第188話 光る魚の秘密
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
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青白い光が、巨大な影の周囲に集まっている。
「……何だろう、あれ?」
ルナが不思議そうに呟いた。
「近づいてくるね」
フェリシアが杖を構える。
俺も竜爪剣に手をかけた。
やがて、水面から大きな頭が現れた。
「……亀?」
ルナが首を傾げる。
続いて、巨大な甲羅が水面から姿を見せた。
甲羅の長さだけでも五メートルはありそうだ。
その周囲を、ルミナフィッシュたちが泳いでいる。
「すごく大きいね!」
「うん。十階層の階層主より大きいかもしれないね」
俺は《鑑定》を使った。
「《鑑定》」
【ルミナタートル】
【巨大な甲羅を持つ水棲魔物】
【温厚な性格で、ほかの魔物を積極的に襲うことは少ない】
【甲羅に生える藻をルミナフィッシュが食べる共生関係にある】
「ルミナタートルっていう魔物みたいだよ」
「ルミナタートル?」
「うん。温厚な性格らしい」
「へえ!」
ルナが目を輝かせた。
「じゃあ、襲ってこないの?」
「こっちから刺激しなければ、大丈夫かもしれないね」
ルミナタートルは水面から頭を出したまま、ゆっくりと泳いでいる。
こちらに気づいているはずなのに、攻撃してくる様子はない。
「でも、どうして魚が集まってるんだろう?」
フェリシアが首を傾げた。
「《鑑定》によると、甲羅に生える藻を食べてるみたいだよ」
「藻?」
「うん。ほら、あそこ」
俺は甲羅の一部を指差した。
よく見ると、甲羅の表面には緑色の藻が生えている。
ルミナフィッシュたちは、その周囲を泳ぎながら、何かをつついていた。
「あっ、本当だ!」
ルナが嬉しそうに声を上げる。
「じゃあ、亀は身体を綺麗にしてもらってるんだね!」
「そういうことみたいだね」
フェリシアが微笑む。
「魚たちは餌を食べられるし、亀は甲羅を綺麗にしてもらえる。お互いに得をしているんだね」
「面白いね!」
ルナが水面を覗き込む。
こんな関係もあるんだな。
魔物といえば、襲ってくるものばかりだと思っていた。
でも、ここでは違うらしい。
◇
俺たちは少し離れた岩場から、その様子を眺めていた。
ルミナフィッシュたちはルミナタートルの周囲を泳ぎ続けている。
青白い光がゆっくりと揺れ、まるで水の中に星が散らばっているみたいだ。
「綺麗だねえ」
ルナがうっとりしている。
「うん。ずっと見ていられそう」
フェリシアも笑った。
そのときだった。
《魔力感知》に、新しい反応が入ってきた。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「別の魔物が近づいてきてる」
水の奥に、三つの反応がある。
しかも、こちらへ向かっているようだ。
「三体いるね」
「また魔物?」
「うん。ちょっと様子を見よう」
俺たちは水面を見つめた。
すると、突然、ルミナフィッシュたちの動きが変わった。
「あっ!」
ルナが声を上げる。
「魚たちが逃げてる!」
青白い光が一斉に散らばった。
その直後。
バシャッ!
水面から細長い魔物が飛び出してきた。
鋭い歯が並んだ大きな口。
細長い身体。
背中には鋭いヒレが並んでいる。
「《鑑定》」
【リッパーイール】
【鋭い歯を持つ肉食性の水棲魔物】
【小型の水棲魔物を好んで捕食する】
【素早い泳ぎで獲物に接近する】
「リッパーイールっていう魔物だね」
「魚を食べちゃうの?」
「そうみたい」
リッパーイールがルミナフィッシュへ向かって突進した。
次の瞬間。
ザバァッ!
ルミナタートルが大きく身体を動かした。
巨大な甲羅が、リッパーイールと小魚たちの間に入る。
「……あっ!」
ルナが目を見開いた。
「亀、魚たちを守ってる!」
確かにそう見える。
リッパーイールは方向を変え、別のルミナフィッシュを追いかけ始めた。
しかし、ルミナタートルが再び身体を動かし、その進路を塞ぐ。
「すごいね」
フェリシアが呟く。
「自分よりずっと小さな魚を守ってるんだ」
でも、相手は三体いる。
ルミナタートルが一体を防いでも、残りの二体が別の方向から近づいてくる。
「あっ! 危ない!」
ルナが叫んだ。
一体のリッパーイールが、逃げ遅れたルミナフィッシュへ迫っていた。
「アレン!」
ルナが俺を見る。
「あの魚たち、助けてもいい?」
「もちろん」
ルナが弓を構えた。
シュッ!
ルナの矢が放たれた。
水面から飛び出したリッパーイールの頭部を正確に射抜く。
魔物が水面へ落ちた。
「よし!」
「私も!」
フェリシアが杖を構える。
「《魔弾》!」
ドンッ!
二体目のリッパーイールに魔弾が命中した。
大きな水しぶきが上がる。
残る一体が水中へ潜った。
《魔力感知》で追いかける。
……いた。
水中を大きく回り込み、ルミナフィッシュの群れへ向かっている。
「そっちか」
俺は岩場を蹴った。
一気に水辺へ移動する。
すると、リッパーイールが水面から飛び出してきた。
大きな口を開き、俺へ噛みつこうとしてくる。
「おっと」
身体を横へずらし、竜爪剣を振る。
ザシュッ!
【480P獲得】
リッパーイールが動かなくなった。
「終わったね!」
ルナが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「うん。三体とも倒せたよ」
フェリシアも杖を下ろした。
俺は倒したリッパーイールを《収納》へ入れた。
これも素材になるかもしれない。
◇
危険が去ると、散らばっていたルミナフィッシュたちが戻ってきた。
青白い光が、再びルミナタートルの周囲に集まっていく。
「よかったあ」
ルナが胸を撫で下ろした。
「魚たち、無事だったね!」
「うん。間に合ってよかった」
フェリシアも微笑む。
すると、ルミナタートルがゆっくりとこちらへ近づいてきた。
「……あれ?」
ルナが首を傾げる。
「亀が来るよ?」
「大丈夫。敵意はなさそうだよ」
俺は《魔力感知》で様子を確かめた。
ルミナタートルは岩場の近くで動きを止めた。
そして、大きな頭をゆっくりと下げた。
「……えっ?」
ルナが驚いた顔をする。
「もしかして、お礼を言ってるの?」
「そうかもしれないね」
俺が答えると、ルナが嬉しそうに笑った。
「どういたしまして!」
ルナが大きく手を振る。
ルミナタートルはしばらくその場にいたあと、ゆっくりと頭を上げた。
「なんだか可愛いね」
フェリシアが笑う。
「うん! すっごく可愛い!」
……五メートル以上ある巨大な亀だけどね。
まあ、気持ちは分かる。
テリーもステフも、最初は魔物だった。
でも、今では大切な仲間だ。
魔物だからといって、必ずしも襲ってくるわけじゃないんだな。
◇
ルミナタートルは、再び水の奥へ泳ぎ始めた。
その周囲にはルミナフィッシュたちが集まっている。
青白い光がゆっくりと遠ざかっていく。
「行っちゃったね」
ルナが少し残念そうに呟いた。
「そうだね」
フェリシアも水面を見つめている。
俺は周囲を見回した。
「さて、俺たちも先へ進もうか」
「うん!」
フェリシアが地図を広げた。
「十三階層への階段は、向こう側みたいだね」
水辺に沿って、岩の道が続いている。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
俺たちは歩き始めた。
途中でルナが振り返る。
「あっ!」
「どうしたの?」
「亀、まだいるよ!」
遠くの水面に、青白い光が見えた。
ルミナタートルの大きな甲羅が、ゆっくりと動いている。
その周囲をルミナフィッシュたちが泳いでいた。
「本当だね」
「また会えるかな?」
「どうだろう。でも、ここに来れば会えるかもしれないね」
「そっか!」
ルナが笑った。
「じゃあ、また来たいな!」
そのとき、ステフが俺の肩で鳴いた。
「キュ!」
「どうしたの、ステフ?」
ステフは水面をじっと見つめている。
すると、遠くにいたルミナタートルが、もう一度こちらを向いた。
「……あれ?」
俺が首を傾げると、ルナが嬉しそうに声を上げた。
「ほら!亀もまた会いたいんだよ!」
「そうかもしれないね」
俺は笑った。
こういう出会いも、冒険の楽しさなんだろうな。
◇
しばらく進むと、水辺の奥に大きな石の門が見えてきた。
その先には、下へ続く階段がある。
「あっ!階段だ!」
ルナが指差した。
「十三階層だね」
フェリシアが地図を確認する。
「うん。次へ進めそうだね」
俺は振り返った。
遠くでは、まだ青白い光が揺れている。
ルミナタートルとルミナフィッシュ。
大きさも姿も違う魔物同士が、互いに助け合って暮らしている。
こんな場所があるなんて、思ってもみなかった。
「アレン!」
ルナが階段の前から呼んでいる。
「早く行こう!」
「うん!」
俺は二人のもとへ向かった。
次はどんな魔物がいるんだろう。
まだまだ知らないことがたくさんありそうだ。
俺たちは十三階層への階段を下り始めた。
【保有:101,960P】
【累計獲得P:559,170P】
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