第163話 反攻
「前へ!」
スコッティ公爵の声が戦場に響いた。
「目標はセイル川だ! ドラン軍を川の向こうまで押し戻せ!」
「おおおおおおっ!」
サハル軍が一斉に動き出す。
援軍として到着した王国騎士団も前へ出た。
「中央、前進!」
「北も押し上げろ!」
「南も続け!」
三方向から攻勢が始まる。
俺も竜爪剣を握った。
「行きます!」
「ああ!」
クロードさんと一緒に走る。
正面ではドラン兵たちが槍を構えていた。
「来たぞ!」
「アレン・ヴァルディスだ!」
「中央を抜かせるな!」
何人もの兵士が並ぶ。
止まらない。
一気に距離を詰めた。
「はっ!」
最初の槍をかわして竜爪剣を振るう。
「ぐあっ!」
【人間討伐を確認しました】
【55P獲得】
すぐ横から剣が来る。
かわして斬る。
【60P獲得】
「囲め!」
三人が同時に来た。
正面の剣を弾き、左から突き出された槍を避ける。そのまま身体を回して一人を斬り、返す剣でもう一人。
【45P獲得】
【70P獲得】
残った兵士が一歩下がった。
踏み込む。
【50P獲得】
表示が次々と流れる。
「中央へ集まれ!」
「こいつを止めろ!」
さらにドラン兵が集まってきた。
「アレン!」
横ではクロードさんも次々と敵兵を倒している。
「止まるな!」
「はい!」
正面に盾兵。
その後ろに槍兵が並んだ。
「構えろ!」
盾が一斉に前へ出る。
地面を蹴った。
「なっ!?」
盾兵の頭上を飛び越える。
槍兵たちの真ん中へ着地した。
「後ろだ!」
振り返るより早く竜爪剣を振るう。
「ぐあっ!」
「がっ!」
【65P獲得】
【55P獲得】
左右から剣が来る。
かわす。
また斬る。
【80P獲得】
前へ。
まだ敵はいる。
「下がるな!」
騎士らしい男が叫んだ。
「中央を守れ!」
周囲の兵より立派な鎧を着ている。
指揮官か。
男も俺を見た。
「貴様がアレン・ヴァルディスか!」
「そうです!」
「ここで止める!」
大剣が振られる。
竜爪剣で受け流す。
続けて二撃目。
かわす。
三撃目が来る前に懐へ入った。
「な――」
竜爪剣を振り抜く。
「ぐっ!」
男が崩れ落ちた。
【180P獲得】
「隊長!」
「隊長がやられた!」
周囲の兵士たちの動きが鈍る。
その瞬間。
「今だ!」
後方からスコッティ公爵の声が飛んだ。
「中央へ押し込め! 奴らに陣形を立て直す時間を与えるな!」
「おおおおおっ!」
王国騎士団が一気に前へ出た。
俺とクロードさんが開けた場所へ、サハル兵たちが流れ込んでくる。
「押せ!」
「中央が崩れるぞ!」
「前へ!」
ドラン兵たちが下がる。
「退くな!」
「隊列を保て!」
指揮官たちが叫ぶ。
それでも押し戻せない。
中央の一部が崩れ、その隣にいた部隊まで後退を始めた。
「よし」
スコッティ公爵が戦場を見る。
「中央の突破に合わせろ! 両翼も押し上げろ!」
伝令が走る。
間もなく左右からも大きな声が上がった。
「進め!」
「中央に続け!」
戦場全体が西へ動き始めた。
◇
「撃て!」
ドラン軍の魔法士たちが一斉に杖を向けた。
火球。
岩の塊。
何十もの魔法がサハル軍へ飛んでくる。
「《魔弾》!」
フェリシアの周囲に光が生まれた。
魔弾が一斉に飛び出す。
ドンッ!
火球が空中で弾けた。
バンッ!
岩が砕ける。
さらに火球。
すぐに魔弾が向かう。
ドドドドッ!
上空で爆発が続いた。
「また止められたぞ!」
「次だ! 撃て!」
魔法士たちが杖を構える。
その一人が突然倒れた。
「ぐっ!」
「何だ!?」
胸には一本の矢。
「弓だ!」
「どこから――」
ヒュッ!
「がっ!」
また一人倒れた。
◇
少し離れた木の上。
ルナが弓を構えていた。
その下には気絶しているフェンリル。
そばにはテリーとステフがいる。
「……次」
ルナが矢をつがえる。
狙う。
杖を掲げた魔法士。
放つ。
ヒュッ!
遠くで一人倒れた。
「まただ!」
「狙われてるぞ!」
「散れ!」
魔法士たちが慌てて動き始める。
それでも魔法を撃つには止まって杖を構えなければならない。
その瞬間をルナが狙う。
ヒュッ!
また一人。
撃ち出された魔法はフェリシアが止める。
撃とうとする魔法士はルナが仕留める。
「くそっ!」
「魔法隊が動けない!」
ドラン軍の攻撃魔法が目に見えて減っていった。
◇
俺はさらに前へ進む。
「止めろ!」
「これ以上進ませるな!」
ドラン兵が集まってくる。
一人。
二人。
避けて、斬る。
【60P獲得】
【75P獲得】
さらに一人。
【50P獲得】
視界の端を数字が流れる。
止まらない。
「こいつ、一人で何人倒してるんだ!」
「近づくな!」
今度は向こうが下がり始めた。
それでも進む。
【85P獲得】
【55P獲得】
【70P獲得】
もう一つ一つ確認する余裕はない。
竜爪剣を振るうたび、Pが増えていく。
「アレン!」
クロードさんが追いついた。
「前を見ろ!」
「え?」
指された方を見る。
ドラン軍の奥。
ひときわ大きな旗が立っている。
その周囲には護衛らしい兵士が集まっていた。
「あそこが本陣ですか?」
「おそらくな」
「なら!」
さらに速度を上げる。
「本陣へ行かせるな!」
「止めろ!」
十人近い兵士が前へ出てきた。
「はあっ!」
竜爪剣を振るう。
【65P獲得】
一人。
【50P獲得】
二人。
左右から来た剣をかわし、さらに前へ。
【80P獲得】
【60P獲得】
「何なんだ、こいつ!」
「止まらないぞ!」
それでも兵士たちは本陣を守ろうと集まってくる。
倒す。
進む。
また倒す。
表示だけが次々と流れていった。
◇
「中央が突破されました!」
報告を受けたバスク将軍が前を見る。
「中央の兵は何をしている!」
「指揮官が討たれました!」
「誰にだ!」
「アレン・ヴァルディスです!」
「……またあいつか」
「クロードも中央にいます!」
バスク将軍の表情が険しくなる。
「予備の兵を中央へ回せ!」
「すでに向かわせています!」
「なら押し返せ!」
「それが……」
報告兵が言葉に詰まった。
「何だ!」
「止まりません!」
「……」
「さらに中央の後退に引かれて、北と南も押されています!」
バスク将軍が戦場を見る。
中央。
ドラン軍の兵士たちが後退してくる。
その隙間をサハル軍が押し広げていた。
左右の部隊も、中央だけが取り残されるのを避けるように少しずつ下がっている。
「将軍!」
別の兵士が駆け込んできた。
「サハル軍が本陣へ迫っています!」
「どこまで来た!」
「もう本陣の旗が見える距離です!」
「何だと?」
「その先頭にアレン・ヴァルディスが!」
バスク将軍が前を見る。
土煙の向こう。
兵士たちが次々と倒れている。
その間を一人の男がこちらへ進んでくる。
後ろにはクロード。
さらにその後方からサハル軍。
「……」
バスク将軍がしばらく戦場を見た。
「北は?」
「後退しています!」
「南は?」
「こちらも押されています!」
「……ここまでか」
「将軍?」
「このまま中央を破られれば、全軍が分断される」
バスク将軍が振り返った。
「撤退だ」
「……は?」
「全軍をセイル川まで下げる!」
「はっ!」
「セイル大橋を渡り、ドラン側で態勢を立て直す!」
「はっ!」
伝令が一斉に走り出した。
直後。
ブオオオオオオッ!
低い角笛の音が戦場に響いた。
◇
「何だ?」
正面のドラン兵たちの動きが変わった。
「撤退だ!」
「橋へ戻れ!」
「隊列を崩すな!」
戦いながら少しずつ西へ下がっていく。
「退いてる?」
「ああ」
クロードさんが前を見る。
「撤退を始めた」
周囲のサハル兵も気づいた。
「ドランが退くぞ!」
「押してる!」
「追い返せ!」
「おおおおおおっ!」
歓声が上がった。
でも、すぐにスコッティ公爵の声が飛ぶ。
「隊列を崩すな!」
兵士たちが振り返る。
「まだ勝ったわけではない! 秩序を保って追撃しろ!」
剣が西へ向く。
「セイル大橋まで押し戻せ!」
「おおおおおおおっ!」
サハル軍が再び前進する。
俺も走った。
前方ではドラン兵たちが西へ下がっている。
そのさらに向こう。
セイル大橋が見えた。
「あそこまで……」
視界の端を見る。
戦いが始まってから、何度Pが表示されたのか分からない。
【保有:44,500P】
【累計獲得P:494,210P】
「……すごい」
!
これまで一度の戦いで手に入れたことのない量だ。
「アレン!」
「はい!」
クロードさんと一緒に前を見る。
もう少し。
あの橋の向こうまで押し戻せば、ドラン軍をスコッティ領から追い出せる。
「押せ!」
スコッティ公爵の声が響いた。
「セイル川まで押し戻せ!」
「おおおおおおおっ!」
竜爪剣を握り直す。
そのままセイル大橋へ向かって走った。
【保有:44,500P】
【累計獲得P:494,210P】
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