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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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第161話 荒れ狂うフェンリル

「あれは……フェンリルか?」


 クロードさんが呟いた。


「フェンリル?」


「ああ。間違いない」


 巨大な狼がこちらへ歩いてくる。


 目は赤く染まり、口から泡を垂らしていた。


 身体から感じる魔力も、さっきまでの魔物とは比べものにならない。


「グルルルル……」


 低い唸り声が響く。


「来るぞ!」


「盾兵、前へ!」


 サハル兵たちが盾を並べた。


 次の瞬間、フェンリルが地面を蹴る。


「速い!」


 一気に距離が縮まった。


「止めろ!」


 巨大な前脚が振り上げられる。


 その前へ飛び込んだ。


「アレン!」


 竜爪剣で受ける。


 ドンッ!


 足元の地面が沈んだ。


「……重い」


 それでも止められる。


 フェンリルの前脚は俺の目の前で止まった。


「なっ……」


 近くの兵士が目を見開く。


 クロードさんも驚いた顔をした。


「正面から止めるのか」


「このくらいなら止められます」


「……相変わらずだな」


 フェンリルが前脚を引き、今度は大きな口を開く。


 牙が迫る。


 横へかわした。


 首元が目の前に来る。


 斬ろうと思えば斬れる。


 でも、竜爪剣は振らなかった。


「アレン?」


「こいつも薬を打たれてます」


「ああ」


「だったら、殺したくありません」


 フェンリルを見る。


 赤い目。


 荒い息。


 さっきまでの魔物と同じだ。


 ただ、力が桁違いなだけ。


「グルルルル……」


 また来る。


 今度はこちらから踏み込んだ。


 前脚をかわす。


 牙も避ける。


 横からぶつけてきた巨体を両腕で受け止めた。


 ドンッ!


「グルッ!?」


 フェンリルの身体が止まる。


「アレン!」


「大丈夫です!」


 力を込め、そのまま押し返した。


 巨大な身体が数歩下がる。


 クロードさんが苦笑する。


「フェンリルを力で押し返す奴なんて、そうはいないぞ」


 フェンリルは再び身体を低くした。


 その時。


「……?」


 空気が変わった。


 フェンリルの周囲へ、ものすごい勢いで魔力が集まっている。


「クロードさん、離れて!」


「何だ?」


「魔法が来ます!」


 フェンリルが大きく息を吸う。


「グオオオオオオオッ!!」


 咆哮と同時に、足元から白い霜が広がった。


 パキパキパキパキッ!


「何だ!?」


「地面が!」


 土が凍る。


 草も。


 落ちていた武器も。


 凍結が一気に周囲へ広がっていく。


「魔法なのか!?」


 サハル兵が叫ぶ。


 離れた場所にいた帝国兵たちまで慌てて下がり始めた。


「こっちまで来るぞ!」


「離れろ!」


 敵味方の区別なんてない。


 フェンリルの周囲一帯が凍りついていく。


 その時、目の前の地面が大きく盛り上がった。


「っ!」


 ドンッ!


 巨大な氷柱が突き上がる。


 横へかわす。


 すぐ隣からもう一本。


 ドンッ!


「アレン!」


 フェリシアの声。


 今度は正面の地面が膨らんだ。


 竜爪剣を振るう。


 バキンッ!


 突き上がった氷柱が真っ二つになった。


 砕けた氷が周囲へ散る。


「……すごい」


 フェリシアがフェンリルを見ていた。


「こんな広い範囲を一瞬で……」


 魔法を使うフェリシアが驚いている。


 周囲には巨大な氷柱が何本も突き出し、その間を白い霜が覆っていた。


 さっきまで戦っていた兵士たちも距離を取っている。


 一頭だけで戦場の流れを止めた。


「グルルルル……」


 それでもフェンリル自身は、何をしたのか理解しているようには見えない。


 目の前にいる人間を襲おうとしているだけだ。


「やっぱり、命令されて動いてるんじゃない」


「薬で理性を失っているだけか」


 クロードさんが言う。


「多分」


 その時。


「テリー!」


 後ろから声が聞こえた。


「え?」


 振り返る。


 ルナが走ってくる。


 その前には。


「ワフ!」


「テリー!?」


 テリーが全力でこちらへ向かっていた。


 後ろからステフも追いかけてくる。


「キュ!」


「テリー、待って!」


 ルナが呼んでも止まらない。


 俺のところへ来るんじゃない。


 その先。


「まさか……」


 フェンリルへ向かっている。


「テリー! 危ない!」


「ワフ!」


 テリーは俺の横を通り抜けた。


 フェンリルが気づく。


「グルルルル……」


 赤い目がテリーを捉えた。


 牙を剥く。


「テリー!」


 すぐ間へ入ろうとした。


 でも、その前にテリーが止まった。


 フェンリルまで数メートル。


「……クゥン」


 小さな声。


「……?」


 フェンリルの動きが止まった。


「グル……」


 牙を剥いていた口が少し閉じる。


 鼻が動く。


 じっとテリーを見ている。


「テリー!」


 ルナも追いついた。


 ステフがその隣にいる。


「キュ……」


 テリーが一歩前へ出た。


「クゥン」


「危ないよ」


 ルナが手を伸ばす。


 それでもテリーは進む。


 もう一歩。


 そしてフェンリルの目の前まで来た。


 巨大な顔がゆっくりと下がる。


「……」


 鼻先がテリーへ近づく。


 匂いを嗅いでいる。


「ワフ……」


 テリーも鼻先を寄せた。


 フェンリルの赤い目が揺れる。


「グル……」


 さっきまでとは違う声だった。


 大きな舌が伸び、テリーの顔をゆっくり舐める。


「え……」


 テリーが嬉しそうに尻尾を振った。


 巨大な顔へ身体を擦りつける。


「クゥン……」


 フェンリルはもう一度テリーを舐めた。


 ルナが二匹を見つめる。


「アレン」


「何?」


「あのフェンリル……」


 ルナの声が震えた。


「テリーのお母さんだよ」


「……え?」


 もう一度二匹を見る。


 テリーはフェンリルの前脚へ身体を寄せている。


 フェンリルもテリーから離れない。


 間違いない。


 テリーの母親だ。


「こんなところに……」


 クロードさんも驚いている。


「帝国に捕まっていたのか」


「多分……」


 どうしてここにいるのか。


 今はそれより。


「よかったね、テリー」


 ルナが笑う。


「ワフ!」


 テリーが嬉しそうに鳴いた。


 その時。


「グ……」


 フェンリルの身体が震えた。


「え?」


「グル……グルルルル……」


 大きく頭を振る。


 再び目が赤く染まっていく。


「テリー、離れて!」


「グオオオオオッ!」


 咆哮。


「ワフ!?」


 テリーが驚いて後ろへ下がった。


 巨大な前脚が持ち上がる。


「テリー!」


 すぐに間へ入った。


 振り下ろされた前脚を受け止める。


 ドンッ!


「アレン!」


「大丈夫!」


 そのまま押し返す。


「グルルルル……!」


 やっぱり薬だ。


 テリーを見て一度は理性が戻った。


 それでも薬がまたフェンリルを暴れさせている。


「お母さん!」


 ルナが叫ぶ。


「テリーだよ!」


「クゥン!」


 テリーも鳴いた。


「グ……」


 一瞬だけ動きが止まる。


 でも、また頭を振った。


「グオオオオッ!」


 フェンリルが牙を剥く。


「アレン!」


 クロードさんが剣を構えた。


「手伝うか?」


「大丈夫です」


「本当に?」


「はい。この子のお母さんですから」


 クロードさんはフェンリルと俺を交互に見る。


「……分かった」


 後ろではまだ戦いが続いている。


「なら、帝国軍はこっちで止める」


「お願いします!」


「ああ」


 クロードさんが戦場へ戻っていく。


 俺はフェンリルを見る。


 ルナとテリー。


 ステフもいる。


「アレン」


「うん」


「助けられる?」


 ルナが聞く。


 フェンリルは苦しそうに頭を振っている。


「助けるよ」


「……うん」


「クゥン……」


 テリーが母親を見る。


 その声に、フェンリルの耳が僅かに動いた。


 薬で暴れているだけなら、まず止めればいい。


 俺はフェンリルを見据えた。


【保有:30,800P】

【累計獲得P:480,510P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
最大戦力の主人公が魔物の不殺に拘って、共に戦っている味方が倒れていくのを見殺しに出来るかなぁ?わがままというよりサイコパス感がある主人公ですね笑
テリーの母親まで登場って事は、兵器として使われてる魔物全てが元従魔ではなさそうですね。 この先研究施設をどうにかしないと、魔物の兵器化は止まらないでしょうね。 アレンの次の目標、ドラン帝国内の研究施…
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