第194話 未踏の階層へ
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
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十五階層でオービットを手に入れた俺たちは、十六階層へ向かおうとしていた。
そのとき。
「あっ、アレン!」
ルナが湖の奥を指差した。
「あそこにもいるよ!」
目を向けると、大きな岩の塊がゆっくりと動いていた。
スウォームロックだ。
「本当だね」
俺は《魔力感知》で中心部を探った。
強い魔力の反応が一つ。
今回もコアがあるらしい。
「また群晶石が手に入るかもしれないね」
フェリシアが嬉しそうに言った。
「うん。行ってみようか」
俺たちが近づくと、スウォームロックが周囲の小さな岩の魔物を集め始めた。
だが、もう攻略方法は分かっている。
「ルナ、コアはお願いね!」
「任せて!」
フェリシアが《魔弾》で集合体の身体を崩す。
俺は飛び出してきた小型のスウォームロックを斬り倒していった。
【30P獲得】
【30P獲得】
【30P獲得】
小さな魔物だけど、倒せばちゃんとPになる。
俺はコアを守る岩を斬り崩した。
「ルナ!」
「うん!」
ルナの矢が飛ぶ。
バキッ!
コアが砕けると、巨大な身体が一斉に崩れ落ちた。
「やったね!」
ルナが嬉しそうに笑う。
俺は崩れた岩の中から群晶石を拾い上げた。
「これで三つだね」
「うん!」
フェリシアが新しい群晶石を受け取る。
早速、魔力を通してみると、三つのオービットが宙に浮かび、それぞれ別の方向へ動き始めた。
「すごいね!三つでもできるんだ!」
「うん。まだ余裕がありそう」
フェリシアが笑った。
その後、もう一体のスウォームロックとも遭遇した。
俺たちは同じ方法で集合体を崩し、最後はルナがコアを射抜いた。
これで四つ目の群晶石だ。
その間に、俺が倒した小型のスウォームロックは合計十二体。
三百六十Pを獲得できた。
「これなら、四つ同時に使えるかな?」
フェリシアが群晶石を並べた。
「試してみようよ!」
ルナが楽しそうに言う。
「うん!」
フェリシアが魔力を流すと、四つの群晶石が一斉に浮かび上がった。
「おおっ!」
俺は思わず声を上げた。
一つは右へ。
もう一つは左へ。
さらに一つは頭上へ、残りの一つはフェリシアの背後へ移動する。
「すごーい!」
ルナが目を輝かせた。
「四つとも別々に動いてる!」
「うん。これくらいなら問題なさそうだね」
フェリシアが嬉しそうに笑う。
俺には一つ動かすことすらできなかったのに。
やっぱり、フェリシアの魔力操作はすごいな。
「じゃあ、次の魔物が出たら試してみようか」
「うん!」
フェリシアは四つのオービットを《収納》へしまった。
◇
十六階層へ下りると、すぐに魔物の気配を感じた。
それも、一体や二体じゃない。
「……結構いるね」
俺は《魔力感知》で周囲を探る。
通路の奥から、いくつもの反応が近づいてきていた。
やがて姿を現したのは、青黒い鱗に覆われた四足の魔物だった。
【ブルースケイルハウンド】
【群れで行動する魔物】
【討伐獲得P:650P】
「八体いるね」
フェリシアが言った。
「うん。じゃあ、お願いできる?」
「任せて!」
フェリシアが《収納》から四つのオービットを取り出す。
青白い光を放つ石が、一斉に宙へ浮かんだ。
そして、魔物の周囲へ飛んでいく。
正面。
背後。
右側。
左側。
「いけ!オービット!」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
四方向から《魔弾》が放たれた。
魔物たちは突然の攻撃に驚き、足を止める。
さらにフェリシア自身も《魔弾》を放った。
ドンッ!
「すごーい!」
ルナが歓声を上げた。
「どこからでも攻撃できるんだね!」
確かに、これはすごい。
前後左右から魔法が飛んでくるんだから、敵はどちらを向いていいか分からないだろう。
「アレン、今だよ!」
「うん!」
フェリシアが魔物の足元を狙い、動きを鈍らせる。
俺は竜爪剣を構えて駆け出した。
一体。
【650P獲得】
二体。
【650P獲得】
ルナの矢とオービットの援護を受けながら、さらに三体、四体と仕留めていく。
八体すべてを倒したところで、ようやく通路が静かになった。
五千二百P。
いい稼ぎだ。
「やったね!」
ルナが嬉しそうに笑う。
「うん。それにしても、フェリシアのオービットはすごいね」
「そうかな?」
「攻撃できる方向が全然違うよ」
フェリシアは四つのオービットを手元へ戻した。
「まだいろいろできそうだね」
そう言って嬉しそうに笑う。
俺も楽しみになってきたぞ。
◇
その後も、魔物との遭遇が続いた。
十七階層では、硬い甲殻を持つストーンビートルが現れた。
【ストーンビートル】
【討伐獲得P:720P】
甲殻は硬いけど、腹部は比較的柔らかい。
フェリシアがオービットを背後へ回り込ませ、魔弾で体勢を崩す。
そこへ俺が踏み込み、露出した腹部へ竜爪剣を突き立てた。
【720P獲得】
さらに別の群れも現れたが、ルナとフェリシアの援護で次々と撃破。
この階層では合計八体を倒し、五千七百六十Pを獲得した。
十八階層では、鋭い棘の生えたスパイクテイルが次々と襲ってきた。
【スパイクテイル】
【討伐獲得P:850P】
ルナが矢で牽制し、フェリシアのオービットが左右から魔弾を放つ。
俺は体勢を崩した魔物を次々と仕留めた。
ここでも八体を討伐。
六千八百Pを獲得した。
そして十九階層。
【アイアンホーン】
【討伐獲得P:1,000P】
大きな角を持つ魔物が、勢いよく突進してくる。
だが、ルナの矢が進路を変えさせ、フェリシアの魔弾が足を止める。
俺は隙のできた魔物へ斬りかかった。
【1,000P獲得】
その後も何度か戦闘を繰り返し、七体を討伐。
七千Pを獲得した。
「それにしても、魔物が増えてきたね」
フェリシアが言った。
「うん。十六階層から明らかに多くなってるよね」
ルナも頷いた。
確かに、以前の階層とは違う。
一つの群れを倒して少し進むと、もう次の魔物が現れる。
しかも、階層が深くなるほど強くなっている。
「普通の冒険者だったら、大変そうだね」
「そうだね」
俺も頷く。
戦闘の回数が増えれば、体力も魔力も消耗する。
怪我をする可能性だって高くなるだろう。
でも、俺たちはほとんど無傷だった。
フェリシアのオービットもあるし、ルナの弓も頼りになる。
俺としては、Pがたくさん稼げるのもありがたい。
◇
そして、二十階層。
階段を下りると、大きな地下湖が広がっていた。
「わあ……!」
ルナが声を上げる。
湖の中央付近では、水面がゆっくりと盛り上がっていた。
何か、大きなものがいる。
俺は《魔力感知》で湖の中を探った。
強い魔力の反応がある。
「……いたね」
「階層主?」
「たぶん」
そう答えた直後だった。
ザバアッ!
巨大な触腕が水面から飛び出した。
一本。
二本。
さらに三本、四本。
水しぶきとともに、巨大なイカのような魔物が姿を現す。
「うわっ! 大きい!」
ルナが驚いた。
俺はすぐに《鑑定》した。
【アビスクラーケン】
【ミナリア西ダンジョン第二十階層の階層主】
【複数の触手で獲物を捕らえる大型魔物】
これは大きいな。
しかも、今回はただ倒せばいいわけじゃない。
依頼には墨袋を傷つけずに回収するという条件がある。
俺は続けて《鑑定》を使い、身体の内部を詳しく調べた。
すると、胴体の後方にある墨袋の位置が分かった。
なるほど。
あの部分を避けて攻撃すればいいんだな。
「フェリシア!」
「何?」
「墨袋は胴体の後ろ側にあるみたい。そこには攻撃を当てないようにしたいんだ」
「分かった。じゃあ、触手を狙うね」
「お願い!」
「ルナも、触手を牽制してくれる?」
「任せて!」
ザバンッ!
巨大な触手が、俺たちに向かって振り下ろされた。
俺は横へ跳んでかわす。
ドゴォン!
地面が大きく砕けた。
「すごい力だね!」
ルナが声を上げた。
「うん。まともに受けたら危ないよ」
さらに二本の触手が、左右から俺を挟み込もうとする。
俺は後ろへ跳んだ。
直後、二本の触手が勢いよくぶつかり合う。
すごいな。
でも、動きは見えている。
ルナが矢を放ち、一本の触手を牽制した。
フェリシアは四つのオービットを取り出す。
青白い光を放つ石が、アビスクラーケンの周囲へ飛んでいった。
「いけ!オービット!」
四方向から《魔弾》が放たれた。
それぞれが別の触腕に命中し、動きを止める。
さらにフェリシア自身も《魔弾》を放つ。
ドンッ!
アビスクラーケンが身体をのけぞらせた。
「すごーい!」
ルナが歓声を上げる。
「でも、強く撃ちすぎないようにしないと」
フェリシアはオービットの位置を変えた。
今度は、触手の先端に近い部分を狙っている。
ドンッ! ドンッ!
攻撃の威力も、さっきより抑えられていた。
墨袋を傷つけないようにしているんだろう。
しかも、四つのオービットを別々に動かし、それぞれ違う場所を狙っている。
……とんでもないな。
アビスクラーケンは触手を振り回して抵抗する。
だが、フェリシアはオービットを上下左右へ飛ばし、その動きに合わせて攻撃する位置を変えていった。
俺やルナに触手が届きそうになると、すぐに別のオービットが回り込む。
まるで、四人も五人もフェリシアがいるみたいだ。
「アレン、今ならいけるよ!」
「うん!」
俺は地面を蹴った。
触手の一本が、進路を塞ごうとする。
しかし、ルナの矢がその先端に突き刺さり、動きが鈍った。
その隙に俺は触手の間を抜け、頭部へ近づく。
墨袋の位置は確認済みだ。
そこを避け、急所へ竜爪剣を突き立てた。
「はあっ!」
ザシュッ!
巨大な身体が大きく震える。
そして。
ザバアッ!
アビスクラーケンが水面に倒れ込んだ。
【4,000P獲得】
「やったー!」
ルナが飛び跳ねた。
「やったね、アレン!」
フェリシアも嬉しそうに笑う。
「うん。二人のおかげだよ」
それにしても、二十階層の階層主だったのに、思ったよりあっさり倒せたな。
いや、フェリシアのオービットが強すぎるのかもしれない。
俺は念のため、もう一度《鑑定》で墨袋を確認した。
傷はついていない。
よし。
これなら依頼も達成できそうだ。
俺はアビスクラーケンの身体を《収納》へしまった。
◇
二十階層を後にしようとしたところで、ルナが声をかけてきた。
「ねえ、アレン」
「何?」
「ちょっと聞いてもいい?」
「うん」
ルナは少しだけ言いにくそうな顔をした。
「最近、ちゃんと眠れてる?」
……ああ。
ルナが何を心配しているのか、すぐに分かった。
「うん。大丈夫だよ」
俺は笑って答えた。
「本当?」
「うん。こうして二人と冒険していると、楽しいからね」
こうして新しいダンジョンを探索していると、楽しい。
「そっか……」
ルナが少し安心したように笑う。
「でも、無理しないでね」
「うん。ありがとう」
「辛かったら遠慮しないで言ってね」
フェリシアも優しく言った。
「分かったよ」
俺は二人に頷いた。
本当に、いい仲間に恵まれたな。
◇
二十一階層へ進むと、さらに魔物の数が増えた。
「またいるよ!」
ルナが声を上げる。
今度は、岩のような硬い皮膚を持つ魔物だった。
【グレイストーカー】
動きが速く、こちらを囲もうとしてくる。
だが、フェリシアのオービットが先回りした。
「オービット!」
四方向から放たれた魔弾が、魔物たちの進路を塞ぐ。
そこへ俺が踏み込んだ。
【1,050P獲得】
【1,050P獲得】
さらに三体。
最初の群れを倒し終えると、今度は通路の向こうから二体が現れた。
それも、ルナとフェリシアの援護を受けながら倒していく。
この階層では合計七体。
七千三百五十Pを獲得した。
◇
その後も何度か戦闘して二十二階層まで来た。
通路の奥から新たな二体が現れた。
「たくさんいるね!」
ルナが笑った。
「うん。でも、Pを稼げるからありがたいよ」
二体も問題なく倒した。
それにしても、魔物の数が本当に多い。
でも、三人で協力していれば、今のところ危険を感じる場面はほとんどなかった。
その後も階層を進めていく。
階層が深くなるほど魔物は強くなっている。
しかも、次から次へと現れる。
普通の冒険者なら、そろそろ引き返したくなるところかもしれない。
でも、俺たちはまだほとんど疲れていなかった。
◇
そして、二十五階層。
階段を下りた瞬間、俺は思わず足を止めた。
「……多いな」
《魔力感知》に、いくつもの反応があった。
これまでの階層より、さらに魔物が密集している。
「またいっぱいいるの?」
ルナが聞いてきた。
「うん。すぐ近くにもいるよ」
やがて、通路の奥から大きな魔物が現れた。
【グランドホーン】
太い四肢と巨大な角を持つ魔物だ。
しかも、一体だけじゃない。
三体が並んで、こちらへ突進してきた。
「来るよ!」
ルナが弓を構える。
「うん!」
フェリシアの四つのオービットが、魔物の周囲へ飛んでいった。
左右から《魔弾》が命中する。
魔物の突進が乱れたところへ、ルナの矢が飛ぶ。
俺は一気に踏み込んだ。
【1,600P獲得】
【1,600P獲得】
さらに一体。
最初の三体を倒し終えたところで、今度は二体のグランドホーンが現れた。
「また来たね!」
ルナが笑う。
「うん。休む暇もないね」
俺も笑って答えた。
フェリシアがオービットで動きを封じ、俺は二体を仕留めた。
その後も通路の奥から二体が現れたけど、問題なく倒すことができた。
「ふう……」
俺は竜爪剣を下ろした。
「それにしても、すごい数だったね」
フェリシアが言った。
「うん。十六階層から明らかに魔物が増えてるよね」
ルナも頷いた。
ここまで何度も戦闘を繰り返してきた。
しかも、階層が深くなるほど魔物は強くなり、数も増えている。
「普通の冒険者だったら、ここまで来るだけでも大変そうだね」
フェリシアが言った。
「うん。魔力も体力も、かなり使うと思う」
俺も頷く。
「二十階層には、あのアビスクラーケンもいたしね」
「そうだね!」
ルナが言った。
「あんな大きな魔物を倒して、さらにここまで来るんだもん。普通はすごく大変だよね!」
確かにそうだ。
十六階層から魔物の数が増え、二十階層には強力な階層主がいる。
それを突破したあとも、休む暇がないほど魔物が現れる。
普通の冒険者なら、体力や魔力が尽きてしまってもおかしくない。
怪我をすることもあるだろう。
でも、俺たちはここまで、ほとんど無傷だった。
「……私たち、結構すごいことしてるのかもね」
フェリシアが言った。
「うん!」
ルナが笑う。
「アレンも強いし、フェリシアのオービットもすごいもん!」
「ルナの弓もね」
「えへへ!」
ルナが嬉しそうに笑った。
俺も二人につられて笑う。
ギルドで聞いた、二十五階層までしか到達した記録がないという話。
今なら、その理由が少し分かる気がした。
◇
それから、俺たちは階層の奥へと進んだ。
《魔力感知》で魔物の位置を確認しながら、階段を探していく。
そして。
「あっ!」
ルナが前方を指差した。
「階段があるよ!」
視線の先には、下へ続く石段があった。
俺たちは顔を見合わせる。
「ここを下りたら、二十六階層だよね?」
フェリシアが聞いた。
「うん。そのはずだよ」
「誰も行ったことがないんだよね?」
ルナが少し興奮した様子で言う。
「少なくとも、ギルドには到達した記録がないらしいね」
俺は階段の先を見つめた。
暗くて、下の様子はよく見えない。
でも、何だかわくわくするな。
「行ってみようか」
「うん!」
「そうだね!」
三人で階段を下りていく。
テリーとステフも、俺たちについてきた。
「ワフ!」
「キュ!」
やがて、階段の先に新しい空間が見えてきた。
俺たちは足を止める。
ここが、二十六階層。
ギルドに記録のない、未知の場所だ。
いったい、何が待っているんだろう。
【保有:181,130P】
【累計獲得P:638,340P】
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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