↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第10章 再び南へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
175/210

第175話 テリーのお母さん

 数日後。


 俺たちはベルガントを南へ向かっていた。


「もうすぐだね」


 フェリシアが前を見る。


「うん」


 遠くに大きな森が見えてきた。


 以前、ベルガント伯爵から依頼を受けて調査した森だ。


 さらに南へ抜ければミラディアがある。


「ワフ!」


 テリーが元気よく走っている。


 その横ではステフが飛んでいた。


 以前よりも上手に飛べている。


「キュ!」


 少し後ろからは、テリーのお母さんがついてきている。


 薬で操られていた時とは全然違う。赤かった目は元に戻り、足取りもしっかりしていた。


 傷もほとんど治っている。


 もう俺たちが守らなくても大丈夫そうだ。


◇


 以前、調査した場所から離れた位置で足を止めた。


「ここ?」


 ルナが聞く。


「うん」


 木々がどこまでも続いている。


 中へ入った時にも思ったが、かなり大きな森だ。


 川もあり、魔物もいる。人の住む町からも離れている。


 テリーのお母さんが暮らすなら、多分ここがいい。


「グル……」


 母フェンリルが森を見る。


 ルナがその横へ歩いていった。


「ねえ」


「グル?」


「もう体は大丈夫?」


 母フェンリルがルナを見る。


 少し歩いてから、もう一度ルナへ顔を向けた。


「大丈夫そうだね」


「グル」


 ルナが少し笑う。


 それから森を見た。


「ここなら暮らせると思う」


「……」


「ずっと私たちと一緒にいるわけにもいかないもんね」


 母フェンリルは従魔じゃない。


 巨大なフェンリルを連れて町へ入れば、そのたびに騒ぎになる。王都でもそうだった。


 それに何より、元々は野生で生きていた魔物だ。


「どうしたい?」


 ルナが聞く。


 もちろん、言葉で答えるわけじゃない。


 母フェンリルはルナを見たあと、テリーへ視線を移した。


「ワフ?」


 テリーが首を傾げる。


 母フェンリルがゆっくり森へ向かって歩き始めた。


 十歩ほど進んだところで立ち止まり、振り返る。


「グル」


「ワフ!」


 テリーが走った。


「テリー」


 ルナは呼び止めなかった。


 母親のところまで走っていく。


「ワフ! ワフ!」


「グル……」


 二匹が顔を寄せる。


 母フェンリルがテリーの顔を舐めた。


 ルナは黙って見ていた。


 フェリシアも、俺も何も言わない。


 テリーは母親と一緒に行くかもしれない。


 それなら、それでいい。


 ずっと離れていた母親と、ようやく会えたんだから。


「ワフ」


 テリーが母フェンリルの横に並んだ。


 そのまま二匹で森へ向かって歩き始める。


 ルナの手が少しだけ動いた。


「ルナ」


 フェリシアが小さく名前を呼ぶ。


「大丈夫」


「……うん」


「テリーが決めることだから」


 ルナは笑った。


 少し寂しそうだった。


 テリーの姿が木々の近くまで進んだ。


 このまま行くのかな。


 そう思った時、母フェンリルが止まった。


「グル」


「ワフ?」


 テリーを見る。


 鼻先を寄せ、もう一度顔を舐めた。


「グル……」


「ワフ……」


 テリーが小さく鳴く。


 そして、こっちを見た。


 ルナと目が合う。


「テリー」


 それでもルナは呼ばなかった。


 テリーが母親を見る。


 次にルナを見る。


 もう一度、母親を見る。


「ワフ!」


 走り出した。


「え?」


 こっちへ。


「ワフ! ワフ!」


「テリー!」


 ルナのところまで戻ると、そのまま飛びついた。


「うわっ!」


 ルナが受け止める。


「ワフ!」


「テリー……」


 ルナがぎゅっと抱きしめた。


「こっちでいいの?」


「ワフ!」


「お母さんと行かなくていいの?」


「ワフ!」


「……そっか」


 ルナが笑う。


 今度はちゃんと嬉しそうだった。


「ありがとう」


「ワフ!」


「キュ!」


 ステフもテリーの周りを飛ぶ。


「キュ! キュ!」


「ワフ!」


 フェリシアが笑った。


「ステフも嬉しそう」


「うん」


 俺も少し笑った。


◇


 母フェンリルはまだそこにいた。


「グル」


「ワフ!」


 テリーが鳴く。


「グル……」


 母フェンリルが返す。


 何を言っているのか、俺には分からない。


 でも、多分これでいいんだと思う。


 母フェンリルがルナを見る。


「?」


 ゆっくり近づいてきた。


「え?」


 ルナの前で止まり、大きな顔を近づける。


 ルナも動かない。


 母フェンリルがルナの頬を一度だけ舐めた。


「わっ」


 そして離れる。


「もしかして」


 フェリシアが言った。


「テリーをお願いってことかな?」


「……そうだったら嬉しいな」


 ルナがテリーの頭を撫でる。


「大事にするから」


「ワフ!」


 母フェンリルが森へ向き直った。


 今度は振り返らずに歩いていく。


 大きな体が木々の間へ入り、少しずつ遠ざかっていった。


 テリーは追いかけなかった。


 ルナの隣に座っている。


「ワフ……」


 少しだけ寂しそうな声だった。


 ルナがしゃがむ。


「また会いに来ようね」


「ワフ?」


「ここなら、また来られるから」


「ワフ!」


「うん」


 やがて母フェンリルの姿は森の奥へ消えた。


「……行っちゃったね」


 フェリシアが言う。


「うん」


 ルナはしばらく森を見ていた。


「寂しい?」


「うん。でも、これでよかったと思う」


 ルナがテリーを見る。


「ワフ!」


「お母さんも自由になれたし」


「うん」


 薬で操られ、戦わされて、自分の子供まで襲いかけた。


 もう、そんなことはない。


 これからは自分の好きな場所で生きられる。


「行こうか」


 俺が言った。


「うん」


「ワフ!」


「キュ!」


 ルナの横をテリーが歩き、その近くをステフが飛んでいる。


「アレン」


「何?」


 フェリシアが聞いた。


「これからどうする?」


「これから?」


「うん」


「……」


 少し考える。


 戦争は終わった。


 依頼も終わった。


 ずっと目標にしていたSランクにもなった。


 今までは、次にやることがいつもあった。


 でも今は違う。


「……まだ分からない」


「そっか」


「うん」


「じゃあ、ゆっくり考えればいいんじゃない?」


 フェリシアが笑う。


「そうだね」


 ルナも頷いた。


「急がなくてもいいと思う」


「うん」


 森を一度振り返る。


 もう母フェンリルの姿は見えなかった。


 俺たちは再び歩き始めた。


 次にどこへ向かうのかは、まだ決まっていない。


【保有:100,100P】

【累計獲得P:552,310P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
戦争終わったっぽいから、この辺で10章にした方が良いのでは?
ポイントが微減、、、? 寝れなくて強制的に回復させている、、、?
1500ポイント減ってる…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。