へ戻ってきた。


「ステフ、飛ぶのがもっと上手になったね!」


 俺が言うと、ステフが嬉しそうに鳴いた。


「キュ!」


 以前から空を飛ぶことはできていた。


 でも、《共有》で身体能力が上がったおかげか、今は以前よりずっと速く、自由に飛べるみたいだ。


「それじゃあ、今度は炎を試してみようか」


「キュ!」


 以前は小さな炎だったけど、今は魔力も大幅に増えている。


 どれくらい強くなったんだろう?


 俺たちは通路の少し広い場所へ移動した。


 そこには、先ほど倒した魔物が残していった黒い岩が転がっていた。


「ステフ、まずはあの岩を狙ってみて」


「キュ!」


 ステフは上空を旋回しながら、大きく息を吸った。


 小さな口の奥に、赤い光が灯る。


「キュウウウッ!」


 ボオオッ!


 勢いよく炎が噴き出した。


 ……すごい!


 以前の小さな炎とは比べものにならない。


 赤々とした炎が、空中から斜め下へ伸びていく。


 ゴオッ!


 岩の表面が炎に包まれた。


 しばらくして炎が消えると、表面には黒い焦げ跡が残っていた。


「ステフ! すごいよ!」


 ルナが嬉しそうに声を上げた。


「キュ!」


 ステフは得意そうに鳴くと、もう一度大きく旋回した。


 そのまま俺の肩へ降りてくる。


「よくできたね!」


 俺はステフの頭を撫でた。


「キュ!」


 嬉しそうだ。


 でも、今の炎はかなり強かったな。


「ステフ、炎を使うときは周りに仲間がいないか、ちゃんと確認しようね」


「キュ!」


「それに、ダンジョンの中だから、燃やしてはいけないものにも気をつけよう」


「キュ!」


 ちゃんと分かってくれたみたいだ。


 ただ、ステフの飛行と炎を組み合わせた戦い方は、まだ試していない。


 次に魔物が現れたら、実戦で練習してみよう。


 テリーが倒したシャドーウルフを《収納》で回収した。


 ◇


 その後も何度か魔物と遭遇したけど、無理に戦わず、俺たちは三十二階層以降を進んでいった。


 今回は深層の探索が目的ではないので、以前通った道を選ぶ。


 やがて、三十七階層へ到着した。


「着いたね!」


 ルナが周囲を見回した。


「うん。前に群晶石を見つけたのは、この階層だったよね」


 フェリシアも岩壁を見つめている。


「確か、あの辺りだったと思うよ」


 俺は以前採掘した場所へ向かった。


 壁には、群晶石を取り出したときの跡が残っている。


「あっ、ここだ!」


 ルナが指差した。


「そうそう。前は五個見つけたんだよね」


「うん。今回はもっと調べてみよう」


 俺は《鑑定》を使った。


「《鑑定》」


 周囲の岩壁を一つずつ確認していく。


 すると。


「……あっ!」


「どうしたの?」


 フェリシアが近づいてきた。


「ここにもあるよ」


 岩の隙間に、青白い光が見えた。


【群晶石】


「本当だ!」


 ルナが目を輝かせた。


「まだ残ってたんだね!」


「うん。取り出してみようか」


 俺は《収納》から採掘用の道具を取り出した。


 小さな槌と、岩を削るためのノミだ。


 群晶石を傷つけないように、周囲の岩を少しずつ削っていく。


 カン、カン。


 しばらくすると、一つ目の群晶石が取り出せた。


「よし!」


「やったね!」


 ルナが嬉しそうに言った。


 ところが。


「……あれ?」


 俺は岩壁を見つめた。


 群晶石を取り出した場所の奥に、まだ青白い光が見える。


「……もう一個ある?」


 俺はもう一度《鑑定》した。


【群晶石】


「本当だ。奥にもあるみたい!」


「えっ!?」


 フェリシアが顔を近づけた。


「じゃあ、もっと削ってみようか」


「うん!」


 俺は慎重に周囲の岩を削った。


 すると。


 カラッ。


 二つ目の群晶石が姿を現した。


 さらに、その奥にも青白い光が見える。


「アレン! まだあるよ!」


 ルナが声を上げた。


「本当だね!」


 どうやら、岩壁の奥にいくつもの群晶石が埋まっているらしい。


 俺たちは協力して採掘を進めた。


 採掘した群晶石が、少しずつ増えていく。


「……すごいね!」


 フェリシアが驚いている。


「前は取り出しやすいところだけだったけど、奥にはこんなに埋まっていたんだね」


「うん。ここは群晶石の大きな鉱脈なのかもしれない」


 俺も嬉しくなってきた。


 ヴィクトルさん、きっと喜んでくれるだろう。


 ◇


 採掘を続けていたときだった。


「……ん?」


 俺は手を止めた。


 《魔力感知》に反応がある。


「二人とも、魔物が近づいてきたよ」


「何体?」


 ルナが弓を構えた。


「三体かな」


 通路の奥から、黒い甲殻を持つ大きな虫のような魔物が現れた。


【ダークビートル】


 以前も戦ったことのある魔物だ。


 硬い甲殻で身体を守っている。


 今の俺たちなら問題ないと思うけど、群晶石を採掘している場所で戦うのは避けたい。


「みんな、少し離れよう。ここで魔法を使ったら、群晶石が傷つくかもしれないからね」


「分かった!」


 フェリシアが頷いた。


 俺たちは採掘道具を片づけ、少し広い通路へ移動した。


 ダークビートルがこちらを追ってくる。


「テリー、ステフ。もう一度やってみる?」


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹が元気よく答えた。


「じゃあ、テリーは右の魔物。ステフは左の魔物をお願い!」


「ワフ!」


「キュ!」


 テリーが地面を蹴った。


 シュンッ!


 今度は最初から速度を調整している。


 ダークビートルの正面へ向かうと見せかけて、素早く横へ回り込んだ。


 魔物が身体を向ける。


 しかし、テリーはその動きに合わせて、さらに横へ。


 そして。


 ガブッ!


 硬い甲殻の隙間に噛みついた。


 ドンッ!


 そのまま身体をひねり、魔物を地面へ叩きつける。


 ダークビートルが動かなくなった。


「やった!」


 ルナが笑った。


「テリー、今度は周りも見てたね!」


「ワフ!」


 テリーが尻尾を振った。


 次はステフだ。


 ステフはすでに上空へ飛び上がっていた。


 翼を広げ、ダークビートルの頭上を旋回している。


 魔物が前脚を持ち上げる。


 しかし、ステフはその攻撃が届かない高さを保っていた。


 ……うまいな。


 ちゃんと相手との距離を考えながら飛んでいるみたいだ。


 ステフが空中で向きを変えた。


 そして、大きく息を吸う。


「キュウウウッ!」


 ボオオッ!


 赤い炎が、ダークビートルへ向かって伸びた。


 ゴオッ!


 魔物の身体が炎に包まれる。


 硬い甲殻が熱せられ、黒い煙が上がった。


 ステフは炎を吐き終えると、素早く横へ移動した。


 ダークビートルが苦し紛れに前脚を振り上げる。


 しかし、その攻撃は空を切った。


「ステフ、いいよ!」


 フェリシアが声をかけた。


 ステフは得意そうに鳴きながら、もう一度大きく旋回した。


 ……ん?


 俺の《魔力感知》に、別の反応があった。


 もう一体のダークビートルだ。


 でも、姿が見えない。


 ……上か!


「ステフ! 危ない!」


 俺が叫んだ瞬間。


 天井近くの岩陰から、三体目のダークビートルが飛び出した。


 岩壁に張りついていたらしい。


 ステフは目の前の魔物に集中していて、背後から迫る敵に気づいていない。


 ダークビートルが大きな前脚を振り下ろした。


 ステフの小さな身体に、鋭い脚先が迫る。


 ……間に合え!


 俺は地面を蹴った。


 《剣神》の力で、どこへ踏み込めばいいのかが自然と分かる。


 飛び上がりながら、竜爪剣を横へ振り抜いた。


 ガキィン!


 ダークビートルの前脚を弾き飛ばす。


 そして、そのまま左手を伸ばした。


「ステフ!」


「キュッ!?」


 俺はステフを抱き寄せ、空中で身体をひねった。


 ドンッ!


 着地すると同時に、後ろへ跳ぶ。


 次の瞬間、俺たちがいた場所へダークビートルが落ちてきた。


 ズシン!


「……ふう!」


 危なかった。


 あと少し遅れていたら、ステフが攻撃を受けていたかもしれない。


「ステフ、大丈夫?」


「キュ……」


 ステフは俺の腕の中で、小さく鳴いた。


 びっくりしたみたいだ。


「大丈夫。もう安全だよ」


 俺が頭を撫でると、ステフは少しずつ落ち着いてきた。


 その間にも、ダークビートルがこちらへ向かってくる。


「アレン! 任せて!」


 ルナが弓を構えた。


 ヒュンッ!


 矢が魔物の脚の関節に突き刺さった。


 グギャッ!


 ダークビートルが体勢を崩す。


「フェリシア!」


「うん!」


 フェリシアが魔力を込めた。


「《魔弾》!」


 ドンッ!


 魔弾がダークビートルの横腹に命中した。


 魔物の身体が大きく跳ね、岩壁へぶつかる。


 そのまま動かなくなった。


 よし。


 これで残るのは、ステフが攻撃していた一体だけだ。


 俺は腕の中のステフを見た。


「ステフ、もう大丈夫?」


「キュ!」


 ステフが元気よく鳴いた。


 そして、俺の腕から飛び立った。


「無理しなくてもいいんだよ?」


「キュ!」


 どうやら、もう一度挑戦したいみたいだ。


「分かった。でも、今度は周りも見ながらね」


「キュ!」


 ステフが翼を広げた。


 そして、ダークビートルの上空へ飛び上がる。


 今度はすぐに炎を吐かず、相手の動きを確かめながら旋回している。


 右へ。


 左へ。


 さらに、少し高度を上げた。


 ダークビートルが前脚を振り上げる。


 しかし、ステフは素早く横へ移動し、攻撃をかわした。


 そして、相手の背後へ回り込む。


「キュウウウッ!」


 ボオッ!


 短い炎が、甲殻の隙間へ命中した。


 グギャアッ!


 ダークビートルが地面へ崩れ落ちる。


 ……やった!


「ステフ、よくできたね!」


「キュ!」


 ステフが嬉しそうに鳴いた。


 俺は近づいてきたステフを抱き上げた。


「でも、さっきは本当に危なかったよ。炎を吐くときも、ほかの魔物がいないか気をつけようね」


「キュ……」


「飛ぶのはすごく上手になったよ。あとは戦いながら周りを見る練習だね」


「キュ!」


 ステフが頷いた。


 フェリシアも笑顔で近づいてきた。


「二匹とも、ずいぶん強くなったね」


「うん。でも、まだ経験が足りないんだと思う」


 テリーは背後からの攻撃に気づかず、ステフも別の魔物に襲われそうになった。


 二匹とも、身体能力はかなり高い。


 でも、戦闘では強さだけじゃなく、周りをよく見ることも大切だ。


「これから少しずつ練習していこうね」


「ワフ!」


「キュ!」


 元気な返事が返ってきた。


 ◇


 魔物を《収納》に回収すると、俺たちは採掘場所へ戻った。


 幸い、群晶石には何の被害もなかった。


「よかった。続きができるね!」


「うん!」


 それから数時間、俺たちは交代で岩壁を削り続けた。


 群晶石を傷つけないように、周囲の岩を少しずつ取り除いていく。


 時には大きな岩を外さなければならず、思った以上に時間がかかった。


 それでも、掘り進めるたびに新しい群晶石が現れた。


「また見つけた!」


 ルナが嬉しそうに声を上げた。


「本当だ。こっちにもあるよ」


 フェリシアも別の場所を指差した。


 俺は《鑑定》で確認してから、周囲の岩を削っていく。


 カン、カン。


 コロンッ。


 新しい群晶石が一つ、また一つと増えていった。


 どうやら、この岩壁の奥には大きな鉱脈が広がっているらしい。


「それにしても、こんな場所に鉱脈があったなんてね」


 フェリシアが言った。


「うん。前は気づかなかったよ」


「ヴィクトルさん、きっと喜んでくれるね!」


 ルナが笑った。


「そうだね」


 その間、テリーとステフは周囲を見張ってくれていた。


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹とも頼もしくなったな。


 ただ、採掘を始めてからかなり時間が経っている。


 あまり長く作業を続けて、疲れすぎてもよくない。


「そろそろ、この辺りで終わりにしようか」


「うん!」


 俺たちは掘り出した群晶石を一か所へ集めた。


 青白い石が積み重なり、小さな山ができている。


「……こんなに採れちゃった!」


 ルナが目を丸くした。


「本当にすごい量だね!」


 フェリシアも驚いている。


 俺は群晶石を数えてみた。


「えっと……七十四、七十五……」


 さらに二つ。


「……七十七個!」


「ええっ!?」


 ルナが声を上げた。


「そんなに採れたの!?」


「うん。七十七個だね」


「すごいね!」


 フェリシアが嬉しそうに笑った。


 前にこの階層で採掘したのは五個だった。


 それが今回は七十七個。


「これならヴィクトルさんも驚くと思うよ!」


 ルナが言った。


「研究もたくさんできそうだね」


 フェリシアも楽しそうだ。


 俺は群晶石を《収納》へしまった。


 これで採取依頼は十分達成できそうだ。


 それに、テリーとステフの戦闘訓練もできた。


 途中で少し危ない場面もあったけど、二匹ともいろいろなことを覚えてくれたみたいだ。


 今回の探索は、大成功だな。


 ◇


「テリー、ステフ。今日はよく頑張ったね」


 俺は二匹の頭を撫でた。


「ワフ!」


「キュ!」


 どちらも嬉しそうだ。


「二匹とも、もっと戦いたいみたいだよ!」


 ルナが笑った。


「そうみたいだね。でも、今日はここまでにしようか」


「ワフ……」


「キュ……」


 ちょっと残念そうだ。


「また練習しようね。今度はもっといろいろな戦い方を試してみよう」


「ワフ!」


「キュ!」


 すぐに元気になった。


 フェリシアが二匹を見つめて微笑んだ。


「これからは、戦うときも頼りにできそうだね」


「うん。でも、まだ小さいから無理はさせないようにしよう」


「そうだね」


 俺はテリーとステフを見た。


 テリーは地上を素早く走り、ステフは空から炎を吐く。


 二匹の戦い方は、まったく違う。


 それに、今日の戦闘ではルナがテリーを助け、俺がステフを助けた。


 どれだけ強くなっても、一人で全部できるわけじゃない。


 仲間がいれば、危ないときには助け合えるんだ。


「これで、みんなで冒険できるね!」


 ルナが嬉しそうに言った。


「うん!」


 フェリシアも頷いた。


 俺は二匹の頭をもう一度撫でた。


「じゃあ、これからもよろしくね。テリー、ステフ」


「ワフ!」


「キュ!」


 元気な声が、ダンジョンに響いた。


 さて。


 次はミナリアへ戻って、ヴィクトルさんに群晶石を届けよう。


 七十七個もあると知ったら、どんな顔をするだろう?


 ちょっと楽しみだな。


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