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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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第159話 全面衝突

「……逃がしたのか」


 低い声が響いた。


「申し訳ありません」


 男が頭を下げる。


 バスク将軍は机の上に広げられた地図を見ていた。


「スコッティは?」


「生存しています。残った兵およそ三百とともに東へ後退。その後、王国軍と合流しました」


「……あの状況からか?」


「はい」


 スコッティ軍は壊滅寸前だった。


 補給も断っていた。


 負傷者も多い。


 あとは潰すだけだったはずだ。


「何があった?」


「冒険者が介入しました」


「冒険者?」


「剣士が一人。それと女の魔法使い。さらに遠距離から指揮官を狙う射手もいたようです」


「射手は?」


「姿を確認できておりません」


 バスク将軍が目を細める。


「剣士は?」


「アレン・ヴァルディスと思われます」


「……」


 一瞬だけ沈黙した。


「《剣聖》を倒したあの男か」


「そのようです」


「またあいつか」


 バスク将軍の指が地図を叩く。


「それだけではありません」


「何だ?」


「サハル王都からの兵がスコッティと合流しました。各地からも兵が集まっています」


「王国騎士団は?」


「すでにこちらへ向かっているとの情報です」


 バスク将軍が地図を見る。


「……時間を与えすぎたな」


 怒鳴らない。


 それでも周囲の兵士たちは黙ったままだった。


「三つの補給隊は?」


「予定通りです」


「北、中央、南」


「はい。それぞれ攻撃部隊の後方へ向かわせています」


 バスク将軍が地図に引かれた三本の道を見る。


「なら予定通りだ」


「三方面から?」


「ああ」


 北。


 中央。


 南。


「三方面、同時に押せ」


「はっ!」


「兵を止めるな」


「はい!」


 男が頭を下げる。


「それから」


「はい」


「例の魔物共は?」


「すでにセイル川東岸へ運び込んであります」


「数は?」


「百体です」


「……」


 バスク将軍が地図の東側を見る。


「いつでも出せるように準備しておけ」


「百体すべてをでしょうか?」


「そうだ」


「薬はいつ打てばよいでしょうか?」


「まだ使うな」


「はい」


「私が命じたら、すぐに放てるようにしておけ」


「承知しました」


 男が下がろうとする。


「一つだけ伝えておけ」


「何でしょう?」


 バスク将軍がスコッティ領を指差した。


「ここはサハルだ」


「……」


「魔物が兵を襲おうが、村へ向かおうが構わん」


 指が地図の上をなぞる。


「畑が荒れようが、家が潰れようが、困るのは奴らだ」


「承知しました」


「行け」


「はっ!」


 男が天幕から出ていった。


 バスク将軍は地図を見る。


「スコッティ……」


 三本の道の中央。


 そこへ指を置いた。


「今度は逃がさん」


 ◇


「アレン!」


 聞き覚えのある声がした。


「え?」


 振り返る。


「クロードさん!」


「無事だったか」


「はい!」


 クロードさんたちだ。


 思わず笑った。


「よかった……」


「こっちの台詞だ」


 クロードさんが俺の肩を叩く。


「随分派手にやったらしいな」


「え?」


「スコッティ公爵を助けたんだろ?」


「俺だけじゃありません」


「相変わらずだな」


 クロードさんが笑う。


 フェリシアとルナもこちらへ来た。


「クロードさん、ご無事でしたか」


「ああ」


 その時。


「王国騎士団だ!」


 周囲から声が上がった。


「王国騎士団?」


 街道を見る。


 騎馬の一団が進んでくる。


 その後ろにも兵士。


 隊列がきれいに揃っている。


「おお……」


 装備も整っている。


 少し前まで見ていた疲れ切ったスコッティ軍とは雰囲気からして違った。


「王都から来た精鋭だ」


 クロードさんが言う。


「これでかなり戦える」


「はい」


 王都軍。


 各地から集まった兵。


 王国騎士団。


 スコッティ公爵。


 クロードさんたち。


 少し前までとは全然違う。


 ようやくサハル側も戦う準備が整ってきた。


 ◇


「矢をください」


 ルナが補給用の荷車の前に立っていた。


「何本だ?」


「できるだけ」


「できるだけ?」


「ええ。前は途中でなくなったから」


「ああ……」


 兵士が納得したように頷く。


 矢筒を渡す。


 ルナが中を見る。


「もう一つ」


「まだいるのか?」


「うん」


 二つ目。


 それでもルナは荷車を見る。


「……もう一つ」


「三つも?」


「木に置いておくわ」


「なるほど」


 三つ目の矢筒も渡された。


「これなら大丈夫?」


 俺が聞く。


「ええ。今日は大きな戦いになりそうだから」


「うん。そうだね」


 スコッティ公爵がこちらへ来た。


「ルナといったな。君には後方から援護を頼みたい」


「わかりました」


 近くの騎士が森を指す。


「あそこに西側を見渡せる高い木があります」


「木の上?」


「ああ。あそこなら戦場を広く見渡せる」


「分かった」


「テリーとステフもルナと一緒に行ってね」


 俺が言う。


「ワフ!」


「キュ!」


 二匹が鳴く。


「お願いね」


「うん」


 ルナは二匹を連れて森へ向かった。


 しばらくして。


 高い木の枝にルナの姿が見える。


 矢筒を一つ背負い、残り二つを太い枝へ掛けていた。


 木の下にはテリーとステフ。


 これなら前回みたいに途中で矢がなくなることもない。


 ◇


「帝国軍が動きました!」


 斥候が戻ってきた。


「どこだ?」


 スコッティ公爵が聞く。


「三方向です!」


 その場にいた全員が地図を見る。


「北、中央、南。それぞれの道から兵が進んでいます」


「……そういうことか」


 スコッティ公爵が三本の道を見る。


「三方面を同時に動かすつもりか」


「はい」


「奴らの補給を断つなら、その前の部隊を突破する必要があるな」


「そうですね」


 クロードさんが地図を見る。


「中央が一番多い」


 スコッティ公爵が言った。


「アレン、クロード。中央を頼めるか?」


「はい!」


「ああ」


「フェリシアも中央へ」


「分かりました」


「北と南はこちらで受ける」


 スコッティ公爵が顔を上げた。


「ここで止めるぞ」


「はい!」


 ◇


 帝国軍が見えた。


 中央の街道。


 その左右にも兵が広がっている。


 多い。


 でも、こっちも今までとは違う。


「構え!」


 サハル軍の兵士たちが武器を構える。


 王国騎士団も並ぶ。


 遠くでは北と南の部隊も動き始めていた。


 帝国軍が三方向から来る。


「来ます!」


 敵兵が走り出した。


「前へ!」


 こっちも動く。


 両軍がぶつかった。


 金属音。


 怒声。


 地面を踏み鳴らす音。


「アレン!」


「はい!」


 隣にはクロードさん。


「行くぞ!」


「はい!」


 二人で走った。


「止めろ!」


 帝国兵が槍を構える。


 俺は速度を上げた。


「なっ!?」


 槍と槍の隙間へ入る。


 竜爪剣を振るった。


【55P獲得】


 そのまま次へ。


【60P獲得】


 後ろから剣。


 見えなくても分かる。


 《魔力感知》。


 かわした。


【50P獲得】


 すぐ横。


 クロードさんの剣が走った。


「ぐあっ!」


 一撃。


 さらに一歩。


 また一撃。


 速い。


 それだけじゃない。


 動きに無駄がない。


 相手の剣を最小限の動きでかわし、そのまま倒していく。


「アレン!」


「はい!」


 正面。


 盾を持った兵。


 横へ回る。


【70P獲得】


「囲め!」


 帝国兵が集まってくる。


 十人。


 さらにその後ろ。


「押せ!」


「数で潰せ!」


 左右から一斉に来る。


 《魔力感知》。


 位置は全部分かっている。


 一人目。


 振り下ろされた剣をかわす。


【45P獲得】


 二人目。


【60P獲得】


 三人目。


【55P獲得】


 止まらない。


 前へ。


【50P獲得】


【65P獲得】


 視界の端を表示が流れていく。


「何だこいつ!」


「止めろ!」


 まだ来る。


 だったら。


 もっと前へ。


「アレン!」


 クロードさんの声。


「右へ行く!」


「分かりました!」


 クロードさんが右。


 俺は中央。


 二手に分かれる。


「別れたぞ!」


「中央を止めろ!」


 槍兵が集まる。


 五人。


 十人。


 その後ろにもいる。


 地面を蹴った。


 槍の横を抜ける。


【70P獲得】


 返す剣。


【55P獲得】


 さらに一人。


【80P獲得】


「後ろへ回れ!」


 声。


 指揮官か。


 振り向く。


 少し離れた場所で男が腕を上げている。


 その瞬間。


 ヒュッ!


「ぐっ!」


 矢が肩へ刺さった。


「矢だ!」


「どこからだ!」


 ヒュッ!


 今度は別の兵士。


 遠くの森。


 木の上。


 ルナだ。


 次の矢をつがえている。


「指揮官を守れ!」


「射手を探せ!」


 帝国兵たちが周囲を見る。


 でも見つからない。


 その間にも矢が飛んでくる。


「今!」


 フェリシアの声。


「《魔弾》!」


 いくつもの光が飛んだ。


 ドドドドドッ!


 横から回り込もうとしていた兵士たちが崩れる。


「行きます!」


「ああ!」


 俺とクロードさんが再び並ぶ。


 さらに前へ。


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 帝国軍の中央が下がり始めた。


「中央を抜かれるぞ!」


「止めろ!」


 また兵士が集まる。


 今度はさっきより多い。


「アレン」


「はい」


「ここを抜くぞ」


「はい!」


 同時に走った。


 クロードさんが前の兵士を倒す。


 その横を抜ける。


 俺はさらに奥へ。


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 剣。


 槍。


 また剣。


 全部かわす。


【55P獲得】


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 何人倒した?


 もう分からない。


「止まれ!」


 馬の蹄。


 前を見る。


 立派な鎧を着た男が馬でこちらへ向かってくる。


「貴様!」


 剣を振り下ろした。


 避ける。


 すれ違う瞬間。


 竜爪剣を振った。


「ぐっ!」


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「隊長!」


「隊長がやられた!」


 帝国兵の動きが止まる。


「今です!」


 フェリシア。


「《魔弾》!」


 ドドドドドッ!


「ぐあっ!」


 兵士たちが崩れる。


 そこへ踏み込んだ。


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 表示が止まらない。


「押せ!」


 後ろからサハル兵の声。


「中央が崩れているぞ!」


「今だ!」


 サハル軍も前へ出る。


 帝国兵が押されていく。


 今までとは違う。


 俺たちが押している。


「増援を出せ!」


 帝国軍の奥から声。


 新しい兵士が出てくる。


 何十人。


 まだいる。


「アレン!」


「はい!」


「まだ行けるな!」


 クロードさんが笑う。


「もちろんです!」


 また走った。


 向かってきた兵士を斬る。


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 その横。


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 さらに次。


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 前へ。


 前へ。


 クロードさんも止まらない。


 二人で帝国軍の中央を切り裂いていく。


「二人を囲め!」


「行かせるな!」


 何十人もの帝国兵が向かってくる。


 右。


 左。


 正面。


 《魔力感知》。


 全部分かる。


 竜爪剣を握り直す。


 一人。


【55P獲得】


 次。


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 さらに次。


【60P獲得】


【50P獲得】


【70P獲得】


 視界の端をポイント表示が流れ続ける。


 数えるのをやめた。


 目の前の敵を倒す。


 それだけ。


「中央が持ちません!」


「下がれ!」


 帝国兵たちが後退し始める。


「追え!」


 サハル兵たちが声を上げた。


「北も持ち直しています!」


「南も帝国軍を止めました!」


 王国騎士団が加わったことで、他の二方向でも押し返しているらしい。


 いける。


 このままなら。


 ◇


 セイル川に架かる大橋。


 バスク将軍は増援とともに東へ渡っていた。


「将軍!」


 後方から騎馬が走ってくる。


「何だ?」


「中央が押されています!」


 バスク将軍の眉が動いた。


「原因は?」


「アレンとクロードです!」


「……二人ともか」


「はい! 中央部隊が崩されています!」


「北と南は?」


「王国騎士団が加わり、こちらも進軍が止まっています!」


 バスク将軍が馬を止めた。


「アレンにクロード……」


 しばらく東を見る。


「面倒なのが揃ったな」


「……」


「将軍?」


「魔物は?」


「命令があれば、すぐに出せます」


「薬は?」


「まだです」


「使え」


「はい!」


「百体すべてだ」


 バスク将軍は東を見る。


「準備ができたらすぐに放て」


「はっ!」


 ◇


「薬を入れろ!」


「はい!」


 セイル川東岸。


 帝国軍の後方には、大きな檻が並んでいた。


 一つ。


 二つ。


 その奥にも続いている。


 全部で百。


 中から低い唸り声が聞こえていた。


「将軍から命令だ!」


「全部か?」


「全部だ!」


「よし!」


 兵士たちが動き始める。


 檻の隙間から魔物へ薬を入れていく。


「こいつには多めに入れろ」


「壊れないか?」


「壊れたら次を使えばいい」


「そうだな」


 兵士が笑う。


「どうせ使い捨てだ」


 魔物の身体が震え始めた。


 目が赤くなる。


 息が荒くなる。


 口から泡が垂れる。


 ガンッ!


 檻が大きく揺れた。


「効いてきたな」


「ああ」


 別の檻。


 また別の檻。


 次々と魔物が暴れ始める。


 狼型。


 熊のような大型種。


 オーガ。


 巨大な蜥蜴。


 翼を持つ魔物。


 種類はばらばらだった。


「これが村へ行けば、兵も守りに戻るんじゃないか?」


 一人が言った。


「それなら楽になるな」


「畑も家もまとめて潰してくれればいい」


「どうせ俺たちの土地じゃない」


 誰かが笑った。


「サハル人が食われる分には何の問題もないな」


「違いない」


 魔物が再び檻へ体当たりする。


 ガンッ!


 兵士たちは笑いながら作業を続けた。


「準備完了!」


「全員、西側へ下がれ!」


「はい!」


 兵士たちが檻の後方へ移動する。


 東側には何もいない。


 戦場まで続く道だけ。


「開けろ!」


 留め具が外された。


 ガチャッ!


 最初の檻が開く。


「グオオオオオッ!」


 魔物が飛び出した。


 次。


 また次。


 檻が次々と開かれていく。


 百体。


 暴走した魔物たちが東へ走り始めた。


 ◇


「はあっ!」


 竜爪剣を振るう。


【90P獲得】


 帝国兵が倒れる。


 横から来た兵士。


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 その後ろ。


【75P獲得】


「下がれ!」


「こいつを近づけるな!」


 帝国兵が後退していく。


 追う。


 距離を詰める。


【55P獲得】


【80P獲得】


【65P獲得】


 また表示。


 さらに表示。


 さっきからずっと続いている。


 どれだけ増えた?


 確認している暇はない。


「アレン!」


「はい!」


 クロードさんも前へ出る。


 中央はかなり押し込んでいる。


「このまま行ける!」


 後ろから声が聞こえた。


 さらに前へ。


 そう思った。


 その時。


「……?」


 足が止まった。


「アレン?」


 クロードさんが振り返る。


 何だ?


 《魔力感知》。


「……」


 いる。


 一つじゃない。


 十。


 二十。


 もっと。


 たくさんだ。


 こっちへ向かっている。


「アレン!」


 フェリシアが来る。


「どうしたの?」


「何か来る」


「何か?」


 耳を澄ませた。


 ドドドドドド……。


 遠くから地面を踏み鳴らす音。


「何だ?」


 クロードさんも西を見る。


 土煙が上がっている。


 その中に影。


 一つ。


 また一つ。


 どんどん増える。


「グオオオオオッ!」


 咆哮。


 帝国兵たちまで後ろを見る。


 土煙の中から一体の魔物が飛び出した。


 口から泡を吹いている。


 目は真っ赤。


 身体には傷。


 それでも止まらない。


「……」


 あの目。


 あの動き。


 普通の魔物じゃない。


「アレン?」


 フェリシアが俺を見る。


 その後ろからさらに魔物が現れた。


 一体。


 二体。


 五体。


 十体。


 まだいる。


 俺は竜爪剣を握った。


「これは!?」


【保有:30,800P】

【累計獲得P:480,510P】



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― 新着の感想 ―
100体の魔物=元従魔なのかなぁ。 従魔にするには?って的な種族が混ざってそうですが、どうなんでしょう。 従魔を使って実験をして、結果から使える種族を捕獲したのかなぁ。 100体の魔物≠元従魔でなかっ…
もっと密かにスタンピードに見せ掛けて魔物使うと思ったら戦争に堂々とか これではセルヴァンは完全に敵に回すし他の国々も脅威に感じて動きかねんよ
なんで帝国軍には襲い掛からないんですかね?
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