第184話 港町での一週間
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
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翌朝。
宿の食堂へ下りると、ルナとフェリシアが朝食を食べていた。
「アレン、おはよう!」
「おはよう」
「昨日はよく眠れた?」
フェリシアが聞いてきた。
「うん。ぐっすり眠れたよ」
「そっか。よかった」
フェリシアが嬉しそうに笑った。
戦争が終わってから、彼女は毎朝こうして聞いてくれる。
最近は眠れる夜が続いていた。
《全回復》も使わずに済んでいる。
「ねえ、アレン! 今日はどうする?」
ルナがパンを食べながら聞いてきた。
「昨日みたいに依頼を受けてみようか」
「いいね!」
「でも、午後は遊びたいな」
フェリシアが言った。
「うん。せっかく海の近くにいるんだしね」
「やった!」
ルナが嬉しそうに笑う。
「ワフ!」
「キュ!」
足元ではテリーが尻尾を振り、ステフも元気よく鳴いていた。
こうして、俺たちのミナリアでの新しい一週間が始まった。
◇
最初に受けたのは、漁師からの依頼だった。
沖から流されてきた漁網が、岬の岩場に引っかかってしまったらしい。
波が高い場所なので、漁師たちだけでは回収が難しいそうだ。
「魚を獲る網なんだよね?」
ルナが依頼書を覗き込む。
「うん。高価なものだから、できれば取り戻したいんだって」
「じゃあ、行ってみよう!」
俺たちは漁師の案内で、港から少し離れた岩場へ向かった。
黒い岩がいくつも海から突き出している。
波がぶつかるたび、白いしぶきが上がっていた。
「あそこです!」
漁師が沖側の岩を指差した。
確かに、大きな網が引っかかっている。
「なるほど……」
岩場は濡れていて滑りやすそうだ。
「ルナとフェリシアは、ここで待っててくれる?」
「アレン、一人で大丈夫?」
「うん。無理はしないよ」
俺は波の様子を見ながら岩場へ下りた。
潮が引く時間を待ったおかげで、水はそれほど深くない。
岩に絡まった網を少しずつ外していく。
ところどころ破れていたが、修理すれば使えそうだ。
「……よし」
全部外し終えたところで、《収納》に入れる。
あとは岸へ戻るだけだ。
「おお! 本当に取ってきてくれたんですか!」
漁師が驚いた。
「はい。少し破れていますけど、直せば使えると思います」
「十分ですよ! ありがとうございます!」
俺は《収納》から網を取り出した。
漁師は何度も頭を下げている。
「これでまた魚を獲れます。本当に助かりました!」
その日の依頼も、無事に達成できた。
【100P獲得】
「よかったね!」
ルナが笑う。
「うん」
魔物を倒さなくてもPが増える。
こういう依頼もいいな。
◇
翌日は、朝から町を観光した。
港の近くには魚市場だけでなく、貝殻を使った飾り物や、外国から運ばれてきた品物を売る店が並んでいた。
「わあ! これ、きれい!」
ルナが手に取ったのは、青い貝殻で作られた小さな飾りだった。
「海の色みたいだね」
フェリシアが言う。
「うん!」
ルナはしばらく眺めてから、それを購入した。
「アレン、見て!」
「いいね。似合ってるよ」
「でしょ!」
ルナが嬉しそうに笑った。
フェリシアは魔道具を扱う店に興味を示していた。
「これ、船で使う魔道具なんだって」
「何をするものなの?」
「暗いところで光るんだって。夜の船で便利そうだよね」
「へえ」
船の上では、魔道具にも陸とは違う使い道があるんだな。
昼には港の食堂で魚料理を食べた。
焼いた貝に、魚のスープ。
それから、初めて見る細長い魚の料理もあった。
「美味しい!」
ルナが幸せそうに笑う。
「本当に魚ばっかり食べてるね」
フェリシアが言った。
「だって、ここでしか食べられないものもあるんだよ!」
「それはそうだね」
俺も頷いた。
ミナリアに来てから、食事の時間が楽しみになっている。
◇
三日目は、町の東にある岬へ出かけた。
そこには、船の目印になる灯台が建っているという。
丘を登っていくと、海から強い風が吹いてきた。
「わあ!」
ルナが髪を押さえる。
「すごい風!」
「ステフ、今日は遠くまで飛ばないでね」
フェリシアが声をかけた。
「キュ!」
ステフは小さく翼を広げ、俺たちの頭上を一回りした。
以前より、風を受けても安定して飛べるようになっている。
「上手になったね!」
ルナが手を振った。
「キュウ!」
ステフが嬉しそうに鳴く。
テリーも草地を駆け回っていた。
「ワフ!」
「テリー、あんまり遠くへ行かないでよ!」
「ワフ!」
坂を登りきると、石造りの高い灯台が見えてきた。
その先には、広い海が続いている。
眼下を一隻の帆船が進んでいた。
遠くから見ると、あんなに大きな船も小さく見えるんだな。
「きれいだね……」
フェリシアが呟いた。
「うん」
青い海に、白い帆。
波が陽光を受けてきらきらと輝いている。
しばらく三人で景色を眺めていた。
「ねえ、アレン」
「何?」
「また船に乗りたいね!」
ルナが言った。
「そうだね。今度はもっと遠くまで行ってみたいな」
「私も!」
フェリシアが頷いた。
まだ見たことのない港町も、きっとたくさんあるんだろう。
◇
四日目。
朝食の席で、フェリシアがいつものように聞いてきた。
「アレン、昨日は眠れた?」
「うん。夜中に一度目が覚めたけど、また眠れたよ」
「そっか」
「大丈夫。《全回復》も使ってないから」
「うん。よかった」
フェリシアが微笑んだ。
夜中、少しだけ戦場のことを思い出した。
でも、以前のように朝まで眠れなくなることはなかった。
今朝も身体が軽い。
「今日は何しようか!」
ルナが元気よく聞いてくる。
「また依頼を見に行ってみようか」
「うん!」
その日、俺たちは再び冒険者ギルドを訪れた。
掲示板には、岬の灯台へ燃料や備品を届ける依頼があった。
海沿いの険しい道を通るため、Dランクの依頼になっているらしい。
「昨日行った灯台だね!」
ルナが言う。
「うん。ちょうど場所も分かってるし、受けてみようか」
「いいね!」
受付で手続きを済ませ、指定された倉庫へ向かった。
そこには、灯りに使う油の樽や、予備の道具が入った木箱が積まれていた。
「結構な量だね」
フェリシアが言う。
「うん。でも、《収納》があるから大丈夫だよ」
俺は荷物をまとめて《収納》へ入れた。
倉庫の管理人が目を丸くしている。
「……全部入ったのか?」
「はい」
「便利なものだなあ……」
俺は笑って頷いた。
それから三人と二匹で灯台へ向かった。
昨日は景色を楽しみながら歩いた道だ。
今日は荷物を届ける仕事として登っていく。
灯台の管理人に荷物を渡すと、たいそう喜んでくれた。
「助かりました。これでしばらくは灯りを絶やさずに済みます」
「よかったです」
「昨夜も船が何隻か通ったんですよ。灯台の灯りは大切なんです」
管理人が海を見つめた。
なるほど。
この灯台があるから、夜でも船が安全に航海できるのか。
帰り道、俺たちはもう一度海を眺めた。
昨日と同じ景色なのに、少し違って見えた。
あの塔の灯りが、海を行く人たちを助けているんだな。
ギルドへ戻り、依頼を報告する。
【100P獲得】
また少し、Pが増えた。
◇
五日目は、特に依頼を受けなかった。
朝から市場へ出かけ、昼には海辺の食堂で食事をした。
ルナは珍しい貝料理を見つけて、大喜びしていた。
「これ、すっごく美味しい!」
「昨日も同じこと言ってなかった?」
フェリシアが笑う。
「昨日のも美味しかったけど、これも美味しいんだもん!」
「それはよかったね」
俺も笑った。
午後は砂浜へ行った。
テリーは波打ち際を走り回り、ステフは低く飛びながらそのあとを追いかけている。
「ワフ!」
「キュ!」
二匹とも随分と海に慣れたらしい。
ルナも靴を脱ぎ、砂浜を走っていた。
「アレン! こっち!」
「今行くよ!」
フェリシアと顔を見合わせる。
「ルナは本当に元気だね」
「うん。でも、楽しいよね」
「そうだね」
俺たちも靴を脱ぎ、波打ち際へ向かった。
◇
六日目。
俺たちは港の西側を散歩していた。
この辺りには造船所があるらしい。
近づくにつれて、木を打つ音や職人たちの掛け声が聞こえてきた。
「わあ!」
ルナが声を上げた。
目の前には、建造途中の大きな船が何隻も並んでいた。
骨組みだけの船もあれば、外側に板を張りつけている船もある。
職人たちが木槌を振るい、木材を運び、忙しそうに働いていた。
「船って、こうやって作るんだ!」
ルナが目を輝かせる。
「すごいね……」
フェリシアも大きな船を見上げた。
「こんなに大きなものを、木で作れるんだ」
「本当だね」
俺も感心した。
すると、造船所の奥から大きな声が聞こえてきた。
「せーの!」
「うおおっ!」
「もう少しだ!」
何だろう?
声のする方を見ると、十人ほどの職人たちが一本の巨大な木材を囲んでいた。
どうやら、船底に据える木材を動かそうとしているらしい。
縄を掛け、少しずつ持ち上げようとしている。
「くそっ! 重いな!」
「もう少し人を呼んでこい!」
職人たちは汗だくだ。
「大変そうだね」
ルナが呟いた。
「うん」
「ねえ、アレン。手伝ってあげようよ!」
「そうだね。聞いてみようか」
俺たちは職人たちに近づいた。
「あの、何かお手伝いできることはありませんか?」
声をかけると、年配の職人が振り返った。
「ん? お前さんたちは?」
「冒険者です」
「冒険者?」
「はい。重いものを運んでいるみたいだったので」
職人は俺たちを見比べた。
「気持ちはありがたいが、こいつは相当重いぞ。慣れない者が手を出すと危ないからな」
「そうなんですね」
すると、ルナが近くに積まれていた木材を指差した。
「じゃあ、あっちの木を運ぶのは?」
「ああ、そいつか。あれも三人がかりで運ぶものだが……」
「分かった!」
ルナは木材に近づくと、両手をかけた。
「よいしょっと!」
ひょい。
太い木材が持ち上がった。
「…………は?」
職人が固まった。
「これ、どこに運べばいいの?」
ルナは木材を抱えたまま、首を傾げている。
「い、いや……」
職人が目をこする。
「そいつは、三人で運ぶ木材なんだが……」
「そうなの?」
ルナが不思議そうな顔をした。
「そんなに重くないよ?」
「重いんだよ!」
職人が思わず叫んだ。
周りにいた職人たちも手を止め、ルナを見つめている。
「おい、見たか?」
「あの嬢ちゃん、一人で持ち上げたぞ……」
「嘘だろ?」
ルナはそんな声など気にせず、指定された場所へ木材を運んでいった。
「はい! 次は?」
「つ、次?」
年配の職人が困惑している。
「じゃあ、私も手伝おうかな」
フェリシアが言った。
近くには、金具や工具を詰めた木箱が並んでいた。
「この箱を運べばいいですか?」
「あ、ああ。だが、それもかなり重いぞ。二人で運んだ方が……」
「大丈夫です」
フェリシアは木箱を一つ持ち上げた。
さらに、もう一つ。
両手に一つずつ持って歩き始める。
「…………」
職人が口を開けたまま固まった。
「ここに置けばいいですか?」
「あ、ああ……」
フェリシアは二つの木箱を静かに下ろした。
「ほかにも運びますか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
職人が慌てて手を上げる。
「お嬢さん、魔法使いじゃないのか?」
「そうですけど?」
「魔法は使ってないよな?」
「はい。普通に持っているだけです」
「普通!?」
職人の声が裏返った。
周りでは、何人もの職人たちが呆然としていた。
……まあ、驚くよな。
《共有》のおかげで、ルナとフェリシアの筋力は普通の人とは比べものにならない。
俺たちは慣れているけど、初めて見た人には信じられない光景だろう。
「アレン!」
ルナが手を振った。
「私たち、まだ運べるよ!」
「そうだね」
俺は笑って頷いた。
そのとき、先ほどの巨大な木材が目に入った。
「あの……」
「な、何だ?」
年配の職人が警戒するように俺を見た。
「あちらの木材も、運んでしまいましょうか?」
「……は?」
「あの大きいのです」
俺が指差す。
職人は巨大な木材を見て、それから俺を見た。
「いやいやいや!」
慌てて首を振る。
「あれは無理だ! 十人がかりでも苦労してるんだぞ!」
「そうなんですね」
「そうなんですね、じゃねえよ!」
周りの職人たちが笑い始めた。
でも、あれくらいなら持ち上げられそうだ。
「一度やってみてもいいですか?」
「……本気か?」
「はい」
職人はしばらく俺を見つめていた。
やがて、ため息をつく。
「分かった。無理だと思ったらすぐにやめろよ」
「はい」
俺は巨大な木材へ近づいた。
「みなさん、少し離れていてください」
周りの職人たちが距離を取る。
俺は木材の重心を確かめ、両手をかけた。
「……よっと」
ぐっ。
木材が持ち上がった。
「…………」
誰も何も言わない。
あれ?
俺は木材を持ち上げたまま、職人たちを振り返った。
「どこに運べばいいですか?」
「…………」
「あの?」
「う、嘘だろ……」
年配の職人が呟いた。
「持ち上がった……」
「一人で……?」
「おい、誰か俺の頬をつねってくれ」
別の職人が隣の男の頬をつねった。
「痛てえ!」
「……夢じゃねえな」
「俺を使って確かめるな!」
周りから笑い声が上がった。
「すみません。どこに置きましょうか?」
俺がもう一度尋ねると、年配の職人が我に返った。
「あ、ああ! こっちだ!」
職人は慌てて船の骨組みを指差した。
「そこへ据えたいんだが、細かく位置を合わせないといけねえ。勝手に下ろさないでくれよ!」
「分かりました」
俺は木材を運び、指示された場所で支えた。
「もう少し右!」
「はい」
「いや、少し戻してくれ!」
「このくらいですか?」
「そうだ! そこで止めろ!」
職人たちが位置を確かめ、木材を固定していく。
「よし! ゆっくり下ろしてくれ!」
「はい」
俺は慎重に木材を下ろした。
どん。
「……よし。ぴったりだ!」
職人たちから歓声が上がった。
「やった!」
ルナも嬉しそうに手を叩く。
「お前さんたち……」
年配の職人が、俺たち三人を見つめた。
「いったい何者なんだ?」
「冒険者です」
俺が答える。
「いや、そういうことを聞いてるんじゃねえ!」
職人たちが一斉に笑い出した。
「三人とも、どれだけ力が強いんだよ!」
「こんな冒険者、初めて見たぞ!」
「特に兄ちゃん! お前、本当に人間か!?」
「えっ? 人間ですよ?」
「それが信じられねえんだよ!」
また笑い声が上がる。
その後も、俺たちは少しだけ作業を手伝った。
ルナが木材を運び、フェリシアが資材を運ぶ。
俺は職人たちの指示に従い、重い船材を持ち上げた。
もちろん、俺たちには船の作り方なんて分からない。
木材をどこに置くか、どう組み合わせるか。
そういうことは、全部職人たちが教えてくれた。
「そこは少し傾けてくれ!」
「はい!」
「お嬢ちゃん、その木材は向こうだ!」
「分かった!」
いつの間にか、造船所には威勢のいい掛け声が響いていた。
しばらくして、一区切りついたところで作業を終える。
「いやあ、助かった!」
年配の職人が笑った。
「お前さんたちのおかげで、随分と仕事が進んだよ」
「それならよかったです」
「それにしても、世の中にはとんでもない連中がいるもんだな!」
「そんなことないですよ」
また職人たちが笑った。
俺たちも一緒に笑う。
困っている人の手伝いをして、こんなに喜んでもらえる。
やっぱり、こういうのはいいな。
◇
造船所を出たあと、ルナが楽しそうに笑い出した。
「ねえ、アレン! さっきの人たち、すっごく驚いてたね!」
「そうだね」
「フェリシアが木箱を二つ持ったときなんて、口が開いたままだったよ!」
「ルナだって、すごく驚かれてたじゃない」
フェリシアが笑った。
「でも、一番すごかったのはアレンだよね!」
「うん。職人さんたち、しばらく何も言えなくなってたもん」
「そうかな?」
「そうだよ!」
ルナが大きく頷く。
「ねえ、アレン。私たちって、結構力持ちなんだね!」
「……今さら?」
思わず聞き返してしまった。
フェリシアが吹き出す。
「あはは! 確かに!」
「えー! だって、普段はそんなに重いもの持たないじゃん!」
「それはそうだけど……」
俺も笑った。
俺たちにとっては当たり前になっていた力でも、普通の人から見れば驚くほどのものなんだろう。
「でも、船ってすごいね」
フェリシアが造船所を振り返った。
「あんなにたくさんの木材を、ちゃんと組み合わせていくんだもん」
「うん。職人さんたち、すごかったね!」
ルナも頷いた。
力が強いだけでは、船は作れない。
俺たちにできたのは、ほんの一部分の手伝いだ。
でも、少しは役に立てたみたいだな。
◇
そして、七日目。
朝食の席に着くと、フェリシアが俺を見た。
「アレン、昨日は……」
「ちゃんと眠れたよ」
俺が答えると、フェリシアが少し驚いた顔をした。
「まだ聞いてないよ?」
「毎朝聞いてくれるからね」
「……そっか」
フェリシアが笑った。
「よかったね、アレン」
「うん。ありがとう」
戦争が終わってから、ずっと気にかけてくれている。
眠れなかった頃の俺を知っているからこそ、毎朝こうして聞いてくれるんだろう。
ありがたいな。
「ねえ、二人とも!」
ルナがパンを食べ終えて顔を上げた。
「今日はどうする?」
「そうだね……」
俺は少し考えた。
「今日は、のんびり過ごそうか」
「いいね!」
ルナが笑った。
「じゃあ、また海に行こう!」
「うん!」
俺たちは朝食を終え、宿を出た。
◇
夕方。
海辺で遊んでから宿へ戻り、三人で夕食を食べていた。
「この一週間、楽しかったね!」
ルナが言った。
「うん。いろいろな場所に行けたしね」
フェリシアが頷く。
「漁網を取りに行ったり、灯台に荷物を運んだり!」
「造船所のお手伝いもしたね」
「うん! あれは面白かった!」
ルナが嬉しそうに笑う。
「職人さんたち、すごく驚いてたもんね!」
「アレンが木材を持ち上げたときなんて、みんな固まってたよ」
フェリシアも笑った。
「あはは。あれはちょっと面白かったね」
「あと、美味しいものもいっぱい食べた!」
「それが一番大事なんだ?」
フェリシアが聞く。
「もちろん!」
即答だった。
俺たちは顔を見合わせて笑った。
ミナリアに来てから、いろいろなことを経験した。
海で遊び、船に乗り、珍しい料理を食べた。
依頼を受けてPとジェニーを稼ぎ、町の人たちの仕事も手伝った。
毎日があっという間だった。
それに、最近は朝まで眠れる日も増えている。
まだ行きたい場所はたくさんある。
でも、そろそろ別のこともしてみたいな。
そういえば、冒険者ギルドの掲示板にダンジョン探索の依頼があった。
「……ねえ、二人とも」
「何?」
ルナが顔を上げた。
「そろそろダンジョンにも行ってみたいな」
「ダンジョン!?」
ルナの目が輝いた。
「いいね! 行こうよ!」
「私も賛成」
フェリシアも頷いた。
でも、すぐに俺の顔を見つめる。
「アレン、本当にいいの?」
「うん」
俺は頷いた。
「久しぶりに、ダンジョンを探索したくなったんだ」
「……そっか」
フェリシアが嬉しそうに笑った。
「じゃあ、明日はギルドで詳しい話を聞いてみようか」
「うん!」
「やった! 楽しみ!」
ルナが両手を上げた。
「ワフ!」
「キュ!」
テリーとステフも元気よく鳴いた。
まだ行ったことのないダンジョン。
そこには、どんな魔物がいるんだろう。
どんな景色が広がっているんだろう。
それを想像すると、自然と楽しみになってきた。
また新しい冒険が始まりそうだ。
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