第166話 セイル大橋
「進め!」
スコッティ公爵の号令と同時に、サハル軍が動き出した。
「行きます!」
「ああ!」
俺とクロードさんが先頭を走る。
目の前にはセイル大橋。
その向こうでは、ドラン兵たちが盾を並べて待ち構えていた。
「来るぞ!」
「盾を上げろ!」
「絶対に橋を渡らせるな!」
橋の西側を塞ぐように盾兵が何重にも並んでいる。
その後ろには槍兵。
さらに奥には弓兵と魔法士。
「昨日より多いですね」
「ああ。橋を抜かれたら終わりだと分かってるんだろう」
クロードさんが剣を構える。
「だが、やることは同じだ」
「はい!」
橋へ入る。
「弓兵!」
ドラン側から声が飛んだ。
「放て!」
大量の矢が空へ上がった。
「フェリシア!」
「任せて!」
後ろから返事。
「《魔弾》!」
光が一斉に空へ飛ぶ。
ドドドドドッ!
魔弾が矢を次々と撃ち落としていく。
「何っ!?」
「またあの魔法使いだ!」
「今です!」
「ああ!」
一気に走る。
「槍兵、構えろ!」
盾の隙間から何本もの槍が突き出された。
「止めろ!」
一斉に来る。
一本目を竜爪剣で弾き、二本目を身体をずらしてかわす。
三本目の下へ潜り込んだ。
「なっ――」
盾兵の目の前。
「はっ!」
竜爪剣を振り抜く。
「ぐあっ!」
【人間討伐を確認しました】
【70P獲得】
すぐ隣へ踏み込む。
【65P獲得】
「囲め!」
盾兵二人が同時に前へ出た。
「押せ!」
正面から受け止める。
「なっ!?」
力を込める。
「うおっ!」
二人まとめて押し返した。
開いた隙間へクロードさんが飛び込む。
「邪魔だ!」
「ぐあっ!」
「がっ!」
「アレン!」
「はい!」
二人でさらに奥へ入る。
右から槍。
かわす。
左から剣。
受け流して斬る。
【80P獲得】
返す剣でもう一人。
【75P獲得】
「二人だけだ!」
「囲んで潰せ!」
さらに兵士が集まってくる。
「二人だから何だ!」
クロードさんが剣を振るう。
「道を開けるぞ!」
「はい!」
前へ進む。
【95P獲得】
【60P獲得】
数字が視界の端を流れた。
昨日の夢が一瞬だけ浮かぶ。
でも、今は考えない。
俺が見るのは、その先だ。
バスク。
「下がるな!」
今までとは違う鎧を着た男が前へ出た。
「将軍直属隊だ! ここから先へは通さん!」
大剣が振り下ろされる。
速い。
竜爪剣で受け流し、そのまま懐へ入る。
「なっ!」
一閃。
「ぐっ……!」
男が崩れ落ちた。
【260P獲得】
「直属隊がやられた!」
「次だ! 止めろ!」
同じ装備の兵士たちが何人も走ってくる。
「精鋭を集めてますね」
「ああ」
クロードさんが笑う。
「それでも止まれんだろ?」
「はい!」
一人目の剣をかわす。
【310P獲得】
二人目の槍を弾く。
【280P獲得】
三人目。
その横からもう一人。
踏み込む。
【220P獲得】
身体を回してもう一人。
【175P獲得】
「何なんだ、こいつら!」
「直属隊まで……!」
ドラン兵たちの顔が変わった。
俺とクロードさんは止まらない。
とうとう盾の列が途切れた。
西岸が見える。
「抜けたぞ!」
「橋を突破された!」
その瞬間。
「今だ!」
後方からスコッティ公爵、ベルガント伯爵の声が響いた。
「王国騎士団! 続け!」
「おおおおおおっ!」
大量の足音が橋に響く。
王国騎士団が一気にこちらへ押し寄せてきた。
「西岸へ出た者から左右へ展開! 橋の出口を広げろ!」
「はっ!」
騎士たちが俺たちの開けた場所へ入り、左右のドラン兵を押し始める。
「押せ!」
「橋を確保しろ!」
「後続を渡らせろ!」
点だった突破口が、一気に広がっていった。
「まずい!」
「橋を取られるぞ!」
ドラン兵たちが後退する。
◇
「魔法隊!」
ドラン軍後方から声が飛んだ。
「撃て!」
火球。
岩。
風の刃。
いくつもの魔法が橋へ向かってくる。
「《魔弾》!」
フェリシアの周囲に光が生まれた。
魔弾が一斉に飛び出す。
ドンッ!
火球が空中で爆発した。
バンッ!
岩が砕ける。
さらに風の刃。
魔弾が真正面からぶつかって消した。
「また止められた!」
「次だ! 撃て!」
魔法士たちが再び杖を構える。
その時。
ヒュッ!
「ぐっ!」
一人が倒れた。
「何だ!?」
胸に矢が刺さっている。
「弓だ!」
「どこからだ!」
◇
セイル川東岸。
少し高くなった場所で、ルナが弓を構えていた。
「……次」
矢をつがえる。
狙うのは杖を掲げた魔法士。
放つ。
ヒュッ!
「がっ!」
遠くで一人倒れる。
すぐに次。
今度は弓兵たちへ命令を出している男。
「放――」
ヒュッ!
「ぐっ!」
声が途中で止まった。
「まただ!」
「狙われてるぞ!」
ルナはもう次の矢をつがえていた。
敵が撃った魔法はフェリシアが止める。
魔法を撃とうとする者。
弓兵へ命令を出す者。
そういう相手からルナが狙っていく。
「魔法隊が攻撃できません!」
「弓隊も指揮官を狙われています!」
ドラン軍の遠距離攻撃が目に見えて弱くなっていった。
◇
「前へ!」
王国騎士団がさらに押す。
橋の西側には、もう多くのサハル兵が渡っていた。
「下がれ!」
「陣形を組み直せ!」
ドラン軍が後退する。
「行きます!」
俺もさらに前へ走った。
「止めろ!」
また将軍直属隊。
一人。
【240P獲得】
二人。
【295P獲得】
さらに一人。
【330P獲得】
表示だけが流れていく。
「お前がアレン・ヴァルディスか!」
一人の騎士が前へ出た。
周囲の兵士たちが道を空ける。
「隊長!」
「お願いします!」
構えを見ただけで分かる。
今までの兵より強い。
「将軍のところへは行かせん!」
一気に踏み込んできた。
速い。
剣を受ける。
ガンッ!
すぐに二撃目。
かわす。
三撃目は突き。
首を振って避ける。
「やるな!」
さらに剣が来る。
受け流す。
速い。
でも、動きは見えている。
男が踏み込んだ。
その瞬間、こっちから一歩入る。
「なっ!」
剣を弾き上げた。
懐へ。
「はっ!」
竜爪剣を振り抜く。
「ぐ……!」
騎士が膝をつき、そのまま倒れた。
【520P獲得】
「隊長が……」
「嘘だろ……」
周囲の兵士が後ずさる。
今までより大きな数字が見えた。
それでも、足は止めない。
「どけ!」
兵士たちが剣を構えた。
なら、進むだけだ。
【85P獲得】
【110P獲得】
【260P獲得】
【70P獲得】
表示が視界の端を流れていく。
俺は数字を見ない。
前だけを見る。
◇
「押せ!」
スコッティ公爵が剣を掲げる。
「さらに西岸へ兵を送れ!」
「はっ!」
ベルガント伯爵も続ける。
「左右へ展開! 橋への攻撃を許すな!」
「はっ!」
サハル軍が次々と西岸へ渡っていく。
完全に流れはこちらへ傾いていた。
敵の弓兵と魔法士が崩れ始めたのを確認すると、ルナも第二陣と一緒に橋を渡り始める。
フェリシアも王国騎士団とともに西岸へ入った。
俺はさらに奥へ進む。
「アレン!」
クロードさんが追いついた。
「速すぎるぞ!」
「すみません!」
「バスクはまだ見えてないだろ!」
「でも、昨日の本陣はこの先です!」
走る。
前に出てきた兵士をかわし、斬る。
さらに進む。
そして。
「あれ……」
遠くに、ひときわ大きな旗が見えた。
昨日も見た旗。
その周囲には多くの護衛がいる。
「クロードさん!」
「ああ」
クロードさんも気づいた。
「あそこだな」
「はい!」
バスクの本陣。
でも。
「……?」
本陣の周囲が慌ただしい。
馬が用意されている。
兵士たちが移動を始めていた。
「まさか……」
「逃げるつもりだ!」
クロードさんが叫ぶ。
考えるより先に足が動いた。
「アレン!」
さらに速度を上げる。
「待て! 一人で行くな!」
後ろからフェリシアの声も聞こえた。
「アレン!」
橋を渡ってきたルナの声もする。
分かってる。
一人で突っ込みたいわけじゃない。
でも、バスクを逃がせば今日の作戦は終わらない。
北へ向かうのも遅れる。
ここで逃がすわけにはいかない。
「止まれ!」
さらに加速した。
本陣の護衛たちがこちらに気づく。
「来たぞ!」
「アレン・ヴァルディスだ!」
「将軍を守れ!」
その向こう。
一人の男が振り返った。
「……!」
バスク。
目が合う。
「バスク!」
竜爪剣を握り直した。
今度こそ逃がさない!
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