第151話 リーベ村
村の中へ進む。
静かだった。
というよりかは、静かすぎる。
「……」
焼けた家。
壊された扉。
道に散らばった荷物。
そして、倒れている村人たち。
「ひどい……」
フェリシアが小さく呟いた。
騎士から聞いていた。
帝国軍は民間人まで殺している。
「……クロードさんたちを探そう」
「うん」
《魔力感知》を広げる。
「……いる」
「どこ?」
「村の奥」
かなり多い。
一つ。
二つ。
十。
それ以上。
「クロードさんたち?」
「分からない」
反応は人間。
でも、敵か味方かまでは分からない。
その時。
ガキンッ!
「!」
金属同士がぶつかる音。
続いて。
「右だ!」
聞き覚えのある声。
「クロードさんだ!」
馬を走らせる。
家の間を抜ける。
さらに奥。
「先に行く!」
「え?」
馬から飛び降りた。
地面を蹴る。
「――っ!」
身体が一気に前へ出た。
速い。
自分でも驚く。
一歩進むだけで、景色が後ろへ流れる。
これが、今の俺の《敏捷》。
でも、今は確かめている場合じゃない。
◇
「ボルク、右!」
「おう!」
大盾が前へ出る。
ドンッ!
帝国兵が弾き返された。
「リディア!」
「分かってる!」
火球が飛ぶ。
爆発。
「ぐあっ!」
帝国兵が吹き飛ぶ。
その中心。
《銀狼》の四人がいた。
クロードさん。
ボルクさん。
リディアさん。
セシルさん。
その後ろには。
「急いで!」
「子供を先に!」
「こっちです!」
大勢の村人。
三十人以上はいる。
老人。
女性。
子供。
怪我をしている人もいる。
クロードさんたちは、その人たちを守るように戦っていた。
帝国兵も三十人以上。
クロードさんが弱いわけじゃない。
一人。
また一人。
次々と倒している。
ボルクさんも大盾で何人も止めていた。
でも、自由に攻められない。
後ろに住民がいる。
一人でも抜かせれば、その先にいるのは戦えない人たちだ。
「左から来る!」
リディアさんが叫ぶ。
クロードさんが向きを変える。
その反対側。
「今だ!」
三人の帝国兵が住民へ走る。
「しまった!」
一人が剣を振り上げた。
子供を抱いた女性が固まる。
その瞬間、俺は帝国兵の間へ入った。
「なっ!?」
帝国兵と目が合う。
剣が振り下ろされる。
遅い!
竜爪剣。
一閃。
【人間討伐を確認しました】
【55P獲得】
「……アレン?」
「クロードさん!」
「なんでお前が!」
「話は後です!」
「……そうだな!」
残り二人。
こちらへ向かってくる。
「やれ!」
二人同時。
でも、動きがはっきり見える。
一人目の剣をかわす。
そのまま懐へ入る。
一撃。
【45P獲得】
振り返る。
もう一人。
相手が構える前に距離を詰める。
一閃。
【70P獲得】
「アレン!」
フェリシアの声。
ルナと一緒に追いついた。
「右!」
「分かった!」
帝国兵が住民の横へ回り込もうとしている。
フェリシアが杖を向ける。
「《魔弾》!」
白い光が飛ぶ。
ドンッ!
「ぐあっ!」
帝国兵が吹き飛ぶ。
続けて二発。
三発。
地面まで大きく抉れた。
「……威力、上がりすぎ」
「大丈夫?」
「うん」
フェリシアはすぐに杖を構え直す。
「住民に当てないようにしないと」
「お願い」
「任せて」
次の《魔弾》は少し小さい。
でも、狙いは正確だった。
住民と帝国兵の間。
帝国兵だけを撃ち抜く。
左。
別の兵が回り込む。
「ルナ!」
「見えてる」
ルナが弓を上げる。
すぐには撃たない。
一瞬、周囲を見る。
住民の位置。
クロードさん。
ボルクさん。
敵の進路。
矢が通る隙間。
全部を確認する。
弦を引き放つ。
矢は人と人の間を通った。
帝国兵が剣を上げる。
その腕へ。
突き刺さる。
「ぐっ!」
剣が落ちた。
ルナはすでに次を見ている。
二射目。
今度は脚。
「うわっ!」
帝国兵が倒れる。
さらに三射目。
今度は住民の後ろへ回ろうとしていた兵。
矢が肩を射抜いた。
「……すごい」
フェリシアが呟く。
ただ速いだけじゃない。
どこを通せば誰にも当たらないか。
どこを射抜けば敵を止められるか。
ルナは全部見ている。
「ワフッ!」
テリーが前へ出ようとする。
「テリー!」
ルナが止める。
「今日はこっち!」
「ワフ……」
「ステフも!」
「キュ!」
ステフも羽を広げるのをやめた。
二匹はルナのそば。
予定通り。
「アレン!」
クロードさんが叫ぶ。
「住民を東へ出す!」
「分かりました!」
「ボルク!」
「おう!」
大盾が前へ出る。
「道を開けるぞ!」
「リディア!」
「はい!」
火球。
爆発。
帝国兵が左右へ散る。
そこへ俺が入った。
一人。
【40P獲得】
二人。
【55P獲得】
三人目。
【45P獲得】
「なんだこいつ!」
「速すぎる!」
敵の視線が俺へ集まる。
それでいい。
「こっちだ!」
さらに前へ出る。
住民から離す。
帝国兵が俺を囲む。
五人。
七人。
敵の攻撃は全部見える。
一人目をかわす。
二人目の槍を弾く。
三人目が横から来る。
その前に踏み込む。
「消え――」
一撃。
振り返る。
もう一撃。
前。
右。
左。
身体が迷わない。
「今だ!」
ボルクさんが叫ぶ。
「急げ!」
住民たちが動き出す。
クロードさんたちが囲む。
セシルさんは負傷した老人へ肩を貸していた。
「ゆっくりで大丈夫です」
「す、すまない……」
「セシル!」
「はい!」
「そのまま先へ!」
「分かりました!」
住民が次々と村の外へ向かう。
「逃がすな!」
帝国兵が追おうとする。
その足元へ。
「《魔弾》!」
ドンッ!
地面が爆ぜる。
「うわっ!」
前へ出られない。
さらにルナの矢が帝国兵の腕、脚、武器を持つ手。
必要な場所だけを射抜いていく。
「くそっ!」
「こいつら……!」
住民との距離が開く。
「クロードさん!」
「もう少しだ!」
最後の住民が東へ走った。
クロードさんがこちらへ戻ってくる。
「アレン!」
「はい!」
「下がるぞ!」
「分かりました!」
帝国兵を牽制しながら後退する。
追ってくる。
でも、俺たちまで無理に追おうとはしてこない。
しばらく進むと村の入口が見えてきた。
避難した住民たちと合流した。
◇
「助かった」
クロードさんが息を吐いた。
「間に合ってよかったです」
「ああ」
クロードさんが俺を見る。
フェリシアを見る。
「……お前たち」
「はい?」
「また強くなったな」
クロードさんが一瞬、表情を崩したが直ぐに元に戻った。
「だが、まだ終わってない」
「村に人が残ってますか?」
「ああ」
クロードさんが村を見る。
「俺たちが来た時には、もう帝国兵が入ってた」
「……」
「助けられた人間は集めた。でも全員かどうか分からない」
「まだいるかもしれない?」
「ああ」
黒い煙が上がる村を見る。
「俺たちが探します」
「アレン」
「クロードさんたちは、この人たちをお願いします」
「……」
「俺たちなら大丈夫です」
クロードさんが少し考える。
やがて頷いた。
「分かった」
「はい」
「無茶はするなよ」
「分かってます。行こう!ルナ、フェリシア」
「うん」
二人も頷いた。
「ワフッ!」
「キュ!」
俺たちは再び村へ入った。
◇
《魔力感知》。
「……いる」
「どこ?」
「西側」
かなり多い。
一つ。
二つ。
十。
まだ増える。
こっちへ近づいている。
「帝国兵?」
「多分」
竜爪剣へ手を置く。
その時。
「……お母さん……」
「?」
声。
「今の聞こえた?」
ルナが振り返る。
耳を澄ます。
家の向こう。
「……お母さん……」
子供だ。
三人で顔を見合わせる。
「行こう!」
走り出す。
同時に村の西側からいくつもの足音が近づいてきた。
【保有:4,320P】
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