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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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第152話 避難路

「……お母さん……」


 声のした方へ走る。


「こっち!」


 ルナが先に曲がった。


 扉が壊れている一軒の家。


「中?」


「うん。聞こえる」


 ルナが中へ入る。


 俺とフェリシアも続いた。


「……お母さん……」


 奥。


 倒れた机の下。


「いた!」


 小さな女の子が身体を丸めていた。


 顔は煤で汚れている。


「大丈夫?」


 ルナがしゃがむ。


「……誰?」


「冒険者だよ。助けに来たの」


「お母さんが……」


 女の子が震える指で外を指す。


「お母さんが外に……」


「アレン」


「分かった」


 《魔力感知》を広げる。


 家の周囲に弱い反応。


「いる」


「本当?」


「うん。家の裏」


 外へ出ると、壊れた荷車。


その向こうに反応がある。


「いた!」


 女性が倒れていた。


「お母さん!」


 女の子が駆け寄ろうとする。


「待って」


 ルナが止めた。


 女性のそばへしゃがむ。


「息はある」


「本当!?」


「うん」


 脚から血が出ている。


 意識はない。


「治すね」


 ルナが傷へ手を当てる。


 淡い光が広がった。


 傷が少しずつ塞がっていく。


「……う」


「お母さん!」


 女性がゆっくり目を開く。


「……ミナ?」


「お母さん!」


 女の子が抱きついた。


「よかった……」


 フェリシアが息を吐く。


「まだだ」


 俺は周辺を見回す


「他にもいる」


「どこ?」


「すぐ近くに三人。それと、少し離れた場所にも」


「探そう」


「うん」


 ◇


「誰かいますか!」


 ルナが呼びかける。


 返事はない。


「……待って」


 突然、足を止めた。


「どうした?」


「あの納屋から何か聞こえる」


 納屋へ入る。


 誰もいない。


 ルナが耳を澄ませる。


「……下」


「下?」


 床を見る。


 藁をどける。


「あ」


 木の蓋。


 開けた。


「ひっ!」


「大丈夫です!」


 地下の小さな貯蔵庫。


 老人が二人。


 若い男が一人。


 三人とも怯えている。


「帝国兵じゃ……ない?」


「冒険者です」


「助けに来ました」


「……助かった」


 老人が力を抜く。


 さらに別の家。


 今度は俺の《魔力感知》が反応した。


「この中に二人いる」


 ルナも耳を澄ませる。


「……いる。息の音がする」


 壊れた戸棚の奥。


 親子が隠れていた。


「こっちにも一人」


 物置。


「向こう!」


 井戸の近く。


 一人。


 二人。


 村の中には、まだ何人も隠れていた。


 帝国兵から逃げるため、息を潜めて助けを待っていた。


「近くは?」


 フェリシアが聞く。


 《魔力感知》を広げる。


「住人はもういないと思うけど……来る」


「帝国兵?」


「多分」


 さっきから感じていた反応。


 どんどん近づいている。


「何人?」


「四十……」


 さらに増える。


「五十近い」


 助け出した村人たちを見る。


 老人。


 子供。


 怪我人。


 すぐには逃げられない。


「アレン」


「うん」


 考える必要はなかった。


「俺が止める」


「一人で?」


「フェリシアとルナは、この人たちを守って」


「でも」


「大丈夫」


 竜爪剣へ手を置く。


「さっき戦って分かった」


 今の自分がどこまで動けるのか。


 フェリシアが俺を見る。


 すぐに頷いた。


「分かった」


「ルナ」


「任せて」


 ルナが弓を構える。


「テリー。ステフ。私のそばにいてね」


「ワフッ!」


「キュ!」


 俺は一人、西へ歩き出した。


 ◇


 足音。


 鎧。


 剣。


 槍。


 家々の間から帝国兵が現れる。


 数はやっぱり五十人近くだ。


「いたぞ!」


「村人もいる!」


「逃がすな!」


 何人かが左右へ散った。


 正面から来るだけじゃない。


 家の間。


 裏道。


 東へ抜ける道。


 村人たちの逃げ道へ回り込もうとしている。


「……」


 竜爪剣を抜く。


「一人も行かせない」


「何だ?」


「冒険者か!」


 最初の兵が槍を構えた。


「どけ!」


 突いてくる。


 見える。


 槍の横を抜けた。


 一閃。


【人間討伐を確認しました】


【60P獲得】


 二人目。


【45P獲得】


 三人目。


【55P獲得】


 四人目。


【40P獲得】


「なっ……」


 表示が次々と流れる。


「こいつを囲め!」


 帝国兵が広がった。


 六人。


 八人。


 同時に来る。


 でも、囲まれている感じがしない。


 右から切りかかってくる帝国兵をそのまま斬る。


 次は左。


 槍を弾く。


 踏み込む。


 一撃。


 正面からの攻撃。


 身体を沈める。


 頭の上を剣が通った。


 立ち上がりながら斬る。


「速い!」


「なんだこいつ!」


「止めろ!」


 一人。


 二人。


 三人。


 すぐに数える必要もなくなった。


 帝国兵の間を抜ける。


 剣を振る。


 次。


 さらに次。


「ひっ……」


 一人が後ずさった。


「化け物……」


「……」


 昔なら、その言葉に戸惑ったかもしれない。


 でも、後ろには守る人たちがいる。


 今はそれでいい。


「右へ回れ!」


 何人かが俺を避けて走った。


「フェリシア!」


「大丈夫!」


「《魔弾》!」


 三つの白い光。


 それぞれ違う方向へ飛ぶ。


 ドンッ!


「ぐあっ!」


 一人。


 さらに。


 ドンッ!


 二人目。


 最後の《魔弾》は、村人へ回り込もうとしていた兵の目の前へ着弾した。


 地面が爆ぜる。


「うわっ!」


 兵が足を止める。


「こっちは通さない!」


 フェリシアが杖を構え直した。


 反対側。


 二人の帝国兵が家の陰を走る。


「そこ」


 ルナが弓を引く。


 一射。


 先頭の兵の脚。


「ぐっ!」


 二射目。


 もう一人の剣を持つ腕。


「うあっ!」


 さらに。


 屋根と塀の僅かな隙間。


 その間を矢が抜けた。


「がっ!」


 肩を射抜く。


「ワフッ!」


「テリー、駄目!」


 前へ出ようとするテリーをルナが止める。


「私たちはここ!」


「ワフ!」


 ルナはすぐ次の矢の準備をした。


 俺も前を見る。


 まだいる。


「来い」


「くそっ!」


 十人近くが一斉に向かってくる。


 踏み込む。


 景色が流れる。


「消え――」


 声が途中で止まった。


 一人目。


 二人目。


 三人目。


 竜爪剣を返す。


 四人目。


 槍の柄を斬る。


 五人目。


 さらに前。


 敵兵たちの表情が変わる。


「下がるな!」


 奥から隊長らしい男が叫んでいる。


「前へ出ろ!」


 でも。


「む、無理だ!」


「こんなの聞いてない!」


 一人が逃げる。


 それをきっかけに。


「退け!」


「走れ!」


 帝国兵が次々と西へ逃げ出した。


 追わない。


 俺たちの目的は帝国兵を全滅させることじゃない。


 村人を逃がすことだ。


「……」


 竜爪剣を下ろす。


 《魔力感知》。


 近くに大きな反応はない。


「もう大丈夫」


 フェリシアたちのところへ戻る。


「終わった?」


「うん」


 《会員》を見る。


 倒した帝国兵は二十八人。


「千五百八十Pか」


「そんなに?」


「人数が多かったから」


【保有:5,900P】


【累計獲得P:455,610P】


「……でも」


 フェリシアが帝国兵たちの逃げた方向を見る。


「変じゃない?」


「何が?」


「この人たち」


 村を見る。


「途中から、アレンを倒すより村人の方へ回ろうとしてなかった?」


「私も思った」


 ルナが頷く。


「東へ抜ける道を狙ってた」


「うん」


 俺も気になっていた。


 俺を倒したいだけなら。


 全員で囲めばいい。


 でも、何人も俺を避けて家の裏や細い道へ向かった。


 その先にいたのは村人たちだ。


「村を取ることだけが目的じゃないのかも」


 フェリシアが言う。


「どういうこと?」


「住民が逃げられなくなったら、こっち側は助けないわけにはいかないよね」


「騎士も冒険者も来る」


 俺が言う。


「うん」


「それだけ前線に出せる人が減るってこと?」


 ルナが聞く。


「可能性はあると思う」


 フェリシアが答える。


 避難。


 護衛。


 治療。


 食料。


 寝る場所。


 逃げてくる人が増えれば増えるほど、必要な人手も増える。


「もし別の村でも同じことをしてるなら……」


 ルナの表情が曇る。


「こっち側は、どんどん人を取られるね」


「うん」


 断定はできない。


 でも、帝国兵の動きにはその可能性を考えさせるものがあった。


「ひどい……」


 ルナが小さく呟く。


 その時。


「ん?」


 倒れている帝国兵。


 他とは少し装備が違う。


 隊長格だろう。


 腰に革の袋が下がっている。


 開く。


「紙?」


 取り出して広げた。


「地図だ」


 フェリシアとルナも覗き込む。


 この辺りの街道。


 リーベ村。


 そして、東へ続く道。


「ここ」


 ルナが指差した。


 いくつか印がついている。


 その横には短い文字。


「東街道……封鎖」


「封鎖?」


 フェリシアの表情が変わった。


 俺も地図を見る。


 東。


「……」


 さっき、クロードさんたちは避難民を連れてそこへ向かった。


「まずい」


「アレン?」


「この道」


 地図を指す。


「クロードさんたちが通る」


「あっ」


「じゃあ……」


「別の帝国兵が狙ってるかもしれない」


 ルナがすぐ東を見る。


「急ごう!」


「うん。でも」


 助け出した村人たちを見る。


 ここへ残すわけにはいかない。


「この人たちも連れていく」


「分かった」


「私が怪我人を見る」


 ルナが女性のところへ走る。


「歩けますか?」


「はい……」


 まだ足元は不安定だ。


「無理しないで。ゆっくりで大丈夫だから」


 フェリシアも老人へ手を貸す。


「こちらへ」


「ありがとう……」


 俺はもう一度地図を見る。


【東街道封鎖】


 クロードさん。


 避難民。


 このまま進めば大変なことになる。


「急ごう」


 俺たちは村人たちを連れ、東へ向かった。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
Pは諦めて、ルナやフェリシアみたいに、帝国兵は殺さず、戦闘不能にする方が、帝国軍の足手まといになって良さそうだ。
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