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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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156/204

第156話 戦況が変わる

 地面を蹴る。


 帝国兵の集団へ一直線に向かった。


「何だ!?」


「敵だ!」


 気づいた兵士が槍を向ける。


 遅い。


 一気に距離を詰め、竜爪剣を振るった。


「ぐあっ!」

 

【人間討伐を確認しました】


【55P獲得】


 その横で剣を抜こうとした兵士へ踏み込む。


【人間討伐を確認しました】


【45P獲得】


「囲め!」


 左右から兵士が来る。


 《魔力感知》で位置は分かっている。


 一人目の槍をかわして斬る。


【60P獲得】


 返す剣でもう一人。


【40P獲得】


「なっ!?」


 止まらない。


 正面から来た兵士を斬り、横から振り下ろされた剣をかわす。


【55P獲得】


 そのまま懐へ入った。


【70P獲得】


「こいつ一人だ! 押せ!」


 何十人もの兵が向かってくる。


 竜爪剣を握り直した。


 斬る。


 かわす。


 踏み込む。


 また斬る。


【45P獲得】


【55P獲得】


【40P獲得】


 視界の端を表示が流れていく。


 帝国兵が次々と倒れる。


 それでも後ろから新しい兵が押し寄せてきた。


 俺の前を通すつもりはない。


 ◇


「……何だ?」


 スコッティ公爵は砦の上から戦場を見ていた。


 門はすでに破られかけ、兵たちも疲れ切っている。


 次の突撃を止める力は、もうほとんど残っていなかった。


 それなのに、門の前で帝国兵の動きが止まっている。


「どうした!」


「分かりません!」


 騎士が叫ぶ。


「帝国兵が押し返されています!」


「押し返されている?」


 公爵が目を凝らす。


 帝国兵の中を、一人の男が駆けている。


 剣を振るい、一人倒したと思った時には、もう次の兵へ向かっていた。


「……まさか」


「閣下?」


 見覚えがある。


「アレン……」


「アレン?」


「ああ。アレン・ヴァルディスだ」


 側近が目を見開く。


「あの?」


「前の戦いで《剣聖》を倒した冒険者だ」


 あの時も強かった。


 だが、今はそれ以上だ。


「……前より、はるかに強くなっている」


 ◇


「槍兵! 前へ!」


 帝国軍の中で男が叫ぶ。


 周囲より立派な鎧を着ている。


 指揮官だ。


 その瞬間。


 ヒュッ。


「ぐっ!」


 矢が首元へ刺さった。


「隊長!」


「どこからだ!」


 帝国兵たちが周囲を見回す。


 近くに射手はいない。


「探せ!」


「どこだ!」


 少し離れた場所で指示を出していた男が、次に倒れた。


「うっ!」


 また矢。


「まただ!」


「どこから飛んできている!?」


 兵たちが森や丘を見る。


 それでも射手を見つけられない。


 さらに一人。


 伝令役が倒れた。


「伝令がやられた!」


「射手を探せ!」


「見つかりません!」


 帝国兵からかなり離れた場所。


 ルナが弓を構えている。


 向こうからはこちらの姿がほとんど見えない。


 それでもルナには遠くの声が聞こえている。


 命令を出す声。


 伝令を呼ぶ声。


 兵の動きを変える声。


 誰が部隊を動かしているのか。


 ルナには分かる。


「……次」


 耳を澄ませる。


「左から回り込め!」


 遠くから声。


 狙いを定める。


 矢を放った。


 ヒュッ。


「ぐっ!」


 また一人倒れる。


「どこだ!」


「射手はどこにいる!」


 帝国兵の混乱が広がっていく。


 命令を出した者から狙われる。


 なのに、どこから矢が飛んでくるのか分からない。


 別の兵が指揮を引き継ぐ。


 ルナが弓を引く。


 また矢が飛んだ。


 ◇


「アレン!」


 フェリシアの声。


「右!」


「分かった!」


 右側から帝国兵がまとまって近づいてくる。


 俺を囲むつもりだ。


 その前に。


「《魔弾》!」


 複数の魔弾が飛んでいく。


 ドドドドドッ!


「ぐあっ!」


「何だ!?」


 帝国兵の隊列が一気に崩れた。


 以前とは明らかに威力が違う。


 それでもすぐに次の《魔弾》を作った。


「まだ来る!」


「うん!」


 俺は崩れた隊列へ突っ込む。


【50P獲得】


【55P獲得】


【45P獲得】


 槍。


 剣。


 盾。


 次々と向かってくるが、遅い。


 盾を持った兵士の横へ回り込んで斬る。


【60P獲得】


 その後ろにいた兵士も倒す。


【45P獲得】


「止めろ!」


 馬に乗った男が叫ぶ。


 立派な鎧。


 また指揮官。


 こちらへ馬を走らせてくる。


 避ける。


 すれ違いざまに竜爪剣を振るった。


「ぐっ!」


【130P獲得】


 騎手を失った馬だけが走っていく。


「隊長が!」


 周囲の帝国兵の動きが止まる。


 そこへ踏み込んだ。


 斬る。


 次へ。


 さらに斬る。


 視界の端を表示が流れ続ける。


 何人倒したのか、もう分からない。


 それでも前にはまだ帝国兵がいる。


 なら、まだ止まれない。


 ◇


「敵の左側が崩れています!」


 砦の上で騎士が叫んだ。


「右側もです!」


「何が起きている?」


 スコッティ公爵が聞く。


「アレン・ヴァルディスが正面を押し返しています!」


「それだけではありません!」


 別の騎士が声を上げる。


「帝国軍の指揮官が次々と倒れています!」


「指揮官が?」


「矢です!」


「砦からか?」


「違います! どこから撃たれているのか分かりません!」


 公爵が戦場を見る。


 帝国軍の動きが明らかに変わっていた。


 先ほどまでまとまって砦へ向かっていた兵たちが、今はばらばらになっている。


 進む者。


 立ち止まる者。


 後方を振り返る者。


 命令を待つ者。


 さらに魔法が炸裂し、まとまった部隊が崩れていく。


「下がれ!」


 帝国軍の奥から声が聞こえた。


「一度下がれ!」


 角笛が鳴る。


 ブオオオオオッ!


「撤退だ!」


「下がれ!」


 帝国兵が一斉に後退を始めた。


「アレン!」


 フェリシアが駆けてくる。


「追う?」


「いや、深追いしない」


 目的は帝国兵を全員倒すことじゃない。


 スコッティ公爵を助けることだ。


 離れていく帝国兵を見ながら表示を確認する。


【保有:18,100P】


【累計獲得P:467,810P】


「……増えたな」


 戦う前は一万一千三百P。


 今回だけで六千八百P増えている。


 何人倒したかは途中から数えていない。


「アレン!」


 ルナも走ってくる。


「大丈夫?」


「うん」


「ワフッ!」


「キュ!」


 テリーとステフも一緒だ。


「ルナ、すごかったね」


 フェリシアが言う。


「何が?」


「指示を出してる人ばかり狙ってたでしょ?」


「声が聞こえたから」


 ルナが普通に答える。


「向こう、どこから撃たれてるか全然分かってなかったよ」


「遠かったからね」


 砦を見る。


 帝国軍は十分離れた。


「行こう」


「うん」


 ◇


 砦へ入る。


 中には多くの負傷兵がいた。


 壁に座り込んでいる兵。


 腕を押さえている兵。


 横になっている者もいる。


 みんな俺たちを見ていた。


 奥から男が歩いてくる。


 傷だらけの鎧。


 スコッティ公爵だ。


「アレン・ヴァルディス」


「お久しぶりです」


「……まさか、また君に助けられるとはな」


「間に合ってよかったです」


「ベルガントから来たのか?」


「はい」


「そうか」


 公爵が砦の外を見る。


「つい先ほどまで、ここで終わると思っていた。次の攻撃は防げないとな」


「……」


「それが、わずかな時間で帝国軍が退いた」


「俺だけじゃありません」


 フェリシアとルナを見る。


「二人がいましたから」


「そうか」


 公爵が二人を見る。


「助かった。礼を言う」


「いえ」


 フェリシアが答え、ルナも頭を下げる。


「公爵閣下」


「何だ?」


「王都から援軍がこちらへ向かっています。他領からも兵が来ています」


 公爵の表情が変わった。


「いつだ?」


「早ければ、あと二、三日だそうです」


「二、三日……」


「はい」


 公爵が黙る。


「ベルガント伯爵は、公爵閣下が生きていれば散らばった兵をもう一度まとめられると言っていました」


「……ベルガントが?」


「はい」


 地図を広げる。


「まずは東へ後退した方がいいと思います」


「この砦を捨てるか」


「はい。ここで残った兵まで失う必要はありません」


 地図の東側を指す。


「一度下がって態勢を整え、散らばった兵を集め直して援軍と合流する。それまで持たせれば、まだ立て直せます」


「……」


 公爵が地図を見る。


「軍は壊れたが、兵が全員死んだわけではありません」


「ああ」


「公爵閣下が戻れば、また集められます」


 しばらく考えたあと、公爵が顔を上げた。


「分かった」


 周囲の騎士を見る。


「この砦を放棄する。動ける者は撤退準備!」


「はい!」


「負傷者を優先しろ!」


「はい!」


 止まりかけていた砦の中が再び動き始めた。


 兵士たちが立ち上がり、荷物をまとめ、負傷者を運び始める。


 俺は西を見る。


 帝国軍はまだいる。


 戦争も終わっていない。


 それでもスコッティ軍はまだ戦える。


 ここから立て直す。


【保有:18,100P】

【累計獲得P:467,810P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
今回の奇襲は成功しましたが、あまりにも無茶しすぎでしたね。 次の撤退戦は、闇夜に紛れるて逃げるのかもしれませんが、かなりの犠牲が出てしまいそうですね。 今なら帝国軍は指揮官が討たれて再編成中でしょうか…
感想一覧
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