第192話 十五階層の成果
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
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ダンジョンを出た俺たちは、そのままミナリアの冒険者ギルドへ向かった。
「今日はいっぱい進んだね!」
ルナが嬉しそうに言った。
「うん。十五階層まで行けるとは思わなかったよ」
「珍しい魔物もたくさんいたね」
フェリシアが笑う。
確かにそうだ。
ルミナタートルにロックミミック。それから、小さな魔物が集まって巨大な身体を作るスウォームロック。
ミナリア西ダンジョンには、まだまだ知らない魔物がいるらしい。
「それに、素材もたくさんあるね!」
「そうだね」
俺は《収納》の中身を思い浮かべた。
……結構な量だな。
全部取り出したら、かなりの場所を取りそうだ。
◇
ギルドへ入ると、受付の女性がこちらに気づいた。
「あっ、皆さん。お帰りなさい!」
「ただいま」
「ダンジョンはいかがでしたか?」
「面白かったよ!」
ルナが元気よく答える。
「それはよかったです。ちなみに、何階層まで進まれたんですか?」
「十五階層までだよ」
「十五階層……?」
女性は一瞬、手を止めた。
「今日が初めての探索でしたよね?」
「はい」
「それで十五階層まで!?」
目を丸くした女性は、俺たちの冒険者証へ視線を落とした。
「ああ、でも……さすがSクラスのアレンさんと、Aクラスのお二人ですね!」
そう言って笑う。
「普通の冒険者でしたら、初日で十五階層まで進むなんて考えられませんよ」
「そうなの?」
ルナが首を傾げる。
「もちろんです!」
女性が力強く頷いた。
まあ、普通は魔物を倒すのにも時間がかかるだろうし、仕方ないのかもしれない。
「それで、依頼の達成報告をお願いしたいんですけど」
「承知しました。まずは探索結果を確認させてください」
俺たちは、到達した階層と遭遇した魔物について簡単に説明した。
十一階層の水位の変化や、十三階層で群れになって襲ってきたリバーラプターのことも伝える。
「そんな魔物がいるんですね……」
女性が熱心に記録を取っていった。
◇
「あ、それから」
俺は受付の女性へ声をかけた。
「倒した魔物も買い取ってもらいたいんですけど」
「はい。もちろんです」
「数が多いし、大きな魔物もいるから、解体場で取り出してもいいですか?」
「わかりました」
女性が頷いた。
「それでは、奥の解体場へご案内しますね」
「ありがとうございます」
俺たちは女性の後について、ギルドの奥へ向かった。
◇
解体場には、大きな作業台がいくつも並んでいた。
職員たちが魔物の解体や、素材の仕分けをしている。
「こちらでお願いします」
受付の女性が、解体担当の男性へ声をかけた。
「魔物の買取をご希望です。量が多いそうなので、場所を空けていただけますか?」
「分かりました」
男性が俺を見る。
「どのくらいありますか?」
「結構あります」
「それでしたら、まずはこちらへお願いします」
俺は案内された広い場所で《収納》を使った。
まずは比較的小さな魔物から。
一体。
二体。
三体。
アーマークラブにリバーラプター。それから、ロックミミック。
次々と魔物を取り出していく。
「……あの」
男性が声をかけてきた。
「はい?」
「これ、全部今日の獲物ですか?」
「ええ」
「……そうですか」
男性は床に並んだ魔物を見回した。
「まだあります?」
「はい。あと大きいのが一体」
「大きいの?」
「結構大きいから、もう少し場所を空けてもらえますか?」
「……少々お待ちください」
男性が近くの職員へ声をかけた。
何人かが作業を止め、場所を空けてくれる。
「これで大丈夫でしょうか?」
「はい。ありがとうございます」
俺は《収納》を開いた。
ドサッ!
巨大なタイドサーペントが姿を現した。
「うわっ!?」
職員の一人が飛び上がった。
「な、何ですか、これ!?」
「十階層にいた魔物です」
「タイドサーペント……ですか?」
担当の男性が長い身体を見つめる。
「これを丸ごと持ち帰ったんですか?」
「はい。《収納》があるので」
「……なるほど」
男性はしばらく黙っていた。
そして、受付の女性に顔を向ける。
「すみません。応援をお願いできますか?」
「は、はい!」
女性が慌てて奥へ向かう。
「みんな驚いてるね!」
ルナが楽しそうに笑った。
「これだけ大きい魔物だからね」
フェリシアも笑っている。
俺は残りの魔物も取り出した。
これで全部だ。
◇
しばらくすると、解体場に何人もの職員が集まってきた。
魔物の種類と数を確認しながら、次々と記録を取っていく。
「いやあ、すごいですね……」
担当の男性が感心したように言った。
「Sクラスの方だというのは伺っていますが、これほどの量を一度に持ち帰る方は、そうそういませんよ」
「そうなんですね」
「普通は、運ぶだけでも大仕事ですからね」
確かに全部運ぶのは大変そうだ。
良いスキルを持てて良かった。
「それで、買取金額はいつ頃分かりますか?」
「これだけの量ですので、本日中の解体と査定は難しいですね」
「そうですよね」
「明日には通常素材の金額をご案内できると思います」
「わかりました」
急いでいるわけでもないし、明日で問題ない。
「あと、これも見てもらえますか?」
俺は《収納》から小さな石を取り出した。
黒い表面の内側で、青白い光がゆっくりと揺れている。
「これは?」
「十五階層で手に入れた魔石です。群晶石っていうらしいのですが」
「群晶石……」
男性が石を受け取った。
「……少々お待ちください」
男性は、近くにいた別の職員を呼んだ。
二人で小声で話しながら、石を確かめている。
「何だろう?」
ルナが俺の袖を引く。
「分からないけど、珍しいものなのかもしれないね」
やがて、男性が戻ってきた。
「申し訳ありません。こちらは少し詳しい確認が必要になりそうです」
「そうですか」
「通常の素材とは別に、お調べしてもよろしいでしょうか?」
「はい。ただ、売るかどうかは値段を聞いてから決めたいんだけど、良いですか?」
「もちろんです。まずはお預かりして確認いたします」
「ありがとうございます」
俺は群晶石を預けた。
いったい、どれくらい珍しい魔石なんだろう。
ちょっと楽しみだな。
◇
解体場を出たところで、ルナが俺の袖を引いた。
「ねえ、アレン」
「どうしたの?」
「あの亀のことなんだけど……」
「ああ、ルミナタートル?」
「うん」
ルナが少し心配そうな顔をした。
「あの子のこと、ギルドに教えちゃうの?」
俺は足を止めた。
十二階層で出会った、大きな亀。
背中にはルミナフィッシュが集まり、身体についた藻を食べていた。
俺たちが魚を守ると、まるでお礼を言うように頭を下げてくれた。
「……どうしようか」
「あの子、人を襲ってこなかったよね?」
「うん」
「でも、場所が分かったら、倒しに行く冒険者もいるかもしれないでしょ?」
確かに、そういう人もいるだろう。
珍しい魔物なら、素材目当てで探す冒険者がいてもおかしくない。
「それは嫌だな……」
ルナが小さく呟いた。
すると、フェリシアが口を開いた。
「でも、危険な場所のことは伝えておいた方がいいんじゃないかな?」
「そうだね」
俺も頷いた。
十一階層には、水位が変わる通路があった。
知らずに進めば、危険な目に遭うかもしれない。
「じゃあ、どうする?」
ルナが聞いてきた。
俺は少し考えた。
「危険な場所のことはちゃんと伝えよう。それから、ルミナタートルの詳しい場所は、むやみに広めないでもらえるか相談してみようか」
「本当!?」
「うん。ギルドにも情報の扱い方があるだろうしね」
「それがいいと思う!」
ルナの顔が明るくなった。
◇
受付へ戻ると、先ほどの女性が書類を整理していた。
「あっ、皆さん。お預かりは終わりましたか?」
「はい」
「それでは、依頼の達成手続きをいたしますね」
女性が書類を確認する。
「今回のダンジョン探索依頼、達成です」
その瞬間。
【依頼達成を確認しました】
【100P獲得】
よし!
また100P増えた。
魔物の討伐でもPを稼げたし、依頼達成でもPがもらえる。
やっぱり、冒険者の仕事はいいな。
「報酬は十八万ジェニーになります」
「ありがとうございます」
俺は報酬を受け取った。
「三人で六万ジェニーずつだね」
フェリシアが言った。
「うん」
「やった!」
ルナが嬉しそうに笑う。
「美味しいもの食べに行こうよ!」
「もう食べること考えてるの?」
フェリシアが笑った。
「だって、いっぱい動いたんだもん!」
「確かにお腹は空いたね」
俺も笑った。
これとは別に、明日は素材の買取金額も分かる。
今日の探索は、なかなか実りの多いものになったな。
◇
「あ、それから、もう一つ相談したいことがあるんですけど」
俺は受付の女性へ声をかけた。
「はい。何でしょう?」
「ダンジョンで見つけた珍しい魔物の情報って、どこまで公開されますか?」
「珍しい魔物、ですか?」
「ええ。俺たちには襲いかかってこなかった魔物なんだけど」
女性が少し考えた。
「内容によりますね。危険な魔物なら注意喚起が必要ですし、珍しい魔物については、ギルド内で確認してから扱いを決める場合もあります」
「そうですか」
「何か見つけられたんですか?」
「はい。十二階層で、大きな亀の魔物に会いました」
「亀の魔物ですか?」
「ルミナタートルっていうんだけど、周りに小さな魚がたくさんいたんです」
俺は、ルミナフィッシュと一緒に暮らしている様子や、魚を襲った魔物を倒したことを説明した。
「そんな魔物がいるんですね……」
女性が興味深そうに聞いている。
「ただ、その亀の詳しい生息場所は、むやみに広めてほしくないんです」
「それは、どうしてでしょう?」
「珍しい魔物だと分かったら、討伐しようとする人がいるかもしれないから」
俺は続けた。
「俺たちに敵意はなかったし、できれば静かに暮らしていてほしいんです」
女性は少し考えてから頷いた。
「分かりました。すぐに一般公開することはせず、まずはギルド内で確認しますね」
「お願いします」
「ただ、ほかの冒険者に危険が及ぶ可能性があれば、注意喚起が必要になるかもしれません」
「はい。それはもちろんです」
俺たちに襲いかかってこなかったからといって、ほかの人にも安全とは限らない。
そこはギルドに判断してもらおう。
それから、十一階層の水位変化について、詳しい位置と危険な時間帯を伝えた。
これで少しでも事故が減るといいな。
◇
ギルドを出ると、空は夕方の色に変わり始めていた。
「よかったね、アレン!」
ルナが嬉しそうに言った。
「亀のこと?」
「うん! ちゃんとお願いできたもんね!」
「そうだね」
俺も少し安心した。
もちろん、これですべて解決したわけじゃない。
でも、何もしないよりはよかったと思う。
「それにしても、今日はすごい量だったね」
フェリシアが笑った。
「素材のこと?」
「うん。解体場の人、びっくりしてたよ」
「確かにね」
「明日の買取金額、楽しみだね!」
ルナが目を輝かせる。
「うん。群晶石のことも気になるしね」
あの魔石を見たとき、解体場の人たちは何かを確かめていた。
ただ珍しいだけなのか、それとも別の理由があるのか。
明日になれば、何か分かるかもしれない。
「ねえ、アレン!」
「何?」
「お腹空いた!」
「じゃあ、何か食べに行こうか」
「やった!」
ルナが元気よく歩き出す。
テリーもその後を追った。
「ワフ!」
「キュ!」
ステフも嬉しそうに鳴いた。
今日の依頼で、Pもジェニーも増えた。
そして明日には、素材の買取結果が分かる。
ダンジョン探索は、まだまだ楽しめそうだな。
【保有:107,210P】
【累計獲得P:564,420P】
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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