↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第10章 再び南へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
184/208

第184話 港町での一週間

新連載はじめました!

『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。

お手すきの際に是非!

https://ncode.syosetu.com/n5173mx/1からご覧いただけます。

 翌朝。


 宿の食堂へ下りると、ルナとフェリシアが朝食を食べていた。


「アレン、おはよう!」


「おはよう」


「昨日はよく眠れた?」


 フェリシアが聞いてきた。


「うん。ぐっすり眠れたよ」


「そっか。よかった」


 フェリシアが嬉しそうに笑った。


 戦争が終わってから、彼女は毎朝こうして聞いてくれる。


 最近は眠れる夜が続いていた。


 《全回復》も使わずに済んでいる。


「ねえ、アレン! 今日はどうする?」


 ルナがパンを食べながら聞いてきた。


「昨日みたいに依頼を受けてみようか」


「いいね!」


「でも、午後は遊びたいな」


 フェリシアが言った。


「うん。せっかく海の近くにいるんだしね」


「やった!」


 ルナが嬉しそうに笑う。


「ワフ!」


「キュ!」


 足元ではテリーが尻尾を振り、ステフも元気よく鳴いていた。


 こうして、俺たちのミナリアでの新しい一週間が始まった。


 ◇


 最初に受けたのは、漁師からの依頼だった。


 沖から流されてきた漁網が、岬の岩場に引っかかってしまったらしい。


 波が高い場所なので、漁師たちだけでは回収が難しいそうだ。


「魚を獲る網なんだよね?」


 ルナが依頼書を覗き込む。


「うん。高価なものだから、できれば取り戻したいんだって」


「じゃあ、行ってみよう!」


 俺たちは漁師の案内で、港から少し離れた岩場へ向かった。


 黒い岩がいくつも海から突き出している。


 波がぶつかるたび、白いしぶきが上がっていた。


「あそこです!」


 漁師が沖側の岩を指差した。


 確かに、大きな網が引っかかっている。


「なるほど……」


 岩場は濡れていて滑りやすそうだ。


「ルナとフェリシアは、ここで待っててくれる?」


「アレン、一人で大丈夫?」


「うん。無理はしないよ」


 俺は波の様子を見ながら岩場へ下りた。


 潮が引く時間を待ったおかげで、水はそれほど深くない。


 岩に絡まった網を少しずつ外していく。


 ところどころ破れていたが、修理すれば使えそうだ。


「……よし」


 全部外し終えたところで、《収納》に入れる。


 あとは岸へ戻るだけだ。


「おお! 本当に取ってきてくれたんですか!」


 漁師が驚いた。


「はい。少し破れていますけど、直せば使えると思います」


「十分ですよ! ありがとうございます!」


 俺は《収納》から網を取り出した。


 漁師は何度も頭を下げている。


「これでまた魚を獲れます。本当に助かりました!」


 その日の依頼も、無事に達成できた。


【100P獲得】


「よかったね!」


 ルナが笑う。


「うん」


 魔物を倒さなくてもPが増える。


 こういう依頼もいいな。


 ◇


 翌日は、朝から町を観光した。


 港の近くには魚市場だけでなく、貝殻を使った飾り物や、外国から運ばれてきた品物を売る店が並んでいた。


「わあ! これ、きれい!」


 ルナが手に取ったのは、青い貝殻で作られた小さな飾りだった。


「海の色みたいだね」


 フェリシアが言う。


「うん!」


 ルナはしばらく眺めてから、それを購入した。


「アレン、見て!」


「いいね。似合ってるよ」


「でしょ!」


 ルナが嬉しそうに笑った。


 フェリシアは魔道具を扱う店に興味を示していた。


「これ、船で使う魔道具なんだって」


「何をするものなの?」


「暗いところで光るんだって。夜の船で便利そうだよね」


「へえ」


 船の上では、魔道具にも陸とは違う使い道があるんだな。


 昼には港の食堂で魚料理を食べた。


 焼いた貝に、魚のスープ。


 それから、初めて見る細長い魚の料理もあった。


「美味しい!」


 ルナが幸せそうに笑う。


「本当に魚ばっかり食べてるね」


 フェリシアが言った。


「だって、ここでしか食べられないものもあるんだよ!」


「それはそうだね」


 俺も頷いた。


 ミナリアに来てから、食事の時間が楽しみになっている。


 ◇


 三日目は、町の東にある岬へ出かけた。


 そこには、船の目印になる灯台が建っているという。


 丘を登っていくと、海から強い風が吹いてきた。


「わあ!」


 ルナが髪を押さえる。


「すごい風!」


「ステフ、今日は遠くまで飛ばないでね」


 フェリシアが声をかけた。


「キュ!」


 ステフは小さく翼を広げ、俺たちの頭上を一回りした。


 以前より、風を受けても安定して飛べるようになっている。


「上手になったね!」


 ルナが手を振った。


「キュウ!」


 ステフが嬉しそうに鳴く。


 テリーも草地を駆け回っていた。


「ワフ!」


「テリー、あんまり遠くへ行かないでよ!」


「ワフ!」


 坂を登りきると、石造りの高い灯台が見えてきた。


 その先には、広い海が続いている。


 眼下を一隻の帆船が進んでいた。


 遠くから見ると、あんなに大きな船も小さく見えるんだな。


「きれいだね……」


 フェリシアが呟いた。


「うん」


 青い海に、白い帆。


 波が陽光を受けてきらきらと輝いている。


 しばらく三人で景色を眺めていた。


「ねえ、アレン」


「何?」


「また船に乗りたいね!」


 ルナが言った。


「そうだね。今度はもっと遠くまで行ってみたいな」


「私も!」


 フェリシアが頷いた。


 まだ見たことのない港町も、きっとたくさんあるんだろう。


 ◇


 四日目。


 朝食の席で、フェリシアがいつものように聞いてきた。


「アレン、昨日は眠れた?」


「うん。夜中に一度目が覚めたけど、また眠れたよ」


「そっか」


「大丈夫。《全回復》も使ってないから」


「うん。よかった」


 フェリシアが微笑んだ。


 夜中、少しだけ戦場のことを思い出した。


 でも、以前のように朝まで眠れなくなることはなかった。


 今朝も身体が軽い。


「今日は何しようか!」


 ルナが元気よく聞いてくる。


「また依頼を見に行ってみようか」


「うん!」


 その日、俺たちは再び冒険者ギルドを訪れた。


 掲示板には、岬の灯台へ燃料や備品を届ける依頼があった。


 海沿いの険しい道を通るため、Dランクの依頼になっているらしい。


「昨日行った灯台だね!」


 ルナが言う。


「うん。ちょうど場所も分かってるし、受けてみようか」


「いいね!」


 受付で手続きを済ませ、指定された倉庫へ向かった。


 そこには、灯りに使う油の樽や、予備の道具が入った木箱が積まれていた。


「結構な量だね」


 フェリシアが言う。


「うん。でも、《収納》があるから大丈夫だよ」


 俺は荷物をまとめて《収納》へ入れた。


 倉庫の管理人が目を丸くしている。


「……全部入ったのか?」


「はい」


「便利なものだなあ……」


 俺は笑って頷いた。


 それから三人と二匹で灯台へ向かった。


 昨日は景色を楽しみながら歩いた道だ。


 今日は荷物を届ける仕事として登っていく。


 灯台の管理人に荷物を渡すと、たいそう喜んでくれた。


「助かりました。これでしばらくは灯りを絶やさずに済みます」


「よかったです」


「昨夜も船が何隻か通ったんですよ。灯台の灯りは大切なんです」


 管理人が海を見つめた。


 なるほど。


 この灯台があるから、夜でも船が安全に航海できるのか。


 帰り道、俺たちはもう一度海を眺めた。


 昨日と同じ景色なのに、少し違って見えた。


 あの塔の灯りが、海を行く人たちを助けているんだな。


 ギルドへ戻り、依頼を報告する。


【100P獲得】


 また少し、Pが増えた。


 ◇


 五日目は、特に依頼を受けなかった。


 朝から市場へ出かけ、昼には海辺の食堂で食事をした。


 ルナは珍しい貝料理を見つけて、大喜びしていた。


「これ、すっごく美味しい!」


「昨日も同じこと言ってなかった?」


 フェリシアが笑う。


「昨日のも美味しかったけど、これも美味しいんだもん!」


「それはよかったね」


 俺も笑った。


 午後は砂浜へ行った。


 テリーは波打ち際を走り回り、ステフは低く飛びながらそのあとを追いかけている。


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹とも随分と海に慣れたらしい。


 ルナも靴を脱ぎ、砂浜を走っていた。


「アレン! こっち!」


「今行くよ!」


 フェリシアと顔を見合わせる。


「ルナは本当に元気だね」


「うん。でも、楽しいよね」


「そうだね」


 俺たちも靴を脱ぎ、波打ち際へ向かった。


 ◇


 六日目。


 俺たちは港の西側を散歩していた。


 この辺りには造船所があるらしい。


 近づくにつれて、木を打つ音や職人たちの掛け声が聞こえてきた。


「わあ!」


 ルナが声を上げた。


 目の前には、建造途中の大きな船が何隻も並んでいた。


 骨組みだけの船もあれば、外側に板を張りつけている船もある。


 職人たちが木槌を振るい、木材を運び、忙しそうに働いていた。


「船って、こうやって作るんだ!」


 ルナが目を輝かせる。


「すごいね……」


 フェリシアも大きな船を見上げた。


「こんなに大きなものを、木で作れるんだ」


「本当だね」


 俺も感心した。


 すると、造船所の奥から大きな声が聞こえてきた。


「せーの!」


「うおおっ!」


「もう少しだ!」


 何だろう?


 声のする方を見ると、十人ほどの職人たちが一本の巨大な木材を囲んでいた。


 どうやら、船底に据える木材を動かそうとしているらしい。


 縄を掛け、少しずつ持ち上げようとしている。


「くそっ! 重いな!」


「もう少し人を呼んでこい!」


 職人たちは汗だくだ。


「大変そうだね」


 ルナが呟いた。


「うん」


「ねえ、アレン。手伝ってあげようよ!」


「そうだね。聞いてみようか」


 俺たちは職人たちに近づいた。


「あの、何かお手伝いできることはありませんか?」


 声をかけると、年配の職人が振り返った。


「ん? お前さんたちは?」


「冒険者です」


「冒険者?」


「はい。重いものを運んでいるみたいだったので」


 職人は俺たちを見比べた。


「気持ちはありがたいが、こいつは相当重いぞ。慣れない者が手を出すと危ないからな」


「そうなんですね」


 すると、ルナが近くに積まれていた木材を指差した。


「じゃあ、あっちの木を運ぶのは?」


「ああ、そいつか。あれも三人がかりで運ぶものだが……」


「分かった!」


 ルナは木材に近づくと、両手をかけた。


「よいしょっと!」


 ひょい。


 太い木材が持ち上がった。


「…………は?」


 職人が固まった。


「これ、どこに運べばいいの?」


 ルナは木材を抱えたまま、首を傾げている。


「い、いや……」


 職人が目をこする。


「そいつは、三人で運ぶ木材なんだが……」


「そうなの?」


 ルナが不思議そうな顔をした。


「そんなに重くないよ?」


「重いんだよ!」


 職人が思わず叫んだ。


 周りにいた職人たちも手を止め、ルナを見つめている。


「おい、見たか?」


「あの嬢ちゃん、一人で持ち上げたぞ……」


「嘘だろ?」


 ルナはそんな声など気にせず、指定された場所へ木材を運んでいった。


「はい! 次は?」


「つ、次?」


 年配の職人が困惑している。


「じゃあ、私も手伝おうかな」


 フェリシアが言った。


 近くには、金具や工具を詰めた木箱が並んでいた。


「この箱を運べばいいですか?」


「あ、ああ。だが、それもかなり重いぞ。二人で運んだ方が……」


「大丈夫です」


 フェリシアは木箱を一つ持ち上げた。


 さらに、もう一つ。


 両手に一つずつ持って歩き始める。


「…………」


 職人が口を開けたまま固まった。


「ここに置けばいいですか?」


「あ、ああ……」


 フェリシアは二つの木箱を静かに下ろした。


「ほかにも運びますか?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 職人が慌てて手を上げる。


「お嬢さん、魔法使いじゃないのか?」


「そうですけど?」


「魔法は使ってないよな?」


「はい。普通に持っているだけです」


「普通!?」


 職人の声が裏返った。


 周りでは、何人もの職人たちが呆然としていた。


 ……まあ、驚くよな。


 《共有》のおかげで、ルナとフェリシアの筋力は普通の人とは比べものにならない。


 俺たちは慣れているけど、初めて見た人には信じられない光景だろう。


「アレン!」


 ルナが手を振った。


「私たち、まだ運べるよ!」


「そうだね」


 俺は笑って頷いた。


 そのとき、先ほどの巨大な木材が目に入った。


「あの……」


「な、何だ?」


 年配の職人が警戒するように俺を見た。


「あちらの木材も、運んでしまいましょうか?」


「……は?」


「あの大きいのです」


 俺が指差す。


 職人は巨大な木材を見て、それから俺を見た。


「いやいやいや!」


 慌てて首を振る。


「あれは無理だ! 十人がかりでも苦労してるんだぞ!」


「そうなんですね」


「そうなんですね、じゃねえよ!」


 周りの職人たちが笑い始めた。


 でも、あれくらいなら持ち上げられそうだ。


「一度やってみてもいいですか?」


「……本気か?」


「はい」


 職人はしばらく俺を見つめていた。


 やがて、ため息をつく。


「分かった。無理だと思ったらすぐにやめろよ」


「はい」


 俺は巨大な木材へ近づいた。


「みなさん、少し離れていてください」


 周りの職人たちが距離を取る。


 俺は木材の重心を確かめ、両手をかけた。


「……よっと」


 ぐっ。


 木材が持ち上がった。


「…………」


 誰も何も言わない。


 あれ?


 俺は木材を持ち上げたまま、職人たちを振り返った。


「どこに運べばいいですか?」


「…………」


「あの?」


「う、嘘だろ……」


 年配の職人が呟いた。


「持ち上がった……」


「一人で……?」


「おい、誰か俺の頬をつねってくれ」


 別の職人が隣の男の頬をつねった。


「痛てえ!」


「……夢じゃねえな」


「俺を使って確かめるな!」


 周りから笑い声が上がった。


「すみません。どこに置きましょうか?」


 俺がもう一度尋ねると、年配の職人が我に返った。


「あ、ああ! こっちだ!」


 職人は慌てて船の骨組みを指差した。


「そこへ据えたいんだが、細かく位置を合わせないといけねえ。勝手に下ろさないでくれよ!」


「分かりました」


 俺は木材を運び、指示された場所で支えた。


「もう少し右!」


「はい」


「いや、少し戻してくれ!」


「このくらいですか?」


「そうだ! そこで止めろ!」


 職人たちが位置を確かめ、木材を固定していく。


「よし! ゆっくり下ろしてくれ!」


「はい」


 俺は慎重に木材を下ろした。


 どん。


「……よし。ぴったりだ!」


 職人たちから歓声が上がった。


「やった!」


 ルナも嬉しそうに手を叩く。


「お前さんたち……」


 年配の職人が、俺たち三人を見つめた。


「いったい何者なんだ?」


「冒険者です」


 俺が答える。


「いや、そういうことを聞いてるんじゃねえ!」


 職人たちが一斉に笑い出した。


「三人とも、どれだけ力が強いんだよ!」


「こんな冒険者、初めて見たぞ!」


「特に兄ちゃん! お前、本当に人間か!?」


「えっ? 人間ですよ?」


「それが信じられねえんだよ!」


 また笑い声が上がる。


 その後も、俺たちは少しだけ作業を手伝った。


 ルナが木材を運び、フェリシアが資材を運ぶ。


 俺は職人たちの指示に従い、重い船材を持ち上げた。


 もちろん、俺たちには船の作り方なんて分からない。


 木材をどこに置くか、どう組み合わせるか。


 そういうことは、全部職人たちが教えてくれた。


「そこは少し傾けてくれ!」


「はい!」


「お嬢ちゃん、その木材は向こうだ!」


「分かった!」


 いつの間にか、造船所には威勢のいい掛け声が響いていた。


 しばらくして、一区切りついたところで作業を終える。


「いやあ、助かった!」


 年配の職人が笑った。


「お前さんたちのおかげで、随分と仕事が進んだよ」


「それならよかったです」


「それにしても、世の中にはとんでもない連中がいるもんだな!」


「そんなことないですよ」


 また職人たちが笑った。


 俺たちも一緒に笑う。


 困っている人の手伝いをして、こんなに喜んでもらえる。


 やっぱり、こういうのはいいな。


 ◇


 造船所を出たあと、ルナが楽しそうに笑い出した。


「ねえ、アレン! さっきの人たち、すっごく驚いてたね!」


「そうだね」


「フェリシアが木箱を二つ持ったときなんて、口が開いたままだったよ!」


「ルナだって、すごく驚かれてたじゃない」


 フェリシアが笑った。


「でも、一番すごかったのはアレンだよね!」


「うん。職人さんたち、しばらく何も言えなくなってたもん」


「そうかな?」


「そうだよ!」


 ルナが大きく頷く。


「ねえ、アレン。私たちって、結構力持ちなんだね!」


「……今さら?」


 思わず聞き返してしまった。


 フェリシアが吹き出す。


「あはは! 確かに!」


「えー! だって、普段はそんなに重いもの持たないじゃん!」


「それはそうだけど……」


 俺も笑った。


 俺たちにとっては当たり前になっていた力でも、普通の人から見れば驚くほどのものなんだろう。


「でも、船ってすごいね」


 フェリシアが造船所を振り返った。


「あんなにたくさんの木材を、ちゃんと組み合わせていくんだもん」


「うん。職人さんたち、すごかったね!」


 ルナも頷いた。


 力が強いだけでは、船は作れない。


 俺たちにできたのは、ほんの一部分の手伝いだ。


 でも、少しは役に立てたみたいだな。


 ◇


 そして、七日目。


 朝食の席に着くと、フェリシアが俺を見た。


「アレン、昨日は……」


「ちゃんと眠れたよ」


 俺が答えると、フェリシアが少し驚いた顔をした。


「まだ聞いてないよ?」


「毎朝聞いてくれるからね」


「……そっか」


 フェリシアが笑った。


「よかったね、アレン」


「うん。ありがとう」


 戦争が終わってから、ずっと気にかけてくれている。


 眠れなかった頃の俺を知っているからこそ、毎朝こうして聞いてくれるんだろう。


 ありがたいな。


「ねえ、二人とも!」


 ルナがパンを食べ終えて顔を上げた。


「今日はどうする?」


「そうだね……」


 俺は少し考えた。


「今日は、のんびり過ごそうか」


「いいね!」


 ルナが笑った。


「じゃあ、また海に行こう!」


「うん!」


 俺たちは朝食を終え、宿を出た。


 ◇


 夕方。


 海辺で遊んでから宿へ戻り、三人で夕食を食べていた。


「この一週間、楽しかったね!」


 ルナが言った。


「うん。いろいろな場所に行けたしね」


 フェリシアが頷く。


「漁網を取りに行ったり、灯台に荷物を運んだり!」


「造船所のお手伝いもしたね」


「うん! あれは面白かった!」


 ルナが嬉しそうに笑う。


「職人さんたち、すごく驚いてたもんね!」


「アレンが木材を持ち上げたときなんて、みんな固まってたよ」


 フェリシアも笑った。


「あはは。あれはちょっと面白かったね」


「あと、美味しいものもいっぱい食べた!」


「それが一番大事なんだ?」


 フェリシアが聞く。


「もちろん!」


 即答だった。


 俺たちは顔を見合わせて笑った。


 ミナリアに来てから、いろいろなことを経験した。


 海で遊び、船に乗り、珍しい料理を食べた。


 依頼を受けてPとジェニーを稼ぎ、町の人たちの仕事も手伝った。


 毎日があっという間だった。


 それに、最近は朝まで眠れる日も増えている。


 まだ行きたい場所はたくさんある。


 でも、そろそろ別のこともしてみたいな。


 そういえば、冒険者ギルドの掲示板にダンジョン探索の依頼があった。


「……ねえ、二人とも」


「何?」


 ルナが顔を上げた。


「そろそろダンジョンにも行ってみたいな」


「ダンジョン!?」


 ルナの目が輝いた。


「いいね! 行こうよ!」


「私も賛成」


 フェリシアも頷いた。


 でも、すぐに俺の顔を見つめる。


「アレン、本当にいいの?」


「うん」


 俺は頷いた。


「久しぶりに、ダンジョンを探索したくなったんだ」


「……そっか」


 フェリシアが嬉しそうに笑った。


「じゃあ、明日はギルドで詳しい話を聞いてみようか」


「うん!」


「やった! 楽しみ!」


 ルナが両手を上げた。


「ワフ!」


「キュ!」


 テリーとステフも元気よく鳴いた。


 まだ行ったことのないダンジョン。


 そこには、どんな魔物がいるんだろう。


 どんな景色が広がっているんだろう。


 それを想像すると、自然と楽しみになってきた。


 また新しい冒険が始まりそうだ。


【保有:96,180P】

【累計獲得P:553,390P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これそのうち共有が封印されてフェリシアとルナが大変なことになってしまうなんてこと起きそうですね あくまでもアレンの力なのに、「私たちって、結構力持ちなんだね」と言ってしまうルナが危うい気がします フェ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。