第196話 デスヒドラ
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
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二十七階層に入った俺たちは、さらに奥へと進んでいた。
「アレン、また魔物がいるよ!」
ルナが前方を指差す。
通路の奥から現れたのは、灰色の毛皮に覆われた四足の魔物だった。
身体には岩のような硬い突起が並んでいる。
俺は《鑑定》した。
【ロックウルフ】
【硬い突起に覆われた身体を持ち、群れで狩りをする魔物】
「七体いるね」
フェリシアが言った。
「うん。囲まれないように気をつけよう」
ロックウルフたちは左右へ広がり、俺たちを包囲しようとした。
でも、フェリシアの方が早かった。
四つのオービットが宙へ浮かび、魔物の進路へ回り込む。
ドンッ!
魔弾を受けた一体が足を止めた。
続いてルナの矢が飛ぶ。
先頭のロックウルフが体勢を崩したところへ、俺は竜爪剣を振り下ろした。
【1,700P獲得】
ほかの魔物たちが一斉に飛びかかってくる。
だけど、ルナとフェリシアの援護があれば問題ない。
俺は次々と仕留めていった。
七体を倒し、獲得したのは一万千九百P。
二十七階層は、Pも多いみたいだね。
◇
二十八階層に下りると、通路のあちこちに大きな岩が転がっていた。
「ねえ、アレン。あれって……」
ルナが前方を指差す。
岩の塊が、ゆっくりと動いている。
「あっ、スウォームロックだね」
「また群晶石が手に入るかな?」
フェリシアが尋ねた。
「たぶんね」
「じゃあ、私がコアを狙うよ!」
ルナが弓を構える。
スウォームロックは周囲の小さな岩の魔物を集め、身体を大きくしていった。
でも、もう攻略方法は分かっている。
フェリシアが四つのオービットを動かし、集合体の周囲から魔弾を放つ。
ドンッ!ドンッ!
岩の塊が崩れ、小型のスウォームロックが飛び出した。
俺は近づいてきた魔物を斬り倒していく。
やがて中心部のコアが見え、ルナの矢が一直線に飛んだ。
バキッ!
コアが砕けると、集合体が崩れ落ちた。
俺は岩の中から群晶石を拾い上げた。
「やっぱりあったね」
フェリシアが近づいてくる。
「これ、私が持っていてもいい?」
「もちろん!」
俺は群晶石を渡した。
「でも、今すぐオービットを増やすわけじゃないんだよね?」
ルナが聞いた。
「うん。まずは四つをもっと使いこなしたいの。でも、いつか五つ、六つと動かせるようになったら使いたいから」
「そっか!」
ルナが頷く。
確かに、フェリシアなら将来もっと多くのオービットを使えるようになるかもしれない。
そのときのために、取っておくのもいいと思う。
フェリシアは群晶石を自分の《収納》へしまった。
その後も、二十八階層では魔物との戦闘が続いた。
俺は小型のスウォームロック八体を含め、何体もの魔物を倒してPを獲得した。
◇
二十九階層に入ると、さらに魔物の数が増えた。
通路の奥から現れたのは、黒い甲殻に覆われた大きな魔物だった。
【ダークビートル】
【硬い甲殻と鋭い角を持つ大型の魔物】
三体のダークビートルが、大きな角を突き出して突進してくる。
「来るよ!」
ルナが弓を構えた。
俺は一体の突進を横へかわす。
ドゴォン!
角が岩壁へ突き刺さった。
その隙にフェリシアのオービットが回り込む。
左右から魔弾を受けた魔物が体勢を崩した。
「アレン!」
「うん!」
俺は甲殻の隙間へ竜爪剣を突き立てた。
【2,100P獲得】
残る二体も、ルナとフェリシアの援護を受けながら倒していく。
その後も何度かダークビートルが現れ、この階層では合計八体を討伐した。
獲得したPは一万六千八百P。
「ふう……」
戦闘を終えたところで、フェリシアが小さく息をついた。
「フェリシア、大丈夫?」
俺が尋ねると、彼女は頷いた。
「うん。でも、魔力が結構減ってきたかな」
「そうなんだ」
「ずっと魔法を使ってるからね。オービットを動かすだけなら、それほど魔力は使わないんだけど……」
「《魔弾》を撃つと、やっぱり減るんだね」
「うん。四つから何度も撃ってたから」
なるほど。
《共有》のおかげでフェリシアの魔力量は増えているけど、無限に使えるわけじゃない。
ここまで、ずいぶん多くの魔物と戦ってきた。
魔力が減っているのも当然だろう。
「じゃあ、次からは俺とルナが頑張るね」
「うん!任せて!」
ルナが元気よく答えた。
「ありがとう。でも、まだ魔力は残ってるから大丈夫だよ」
フェリシアが微笑む。
俺は前方の階段を見つめた。
次はいよいよ三十階層だ。
「階層主がいるかもしれないし、無理しないでね」
「うん。気をつけるよ」
俺たちは階段を下りていった。
◇
三十階層には、大きな広間が広がっていた。
天井は高く、奥まで見渡せる。
そして、広間の中央には巨大な魔物がいた。
「……何、あれ?」
ルナが足を止める。
大きな胴体から、三本の長い首が伸びていた。
それぞれの先には、巨大な蛇のような頭がついている。
俺は《鑑定》した。
【デスヒドラ】
【三つの頭を持つ大型の魔物】
【三つの頭がそれぞれ独立して攻撃する】
「ヒドラか……」
三つの頭が、俺たちを別々に見つめている。
「右の頭は私を見てるね」
ルナが言った。
「左は私かな」
フェリシアも呟く。
そして、中央の頭は俺を見ていた。
「三つとも別々に動くみたいだね」
俺が言った直後だった。
シャアアアッ!
中央の頭が、俺に向かって飛びかかってきた。
俺は横へ跳んでかわした。
直後、右の頭がルナへ向かう。
「ルナ!」
「大丈夫!」
ルナは後ろへ跳びながら矢を放った。
矢が頭部に命中する。
だが、デスヒドラは動きを止めない。
さらに左の頭がフェリシアへ迫る。
その進路に、二つのオービットが飛び込んだ。
ドンッ!
魔弾を受けた頭が、大きく後ろへ反った。
俺は中央の頭が戻る隙に、胴体へ近づこうとした。
しかし。
シャアッ!
今度は右の頭が、横から俺へ向かってきた。
「おっと!」
俺は足を止め、すぐに後ろへ跳んだ。
そこへ中央の頭が再び襲いかかってくる。
三つの頭が、互いの隙を補っているんだ。
一つを避けても、別の頭が攻撃してくる。
これでは簡単に胴体へ近づけない。
「アレン、どうする?」
ルナが尋ねる。
「三つの頭を同時に止められたら、近づけそうなんだけど……」
「同時に?」
フェリシアがデスヒドラを見つめた。
それから、自分の周囲に浮かぶ四つのオービットへ目を向ける。
「……攻撃する回数を減らしても、できるかもしれない」
「何か考えがあるの?」
俺が尋ねると、フェリシアが頷いた。
「うん。オービットで三つの頭を別々の方向へ向かせてみる」
「なるほど。囮にするんだね」
「うん。魔弾は必要なときだけ撃つよ」
魔力を節約しながら、三つの頭を引き離す作戦か。
それなら俺も胴体へ近づけるかもしれない。
「ルナ、右の頭をお願いできる?」
「任せて!」
「フェリシアは左の頭を。中央は俺が引きつけるよ」
「うん!」
三人で頷き合った。
まず、ルナが右の頭へ矢を放った。
ヒュンッ!
矢が目元に命中する。
右の頭が大きく首を振り、ルナの方を向いた。
その隙にフェリシアがオービットを動かす。
二つの石が左の頭の左右へ分かれた。
ドンッ!
一発の魔弾が左の頭に命中する。
デスヒドラは攻撃したオービットへ顔を向けた。
フェリシアが石を移動させると、頭もそれを追っていく。
なるほど。
何度も魔弾を撃たなくても、オービットの位置を変えるだけで敵の注意を引けるんだ。
俺は中央の頭へ向かって駆け出した。
シャアアッ!
大きな口が開き、鋭い牙が迫る。
俺は横へかわした。
中央の頭が追いかけてくる。
もう一度、反対側へ跳ぶ。
その間に、ルナは右の頭を牽制し続けていた。
フェリシアも左の頭を引き離している。
だが、中央の頭を避けたところで、右の頭が俺へ向き直ろうとした。
「アレン、右!」
ルナが声を上げる。
俺はすぐに横へ跳んだ。
その直後、巨大な牙が地面に突き刺さる。
危なかった。
「ルナ、ありがとう!」
「うん!」
ルナは続けて矢を放ち、右の頭を再び自分の方へ向けさせた。
そのとき、フェリシアが声をかけてきた。
「アレン、準備できたよ!」
左の頭は、広間の端まで誘導されていた。
残る二つのオービットが、中央の頭の左右へ移動する。
「じゃあ、お願い!」
「うん!」
フェリシアが魔力を集中させた。
「そこ!」
ドンッ!ドンッ!
二つのオービットから放たれた魔弾が、中央の頭の左右に命中する。
大きな首が横へ流れた。
そこへ、ルナの矢が飛ぶ。
右の頭の目元に命中し、動きが止まった。
左の頭は、まだ離れた場所にいる。
今なら、三つの頭すべてが俺を狙えない。
「アレン!」
「うん!」
俺は地面を蹴った。
デスヒドラの懐へ飛び込む。
狙うのは、三本の首がつながる胴体の中心部。
さっき《鑑定》で確認した急所だ。
俺は竜爪剣を構え直した。
「はあっ!」
ザシュッ!
刃が深く食い込んだ。
デスヒドラの身体が大きく震える。
三つの頭が同時に持ち上がった。
そして、巨大な身体がゆっくりと傾く。
ドオォン!
広間に大きな音が響いた。
【7,500P獲得】
「やったー!」
ルナが弓を下ろした。
「うん。倒せたね」
俺も竜爪剣を引き抜いた。
フェリシアの方を見ると、彼女もほっとしたように笑っていた。
「フェリシア、大丈夫?」
「うん。でも、魔力はだいぶ減っちゃったかな」
「そっか。無理させちゃったね」
「ううん。大丈夫だよ。最後はあまり魔弾を撃たずに済んだし」
フェリシアは四つのオービットを手元へ戻した。
「それに、三人でうまく戦えたから」
「そうだね!」
ルナが笑った。
確かに、今回はルナの弓も大活躍だった。
フェリシアが魔弾を連射できなくても、二人の力を合わせれば強敵を倒せる。
「二人とも、ありがとう」
俺が言うと、ルナとフェリシアが微笑んだ。
俺はデスヒドラの身体を《収納》へしまった。
◇
そのときだった。
ゴゴゴゴ……。
「……あれ?」
ルナが広間の奥を見つめた。
岩壁の一部が、大きな音を立てながら動いている。
「何だろう?」
やがて、岩壁の奥から巨大な扉が現れた。
その扉が、ゆっくりと開き始める。
ゴゴゴゴ……。
扉の向こうには、暗い通路が続いていた。
「まだ先があるみたいだね」
俺が言うと、ルナが目を輝かせた。
「本当だ!もっと下に行けるのかな?」
「そうかもしれないね」
俺は《魔力感知》で扉の向こうを探った。
少し離れたところに、魔物の反応がある。
どうやら、このダンジョンは三十階層で終わりじゃないらしい。
「行ってみたいね!」
ルナが言った。
「うん。でも、今日はここまでにしようか」
俺は二人を見た。
「フェリシアの魔力も減ってるし、ずいぶん長い時間探索してるからね」
「うん。私もそろそろ休みたいかな」
フェリシアが頷いた。
「そっか!じゃあ、続きはまた今度だね!」
ルナも笑った。
ここまで怪我もなく進めたけど、無理をする必要はない。
魔力や体力を回復させてから、また来ればいいんだ。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん!」
◇
広間の片隅には、淡く光る転移石があった。
俺たちが近づくと、足元に光が広がる。
そして、次の瞬間。
周囲の景色が変わった。
「戻ってきたね!」
ルナが声を上げる。
俺たちはダンジョンの一階層に立っていた。
「じゃあ、外へ出ようか」
「うん!」
俺たちは出口へ向かった。
洞窟を抜けると、夕方の空が広がっていた。
「ふう。今日は結構歩いたね」
フェリシアが言った。
「うん。三十階層まで進めるとは思わなかったよ」
俺も頷く。
未踏だった二十六階層から先へ進み、群晶石の鉱脈を発見した。
そして、三十階層の階層主も討伐できた。
今日は本当にいろんなことがあったな。
「街に戻ったらギルドに報告しようか」
「うん!きっと驚くだろうね!」
ルナが嬉しそうに言う。
「群晶石もあるし、報告することがいっぱいだね」
フェリシアも頷いた。
そうだな。
アビスクラーケンの討伐依頼も達成しているし、ギルドには話すことがたくさんある。
「じゃあ、戻ったらゆっくり休もう」
「うん!」
テリーとステフも、元気に鳴いた。
「ワフ!」
「キュ!」
俺たちはミナリアへ向かって歩き出した。
【保有:244,320P】
【累計獲得P:701,530P】
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