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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第10章 再び南へ

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第181話 海のごちそう

 翌朝。


「アレン! あったよ!」


 港へ着くなり、ルナが声を上げた。


 岸壁に、小さな帆船が停まっている。そばの看板には、沿岸を巡る船だと書かれていた。


「昨日、船乗りさんが教えてくれたのって、これかな?」


「聞いてみようか」


 船に近づくと、日に焼けた男が声をかけてきた。


「乗っていくかい? 岬を回って、昼前には帰ってくるよ」


「乗ります!」


「ははっ。元気だな!」


 どうやら船長らしい。


「あの、従魔も一緒で大丈夫ですか?」


「ワフ!」


「キュ!」


 テリーとステフが顔を上げる。


 船長は二匹を見て、一瞬目を丸くした。


「ずいぶん珍しいのを連れてるな。おとなしくしていられるなら構わんよ。ただ、船の上で走り回るのはなしだ」


「分かりました」


 料金を払い、俺たちは船に乗った。


 ほかの客は、小さな男の子とその母親だけ。船長と船員が二人いる。


 足元が、ゆっくり揺れた。


「わっ!」


 ルナが手すりを掴む。


「まだ動いてないのに揺れてる!」


「船だからね」


 フェリシアが笑った。


「ワフ……?」


 テリーは四本の足を少し広げ、じっと甲板を見下ろしている。


「テリーも初めてだもんね」


 ルナが頭を撫でた。


 ステフは海鳥を追うように翼を広げかけたが、俺は声をかけた。


「ステフ、船が動いている間は近くにいてね」


「キュ!」


 船員が岸壁の綱を外す。


 白い帆が風を受け、船がゆっくり港を離れた。


「動いた!」


 ルナが嬉しそうに笑った。


 ◇


 港の外へ出ると、海の色が変わった。


 浅瀬の緑はしだいに濃い青へ移り、朝日を受けた波が船の両側で細かく光っている。


 振り返ると、ミナリアの建物が少しずつ小さくなっていた。


 昨日遊んだ砂浜も、海岸線に沿って細く伸びている。


「見て! 町があんなに遠くなった!」


 ルナが手すりに駆け寄る。


「乗り出しすぎないようにね」


「分かってる!」


 そう言って、今度は船首の方を見ている。


 フェリシアは帆を見上げた。


「こんなに大きな布一枚で進むなんて、不思議だね」


「帆の向きを変えれば、横からの風も使えるんだよ」


 近くの船員が教えてくれた。


「へえ……」


 フェリシアが興味深そうに帆と綱を見比べている。


 テリーも揺れに慣れたのか、俺の足元に座って潮風に鼻先を向けた。


「気持ちいいね」


「ワフ!」


 船の横で銀色の小魚が跳ねた。


「あっ、魚!」


 ルナが指差す。


「本当にいっぱい泳いでるんだね!」


 ◇


「船長さん!」


 ルナが舵のそばにいる男に声をかけた。


「海にも魔物っているんですか?」


「ああ、いるさ。ただ、ミナリアの沿岸じゃ滅多に出ない。船の往来も多いし、警備船も巡回しているからな」


「じゃあ、ここは安全なんだね!」


「比較的な。沖に出れば事情も違うが、この辺りで会うのは普通の魚ばかりだよ」


 船長が笑った。


 その時だった。


「……ん?」


 《魔力感知》に反応があった。


 海中に一つ。


 船の右前方から、かなりの速さで近づいてきている。


「アレン?」


 フェリシアが俺を見る。


「魔物がいる。海の中だ」


「えっ?」


「船長さん。右前方から魔物が近づいています」


「何だって?」


 船長が顔を向けた、その直後。


 ばしゃっ!


 小魚の群れが一斉に海面から跳ねた。


 その後ろを、銀色の大きな影が追っている。


「……銀鱗カジキだ!」


 船長の顔色が変わった。


「沖にいるはずの魔物だぞ。どうしてこんなところに!」


 魚を追って、沿岸まで入り込んだのかもしれない。


 大きな影が進路を変える。


 今度は、船首へ向かってきた。


「船尾へ下がって! 手すりから離れろ!」


 船長の声で、船員たちが動き出した。


 男の子が怖がって、母親の服を掴んでいる。


「テリー、二人のそばにいてあげて」


「ワフ!」


 テリーは親子の前へ移動した。


 ルナもそちらへ向かい、ステフを抱き上げる。


「ステフ、今は飛ばないでね」


「キュ!」


「フェリシア、船に近づけないようにできる?」


「やってみる!」


 フェリシアが杖を構えた。


 俺は船首へ進み、竜爪剣を抜いた。


 ◇


 《魔力感知》の反応が急に浮き上がる。


「右から来る!」


 海面を割って、銀鱗カジキが跳び出した。


 全長は二メートルほど。青みを帯びた銀色の身体に、槍のように長い口先が伸びている。


 その先端が船腹へ向いた。


「《魔弾》!」


 フェリシアの魔弾が、魚の進路の手前で海面を叩いた。


 どんっ!


 水柱が上がり、銀鱗カジキの向きがわずかに変わる。


 船から外れた。


 でも、まだ空中だ。


 俺は船べりを蹴った。


 口先をかわし、鰓の後ろへ竜爪剣を振り抜く。


 シュッ!


【600P獲得】


「……よし!」


 魚体が海へ落ちる前に、左手で尾を掴んだ。


 ずしりと重さが腕にかかる。


 身体をひねって勢いを殺し、船べりを越えて甲板へ引き上げた。


 どさっ!


「……お、おい!」


 船長が魚と俺を交互に見る。


「今のを、船の上から仕留めたのか?」


「はい。何とか」


「何とかって……!」


 船員たちまで口を開けていた。


「アレンはSランクなんだよ!」


 ルナが得意そうに言った。


「Sランク!?」


 船長がもう一度魚を見る。


「それなら納得……いや、やっぱりすげえな!」


 俺は剣をしまった。


 親子も無事だったらしい。


 男の子はテリーの背中を撫でている。


「ワフ!」


「助かったよ。ありがとう!」


 船長が頭を下げた。


「船腹にあの口先を突き立てられていたら、危なかった」


「皆さんが無事でよかったです」


 それにしても、久しぶりにPを獲得したな。


 六百P。


 見慣れた表示が、今日は素直に嬉しかった。


「……それにしても」


 船長が甲板の銀鱗カジキにしゃがみ込む。


「立派なやつだ。これだけ傷が少なけりゃ、いい値がつくぞ」


「売れるんですか?」


「売れるどころじゃない。滅多に獲れない高級魚だ。肉がとびきり美味いんだよ」


「……美味しい?」


 ルナがすぐに反応した。


「食べられるの!?」


「もちろん!」


「アレン!」


「……分かったよ」


 フェリシアが笑った。


 ◇


 安全を確かめるため、船は予定を切り上げて港へ戻ることになった。


 船長は俺たちに礼を言い、知り合いの料理屋を紹介してくれた。


「銀鱗カジキは港でもそうそう入らない。ちゃんと料理できる店を知ってるんだ」


「それなら、お願いしたいです」


「いいのか? 売ればかなりの金になるぞ」


「みんなで食べましょう。船長さんたちの分もありますよ」


「おお、ありがたい!」


 店へ魚を運ぶと、料理人が目を丸くした。


「銀鱗カジキじゃないか! どこで手に入れたんだ?」


「船を襲ってきたんだよ。この子たちが仕留めてくれた」


「……こいつを?」


 料理人は俺たちを見てから、魚を確かめた。


「鰓の後ろに傷が一つか。これなら身をほとんど無駄にせずに済むな」


「調理できますか?」


「任せてくれ。何度か扱ったことがある。しっかり火を通して、いちばん美味いところを食わせてやるよ」


「やった!」


 ルナが両手を上げた。


 料理ができるまで、俺たちは店の席で待った。


「どんな味なのかな?」


「もう少ししたら分かるよ」


「待ちきれない!」


 ほどなくして、炭火で焼いた厚切りの身が運ばれてきた。


 表面にはきれいな焼き色がつき、香草と魚の香ばしい匂いが漂う。


「いただきます!」


 ルナが真っ先に口へ運ぶ。


「……!」


「どう?」


「……すっごく美味しい!」


 俺も一口食べる。


「……あ、本当だ」


 身はふっくらとしていて、噛むほど脂の旨みが広がった。普通の魚より味が濃い気がする。


「昨日食べた魚も美味しかったけど、これは別格だね」


 フェリシアも嬉しそうだ。


「アレン、もう一切れ食べてもいい?」


「もちろん」


「やった!」


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹からも催促の声が上がった。


 料理人に頼んで、骨を除いて火を通した味付けなしの身を分けてもらう。


 テリーはあっという間に平らげ、ステフも満足そうに鳴いた。


「ステフまでおかわり?」


「キュ!」


 ルナが笑う。


 少し離れた席では船長と船員たちも魚を食べている。


 さっきの親子にも、持ち帰れる分を包んでもらった。


「まさか遊覧船に乗って、こんなご馳走を食べることになるなんてな!」


 船長の声に、店のみんなが笑った。


 ◇


 夕方。


 宿の食堂で夕食を取っていると、ルナがまた銀鱗カジキの話を始めた。


「また食べたいなあ」


「滅多に出ないんでしょ?」


 フェリシアが笑う。


「そうだけど!」


「毎回船を襲われたら困るよ」


 俺が言うと、ルナも頷いた。


「それはそうだね。でも、次に見つけたらまた食べたい!」


「……食べることばっかりだな」


「美味しかったんだもん!」


 俺も笑った。


 今日の六百Pで、保有Pは九万五千七百になった。


 あれだけの魔物を倒しても、今の俺には小さな増加だ。


 それでも、嬉しい。


 誰も怪我をしなかったし、珍しい料理も食べられた。


「ねえ、アレン」


 フェリシアが聞いた。


「明日はどうする?」


「そうだな……」


 まだ港町には見ていないものがある。


 それに、久しぶりに《会員》の能力一覧も見返したい。


「明日は、ちょっと《会員》を確認してみようかな」


「何か使うの?」


 ルナが身を乗り出す。


「まだ決めてない。せっかくPも増えたし、今の自分に何が必要か考えようと思って」


「いいね!」


 テリーが足元で尻尾を振り、ステフも翼をぱたぱたと動かした。


 旅はまだ始まったばかりだ。


 次は何をしてみようか。


 そう考えるのが、また楽しみになっていた。


【保有:95,700P】

【累計獲得P:552,910P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
毎回直ぐにランクをバラすの女達は何なのだろう…低ランクの時はそんな事なかったが…ランクを鼻にかけた嫌な感じになってるね
ポイントへの罪悪感は今後も残るでしょう。 それでも、アレン君に笑って過ごせる日々を取り戻して欲しいと思います。 以前のほがらかな彼に逢える日が来ることを願っています。
ジュルリ涎が、、、フライにムニエル、照り焼き、刺身等々 日焼けした四角い顔のおっさんがw Sランクに恥じない成長を期待してます
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