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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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第168話 補給路を断て

「全軍で北へ向かうわけにはいかない」


 バスクを討ったあと、ベルガント伯爵が地図を見ながら言った。


「なぜですか?」


 俺が聞く。


「ここを空にすれば、今度はこちらが危ない」


 ベルガント伯爵の指がセイル大橋へ置かれる。


「バスクは討った。だが、ドラン帝国の軍がすべてなくなったわけではない」


「別の軍が来る可能性があるということか」


 スコッティ公爵が言った。


「ええ。我々が全軍で北へ向かい、ジェリドと戦っている間にセイル川を渡られたら、今度はこちらが背後を取られます」


「……確かに」


 せっかくバスクを倒したのに西を空にして、また攻め込まれたら意味がない。


「では、どうする?」


 スコッティ公爵が聞く。


「少数で行きましょう」


「少数?」


「速さを優先します」


 ベルガント伯爵が地図の西側を北へ指でなぞる。


「ジェリド軍はサハル領内へ深く入り込んでいる。補給路もかなり伸びているはずです」


 そして北にある橋を指した。


「ここ」


「トンプソン大橋か」


「ええ」


 スコッティ公爵が俺を見る。


「ドラン側とドレイモンド領を結ぶ大きな橋だ」


「そこを押さえるんですね」


「そういうことだ」


 ベルガント伯爵が頷く。


「トンプソン大橋を押さえれば、ジェリド軍への補給を止められる」


「何人連れていく?」


「百騎程度で十分でしょう」


「百騎?」


「多すぎれば動きが遅くなる。少なすぎれば橋を押さえられない」


 ベルガント伯爵が周囲を見る。


「スコッティ公爵直属の精鋭。それに王国騎士団の精鋭を合わせて百騎」


 そして俺たちを見る。


「アレン、フェリシア、ルナも同行してもらいたい」


「はい」


「分かりました」


「うん」


「私は残ろう」


 ベルガント伯爵が言った。


「ここに?」


「ああ。ドランからの反撃もあるだろう。セイル側を空にするわけにはいかん」


 クロードさんも腕を組む。


「なら、俺も残る」


「クロードさんも?」


「ああ」


 少し笑う。


「向こうに強い奴が来た時、ベルガント伯爵だけじゃ困るだろ」


「それはそうですね」


「おい」


 ベルガント伯爵が少しだけ眉を動かす。


 クロードさんが笑った。


「冗談だ」


「まったく……」


 スコッティ公爵が立ち上がる。


「決まりだな」


「ああ」


「百騎を選べ。準備ができ次第、北へ向かう」


「はい!」


 ◇


「テリー」


「ワフ!」


 出発前にテリーたちのところへ寄った。


 母親のフェンリルはまだ動くのがやっとといった感じだ。


「まだ休んでてね」


「グル……」


 テリーは母親の顔のすぐそば。


 ステフもその隣にいる。


「キュ!」


「二人とも、お願いね」


「ワフ!」


「キュ!」


 今回は連れていかない。


 母親のそばにいた方がいい。


「じゃあ、行ってくる」


「ワフ!」


 テリーが一度鳴いた。


 ◇


 百騎が北へ向かった。


 先頭にはスコッティ公爵。


 その近くを俺たちが走る。


 後ろには精鋭の騎士たち。


 大軍じゃない。


 だから速い。


 休憩も最低限。


 馬を休ませながら、とにかく北へ進む。


「この速度なら、かなり早く着けそうですね」


「ああ」


 スコッティ公爵が答える。


 道を進む。


 周囲に大きな軍はいない。


 ジェリド軍が東へ進んだことで、西側はかなり薄くなっているみたいだ。


「本当に入り込んでるんですね」


「ジェリドは勝ち続けているらしい」


「だから前へ?」


「ああ」


 スコッティ公爵が前を見る。


「勝てば勝つほど進みたくなる。だが、軍は本人だけで動いているわけではない」


「補給……」


「そうだ」


 食べ物。


 矢。


 武器。


 薬。


 全部、西から運ばないといけない。


 ジェリドが東へ行けば行くほど、その距離は伸びる。


「見えてきたぞ」


 誰かが声を上げた。


 前方。


 大きな川。


 そして。


「あれが……」


「トンプソン大橋だ」


 かなり大きい。


 川の西と東を一本の橋が繋いでいる。


「止まれ」


 スコッティ公爵が手を上げた。


 少し高くなった場所から橋を見る。


「……いた」


 思わず声が出た。


 橋の周辺に人がいる。


 かなり多い。


 でも軍隊という感じじゃない。


「荷馬車……」


 何台も並んでいる。


 その後ろにも。


 さらにその後ろにも。


 食料らしい袋。


 木箱。


 武器。


 矢。


「やはりな」


 スコッティ公爵が呟く。


「補給部隊ですか」


「ああ」


 ジェリド軍へ送る物資だ。


 橋を渡った先。


 東側の街道にも荷馬車が続いている。


「長いですね……」


「それだけジェリドが前へ出ているということだ」


 スコッティ公爵が笑う。


「ベルガントの読み通りだな」


「どうします?」


「当然」


 剣を抜く。


「橋を奪う」


「はい!」


 百騎が一斉に動き出した。


 ◇


「ん?」


 橋の近くにいたドラン兵がこちらを見る。


「何だ?」


 こちらへ向かってくる騎馬隊。


「……サハル?」


 兵士の顔色が変わった。


「サハル軍だ!」


「何!?」


「どうしてこっちから来る!」


 一気に騒ぎになる。


「護衛兵! 前へ!」


「荷馬車を止めろ!」


「敵だ!」


 でも。


 もう遅い。


「行きます!」


 馬を走らせる。


「アレン!」


「はい!」


 先頭へ出る。


 正面に兵士。


「止めろ!」


 槍を構える。


 馬から飛び降りた。


「なっ!?」


 着地と同時に踏み込む。


「はっ!」


 竜爪剣を振るう。


「ぐあっ!」


【人間討伐を確認しました】


【70P獲得】


 次。


【65P獲得】


「こいつ、アレン・ヴァルディスだ!」


「何でここに!」


「囲め!」


 兵士が集まってくる。


 でも、数は多くない。


 前線の兵とは違う。


 補給部隊を守る兵だ。


「橋を押さえます!」


「行け!」


 スコッティ公爵の声。


 さらに前へ。


【75P獲得】


【60P獲得】


 一人。


 また一人。


 道を開ける。


「魔法士!」


 奥で杖が上がった。


「撃て!」


「フェリシア!」


「うん!」


「《魔弾》!」


 光が飛ぶ。


 向こうの火球とぶつかった。


 ドンッ!


「何っ!?」


 そのまま別の魔弾が兵士たちの足元へ飛ぶ。


「うわっ!」


「散れ!」


 陣形が崩れた。


「今です!」


 騎士たちが突っ込む。


「おおおおおっ!」


 スコッティ公爵直属の騎士たちが一気に敵を押していく。


「伝令!」


 一人のドラン兵が馬へ向かって走った。


「ジェリド殿下に知らせろ!」


「あ」


 ルナが気づく。


「逃げる」


 弓を構える。


 矢をつがえる。


 放す。


 ヒュッ!


「ぐっ!」


 伝令が倒れた。


「もう一人!」


 別の兵士が馬へ乗ろうとする。


 ヒュッ!


「がっ!」


 また倒れる。


「伝令を出すな!」


 ドラン兵が叫ぶ。


「報告しろ!」


 今度は徒歩で走ろうとする。


「そこ」


 ヒュッ!


 ルナの矢。


 倒れる。


「すごい……」


「感心してる場合じゃないぞ!」


「はい!」


 さらに進む。


 橋の前。


 護衛兵が最後の列を作っていた。


「絶対に通すな!」


「ここを抜かれたら補給が止まるぞ!」


「だから抜きます!」


 地面を蹴る。


「はあっ!」


 一人。


【95P獲得】


 もう一人。


【80P獲得】


 左右から騎士たちも入る。


「押せ!」


「橋を取れ!」


 敵が崩れた。


「下がれ!」


「逃げろ!」


 ドラン兵たちが次々と橋から離れていく。


「追うな!」


 スコッティ公爵が叫ぶ。


「目的は橋だ!」


「はい!」


 騎士たちが止まる。


「荷馬車も燃やすな!」


「え?」


「全部使える物資だ。確保しろ!」


「はっ!」


 なるほど。


 食料も。


 武器も。


 矢も。


 燃やす必要はない。


「橋の両側を押さえろ!」


「はい!」


 騎士たちが動く。


 少しして。


「確保しました!」


 声が上がった。


「トンプソン大橋、確保!」


「おおおおおっ!」


 騎士たちが声を上げる。


「これで……」


 橋を見る。


「ジェリドへの補給が止まる」


「ああ」


 スコッティ公爵が頷いた。


「まず一つ目は成功だ」


 ◇


 トンプソン大橋を渡る。


 ドラン側からドレイモンド領へ。


「ここからはサハル側ですね」


「ああ」


 橋を渡り切る。


 スコッティ公爵が南を見る。


「ジェリド軍はこの先だ」


「近いんですか?」


「報告が正しければ、それほど遠くない」


「行きましょう」


「待て」


 スコッティ公爵が周囲を見る。


「橋には兵を残す」


「そうですね」


 奪ったのに全員で離れたら意味がない。


「三十騎残れ!」


「はっ!」


「荷馬車と橋を守れ。西から来る敵にも備えろ」


「承知しました!」


 残る兵を決める。


 俺たちは残りの騎士と南へ向かった。


 ◇


 しばらく進む。


 ドレイモンド領。


 ところどころに戦った跡が残っている。


 壊れた荷車。


 踏み荒らされた道。


 捨てられた武器。


「……ひどいな」


 誰かが呟いた。


 さらに南へ。


「止まれ」


 スコッティ公爵が手を上げた。


 前方。


 少し高い場所。


 馬をゆっくり進める。


「……」


 丘の向こうを見る。


「いた」


 俺も見えた。


 大量の兵士。


 旗。


 いくつもの天幕。


「ドラン軍……」


「ああ」


 スコッティ公爵の表情が険しくなる。


「あれがジェリドの軍だ」


「……」


 かなり多い。


 俺たちは七十騎ほど。


 向こうとは比べものにならない。


 その時。


「……?」


 《魔力感知》。


 何かいる。


「どうしたの?」


 フェリシアが聞く。


「すごい魔力が……」


「魔力?」


「うん」


 敵軍の中。


 一つだけ。


 明らかに違う。


「多分……」


 目を凝らす。


「あそこにいます」


「誰が?」


 スコッティ公爵を見る。


「ジェリド皇子です」


 誰も声を出さなかった。


 俺は遠くのドラン軍を見つめた。


【保有:70,365P】

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