第202話 三人の新しい力
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『平民出身の転生執事、最強王女を育成する』という作品です。
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四十九階層へ下りる階段を進みながら、俺は竜爪剣の柄に手を添えた。
さっき手に入れた《剣神》。
軽く振っただけでも、今までとの違いを感じた。
でも、実際の戦闘ではどうなんだろう。
「アレン、嬉しそうだね!」
ルナが笑った。
「そうかな?」
「うん! 新しいスキルを早く試したいんでしょ?」
「あはは。分かっちゃった?」
「もちろん!」
フェリシアも笑っている。
「私も八つのオービットを使ってみたいな」
「私も《弓神》を試したい!」
「じゃあ、次は三人とも新しい力を試そうね」
「うん!」
そのとき、後ろから声がした。
「ワフ!」
「キュ!」
テリーとステフが、俺たちの横へ並んだ。
二匹ともやる気みたいだ。
「あっ、二匹とも今日は見学していてね」
「ワフ?」
テリーが首を傾げる。
「《共有》で強くなったけど、いきなり四十九階層で戦うのは危ないから」
俺は二匹の頭を撫でた。
「今度、浅い階層で一から練習しようね」
「ワフ!」
「キュ!」
二匹とも元気に返事をした。
◇
四十九階層に入ると、これまでより天井の高い通路が続いていた。
岩壁には青白く光る鉱物が点々と埋まっている。
俺は《魔力感知》を使った。
少し先に、五つの反応がある。
「魔物がいるね」
「うん!」
俺たちは通路を進んだ。
現れたのは、黒い毛皮に覆われた大きな狼だった。
額には短い角があり、鋭い牙をむき出しにしている。
俺は《鑑定》した。
【ダークホーンウルフ】
【鋭い角と牙を持ち、高速で獲物を襲う魔物】
「五体か」
俺は竜爪剣を抜いた。
「まずは俺がやってみてもいい?」
「もちろん!」
ルナが頷く。
「何かあったら援護するね」
「ありがとう」
フェリシアもオービットを用意した。
その直後、先頭の一体が地面を蹴った。
速い!
黒い影が一気に近づいてくる。
俺は竜爪剣を構えた。
……あれ?
不思議だ。
魔物の動きが、今までよりはっきり見える。
次にどこへ足をつくのか。
どの角度から飛びかかってくるのか。
自然と分かる気がする。
俺は一歩だけ横へ動いた。
魔物の牙が、目の前を通り過ぎる。
そして。
ザシュッ!
【5,800P獲得】
竜爪剣を振り抜くと、魔物がその場に倒れた。
「……おおっ」
今のは、かなり滑らかに斬れたな。
続けて二体目が襲いかかってくる。
俺は剣の向きを少し変えた。
ザシュッ!
【5,800P獲得】
三体目。
今度は左からだ。
俺は振り向きざまに剣を振るう。
ザシュッ!
【5,800P獲得】
「すごい!」
ルナが声を上げた。
「アレン、動きが全然違うよ!」
「うん。俺も驚いてる」
剣を振るうときの迷いが、ほとんどなくなっている。
残る二体が、左右から同時に襲いかかってきた。
俺は一体目の角をかわし、そのまま身体を回転させる。
ザシュッ!
【5,800P獲得】
続けて、もう一体。
ザシュッ!
【5,800P獲得】
五体すべてを倒した。
「……すごいな、《剣神》」
俺は竜爪剣を見つめた。
今までだって剣は使えていた。
でも、今は余計な動きが減っている気がする。
力を込めるタイミングも、刃を当てる角度も、自然と分かる。
「アレン、すごくきれいな動きだったよ!」
ルナが言った。
「うん。剣が身体の一部みたいだったね」
フェリシアも頷く。
「ありがとう。でも、まだ使い始めたばかりだからね」
これからもっと慣れていきたいな。
俺は五体の魔物を《収納》にしまった。
◇
その後、俺たちはさらに奥へ進んだ。
しばらく歩くと、広い空洞に出た。
天井が高く、岩の柱が何本も立っている。
俺は《魔力感知》で周囲を確認した。
六つの反応がある。
岩柱の陰から姿を現したのは、巨大なサソリのような魔物だった。
黒い岩石に覆われた身体。
太い鋏。
そして、背中から伸びる長い尾。
【ロックテイルスコーピオン】
【岩石のように硬い甲殻と、強力な尾を持つ魔物】
「六体いるね」
フェリシアが言った。
「うん。ちょっと厄介そうだね」
魔物たちは岩柱の間へ広がり、俺たちを囲もうとしている。
そのとき。
「アレン、今度は私がやってみてもいい?」
フェリシアが声をかけてきた。
「もちろん。大丈夫そう?」
「うん。八つのオービットを試してみたいんだ」
「分かった。無理はしないでね」
「ありがとう!」
フェリシアは《収納》から群晶石を取り出した。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
そして、さらに四つ。
合計八つのオービットが、フェリシアの周囲に浮かび上がった。
ふわっ。
八つの石が、円を描くように動き始める。
青白い光が、それぞれの石に灯った。
「……いくよ」
フェリシアが小さく呟いた。
次の瞬間。
シュンッ!
八つのオービットが、一斉に散った。
「おおっ!」
俺は思わず声を上げた。
一つは天井近くへ。
一つは岩柱の陰へ。
別の二つは魔物の背後へ回り込んだ。
残る四つも、それぞれ別の方向へ飛んでいく。
八つの石が、空中を自在に動いていた。
「……すごい」
ルナが呟いた。
魔物たちは、突然現れた八つの光を警戒して動きを止めた。
フェリシアが右手を上げる。
「《魔弾》!」
ドンッ!
最初の一発が、右端の魔物に命中した。
その直後。
ドンッ!
ドンッ!
別の方向から、二発の魔弾が飛んだ。
魔物たちは身体をひねって防ごうとしたけど、背後から飛んできた魔弾までは防げなかった。
ドゴォン!
一体が地面へ倒れる。
さらに、天井近くのオービットが真下を向いた。
ドンッ!
今度は上から魔弾が降り注ぐ。
「わっ!」
ルナが驚いている。
「上下左右、全部から攻撃してる!」
そのとおりだ。
八つのオービットは、それぞれ違う位置から魔物を狙っている。
右を向けば左から。
左を向けば背後から。
上を警戒すれば足元近くから。
魔物たちは、どこから攻撃されるのか分からないみたいだ。
フェリシアがもう一度手を動かした。
シュシュシュッ!
八つのオービットが一斉に移動する。
そして、六体の魔物を囲むように配置された。
「……いけるかな」
フェリシアが少し息を吸った。
「八つ同時に……!」
八つのオービットが、同時に青白く輝いた。
次の瞬間。
ドドドドドドドドッ!
八発の魔弾が、一斉に放たれた。
ドガァァァン!
「うわっ!」
俺は思わず腕で顔をかばった。
凄まじい爆発音が、広い空洞に響き渡った。
衝撃で砂煙が巻き上がり、視界が真っ白になる。
足元の岩まで震えていた。
「フェリシア!?」
俺が呼びかける。
「……えっ?」
フェリシア自身も驚いている。
砂煙が少し薄くなった。
さっきまで魔物がいた場所を見て、俺は言葉を失った。
六体の魔物が、跡形もなくなっている。
硬い甲殻も、鋏も、尻尾も。
何も残っていない。
床には大きな穴が開き、砕けた岩が散らばっていた。
「……全部、消えちゃった?」
ルナが呟いた。
「うん……」
俺も驚いた。
あれだけ硬そうだった魔物が、粉々になってしまったらしい。
《収納》で持ち帰れる素材も残っていない。
そのとき。
ゴゴゴゴ……。
天井から小さな石が落ちてきた。
続いて、近くの岩柱に亀裂が走る。
ガラガラッ!
「……まずいね!」
俺は二人を見た。
「いったん入口まで戻ろう!」
「うん!」
三人で急いで通路へ戻る。
テリーとステフも、俺たちについてきた。
その直後。
ドゴォン!
大きな岩柱が崩れ落ちた。
さらに天井の一部まで落下してくる。
ゴゴゴゴ……。
「……危なかった」
俺は思わず息を吐いた。
あのままあそこにいたら、巻き込まれていたかもしれない。
フェリシアも青ざめている。
「ご、ごめん……」
「大丈夫だよ。みんな無事だったし」
「でも、あんな威力になるなんて思わなかった」
フェリシアは八つのオービットを見つめた。
「魔力を流すのはすごく楽になったんだけど、まだ威力の加減が難しいみたい」
「そうだね。俺もびっくりしたよ」
ルナが大きく頷いた。
「私も!洞窟が壊れちゃうかと思った!」
「本当にね」
俺は崩れた空洞を見た。
今も細かい石が落ちている。
「それに、魔物の素材も回収できなくなっちゃったね」
「あっ……」
フェリシアが申し訳なさそうな顔をした。
「そうだね……」
「でも、どれくらい強いか分かったし、いい経験になったよ」
俺は笑った。
「次からは、もう少し弱く撃てるように練習しようか」
「うん。気をつける」
フェリシアが頷いた。
「八つ同時に撃つと、さすがに魔力もかなり使うみたい」
「そうなんだ」
「うん。でも、まだ余裕はあるよ」
それにしても、ものすごい威力だったな。
洞窟の中で使うには、少し強すぎるかもしれない。
◇
「次は私だね!」
ルナが元気よく言った。
「うん。いい相手が見つかるといいね」
俺たちは別の通路へ進んだ。
しばらくすると、天井の高い広間に出た。
その上の方から、バサバサと羽音が聞こえてきた。
「……あっ!」
ルナが上を見た。
天井の岩棚に、大きな翼を持つ魔物が何体も止まっている。
俺は《鑑定》した。
【ナイトウィング】
【暗闇の中を高速で飛行し、鋭い爪で獲物を襲う魔物】
五体いる。
「飛ぶ魔物だね!」
ルナが弓を構えた。
「うん。今度はルナに任せようか」
「任せて!」
俺とフェリシアは少し後ろへ下がった。
もちろん、危なくなったらすぐに援護するつもりだ。
そのとき、ナイトウィングたちが一斉に飛び上がった。
バサバサバサッ!
大きな翼が、広間の空気をかき回す。
五体が別々の方向へ飛んでいった。
しかも、かなり速い。
「ルナ、大丈夫?」
「うん!」
ルナは落ち着いて弓を構えた。
そして。
ヒュンッ!
一射目。
矢は天井近くを飛ぶ魔物へ向かった。
ドスッ!
一体が翼を折り、地面へ落ちた。
次の瞬間。
ヒュンッ!
二射目。
今度は左側の魔物に命中した。
さらに。
ヒュンッ!
三射目。
右側から飛びかかろうとしていた魔物が、空中で体勢を崩した。
「……速い!」
俺は驚いた。
矢を構える動きが、ほとんど見えなかった。
三本の矢を放つまで、ほんのわずかな時間しかかかっていない。
「まだまだ!」
ルナが弓を引いた。
残る二体が、左右から同時に急降下してくる。
ルナは右側の一体へ矢を放った。
ヒュンッ!
命中。
しかし、左側の魔物はすでに近くまで迫っていた。
「ルナ!」
俺が声をかける。
でも、ルナは慌てなかった。
身体を少しひねり、弓を構え直す。
そして。
ヒュンッ!
至近距離から放たれた矢が、魔物の胸を貫いた。
ドガァン!
魔物はそのまま地面へ叩きつけられた。
「……おおっ!」
俺は思わず声を上げた。
五体すべてを倒した。
しかも、一度も狙いを外していない。
「すごいね、ルナ!」
「えへへ!」
ルナが嬉しそうに笑った。
「私もびっくりした!」
「今までより、ずっと速く撃てていたね」
フェリシアが言った。
「うん。それに、魔物の動きがすごく分かりやすかった!」
「《風読み》のおかげ?」
「それもあるけど、《弓神》のおかげで、どこを狙えばいいのか自然と分かる感じ!」
なるほど。
《風読み》で動きを察知して、《弓神》で正確に射抜く。
二つの能力がうまく組み合わさっているんだな。
「それに、矢の威力もすごかったよ」
俺が言うと、ルナが頷いた。
「うん! でも、あんまり強く撃ちすぎると、フェリシアみたいに洞窟を壊しちゃうかもね!」
「もう、ルナ!」
フェリシアが笑いながら言った。
「ははは!」
俺も思わず笑ってしまった。
確かに、今の二人なら気をつけないといけない。
俺たちは倒した五体の魔物を《収納》へしまった。
◇
その後、俺たちは少し休憩することにした。
広めの通路を見つけ、周囲に魔物がいないことを確認する。
「ふう。なんか、すごかったね!」
ルナが言った。
「うん。三人とも、かなり強くなったのが分かったね」
俺が答える。
「私もびっくりしたよ」
フェリシアが八つのオービットを見つめた。
「今までだったら、あんな動かし方はできなかったから」
「うん。でも、威力には気をつけないとね」
「そうだね」
フェリシアが苦笑した。
「次は洞窟を壊さないようにするよ」
ルナも笑った。
「私も、矢の威力をちゃんと調整できるようになりたいな」
「うん。二人とも、少しずつ慣れていこうね」
俺は竜爪剣を見た。
《剣神》。
《魔神》。
《弓神》。
三人とも、それぞれ新しい力を手に入れた。
これなら、今までよりもっと安全に探索できるかもしれない。
でも、力が強くなったからこそ、使い方には気をつけないと危ない。
「ワフ!」
「キュ!」
テリーとステフが、俺たちの近くで元気よく鳴いた。
「二匹も、今度練習しようね」
「ワフ!」
「キュ!」
二匹とも嬉しそうだ。
みんなで強くなっていけたらいいな。
俺は最後に《会員》の表示を開いた。
俺が倒した魔物は五体。
一体五千八百Pだったから、合計二万九千Pだ。
でも、二人が強くなったのは本当によかった。
これからもっと強い相手が出てきても、三人で対応できそうだ。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「うん!」
「次は五十階層だね!」
ルナが嬉しそうに言った。
五十階層か。
また階層主がいるかもしれない。
俺は竜爪剣を握り直した。
三人とも新しい力を手に入れたばかりだ。
これからどんな魔物が現れるのか、ちょっと楽しみだな。
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