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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第2章 ダンジョンへ行こう

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20/202

第20話 十階の階層主

 翌朝。


 俺とフェリシアは、《銀麦亭》で朝食を済ませて冒険者ギルドへ向かった。


 今日は十階へ行く。


 Dランクで探索を許されている最深階だ。


 掲示板を見ると、普段の依頼とは別に一枚の紙が貼られていた。


【緊急討伐依頼】


【アイアンゴーレム討伐】


【対象:ベルガント西部ダンジョン第十階層】


【報酬:300,000ジェニー】


「これですね」


「昨日言ってた階層主ですね」


 依頼書を取って受付へ向かう。


 いつもの受付嬢は、紙を見るなり眉を寄せた。


「やっぱり受けるんですね」


「はい」


「昨日は説明しませんでしたが、階層主はいつでも十階にいるわけではありません」


「そうなんですか?」


「一度倒されると姿を消します。次にいつ現れるかは分かっていません。

数日後のこともあれば、もっと長く現れないこともあります」


 受付嬢が依頼書を指さした。


「昨日、十階を探索していた冒険者からアイアンゴーレム出現の報告がありました。

それで今朝、討伐依頼が出たんです」


「なるほど」


「出現していない時なら、十階の探索自体はもっと安全です。ただ、今日は確実にいます」


「難しそうなら戻ります」


「必ずそうしてください。階層主は通常の魔物とは別物ですから」


「分かりました」


 依頼を受け、俺たちはダンジョンへ向かった。


 ◇


 一階から六階までは、ほとんど立ち止まらずに抜けた。


 七階でグランドリザードが現れたが、二撃で倒す。


【500P獲得】


【累計獲得P:15,200P】


【保有:5,490P】


 八階では魔物と遭遇しなかった。


 九階ではデスホーンが一体現れた。


「ブオオオッ!」


 長い角を向けて突進してくる。


 横へかわし、すれ違ったところで後脚を斬った。


 体勢を崩したデスホーンへ追いつき、首へ剣を入れる。


【700P獲得】


【累計獲得P:15,900P】


【保有:6,190P】


「昨日より早かったですね」


「だいぶ慣れてきました」


 目の前には十階へ続く階段がある。


 フェリシアが俺を見る。


「行きます?」


「はい」


 二人で階段を下りた。


 ◇


 十階は静かだった。


 九階よりも通路が広く、天井も高い。


 壁には何かを強く叩きつけたような跡が残っている。


 石床にも大きな亀裂が走っていた。


「これ、階層主がやったんでしょうか」


「かもしれませんね」


 警戒しながら奥へ進む。


 途中で魔物には遭遇しなかった。


 やがて、通路の先に大きな空間が現れた。


 その中央に、巨大な何かが立っている。


「……いました」


 フェリシアが足を止める。


 三メートル近い巨体。


 鈍い灰色の身体は、全身が金属で作られているように見えた。


 人間とは比べものにならないほど太い腕。


 赤く光る二つの目。


 アイアンゴーレム。


 俺たちが広間へ入ると、その目がこちらを向いた。


「ゴオオオオ……」


 低い音が響く。


「私から撃ちます」


「お願いします」


 フェリシアが杖を向けた。


「《魔弾》!」


 光弾が胸へ当たる。


 バンッ!


 アイアンゴーレムはほとんど動かなかった。


「硬い……」


「普通の魔弾だと厳しそうですね」


「なら、こっちで」


 フェリシアが距離を取り、指先へ魔力を集め始める。


 アイアンゴーレムが動いた。


「ゴオッ!」


 大きな足音を響かせながら近づいてくる。


 速くはない。


「《魔弾》!」


 ドンッ!


 高出力の一撃が右肩へ直撃した。


 金属の表面がわずかにへこむ。


「効いてます!」


「十分です」


 俺が前へ出た。


 巨大な拳が振り下ろされる。


 横へかわす。


 ドンッ!


 石床が砕けた。


 攻撃は重い。


 だが、動きは十分に見える。


 懐へ入り、鋼鉄剣を振った。


 ガキンッ!


 腕に強い衝撃が返ってきた。


 アイアンゴーレムの脇腹には浅い傷が入っている。


「斬れてます!」


「なら、いけます」


 もう一度拳をかわし、今度は右脚を斬る。


 ガキンッ!


 硬い。


 同じ場所へもう一撃。


 さらにもう一撃。


 少しずつ傷が深くなっていく。


「フェリシアさん、右脚を狙えます?」


「はい!」


 フェリシアが魔力を集める。


「《魔弾》!」


 高出力の魔弾が、俺の斬っていた場所へ直撃した。


「ゴオオッ!」


 右脚が大きく揺れる。


 俺はすぐに踏み込んだ。


 同じ傷へ全力で剣を振る。


 ガキィンッ!


 刃が深く食い込んだ。


 右脚が折れ曲がり、アイアンゴーレムが片膝をつく。


「今です!」


 胸へ回り込む。


 中央に、周囲とは色の違う部分がある。


 剣を突き立てた。


 硬い。


 アイアンゴーレムが腕を振る。


 一度下がる。


「ゴオオオオッ!」


 立ち上がろうとしたところへ、フェリシアの《魔弾》が顔へ当たった。


 動きが止まる。


 もう一度踏み込んだ。


 狙う場所は同じだ。


 胸の傷へ剣を突き立てる。


 全身の力を込めた。


 剣から嫌な手応えが伝わってくる。


 それでも力は緩めない。


「おおおっ!」


 刃がさらに奥へ入る。


 バキンッ!


 胸の奥で何かが砕けた。


 アイアンゴーレムの赤い目から光が消える。


 巨体がゆっくりと傾いた。


 ドォン!


 広間の床が揺れた。


【階層主討伐を確認しました】


【2,000P獲得】


【累計獲得P:17,900P】


【保有:8,190P】


「……倒した」


 フェリシアがゆっくり息を吐いた。


「十階の階層主ですよ?」


「倒せましたね」


 俺自身にはまだ余力がある。


 問題は別のところにあった。


「アレンさん。剣……」


 手元を見る。


「これは……」


 鋼鉄剣の刃がひどく欠けていた。


 刀身もわずかに曲がり、根元には細い亀裂が入っている。


「もう使わない方がいいですよね」


「そうですね」


 十万ジェニー近くした剣だった。


 買った時には十分いい武器だと思っていたが、俺の力と十階の魔物には耐えきれなかったらしい。


「最後までは持ってくれましたね」


「途中で折れなくて本当によかったですよ」


「それは俺も思います」


 鋼鉄剣を布で包む。


 その時だった。


 ゴゴゴゴゴ……。


「アレンさん」


 フェリシアが広間の奥を見る。


 アイアンゴーレムが立っていた場所のさらに向こう。


 何もなかった石壁がゆっくりと左右へ動いていた。


 壁の奥に、小さな部屋が現れる。


 中央には青白く光る大きな石が置かれていた。


「何でしょう?」


 近づいてみる。


 フェリシアが石を見て首を傾げた。


「これ……転移石じゃないですか?」


「転移石?」


「私も実物を見るのは初めてです」


 台座には短い文字が刻まれていた。


 ――十階層を踏破した者に、道を開く。


「触ってみます?」


「そうですね」


 俺が転移石へ手を触れる。


 青白い光が強くなった。


 少しして、元の明るさへ戻る。


 フェリシアも同じように触れる。


 転移石が再び光った。


「何か起きたんでしょうか」


「ギルドで聞いてみましょう」


 俺たちはアイアンゴーレムから大きな魔石と、持ち帰れそうな金属片を回収した。


 ◇


 九階まで戻ったところで、ブラックオーガが現れた。


「オオオオッ!」


「俺が引きつけます」


「お願いします!」


 壊れかけた剣は使わない。


 俺は素手のまま前へ出た。


 ブラックオーガが棍棒を振り下ろす。


 かわす。


 追ってきたところで少し横へ動き、向きを変えさせる。


「《魔弾》!」


 フェリシアの光弾が脚へ入った。


「オオッ!」


 ブラックオーガがフェリシアを見る。


 すぐに俺が近づいた。


「こっちです!」


 再び俺へ棍棒が振られる。


 かわす。


 フェリシアが安全な距離を取る時間は十分にある。


「《魔弾》!」


 二発。


 三発。


 脚へ集中して撃ち込む。


 動きが鈍った。


「今です!」


 フェリシアが杖の先へ魔力を集めた。


「《魔弾》!」


 高出力の一撃が胸へ直撃する。


 巨体が大きく揺れた。


 そこからさらに通常の魔弾を撃ち込む。


 やがてブラックオーガが地面へ倒れた。


「倒せました!」


「やりましたね」


 視界には何も表示されない。


 八階でも魔物が一体現れたが、同じように俺が引きつけ、フェリシアが仕留めた。


 その後は大きな問題もなく地上まで戻った。


 ◇


 夕方。


 ギルドへ入る。


 いつもの受付嬢がすぐに俺たちへ気づいた。


「お帰りなさい! 十階はどうでした?」


「階層主を倒しました」


「……はい?」


「アイアンゴーレムです」


 大きな魔石を受付台へ置く。


 受付嬢の目が見開かれた。


「これ……」


 何度か確認する。


「間違いありません。アイアンゴーレムの魔石です」


 近くにいた職員までこちらを見る。


「十階の階層主だって?」


「今朝依頼が出たばかりだぞ」


 受付嬢が改めて俺たちを見る。


「本当に怪我は?」


「ありません」


「私も大丈夫です」


「……すごいですね」


 依頼の処理が進む。


 視界に表示が現れた。


【依頼達成を確認しました】


【100P獲得】


【本日の獲得P:3,300P】


【累計獲得P:18,000P】


【保有:8,290P】


 《付与》まで、あと1,710P。


「討伐依頼の報酬は三十万ジェニーです」


 続いて素材も査定してもらう。


 アイアンゴーレムの魔石と金属片。


 往路で倒したグランドリザードとデスホーン。


 帰路でフェリシアが倒した魔物の素材。


 買取額は八十八万ジェニーになった。


「依頼報酬と合わせて、百十八万ジェニーです」


「百十八万……」


 フェリシアが目を丸くする。


 二人で分ければ、一人五十九万ジェニー。


 十階まで来ると、稼げる金額もかなり大きい。


「そういえば、アイアンゴーレムを倒したあとに転移石が出てきました」


 俺が言うと、受付嬢が頷いた。


「触れましたか?」


「二人とも」


「でしたら登録されています」


「登録?」


「次から一階の転移石を使って、直接十階へ移動できます。十階から一階へ戻ることもできますよ」


 フェリシアが俺を見る。


「使えばよかったですね」


「本当ですね」


「初めてなら、分からなくても仕方ありません」


 受付嬢が笑った。


「次からは一階から九階まで歩かなくて済みます」


「それは助かります」


「あとは……その剣ですね」


 俺は布に包んでいた鋼鉄剣を受付台へ置いた。


 布を開く。


「……すごいことになってますね」


「アイアンゴーレムを倒したらこうなりました」


「これは買い替えた方がいいです」


「そのつもりです」


「明日は武器屋ですね」


「はい」


 これで今日の手続きは終わりかと思った。


 だが、受付嬢は手元の記録をもう一度確認すると、急に表情を変えた。


「……少々お待ちください」


「はい?」


「すぐ戻ります」


 受付嬢が立ち上がり、そのまま奥へ消えていった。


「何でしょう?」


「さあ……」


 フェリシアと顔を見合わせる。


 しばらくして、受付嬢が一人の男性を連れて戻ってきた。


 四十代くらいの男だ。


 胸元には銀色の徽章がついている。


「ベルガント支部の副ギルド長です」


 受付嬢が紹介する。


 副ギルド長が俺たちの前へ立った。


「アレン・ヴァルディスさん。フェリシア・ロートさんですね」


「はい」


「お二人のこれまでの実績を確認しました」


 副ギルド長が手元の書類を見る。


「Dランク昇格後の依頼達成数。七階から九階までの攻略。九階での他の冒険者の救助。そして、本日の十階階層主アイアンゴーレム討伐」


 そこで書類を閉じた。


「これ以上、Dランクに留めておく理由はありません」


 受付嬢が二枚の冒険者証を差し出す。


「本日付で、お二人をCランクへ昇格させることが決まりました」


「……Cランク?」


 フェリシアが目を丸くする。


「もうですか?」


 俺が聞く。


 受付嬢が苦笑した。


「こちらが言いたいです」


 新しい冒険者証を受け取る。


 そこには、確かに刻まれていた。


【Cランク】


 累計獲得P=18,000P



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― 新着の感想 ―
シャドウパンサーとやった時点で暗視とか気配察知とか購入したくならないの凄いよ。俺ならポイント貯めて無駄遣いを繰り返してる。
受付嬢の説明のいい加減さが凄いというか、主人公達が転移石に触らないまま帰ってたらどういう反応してたんだろ?ショートカット解放とかいう明らかに重要な事項を、階層主に挑むのを事前に知ってて一切説明無しは、…
階層ボス初討伐ポイントとか、あっても良かった気がする。
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