第17話 ゴールド会員
【会員ランク上昇条件を達成しました】
【会員ランクが上昇します】
【シルバー → ゴールド】
「……え?」
「どうしました?」
隣にいたフェリシアがこちらを見る。
「ゴールド会員になりました」
「ゴールド?」
「累計獲得Pが一万に達したからだと思います」
「何か変わったんですか?」
「たぶん。でも……」
周囲を見る。
ここは冒険者ギルドだ。
受付から離れているとはいえ、ほかの冒険者もいる。
「ここではやめておきましょう。宿に戻ってから確認します」
「あ、そうですね」
今日の報酬と素材の代金を受け取り、俺たちは《銀麦亭》へ戻った。
◇
自分の部屋へフェリシアを呼び、《会員》を開く。
【会員ランク:ゴールド】
【ゴールド会員特典が解放されました】
【能力強化特典が拡張されました】
【能力値上昇に伴い、回復特典が更新されました】
【《共有》が拡張されました】
【《固有スキル購入》が解放されました】
「……かなり増えてる」
「そんなにですか?」
「はい。四つあります」
「順番に見ましょう」
「そうですね」
最初に能力強化を開いた。
◇
【筋力強化(大) 1,000P】
【耐久強化(大) 1,000P】
【敏捷強化(大) 1,000P】
【魔力強化(大) 1,000P】
【一回の購入につき基礎能力値+180】
「百八十……」
シルバー会員の最後は、二百P使って三十上げていた。
ゴールドでは一度に千P必要になる代わりに、一回で百八十上がる。
だが、それ以上に気になる項目があった。
「魔力強化?」
「魔力も上げられるようになったんですか?」
「みたいです」
これまでPで上げられたのは、筋力、耐久、敏捷だけだった。
俺の魔力は最初からずっと18のままだ。
「魔力を上げたら、アレンさんも魔法を使えるようになるんでしょうか?」
「それは分かりません」
魔力だけあっても、魔法の使い方を知らなければ使えないかもしれない。
でも、別の使い道ならすぐに思いついた。
「フェリシアさん」
「はい?」
「俺の魔力を上げたら、共有される魔力も増えますよね」
「あ」
フェリシアも気づいた。
俺の魔力は18。
今フェリシアへ渡っているのは、その一割を切り捨てた1だけだ。
一度強化すれば、魔力は198になる。
「共有なら十九ですか?」
「そうなります」
「一気に増えますね」
「かなり」
「それ、試してみたいです」
「俺もです」
だが、買う前に残りの特典も確認する。
◇
次は回復だった。
【半回復 50P】
【全回復 100P】
「二つになってる」
「半回復?」
説明を開いた。
【半回復】
【負傷・疲労をおよそ半分まで回復します】
【全回復】
【負傷・疲労を完全に回復します】
「全回復は百Pになったんですね」
「前は五十Pでしたよね?」
「はい」
能力値が大きく上がった影響なのか、完全に回復するために必要なPも増えたらしい。
代わりに、軽い怪我や疲労なら五十Pで済ませられる。
「使い分けられるようになったと思えば便利ですね」
「軽い怪我で百P使わなくていいですもんね」
「そうですね」
今のP収入なら、百Pでも緊急時には十分使える。
続いて《共有》を開いた。
【《共有》が拡張されました】
【共有可能人数:1名 → 2名】
【共有率:10%】
【共有メンバーごとに、会員本人の基礎能力値10%を移譲します】
「二人?」
「もう一人増やせるんですか?」
「そうみたいです」
今の共有メンバーはフェリシア一人だけだ。
「二人に共有したら、アレンさんからは二割分なくなるってことですよね」
「二人とも同じ能力を共有するなら、そうなりますね」
「それでも使うんですか?」
「今は二人目がいませんから」
「仲間が増えたら考える?」
「はい。相手の同意も必要ですし」
急いで二人目を探す必要はない。
必要になったときに考えればいい。
そして最後。
今回一番気になっていた項目を開く。
【固有スキル購入】
「……これか」
「固有スキルって、あの固有スキルですよね?」
「たぶん」
この世界では、固有スキルは授与の儀で与えられるものだ。
普通は後から選んで手に入れられるものではない。
それを《会員》ではPで買えるらしい。
一覧を開いた。
【5,000P】
《身体強化》
《気配察知》
《暗視》
《高速思考》
《魔力操作》
《剣士》
《再生》
《収納》
《隠密》
《魔力感知》
「五千P……」
「結構しますね」
「でも、買えるんですね」
一つずつ目で追う。
どれも使い道がありそうだった。
特に気になったのは《収納》。
「これ、冒険者にはかなり便利そうですね」
「ロックアーマーも丸ごと持って帰れたりします?」
「どれくらい入るかによりますけど」
「入るなら欲しいですね」
持ち帰れないから置いてきた素材は何度もある。
収納できる量が十分なら、それだけでも一日の稼ぎが増える。
次に《剣士》を見る。
「アレンさん、そこも気になります?」
「かなり」
今の俺は身体能力に頼って戦っている。
カイルやクロードのような剣の技術が身についているわけではない。
さらに下を見る。
【10,000P】
《付与》
《剣豪》
《魔豪》
《弓豪》
《斧豪》
《槍豪》
《拳豪》
「一万P……」
五千Pのさらに倍。
《剣豪》の文字で目が止まった。
剣を扱う固有スキルには、剣士、剣豪、剣聖、剣神の順に格がある。
剣士は比較的多い。
剣豪でも一年に一人現れるかどうか。
その上の《剣聖》になると数年に一人。
カイルが持っているのは、その《剣聖》だ。
「《魔豪》もあります」
フェリシアが表示をのぞき込む。
「気になります?」
「それは気になりますよ」
攻撃魔法を使うフェリシアなら、当然だろう。
「でも、買えるのはアレンさんですよね」
「今の表示を見る限りでは、そうですね」
「残念です」
フェリシアが笑う。
その横にある《付与》を見る。
名前だけでは分からない。
詳細を開いた。
【《付与》】
【魔力を用いて、対象または装備品へスキル、強化効果を付与する固有スキル】
「……スキル?」
「どうしました?」
「これを見てください」
フェリシアへ表示の内容を説明した。
「対象にスキルまで付与できるって書いてあります」
「私にも?」
「人間が対象になるかは分かりません」
説明には、それ以上書かれていない。
ただ、もし人間にも使えるなら。
「フェリシアさんをもっと強くできるかもしれません」
「私を?」
「はい」
六階では、フェリシアの身体能力はすでについてこられるようになった。
問題は魔法だった。
魔力。
魔弾の威力。
それ以外にも強化する方法があるなら、試してみたい。
「これ、欲しいですね」
「一万Pですよ?」
「高いですけど」
六階だけでも三日間で三千P以上稼いでいる。
一万Pはすぐには貯まらない。
それでも届かない数字ではない。
その前に試せることがある。
「まず、魔力を上げてみましょう」
「今ですか?」
「Pはありますから」
現在の保有Pは1,290。
《魔力強化(大)》を一回買える。
【魔力強化(大) 1,000P】
【購入しますか?】
購入する。
【魔力強化(大)を購入しました】
【魔力:18 → 198】
【1,000Pを使用しました】
【保有:290P】
「上がった」
「百八十ですか?」
「はい」
フェリシアがすぐに自分の能力を確認する。
【名前:フェリシア・ロート】
【筋力:11+101】
【耐久:13+100】
【敏捷:17+118】
【魔力:33+19】
「……十九」
フェリシアが魔力の数字を見る。
「今まで一でしたよね?」
「一気に十九になりました」
「十八も増えてる……」
フェリシアが自分の手を見た。
「何か違います?」
「なんとなく、いつもより魔力がある感じはします。でも……」
「実際に魔法を使わないと分からない?」
「はい」
「それなら、明日試しましょう」
部屋の中で《魔弾》を撃つわけにはいかない。
フェリシアがもう一度、固有スキル一覧を見る。
「次は五千Pを貯めるんですか?」
「いや」
「違うんですか?」
俺は《付与》へ視線を戻した。
【《付与》 10,000P】
「一万P貯めようと思います」
「また一万ですか?」
「これを試してみたいです」
「あと九千七百十Pですよ?」
「結構ありますね」
「ありますよ」
「でも、もっとダンジョンで下の階へ行けばPも増えるかもしれません」
フェリシアが少し考える。
「じゃあ、また六階ですか?」
「……七階へ行ってみません?」
「七階?」
「六階ではフェリシアさんも動けるようになりました。それに魔力も増えましたし」
フェリシアが自分の手を見る。
少しして顔を上げた。
「行ってみましょう」
「危なかったら戻ります」
「もちろんです」
次は七階。
まずは、増えた魔力が《魔弾》にどれだけ影響するのか確かめよう。
累計獲得P=10,000P
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