第189話 群れで戦う魔物
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
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十三階層へ下りると、目の前には岩だらけの洞窟が広がっていた。
大小さまざまな岩の間を、何本もの水路が流れている。
水の流れる音が、あちこちから聞こえてきた。
「今度は岩だらけだね!」
ルナが辺りを見回す。
「水路も多いね。足元に気をつけよう」
フェリシアが言った。
俺は《魔力感知》を使った。
「……あ、いるね」
「魔物?」
「うん。前の方に五体いる」
「どんな魔物かな?」
「行ってみようか」
「うん!」
俺たちは岩場を進んだ。
しばらくすると、大きな岩の陰から何かが現れた。
青緑色の鱗。
細長い身体。
鋭い爪と長い尾。
大きなトカゲのような魔物だった。
「六階層にも似た魔物がいたよね?」
ルナが言った。
「シーリザードだね。でも、少し違うみたい」
フェリシアが答える。
俺は《鑑定》を使った。
「《鑑定》」
【リバーラプター】
【水辺に生息するトカゲ型の魔物】
【素早い動きと鋭い爪で獲物を襲う】
【鳴き声で仲間を呼び、群れで狩りを行う】
「リバーラプターっていう魔物みたいだよ」
「リバーラプター?」
「うん。群れで狩りをするらしい」
「じゃあ、みんなで襲ってくるんだね!」
ルナが弓を構えた。
そのとき、一体がこちらに気づいた。
「ギャアッ!」
甲高い鳴き声を上げ、岩場を蹴って飛びかかってくる。
「おっと」
俺は横へ身体をずらした。
鋭い爪が目の前を通り過ぎる。
そのまま竜爪剣を振り抜いた。
ザシュッ!
【520P獲得】
リバーラプターが地面へ倒れた。
「早いね!」
ルナが笑う。
「うん。でも、まだ四体いるよ」
俺は《魔力感知》で周囲を確認した。
すると、突然。
「ギャアアッ!」
残る一体が、甲高い鳴き声を上げた。
直後、《魔力感知》に新しい反応が現れる。
一体。
二体。
三体。
さらに増えていく。
「……あれ?」
「どうしたの?」
フェリシアが聞いた。
「魔物が増えてる」
「えっ?」
「今の鳴き声で仲間を呼んだみたい」
水路の向こうから、何体ものリバーラプターが姿を現した。
岩の上にもいる。
後ろへ回り込もうとしている個体もいた。
「いっぱい来たね!」
ルナが驚いた顔をする。
「うん。十体以上いるみたいだ」
俺は周囲を見回した。
岩の陰が多いうえに、水路も入り組んでいる。
魔物たちは、そこを利用して俺たちを取り囲もうとしているらしい。
「アレン」
フェリシアが声をかけてきた。
「少し下がろう」
「下がる?」
「うん。あそこの岩壁の前がよさそう」
フェリシアが指差した先には、大きな岩壁があった。
その手前には、幅の狭い岩の道が続いている。
左右には水路があるけど、岩壁の近くでは岸が高くなっていた。
「正面から来る魔物が多くなりそうだね」
「うん。でも、水路からも来ると思う」
フェリシアが頷いた。
「だから、アレンは正面をお願い。私とルナで左右を見ておくね」
「なるほど。それなら戦いやすそうだね」
「うん!」
ルナも頷いた。
「じゃあ、移動しようか」
◇
俺たちは岩壁の前まで移動した。
テリーも俺たちの後をついてくる。
「ワフ!」
ステフは頭上を飛んでいた。
「キュ!」
ここなら後ろは岩壁だ。
正面には狭い岩の道があり、左右の水路からも魔物が来る可能性がある。
でも、開けた場所で囲まれるより、ずっと戦いやすい。
「アレン、正面から三体!」
フェリシアが声を上げた。
「分かった!」
俺は竜爪剣を構えた。
リバーラプターたちが岩の道を走ってくる。
「ギャアアッ!」
先頭の一体が大きく跳び上がった。
俺は一歩踏み込んだ。
ザンッ!
【520P獲得】
リバーラプターが地面へ倒れる。
二体目が、その横を抜けようとする。
シュッ!
ルナの矢が頭部を射抜いた。
「よし!」
三体目は、岩の上へ跳び上がった。
「《魔弾》!」
ドンッ!
フェリシアの魔弾が命中する。
魔物はそのまま地面へ落ちた。
「すごいね!」
ルナが声を上げた。
「でも、まだ来るよ!」
フェリシアが水路へ目を向ける。
バシャッ!
右側の水路から、二体のリバーラプターが飛び出してきた。
高い岸に爪を引っかけ、岩場へ登ろうとしている。
「ルナ、右をお願い!」
「うん!」
シュッ!
一体目をルナの矢が射抜いた。
もう一体は素早く身体をひねり、矢を避ける。
そして、岩場へ跳び上がった。
「《魔弾》!」
ドンッ!
フェリシアの魔弾が直撃した。
リバーラプターが水路へ落ちていく。
「やった!」
ルナが嬉しそうに笑った。
そのときだった。
「ギャアッ! ギャアッ!」
正面にいた数体のリバーラプターが、一斉に鳴き始めた。
でも、なかなか近づいてこない。
「……あれ?」
俺は首を傾げた。
さっきまでは、あんなに勢いよく襲ってきたのに。
「どうしたんだろう?」
すると、フェリシアが左側の水路を見た。
「……もしかして」
「何か分かった?」
「正面の魔物たちは、私たちの注意を引こうとしてるんじゃないかな?」
「注意を?」
「うん。その間に、別の魔物が横から近づこうとしてるのかも」
なるほど。
群れで狩りをするというのは、こういうことなのか。
俺は《魔力感知》で周囲を確認した。
「……本当だ」
「えっ?」
「左側の水路に、三体いる」
どうやらフェリシアの言うとおりらしい。
「じゃあ、どうしよう?」
ルナが聞いた。
「正面はアレンに任せて、私とルナで左側を迎え撃とう」
「分かった!」
「俺も大丈夫だよ」
フェリシアが頷いた。
「じゃあ、来るよ!」
◇
バシャッ!
左側の水路から、三体のリバーラプターが飛び出してきた。
「私が先に!」
ルナが弓を引く。
シュッ!
一体目の頭部を射抜いた。
続けて二射目。
しかし、二体目は岩の陰へ飛び込み、矢を避ける。
「逃げた!」
「大丈夫!」
フェリシアが杖を構えた。
「《魔弾》!」
ドンッ!
岩陰から飛び出したところへ魔弾が命中する。
残る一体は、大きく跳び上がった。
そのままルナへ飛びかかろうとする。
「ルナ!」
「うん!」
ルナは慌てることなく弓を引いた。
シュッ!
至近距離から放たれた矢が、リバーラプターの頭部を射抜く。
魔物はそのまま地面へ落ちた。
「よし!」
その直後。
「ギャアアッ!」
正面の魔物たちが一斉に走り出した。
「今度はこっちか」
俺は竜爪剣を構え直した。
一体目が飛びかかってくる。
身体を横へずらし、首を斬り抜く。
【520P獲得】
二体目は低い姿勢で突っ込んできた。
俺は一歩踏み込み、剣を振り下ろした。
ザンッ!
【520P獲得】
三体目は大きく跳び上がった。
でも、遅い。
着地する前に竜爪剣を振り抜く。
【520P獲得】
三体とも倒れた。
◇
その後も、何体かのリバーラプターが襲ってきた。
でも、フェリシアが左右の動きを確認し、ルナが弓で迎え撃つ。
俺も、正面から来た魔物を倒した。
やがて、魔物の姿が見えなくなった。
「……終わった?」
ルナが辺りを見回す。
俺は《魔力感知》を使った。
「うん。近くにはもういないみたい」
「やった!」
ルナが弓を下ろした。
「いっぱい来たね!」
「うん。でも、うまく戦えたね」
フェリシアも杖を下ろした。
「フェリシアのおかげだよ」
俺が言うと、フェリシアが首を傾げた。
「そう?」
「うん。あのまま戦ってたら、あちこちから襲われて面倒だったと思う」
「確かに、ここなら動きを予想しやすかったからね」
「それに、正面の魔物が囮になってることも気づいたでしょ?」
「うん。あまり攻めてこなかったから、変だなって思ったんだ」
「すごいね!」
ルナが感心している。
「私は全然気づかなかったよ!」
「ルナだって、左右から来た魔物を全部止めてくれたじゃない」
「そうかな?」
「そうだよ」
二人が顔を見合わせて笑った。
こうやって、それぞれの得意なことを活かせるのはいいな。
俺たちなら、開けた場所でも倒せたと思う。
でも、わざわざ面倒な戦い方をする必要はない。
それに、フェリシアの作戦のおかげで、テリーやステフも危険な場所へ出ずに済んだ。
「ワフ!」
「キュ!」
二匹とも元気そうだ。
俺は倒したリバーラプターを《収納》へ入れた。
これだけ数があれば、素材も結構な量になるだろう。
それに、Pも増えた。
こうやって少しずつ積み重ねていくのも悪くないな。
◇
魔物を回収し終えると、俺たちは探索を再開した。
十三階層には、まだいくつもの水路が続いている。
でも、さっきの戦闘以降、魔物の反応はほとんどなかった。
「静かになったね」
ルナが言った。
「さっきの群れが、この辺りにいた魔物の大半だったのかもしれないね」
フェリシアが答える。
しばらく進むと、大きな石の門が見えてきた。
「あっ! 階段だ!」
ルナが指差した。
「十四階層だね」
フェリシアが地図を確認する。
「じゃあ、先へ進もうか」
「うん!」
俺たちは階段へ向かった。
◇
階段の前で、フェリシアが足を止めた。
「ねえ、アレン」
「何?」
「そろそろ、どこまで進むか決めておかない?」
「そうだね」
俺は頷いた。
十階層までは、あっという間だった。
十一階層からは少し時間がかかるようになったけど、まだ疲れてはいない。
ただ、次の転移石がどこにあるかは分からない。
「十五階層まで行ってみる?」
俺が言うと、ルナが嬉しそうに頷いた。
「いいね!」
「私も賛成」
フェリシアが笑った。
「十五階層まで行ったら、その先へ進むか、一度戻るか考えよう」
「うん。それがよさそうだね」
俺も頷いた。
無理をして進む必要はない。
十階層の転移石は登録してあるし、戻ろうと思えば戻れる。
「じゃあ、次は十四階層だね!」
ルナが階段を見つめた。
「うん」
俺たちは階段を下り始めた。
◇
十四階層。
階段を下りると、今度は天井の低い洞窟が広がっていた。
岩壁には細かな亀裂が入り、床には大きな石がいくつも転がっている。
「なんだか狭いね」
ルナが呟いた。
「そうだね」
俺は《魔力感知》を使った。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「魔物がいるんだけど……」
「うん?」
「全然動いてないんだよね」
少し先に、いくつもの魔力反応がある。
でも、その場所からほとんど動いていない。
「寝てるのかな?」
ルナが首を傾げる。
「どうだろう」
俺は前方を見つめた。
よく見ると、大きな岩がいくつも並んでいる。
……あれ?
何となくだけど、妙な形をしているような。
「アレン?」
フェリシアが声をかけてきた。
「うん。ちょっと気になることがあって」
俺は一番近くにある岩へ視線を向けた。
そのとき。
岩の表面で、何かがわずかに動いた。
「……あ」
どうやら、ただの岩じゃないみたいだ。
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