第203話 第50階層の階層主
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『平民出身の転生執事、最強王女を育成する』という作品です。
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四十九階層で少し休憩したあと、俺たちは五十階層へ向かう階段を下り始めた。
「いよいよ五十階層だね!」
ルナが嬉しそうに言った。
「うん。ここまで来られるなんてね」
「このダンジョン、何階層まで続いているんだろう?」
「どうだろう。まだまだ続くかもしれないね」
俺は竜爪剣の柄に手を添えた。
さっき手に入れた《剣神》。
四十九階層では、その力を十分に実感できた。
フェリシアの《魔神》も、ルナの《弓神》もすごかった。
でも、まだ手に入れたばかりだ。
これからどんな魔物が現れるのか、楽しみだな。
「ワフ!」
「キュ!」
後ろからテリーとステフが元気よく鳴いた。
「二匹とも、今日は見学だからね」
「ワフ……」
テリーが少し残念そうな顔をする。
「今度、浅い階層で一緒に練習しようね」
「ワフ!」
「キュ!」
二匹とも嬉しそうだ。
よし。
それじゃあ、行こうか。
◇
階段を下りきった俺は、思わず足を止めた。
「……広い!」
目の前には、とてつもなく大きな空間が広がっていた。
天井は見上げるほど高く、奥の壁が霞んで見えるほどだ。
幅も相当ある。
しかも、床も壁も、黒っぽい岩でできていた。
「すごいね……」
ルナが辺りを見回す。
「こんなに大きな広間、初めて見たよ!」
「うん。それに、岩もかなり頑丈そう」
フェリシアが近くの壁を見つめた。
確かに、岩壁にはほとんど継ぎ目がない。
床も分厚い一枚岩のようで、天井まで伸びる太い岩柱が何本も立っている。
これだけ広くて頑丈なら、巨大な魔物が暴れても簡単には崩れないだろう。
「フェリシア、ここなら八つのオービットも思い切り使えそうだね」
「うん!でも、今度は洞窟を壊さないようにするよ」
「そうだね」
四十九階層では、危うく天井を崩してしまうところだった。
今回は気をつけよう。
俺は《魔力感知》を使った。
……ん?
広間の奥から、巨大な魔力の反応がある。
「二人とも、何かいるよ」
「魔物?」
「うん。相当強そうだ」
俺たちは慎重に進んだ。
すると。
ズシン……。
地面が揺れた。
ズシン……。
もう一度。
「……何の音?」
ルナが弓を構えた。
次の瞬間。
グルルルル……!
広間の奥から、低い唸り声が響いた。
そして、巨大な影がゆっくりと姿を現した。
「……うわっ!」
とんでもなく大きな四足歩行の魔物だった。
全長は十二メートルくらいあるだろうか。
全身が黒い岩石のような装甲で覆われ、頭には二本の太い角が生えている。
鋭い牙。
岩を踏み砕きそうな太い四肢。
そして、紫色に輝く眼。
俺はすぐに《鑑定》を使った。
【アビスベヒーモス】
【極めて高い攻撃力と防御力を持つ巨大魔獣。強固な装甲で全身を覆い、強力な魔力弾を操る】
「アビスベヒーモスだって……」
「強そう!」
ルナが目を輝かせた。
「うん。でも、今の私たちなら戦えると思う」
フェリシアも落ち着いている。
そのとき。
グオオオオオッ!
アビスベヒーモスが咆哮した。
空気がビリビリと震える。
「……来るよ!」
俺は竜爪剣を抜いた。
「テリー!ステフ!階段の奥で待っていて!」
「ワフ!」
「キュ!」
二匹が急いで後ろへ下がった。
よし。
まずは相手の強さを確かめよう。
「二人とも、援護をお願い!」
「任せて!」
「うん!」
俺は地面を蹴った。
ズシン!
アビスベヒーモスが巨大な前脚を振り上げる。
速い!
あれだけ大きな身体なのに、想像以上の速さだ。
でも。
……見える!
前脚がどこへ落ちるのか。
次にどう動くのか。
自然と分かる。
俺はわずかに横へ動いた。
ドゴォン!
前脚が地面に叩きつけられ、黒い岩の床が砕けた。
……すごい威力だな。
まともに受けたら危ない。
俺はそのまま魔物の横へ回り込んだ。
「はあっ!」
ザンッ!
竜爪剣を振り抜く。
ガキィン!
「……硬い!」
黒い装甲に傷はついたものの、ほとんど斬れていない。
アビスベヒーモスがこちらを振り向いた。
巨大な角が迫ってくる。
俺はその動きを見切り、後ろへ跳んだ。
ブオンッ!
角が目の前を通り過ぎる。
なるほど。
動きは読めるけど、あの装甲をどうにかしないといけないな。
「アレン!」
フェリシアの声がした。
「《魔弾》!」
ドンッ!
青白い魔弾がアビスベヒーモスの横腹に命中した。
しかし、爆煙が晴れても、魔物は平然としていた。
「普通の魔弾じゃ駄目みたい!」
「かなり頑丈だね!」
続いてルナが矢を放った。
ヒュンッ!
ガキン!
矢は装甲に弾かれた。
でも、ルナはすぐに次の矢をつがえた。
「じゃあ、ここ!」
ヒュンッ!
今度の矢は前脚の関節に突き刺さった。
グルルッ!
アビスベヒーモスがわずかに体勢を崩す。
「アレン!関節なら通るよ!」
「ありがとう!」
なるほど。
どれだけ硬い装甲でも、関節までは完全に覆えないんだな。
そのとき。
アビスベヒーモスが大きく頭を持ち上げた。
二本の角が紫色に輝き始める。
「……何か来る!」
次の瞬間。
シュシュシュシュッ!
角の周囲から、紫色の魔力弾が次々と飛び出した。
十発。
二十発。
……まだ増える!?
あっという間に三十発近い魔力弾が、広間いっぱいに広がった。
しかも、それぞれが別の角度から俺たちへ向かってくる。
「フェリシア!」
「任せて!」
ふわっ。
八つのオービットが浮かび上がる。
「アレン!ルナ!私の近くへ!」
俺たちは急いでフェリシアのそばへ移動した。
フェリシアが両手を広げる。
シュンッ!
八つのオービットが、一斉に散った。
二つは正面。
二つは左右。
さらに二つが頭上へ。
残る二つは、俺たちの背後へ回り込んだ。
八つの青白い光が、俺たちを包み込むように配置された。
「……いくよ!」
フェリシアが右手を振った。
「《魔弾》!」
ドドドドッ!
正面のオービットから、青白い魔弾が放たれた。
迫っていた紫色の魔力弾に命中する。
ドォン!
空中で爆発が起こった。
しかし、敵の魔力弾はまだまだ残っている。
今度は右から五発。
さらに左からも六発。
その瞬間。
シュシュッ!
左右のオービットが一斉に向きを変えた。
ドドドドドッ!
青白い魔弾が連続して放たれ、紫色の光を次々と撃ち落とす。
「わあっ!」
ルナが声を上げた。
しかし、アビスベヒーモスの攻撃はそれだけではなかった。
上空から、さらに魔力弾が降ってくる。
「上!」
俺が叫ぶより早く、頭上の二つのオービットが動いた。
青白い光が交差する。
ドォン!
ドォン!
次々と爆発が起こった。
まるで、俺たちの周囲に光の防壁ができたみたいだ。
しかも、オービットは一か所に留まらない。
右から攻撃が来れば、右へ。
上から来れば、頭上へ。
八つの石が目まぐるしく飛び回り、敵の魔力弾を迎撃していく。
だが、その防御網を二発の魔力弾がすり抜けた。
「フェリシア!」
「大丈夫!」
フェリシアが左手を引いた。
シュンッ!
背後にいた二つのオービットが、すさまじい速さで前方へ飛んだ。
そして、俺たちの目の前で急停止する。
「そこっ!」
ドンッ! ドンッ!
二発の青白い魔弾が放たれた。
ドガァン!
紫色の魔力弾が、目の前で砕け散った。
「……おおっ!」
八つのオービットが作り出す、光の防壁。
ただ守るだけじゃない。
迫ってくる攻撃を見極め、必要な場所へオービットを移動させて迎撃しているんだ。
これなら、どの方向から攻撃されても対応できる。
最後の魔力弾が空中で爆発した。
フェリシアが小さく息を吐く。
「ふう……。全部防げたね!」
「すごかったよ、フェリシア!」
ルナが嬉しそうに言った。
「ありがとう!でも、八つを同時に動かすのは、まだ少し大変かな」
「魔力は大丈夫?」
俺が尋ねると、フェリシアは頷いた。
「うん。さすがに結構使ったけど、まだまだ余裕はあるよ!」
それならよかった。
それにしても、攻撃だけじゃなく、防御までできるなんて。
オービットには、まだまだ可能性がありそうだな。
◇
グオオオオッ!
アビスベヒーモスが再び咆哮した。
自分の魔力弾がすべて防がれたことに、怒っているみたいだ。
巨大な前脚を踏み鳴らし、こちらへ突進してくる。
ズシン!ズシン!
岩の床に亀裂が走る。
「アレン!今度は私がやってみる!」
ルナが弓を構えた。
「お願い!」
ヒュンッ!
一射目。
矢はアビスベヒーモスの右前脚の関節へ飛んだ。
ドスッ!
命中。
さらに。
ヒュンッ!
二射目は左前脚の関節へ。
グルルッ!
巨大な魔物が体勢を崩した。
それでも、突進は止まらない。
ルナは落ち着いて三本目の矢をつがえた。
相手の動きを読んでいるのだろうか。
弓の向きが、魔物の進む方向よりも少し先を向いた。
「……そこ!」
ヒュンッ!
放たれた矢が、アビスベヒーモスの右眼のすぐそばへ突き刺さった。
グギャアアッ!
魔物が大きく頭を振った。
その勢いで突進の方向が変わり、俺たちの横を通り過ぎていく。
ドゴォン!
巨体が岩柱にぶつかった。
だが、岩柱は表面が少し砕けただけだった。
……やっぱり、この広間は相当頑丈だな。
「やった!」
ルナが笑顔を見せた。
「全部狙ったところに当たってたね!」
「えへへ!《風読み》で動きを読んで、《弓神》で狙うと、すごく当てやすいんだ!」
なるほど。
二つの能力がうまく組み合わさっているんだな。
しかも、矢を放つまでの時間も短い。
ルナも本当に強くなった。
「アレン!」
今度はフェリシアが声をかけてきた。
「そろそろ、私も本気で攻撃してみたい!」
「八つのオービット?」
「うん!それに、私からの魔弾も一緒に使ってみる!」
「……おおっ!」
八つのオービットからの魔弾。
さらにフェリシア自身が放つ五連の魔弾。
合わせて十三発か!
「やってみよう!でも、素材が残るように気をつけてね!」
「うん!」
フェリシアが一歩前へ出た。
八つのオービットが、彼女の周囲をゆっくりと回り始める。
青白い光が、次第に強くなっていった。
「……いくよ!」
シュンッ!
最初の一つが飛び出した。
それを追うように、残る七つも一斉に加速する。
シュシュシュシュッ!
八つのオービットが、広い空間を縦横無尽に飛び回った。
一つは天井近くへ。
二つは左右から大きく回り込む。
三つは魔物の背後へ。
残る二つは低空を滑るように移動した。
八つの青白い光が、アビスベヒーモスを取り囲んだ。
グルルル……。
魔物が頭を振り、周囲を見回す。
しかし、八つのオービットは止まらない。
右へ向かったかと思えば、次の瞬間には左へ。
上昇したかと思えば、急降下する。
まるで八つの石が、それぞれ意思を持っているかのようだ。
フェリシアが両手を前へ出した。
すると、彼女の前にも五つの青白い光が現れた。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
五つ。
五つの魔力弾が、扇状に並んで浮かんでいる。
その光が、徐々に強くなっていく。
「……十三発!」
ルナが呟いた。
八つのオービット。
そして、五つの魔力弾。
すべてがアビスベヒーモスへ向けられていた。
フェリシアが大きく息を吸う。
「……全部、同じタイミングで!」
八つのオービットが一斉に停止した。
その瞬間、俺は気づいた。
八つの石は、ただ魔物を囲んでいるわけじゃない。
それぞれが、左肩の装甲を狙える位置に移動していたんだ。
しかも、フェリシア自身の五連の魔弾も、同じ場所を向いている。
……まさか。
十三発を、ほぼ同時に命中させるつもりなのか!?
「《魔弾》!」
フェリシアの声が響いた。
次の瞬間。
遠くに配置されたオービットから、青白い光が放たれた。
ドンッ!
続いて左右のオービットが輝く。
ドドンッ!
さらに背後と頭上。
次々と魔弾が飛び出していく。
飛距離に合わせて、発射のタイミングをずらしているんだ!
八方向から放たれた魔弾が、アビスベヒーモスへ迫る。
正面。
左右。
背後。
頭上。
そして地面すれすれ。
青白い光が、巨大な魔物を包囲するように収束していく。
その瞬間。
「魔弾!」
フェリシアが両手を突き出した。
ドドドドドッ!
五発の魔弾が、凄まじい勢いで飛び出した。
先に放たれた八発を追うように、青白い光が空間を切り裂いていく。
十三発。
すべてが、同じ一点を目指していた。
アビスベヒーモスが前脚を踏ん張った。
黒い装甲が紫色に輝く。
しかし、もう遅い。
十三の光が、ほぼ同時に左肩へ到達した。
ドガァァァァァァン!!
耳をつんざくような轟音が響いた。
「うわっ!」
俺は思わず腕で顔をかばった。
爆発の中心から、青白い光が一気に広がる。
巨大な衝撃波が地面を走り、砂埃を巻き上げた。
アビスベヒーモスの黒い装甲に、無数の亀裂が走る。
そして。
バキバキバキィッ!
分厚い装甲が、内側から弾け飛んだ。
黒い破片が四方へ飛び散る。
グオオオオオッ!
アビスベヒーモスが絶叫した。
十二メートルもの巨体が、衝撃で横へ押し出されていく。
太い四肢が地面を削り、黒い岩の床に長い溝を作った。
それでも勢いは止まらない。
ズズズズッ!
巨体が数メートルも滑り、ついに左前脚を折った。
ドォォン!
巨大な肩が地面に落ちる。
砂煙が、天井近くまで立ち上った。
「…………」
なんだ、今の威力は。
四十九階層で見せた八つのオービットだけでも、とんでもなかった。
それなのに、今回はフェリシアの放つ魔弾まで加わっている。
しかも、十三発がほぼ同時に命中した。
あれだけ頑丈だった装甲を、まとめて砕いてしまった。
やがて砂煙が薄くなった。
アビスベヒーモスは、まだ生きていた。
しかし、左肩の装甲は大きく砕け、下の肉が露出している。
あれほど巨大だった魔物が、片膝をつくように身体を低くしていた。
「……やりすぎちゃった?」
フェリシアが少し心配そうに言った。
「フェリシア、すごかったよ!」
「でも、素材は残ってるかな?」
「うん。大丈夫そうだよ」
「よかったあ……」
フェリシアが胸を撫で下ろした。
ルナも目を輝かせている。
「フェリシア、格好よかったよ!」
「ありがとう!」
フェリシアは嬉しそうに笑ったあと、少し肩を落とした。
「でも、さすがに魔力を使ったね。十三発を同じ場所に当てるのって、思ったより大変だったな」
「そうなんだ」
「うん。でも、次はもっと上手にできると思う!」
それなら、まだまだ強くなれそうだな。
俺はふと天井を見上げた。
あれだけの爆発が起きたのに、岩壁にも天井にも大きな損傷はない。
床には亀裂が走り、岩柱の表面も削れているけど、広間全体はびくともしていなかった。
やっぱり、ここは特別に頑丈な場所なんだな。
◇
グルルルル……。
低い唸り声が聞こえた。
アビスベヒーモスが、ゆっくりと身体を持ち上げようとしている。
「……まだ動けるんだ」
ルナが驚いた。
「さすが階層主だね」
俺は竜爪剣を構え直した。
左肩の装甲は、ほとんど残っていない。
首の付け根にも、大きな隙間ができている。
これなら、俺の剣も通るはずだ。
「二人とも、最後は俺がやってみてもいい?」
「もちろん!」
「お願い、アレン!」
「ありがとう!」
俺は地面を蹴った。
アビスベヒーモスが頭を持ち上げ、二本の角を紫色に輝かせる。
……また魔力弾か!
しかし。
「そうはさせないよ!」
フェリシアが右手を振った。
シュンッ!
八つのオービットが再び動き始める。
今度は魔物の頭の周囲へ集まった。
ドンッ!ドンッ!
左右から魔弾が命中する。
グオッ!
アビスベヒーモスが頭を振った。
角に集まりかけていた魔力が散っていく。
その隙に、俺は一気に距離を詰めた。
しかし、巨大な前脚が振り上げられる。
その瞬間。
「そこっ!」
ヒュンッ!
ルナの矢が、前脚の関節に命中した。
グギャッ!
アビスベヒーモスの身体が傾く。
さらに、ルナは続けてもう一本の矢を放った。
ヒュンッ!
今度は首の近くに突き刺さる。
魔物が痛みに頭を下げた。
「アレン!今よ!」
「ありがとう!」
俺はその瞬間を逃さなかった。
地面を強く蹴り、魔物の左側へ踏み込む。
砕けた装甲。
首の付け根にできた隙間。
そこが、はっきりと見えた。
……いける!
俺は竜爪剣を構えた。
今なら分かる。
どの角度で刃を入れればいいのか。
どこへ力を込めればいいのか。
そして、どのタイミングで踏み込めばいいのか。
考えるよりも先に、身体が動いていた。
アビスベヒーモスが最後の抵抗とばかりに頭を振る。
巨大な角が迫った。
俺はわずかに身体をひねった。
角が肩先をかすめるように通り過ぎる。
その勢いを利用して、さらに一歩踏み込んだ。
普通なら、剣を振れるような体勢じゃない。
でも、不思議と無理なく動ける。
俺は竜爪剣を下から斜めに振り上げた。
「はあああっ!」
ザシュッ!
刃が、砕けた装甲の隙間へ滑り込んだ。
そのまま手首を返す。
刃の角度をわずかに変え、硬い装甲を避けながら奥へ通していく。
そして。
「これで……終わりだ!」
ザシュウッ!
竜爪剣を一気に振り抜いた。
グオオオオオッ!
アビスベヒーモスが大きく身体を震わせた。
そして。
ズズズズ……。
巨大な身体が、ゆっくりと傾いていく。
ドゴォォォン!
地面が大きく揺れた。
砂埃が舞い上がる。
俺は竜爪剣を構えたまま、倒れた魔物を見つめた。
……動かない。
そのとき。
【80,000P獲得】
「……えっ!?」
俺は思わず表示を見直した。
八万P!?
すごい!
四十階層のゴールドスライムを倒したときは、三万Pだった。
それを大きく上回っている。
「アレン、どうしたの?」
ルナが駆け寄ってきた。
「八万Pも手に入ったんだ!」
「ええっ!そんなに!?」
「うん!びっくりしたよ!」
フェリシアも笑顔を見せた。
「それだけ強い魔物だったんだね!」
「そうみたい。でも、三人で戦ったら、思ったよりうまく倒せたね」
「うん!」
ルナが嬉しそうに頷く。
今回は、三人の力をうまく合わせることができた。
フェリシアの魔弾が硬い装甲を砕き、ルナの矢が魔物の動きを止めてくれた。
そして、俺の《剣神》でとどめを刺すことができた。
三人とも、本当に強くなったんだな。
◇
俺は倒れたアビスベヒーモスを見上げた。
全長十二メートルほどの巨大な魔物だ。
黒い装甲も、太い角も、かなり珍しい素材になりそうだな。
「これも持ち帰ろうか」
「うん! きっと高く売れるよ!」
ルナが嬉しそうに言った。
「装甲も頑丈そうだし、何かに使えるかもしれないね」
フェリシアも興味津々だ。
俺はアビスベヒーモスに手を触れた。
「《収納》」
シュンッ!
巨大な身体が、一瞬で消えた。
よし。
これで回収完了だ。
さて。
この先は、どこへ続いているんだろう?
俺は広間の奥を見た。
しかし、階段らしきものは見当たらない。
「……あれ?」
「どうしたの、アレン?」
「いや、次の階層へ行く階段がないなと思って」
ルナとフェリシアも辺りを見回した。
「本当だね」
「もしかして、どこかに隠されているのかな?」
そのとき。
ピロンッ!
突然、目の前に表示が現れた。
【第50階層の階層主を討伐しました】
【ミナリア西ダンジョンを踏破しました】
「……えっ?」
俺は表示を見つめた。
……踏破?
ということは。
「二人とも! このダンジョン、五十階層が最後だったみたいだよ!」
「ええっ!?」
ルナが目を丸くした。
「そうなの!?」
「うん。ダンジョンを踏破したって表示が出てる!」
「じゃあ、私たち……」
フェリシアが広間を見渡した。
「最後まで来ちゃったんだね!」
「そうみたい!」
俺は笑った。
まだ先があると思っていたけど、ここが最深部だったんだな。
「やったああ!」
ルナが両手を上げた。
「ダンジョンクリアだね!」
「うん!」
フェリシアも嬉しそうだ。
「三人で最後まで来られたね!」
「そうだね!」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
そのとき。
ゴゴゴゴ……。
広間の奥から、低い音が響いた。
「……何?」
俺たちはそちらを見た。
いつもの転移石が姿を現した。
「これで地上に戻れそうだね!」
「やったあ!」
ルナが喜んだ。
「じゃあ、テリーとステフも呼ぼうか」
「うん!」
俺たちは階段の奥で待っていた二匹を呼んだ。
「テリー!ステフ!終わったよ!」
「ワフ!」
「キュ!」
二匹が元気よく駆け寄ってきた。
「二匹とも、お待たせ」
俺は頭を撫でた。
「次は、二匹も安全なところで練習しようね」
「ワフ!」
「キュ!」
二匹とも嬉しそうだ。
俺は最後に《会員》の表示を開いた。
今回獲得したのは、八万P。
かなり大きいな。
それに、五十階層まで踏破できた。
フェリシアもルナも、新しい力を十分に発揮してくれた。
今回の探索は、大成功だったと思う。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか!」
「うん!」
「帰ったら、おいしいものを食べたいな!」
ルナが嬉しそうに言った。
「そしたら、お祝いしようか」
「やったあ!」
フェリシアも笑った。
「私も楽しみ!」
俺たちはテリーとステフを連れて、転移石に触れた。
そして。
シュンッ!
俺たちの身体が光に包まれた。
こうして、ミナリア西ダンジョンの探索は終わった。
それにしても、五十階層まであるダンジョンだったなんて。
ギルドの人たちは、どこまで知っているんだろう?
帰ったら、報告しないと。
【保有:353,220P】
【累計獲得P:1,110,430P】
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