第195話 青白い光
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
お手すきの際に是非!
https://ncode.syosetu.com/n5173mx/1からご覧いただけます。
二十六階層へ足を踏み入れた俺たちは、周囲を見回した。
「わあ……!」
ルナが声を上げる。
そこには、これまでの階層とは違う光景が広がっていた。
広い洞窟の壁や天井が、ところどころ青白く光っている。
「きれいだね!」
「うん。こんな場所があるんだね」
フェリシアも興味深そうに眺めている。
俺は《魔力感知》で周囲を探った。
すると、少し離れた場所に魔物の反応があった。
ただ、通路の先には何も見えない。
「……あれ?」
「どうしたの、アレン?」
ルナが聞いてきた。
「近くに魔物がいるみたいなんだけど、姿が見えないんだ」
「そうなの?」
「うん。ちょっと待ってね」
俺はもう一度《魔力感知》を使った。
反応は、俺たちの前方。
それも、少し高い位置にある。
もしかして……。
俺が天井へ目を向けたときだった。
「アレン、上!」
ルナが声を上げた。
ガラガラッ!
頭上から小石が降ってくる。
俺たちはすぐに後ろへ跳んだ。
直後、天井の岩の隙間から、長い身体を持つ魔物が現れた。
「うわっ! 大きなムカデ!」
ルナが驚く。
確かにムカデだ。
ただし、普通のムカデとは比べものにならないほど大きい。
身体は岩のような硬い甲殻で覆われ、たくさんの脚が並んでいる。
俺は《鑑定》した。
【ロックムカデ】
【硬い甲殻を持ち、岩壁や天井を移動する魔物】
「岩の上も歩けるんだね!」
フェリシアが見上げる。
「うん。上からの攻撃に気をつけよう」
ロックムカデは長い身体をくねらせながら、天井を這っている。
そして、突然こちらへ飛びかかってきた。
「来るよ!」
ルナが矢を放つ。
しかし、矢は甲殻に当たって弾かれた。
「あっ!」
魔物がルナへ迫る。
だが、その進路へ青白い光が飛び込んだ。
フェリシアのオービットだ。
「そこ!」
ドンッ!
《魔弾》が魔物の側面に命中し、身体が大きく傾いた。
ロックムカデは着地すると、素早く岩壁へ移動した。
そのまま壁を這い上がり、大きな岩柱の裏へと姿を消す。
「隠れちゃった!」
ルナが岩柱を見つめる。
俺からも姿は見えない。
でも、《魔力感知》には反応が残っていた。
「フェリシア、岩柱の反対側にいるよ」
「分かった!」
フェリシアが頷く。
二つのオービットが左右へ分かれ、岩柱の裏へ回り込んだ。
残りの二つは、フェリシアの周囲に浮かんでいる。
「……あっ!」
ルナが何かに気づいた。
「フェリシア!右に動くよ!」
「うん!」
フェリシアがオービットの位置を変える。
次の瞬間。
ドンッ!
岩柱の裏から、魔物の甲殻に魔弾が当たる音が響いた。
続いて、ロックムカデが身体を大きく曲げながら姿を現した。
「すごい!」
俺は思わず声を上げた。
「ルナ、どうして右に動くって分かったの?」
「風だよ!岩の向こうで空気が動いたの!」
「なるほど!」
それにしても、フェリシアもすごいな。
自分から見えない場所にあるオービットを動かして、正確に魔法を当てたんだ。
ロックムカデは再び天井へ逃げようとした。
だが、今度はフェリシアが先回りしていた。
頭上に移動したオービットから魔弾が放たれる。
ドンッ!
魔物は身体をよじり、隣の岩壁へ飛び移った。
そこへ、もう一つのオービットが回り込む。
ドンッ!
逃げようとするたびに、別の方向から魔法が飛んでくる。
ロックムカデは、ついに岩壁へ張りついたまま動きを止めた。
「アレン、あの甲殻の隙間を狙えるかな?」
フェリシアが尋ねた。
「うん。ちょっと見てみるね」
俺は《鑑定》で身体の構造を調べた。
硬い甲殻に覆われているけど、節と節の間には比較的柔らかい部分があるらしい。
「あそこなら、剣が通りそうだよ」
「分かった!」
フェリシアが二つのオービットを動かした。
魔弾が左右から命中し、ロックムカデの長い身体が大きく反る。
ちょうど、甲殻の継ぎ目が見えた。
「今だよ!」
「うん!」
俺は地面を蹴った。
岩壁から身体を離したロックムカデに向かって、竜爪剣を振り下ろす。
「はあっ!」
ザシュッ!
刃が甲殻の隙間に食い込んだ。
魔物は地面へ落下する。
さらに一撃。
ロックムカデは動かなくなった。
【2,100P獲得】
「やったー!」
ルナが嬉しそうに笑った。
「二千百Pか。いいね!」
俺は竜爪剣を下ろした。
それにしても、今回の戦い方は面白かったな。
俺の《魔力感知》で位置を確認し、ルナの《風読み》で動きを予測する。
そしてフェリシアが、見えない場所からオービットで攻撃する。
三人で協力すれば、こんなこともできるんだな。
◇
「ねえ、アレン!」
ルナが岩柱の向こうを指差した。
「あそこ、光ってない?」
「え?」
俺たちは岩柱の裏へ回った。
そこには、さっきの戦闘で崩れたらしい岩が散らばっていた。
ロックムカデが身体をぶつけたのか、岩壁の一部が大きく削れている。
その奥から、青白い光が漏れていた。
「……何だろう?」
フェリシアが近づく。
俺は露出した黒い石を《鑑定》した。
【群晶石】
「あっ!」
「どうしたの?」
「これ、群晶石だよ」
「えっ!?」
フェリシアが驚いた。
「オービットと同じ魔石?」
「うん。そうみたい」
「すごーい!」
ルナが目を輝かせる。
「こんなところにもあるんだ!」
十五階層では、スウォームロックを倒すことで手に入った群晶石。
それが、岩壁の中にも埋まっているんだな。
俺は周囲を《鑑定》してみた。
すると、削れた岩壁の奥にも、同じ表示が現れた。
【群晶石】
【群晶石】
「……ほかにもあるね」
「本当!?」
フェリシアが嬉しそうに聞き返す。
「うん。岩の中に埋まっているみたい」
ルナは、崩れた岩を見ながら首を傾げた。
「ねえ、アレン。さっきのムカデって、この岩の向こうから出てきたんじゃない?」
「そうなの?」
「うん。最初に上から小石が落ちてきたとき、こっちの方で音がしたから」
なるほど。
俺は岩の割れ目を覗き込んだ。
奥の方に、小さな隙間が続いている。
しかも、その先からも青白い光が漏れていた。
「……向こうにも空間があるみたいだね」
「行けるかな?」
ルナが聞いてくる。
「ちょっと調べてみようか」
俺は《魔力感知》で周囲を確認した。
近くに魔物の反応はない。
それから、割れ目の周囲を《鑑定》してみる。
大きな岩をいくつか取り除けば、通れそうだ。
「少し広げてみようか」
「うん!」
俺たちは崩れかけた岩を取り除いていった。
やがて、人が通れるほどの隙間ができた。
その向こうには、青白い光が広がっている。
「わあ……!」
ルナが息をのんだ。
「アレン、見て!」
◇
俺たちが岩の隙間を抜けると、そこには大きな空洞が広がっていた。
天井は高く、岩壁全体が青白く輝いている。
無数の小さな光が、壁一面に散らばっていた。
「きれい……」
フェリシアが呟く。
「うん。まるで星空みたいだね」
俺も思わず見入ってしまった。
こんな場所が、ダンジョンの中にあるんだな。
「ねえ、アレン」
ルナが壁を指差した。
「あれも群晶石なのかな?」
「ちょっと調べてみるね」
俺は《鑑定》した。
【群晶石】
さらに別の場所も確認する。
【群晶石】
【群晶石】
やっぱりそうだ。
「うん。ここにある黒い石は、どれも群晶石みたいだよ」
「すごーい!」
ルナが岩壁を見上げた。
「こんなにたくさんあるんだ!」
「本当だね」
フェリシアも驚いている。
十五階層では、スウォームロックのコアを倒して、ようやく一つ手に入った群晶石。
それが、この空洞には数えきれないほど埋まっている。
なるほど。
ギルドでほとんど採取された記録がないと聞いたけど、こんな深い階層にあるなら納得できるな。
「これなら、ギルドの人も喜んでくれそうだね」
俺が言うと、ルナが頷いた。
「うん!いっぱい持って帰ろう!」
「そうだね。でも、傷つけずに取れるかな?」
フェリシアが岩壁を見つめた。
「試してみようか」
俺は群晶石の位置を《鑑定》で確認し、周囲の岩を慎重に削った。
石そのものを傷つけないように、竜爪剣の刃を少しずつ入れていく。
やがて。
「……よし、取れた」
黒い魔石が、きれいな形で外れた。
「やったね!」
ルナが嬉しそうに言った。
「フェリシア、試してみる?」
「うん!」
フェリシアが群晶石を受け取り、魔力を流す。
石の内側の青白い光が強くなった。
そして、ふわりと浮き上がる。
「ちゃんと動くね!」
「うん。十五階層で手に入れたものと同じみたい」
フェリシアが微笑んだ。
「よかったね」
俺は頷いた。
どうやら、岩壁から採れる群晶石もオービットとして使えるらしい。
「じゃあ、ほかのも取ってみようか」
「うん!」
俺たちは採掘を続けた。
俺が《鑑定》で位置を確認し、周囲の岩を削る。
ルナは取り除いた岩を運び、フェリシアは外した群晶石に傷がないかを確かめてくれた。
ただ、思ったより時間がかかる。
岩の表面に近いものは取りやすいけど、奥深くに埋まっているものは、なかなか外れないんだ。
「これ、アレンの《鑑定》がなかったら大変だね」
フェリシアが言った。
「そうだね。群晶石まで傷つけちゃうかもしれないし」
「そもそも、壁の中にあるって分からないもんね!」
ルナが笑う。
確かにそうだ。
普通の冒険者だったら、こんな場所に来られたとしても、魔石だと気づかずに通り過ぎてしまうかもしれない。
俺たちは取り出しやすいものを中心に採掘を続けた。
そして、しばらくして数えてみると。
「十四個も取れたね!」
ルナが嬉しそうに言った。
「うん。結構集まったね」
俺は群晶石を並べた。
どれも黒い石の内側で、青白い光が揺れている。
「フェリシアのオービットも増やせるね!」
「そうだね」
フェリシアは群晶石を一つ手に取った。
「でも、今は四つをもっと使いこなせるようになりたいな」
「増やさなくていいの?」
「うん。まだ、四つでも試したいことがあるから」
「そっか!」
ルナが頷いた。
確かに、今の四つだけでも相当強力だ。
さっきのロックムカデとの戦いでも、自分から見えない場所に攻撃できていた。
フェリシアなら、これからさらにいろんな使い方を考えつきそうだ。
「じゃあ、採掘した分はギルドへ持っていこうか」
「うん!」
俺は十四個の群晶石を《収納》へしまった。
◇
採掘を終えた俺たちは、空洞を出て元の通路へ戻った。
「ねえ、アレン」
ルナが声をかけてきた。
「何?」
「私たち、すごいものを見つけたんじゃない?」
「そうだね。ギルドでもほとんど採取された記録がないって言ってたし」
「しかも、こんなにたくさん!」
ルナが嬉しそうに笑う。
「ギルドに報告したら、驚かれるかもしれないね」
フェリシアも言った。
「うん。研究も進むといいね」
魔力を通せる不思議な魔石。
フェリシアはオービットとして使っているけど、ほかにも使い道があるかもしれない。
そう考えると、今回の発見には大きな意味がありそうだ。
「それにしても、まだ二十六階層なんだよね」
俺が言うと、ルナが頷いた。
「うん! もっと下にも行けるのかな?」
「どうだろうね。ダンジョンがどこまで続いているのか、まだ誰も知らないみたいだし」
「じゃあ、私たちが調べてみようよ!」
「うん。せっかくここまで来たんだしね」
フェリシアも微笑んだ。
俺は《魔力感知》で周囲を探った。
通路の先には、まだ魔物の反応がある。
でも、今の俺たちなら問題なく進めそうだ。
「じゃあ、もう少し探索してみようか」
「うん!」
俺たちは通路の奥へ進んだ。
途中でまたロックムカデと遭遇したけど、三人で協力して倒すことができた。
さらに別の魔物も現れた。
俺はそのたびに竜爪剣を振るい、Pを獲得していく。
今日、二十六階層に入ってから獲得したPは、合計一万三千八百P。
未踏の階層は、Pを稼ぐにもいい場所みたいだな。
そして、しばらく進んだところで。
「あっ!」
ルナが前方を指差した。
「アレン! また階段があるよ!」
視線の先には、さらに下へ続く石段があった。
「二十七階層だね」
フェリシアが言った。
「うん」
俺は階段の先を見つめた。
この先には、どんな魔物がいるんだろう。
それに、また新しいものが見つかるかもしれない。
「行ってみようか」
「うん!」
「そうだね!」
三人で階段へ向かった。
テリーとステフも、元気についてくる。
「ワフ!」
「キュ!」
俺たちは、さらに深い階層へと足を踏み入れた。
【保有:194,930P】
【累計獲得P:652,140P】
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!




