第18話 強くなった魔弾
翌朝。
《銀麦亭》で朝食を済ませ、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。
今日は七階へ行く。
Dランク用の掲示板を確認すると、ちょうどいい依頼があった。
【グランドリザード 二体討伐】
【対象:ベルガント西部ダンジョン第七階層】
【報酬:120,000ジェニー】
「これにします?」
「はい」
依頼書を受付へ持っていく。
いつもの受付嬢は内容を確認すると、少し驚いた顔をした。
「七階へ行かれるんですか?」
「そのつもりです」
「昨日まで六階でしたよね?」
「はい」
「……分かりました。ただ、七階からは魔物もさらに強くなります。
無理だと思ったらすぐに戻ってきてください」
「分かりました」
依頼を受け、ダンジョンへ向かった。
◇
一階から六階までは、ほとんど足を止めずに進んだ。
二階でケイブラットを六体倒す。
【30P獲得】
三階ではストーンリザードが一体現れた。
飛びかかってきたところをかわし、腹へ剣を入れる。
【120P獲得】
【累計獲得P:10,150P】
【保有:440P】
それ以外の魔物とはほとんど遭遇せず、そのまま六階を抜けた。
七階へ続く階段の前で、フェリシアが立ち止まる。
「いよいよですね」
「魔弾、試してみましょう」
「はい。魔力が増えて、どこまで変わるのか見てみたいです」
二人で階段を下りた。
◇
七階は六階よりも通路が広かった。
岩壁は湿っていて、ところどころ水が滴っている。
ランタンを持って進んでいると、大きな身体が通路の奥から現れた。
「グランドリザードです」
依頼書に描かれていた魔物だ。
四本脚の巨大なトカゲ。
三階にいたストーンリザードより二回り近く大きく、背中から脇腹まで分厚い鱗に覆われている。
「グルルル……」
グランドリザードが低く唸った。
「まず私が撃っていいですか?」
「お願いします」
フェリシアが杖を向ける。
「《魔弾》!」
光弾が飛ぶ。
バシッ!
グランドリザードの肩へ命中した。
「グギャッ!」
だが、分厚い鱗にはほとんど傷がない。
「……威力は前と変わってないですね」
「魔力は増えてるんですけどね」
フェリシアが杖の先を見る。
グランドリザードが動いた。
「《魔弾》!」
二発目。
今度は外れる。
グランドリザードがそのままフェリシアへ走ってきた。
俺が間へ入ろうとする。
「大丈夫です!」
フェリシアが横へ動いた。
巨大な顎が空を切る。
共有のおかげで、七階でも身体の動きには十分ついていけている。
「《魔弾》!」
三発目が前脚へ当たった。
グランドリザードの動きがわずかに鈍る。
フェリシアが距離を取った。
「普通に撃つだけだと、やっぱり前と同じです」
「でも、使える魔力は増えてるんですよね」
「はい」
フェリシアが少し考える。
「だったら、一発に使う魔力を増やせるかもしれません」
「そんなことできるんですか?」
「やってみます」
フェリシアはすぐには撃たなかった。
杖の先へ意識を集中する。
少しずつ光が大きくなる。
いつもの《魔弾》より明らかに魔力が集まっていた。
「グルアアッ!」
グランドリザードが再び走る。
「フェリシアさん!」
「もう少し……!」
距離が縮まる。
フェリシアが顔を上げた。
「《魔弾》!」
ドンッ!
さっきまでとは違う音がした。
光弾がグランドリザードの肩へ直撃する。
「グギャアッ!」
分厚い鱗が割れた。
「……割れた」
フェリシア自身が一番驚いていた。
「かなり違いますね」
「はい。いつものより、ずっと魔力を入れました」
グランドリザードが身体を起こす。
「仕留めます」
「お願いします!」
踏み込む。
動きは十分見える。
割れた鱗のところへ剣を入れた。
「グギャッ!」
もう一撃。
巨体が地面へ倒れた。
【500P獲得】
【累計獲得P:10,650P】
【保有:940P】
「五百P」
「七階だけあって多いですね」
魔石と鱗を回収する。
フェリシアはまだ杖の先を見ていた。
「どうしました?」
「使い分けられそうです」
「使い分け?」
「今まで通りなら、すぐ撃てますし魔力もあまり使いません。
でも、さっきみたいに多く魔力を込めれば、時間はかかりますけど威力を上げられます」
「なるほど」
「相手によって変えた方がよさそうです」
フェリシアが少し嬉しそうに笑った。
「練習してみます」
◇
さらに七階を進む。
次に現れたのは、アーマードエイプより一回り小さな猿型の魔物だった。
口から長い牙が伸びている。
「ファングエイプです!」
「ウギャアッ!」
地面を蹴る。
速い。
最初からフェリシアを狙っていた。
「《魔弾》!」
今度は溜めない。
すぐに一発。
ファングエイプが身体をひねってかわす。
そのまま横から回り込む。
フェリシアも動いた。
「《魔弾》!」
二発目が脚へ当たる。
「ギャッ!」
速度が少し落ちる。
フェリシアがさらに距離を取った。
「《魔弾》!」
三発目。
同じ脚。
ファングエイプの体勢が崩れる。
俺が踏み込んだ。
首へ剣を入れる。
【450P獲得】
【累計獲得P:11,100P】
【保有:1,390P】
「今度は多く込めなかったんですね」
「はい。あんなに速い相手だと、溜めてる間に近づかれちゃいます」
「確かに」
「普通に撃つ方と、強く撃つ方。両方練習します」
「いいと思います」
俺たちはさらに奥へ進んだ。
◇
二体目のグランドリザードを見つけたのは、それからしばらくしてからだった。
「グルルル……」
「今度こそ私だけで鱗を割ってみます」
「お願いします」
フェリシアが杖を向ける。
最初からいつもより多く魔力を込め始めた。
光が大きくなる。
「《魔弾》!」
放たれた。
だが、グランドリザードが首を動かす。
高出力の魔弾は肩の横を抜け、岩壁へぶつかった。
「外した!」
グランドリザードが走ってくる。
フェリシアは横へかわしながら距離を取る。
「やっぱり、溜めながら狙うのは難しいですね」
今度はすぐに撃った。
「《魔弾》!」
前脚へ命中。
もう一発。
「《魔弾》!」
同じ場所に当たる。
グランドリザードの動きが鈍った。
そこでフェリシアが足を止める。
杖の先へ魔力を集めた。
「今度こそ……!」
グランドリザードはまだ思うように走れない。
「《魔弾》!」
ドンッ!
高出力の一撃が脇腹へ入った。
鱗が割れる。
「やった!」
「行きます!」
割れたところへ剣を入れた。
もう一撃。
【500P獲得】
【累計獲得P:11,600P】
【保有:1,890P】
フェリシアが駆け寄ってくる。
「今のはよかったですね」
「はい。最初から強いのを狙う必要はないんですね」
「動きを止めてからなら当てやすいですし」
「普通の魔弾で動きを止めて、強い方を当てる」
フェリシアが頷く。
「これなら使えそうです」
依頼対象は二体とも倒した。
まだ時間はある。
「どうします?」
俺が聞く。
フェリシアは少し考えてから答えた。
「もう少し行きません?」
「大丈夫ですか?」
「はい。七階でも戦えそうです」
「俺もまだ余裕があります」
「じゃあ行きましょう」
その後もしばらく七階を探索し、夕方になる前に戻ることにした。
◇
ギルドへ戻り、グランドリザード二体分の討伐証明を出す。
「確認しました。依頼達成です」
報酬は十二万ジェニー。
続いて今日集めた素材を査定してもらう。
グランドリザード二体分の魔石と鱗。
ファングエイプの魔石と牙。
道中で倒した魔物の素材。
査定額は四十三万ジェニーだった。
「依頼報酬と合わせて、五十五万ジェニーです」
「五十五万……」
フェリシアが金額を見る。
二人で分ければ、一人二十七万五千ジェニー。
「七階になると、また上がりましたね」
「素材の質も高くなりますから」
受付嬢が答える。
「それにしても……」
「どうしました?」
「七階の依頼を受けたの、今朝ですよね?」
「はい」
「怪我もないんですか?」
「ありません」
受付嬢が俺とフェリシアを交互に見る。
「……すごいですね」
フェリシアが少し笑った。
「七階でも大丈夫そうです」
「もうですか?」
「はい」
受付嬢は何か言いたそうだったが、それ以上は言わなかった。
そのとき、表示が現れる。
【依頼達成を確認しました】
【100P獲得】
【本日の獲得P:1,700P】
【累計獲得P:11,700P】
【保有:1,990P】
依頼を達成した分もしっかりPになった。
◇
夜。
《銀麦亭》の部屋で《会員》を開いた。
【保有:1,990P】
能力強化なら一回買える。
【筋力強化(大) 1,000P】
【耐久強化(大) 1,000P】
【敏捷強化(大) 1,000P】
【魔力強化(大) 1,000P】
その下にある《固有スキル購入》も開く。
【《付与》 10,000P】
今回は使わない。
《付与》を買うまでは貯めると決めた。
表示を閉じ、一階の食堂へ下りる。
フェリシアは先に席についていた。
「明日はどうします?」
「高出力の魔弾をもう少し練習したいです」
「じゃあ七階?」
フェリシアが少し笑う。
「……八階、行ってみません?」
「俺もそう言おうと思ってました」
「じゃあ決まりですね」
明日は八階だ。
累計獲得P=11,700P
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!




