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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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第173話 英雄

 数日後。


 北部の戦後処理がある程度進み、俺たちはドレイモンド領を離れることになった。


「では、ここで別れる」


 スコッティ公爵が言った。


「はい」


 まだ北部には、やることがたくさん残っている。


 捕虜の管理。


 負傷者の治療。


 ドレイモンド領の治安維持。


 それに、トンプソン大橋の警戒も必要だ。


「アレン」


「はい」


「今回、本当に助かった」


「いえ」


「バスクを討ち、ジェリドまで倒した。お前がいなければ、どうなっていたか分からん」


「……ありがとうございます」


 スコッティ公爵が俺を見る。


「だが、ここから先は我々の仕事だ」


「……」


「もう戦わなくていい」


 少し間を置く。


「休め」


「……はい」


 それ以上は何も言われなかった。


「ではな」


「はい」


 俺たちは馬を進めた。


 ◇


 街道の様子も、行きとは違っていた。


「道を開けてください!」


 負傷兵を運ぶ馬車。


 食料を積んだ荷車。


 王国軍の伝令。


 大きな荷物を抱えた家族も歩いている。


「……」


 少しずつ元に戻ろうとしてる。


 完全に元通りになるには、まだ時間がかかる。


 それでも。


「アレン?」


「何?」


 フェリシアがこっちを見ていた。


「今、ちょっと笑った」


「え?」


「ね?」


 ルナを見る。


「うん」


「そう?」


「うん」


 自分では分からなかった。


 ◇


 スコッティ公爵領にあるベルガント伯爵の陣が見えてきた。


「戻ってきたぞ!」


 見張りの兵士が叫ぶ。


「北へ行った部隊だ!」


「おい!」


 兵士たちがこちらを見る。


「あれ……」


「アレンだ!」


「アレン・ヴァルディスだ!」


「雷帝を討った!」


「……」


 次々と兵士が集まってくる。


「本当に戻ってきたぞ!」


「ジェリドを倒したんだろ!」


「雷帝を討った英雄だ!」


「うおおおおおっ!」


 歓声が上がった。


「……」


 どうすればいいんだろう。


「すごいね」


 ルナが言う。


「うん」


「嬉しくない?」


「……分からない」


 まだ実感がなかった。


「アレン!」


 人の間から聞き慣れた声がする。


「クロードさん」


 クロードさんが歩いてきた。


「お前、本当にやったのか!」


「何をですか?」


「ジェリドだよ!」


「ああ」


「『ああ』じゃねえ!」


 肩を叩かれる。


「いてっ」


「バスクだけでも大戦果なのに、その後に雷帝まで討ちやがって」


「……はい」


「聞いた時は耳を疑ったぞ」


 クロードさんが笑った。


「やったな!」


「ありがとうございます」


「……」


 クロードさんの笑顔が少し消えた。


「どうした?」


「え?」


「何か変だぞ」


「……」


 何て言えばいいのか分からない。


「自分でも、よく分からなくて」


「そうか」


 クロードさんは俺の顔を少し見た。


 でも、それ以上は聞かなかった。


「ワフ!」


「あ」


「ワフッ!」


「テリー!」


 ものすごい勢いで走ってくる。


「うわっ!」


 受け止めた。


「元気だった?」


「ワフ!」


「キュ!」


「ステフも」


 ステフも飛んでくる。


「キュッ!」


「ただいま」


 二匹の頭を撫でる。


「ワフ!」


 テリーが俺から離れた。


 その向こう。


「……」


 大きなフェンリルが立っていた。


 母親だ。


「もう立てるんだ」


「グル……」


 ゆっくりこちらを見る。


 赤かった目は、完全に元へ戻っていた。


「よかった」


 自然に言葉が出た。


「もう大丈夫そうだね」


 フェンリルが静かに頭を下げる。


「……」


「アレン」


 フェリシアが俺を見る。


「何?」


「今はちゃんと笑ってた」


「……そう?」


「うん」


 少しだけ。


 胸の奥が軽くなった気がした。


 ◇


「よく戻った」


 ベルガント伯爵の天幕へ入る。


「はい」


「北部の報告はすでに届いている」


 ベルガント伯爵が俺を見る。


「ジェリド皇子を討ったそうだな」


「はい」


「まさか本当に討ち取るとは思わなかった」


「……」


「いや」


 ベルガント伯爵が少し笑う。


「お前ならやるか」


「どっちですか?」


「私にも分からん」


 少しだけ笑いが起きた。


「だが、今回の戦功は大きい」


「はい」


「今頃、王都までお前の名が届いているだろう」


「俺の?」


「当然だ」


「……」


「バスク将軍を討ち、雷帝まで倒した男だぞ」


 外からも声が聞こえてくる。


「アレン!」


「英雄!」


 また、その言葉。


 英雄。


 俺にはまだ自分のことを言われている気がしなかった。


 ◇


「ベルガント伯爵!」


 外から声がした。


「何だ?」


「王都から使者です!」


「通せ」


「はっ!」


 すぐに一人の男が入ってきた。


「ベルガント伯爵」


「ご苦労」


「国王陛下より書状を預かっております」


 封書が渡される。


 ベルガント伯爵が開いた。


「……」


 しばらく目を通す。


「なるほど」


「何と?」


「今回の戦いについて、正式な報告を求めている」


 そして俺を見る。


「それと」


「?」


 使者がこちらへ向き直った。


「アレン・ヴァルディス殿」


「はい」


「国王陛下より、王都へお越しいただきたいとのお召しです」


「俺が?」


「はい」


「どうしてですか?」


「今回の戦いにおける功績について、陛下自らお話をお聞きになりたいとのことです」


「……」


「また、褒賞についても直接お伝えしたいと」


「褒賞……」


「当然だ」


 ベルガント伯爵が言う。


「でも、俺一人で勝ったわけじゃありません」


「それを決めるのはお前ではない」


「……」


「行ってこい」


「はい」


 王命なら、断る理由はない。


「私も行く」


 フェリシアが言った。


「私も」


 ルナも続く。


「二人とも?」


「当然でしょ」


「うん」


「……ありがとう」


 二人が一緒だと聞いて、少し安心した。


「王都か」


 クロードさんが腕を組む。


「なら俺も――」


「お前は残れ」


 ベルガント伯爵が即答した。


「え?」


「誰がここを守る」


「俺は騎士じゃないぞ?」


「他に誰がいる。正式に指名依頼も出そう」


「……ひどいな」


 少しだけ笑いが起きる。


 その時だった。


「それと」


 使者が口を開いた。


「もう一件ございます」


 ベルガント伯爵の表情が変わる。


「何だ?」


「ドラン軍から使者が参りました」


「ドラン軍から?」


「はい。国境付近に残る帝国軍の指揮官からです」


「目的は?」


「一時停戦を求めています」


「……」


「さらに」


 使者が一度言葉を止める。


「第十三皇子ジェリドの遺体の返還を求めています」


 誰もすぐには口を開かなかった。


 戦場での戦いは終わった。


 でも今度は別の戦いが始まろうとしていた。


【保有:101,500P】

【累計獲得P:552,210P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
 遺体の引き渡し交渉で何かを得たとしても、死体を交渉材料にするのは 気分的に良くはない。
ここまで一気に読みました、自分の感想の大半は面白いになります。がとてつもなくクドイですね。倒す時は1匹2匹3匹、1人2人3人、武器種剣槍盾と何回も同じエピソードで言うしその度にポイントも細かくシステム…
停戦といっても賠償付きの停戦かな 領土割譲はさすがに帝国としては受け入れ難い、、 アレンには名誉爵位もしくは法衣爵位は押し付けられそう。 まあフェリシアの事情考えたらもらっといたほうがよさげだが。 ア…
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