第150話 戦う前に
リーベ村。
クロードさんたちも向かっている。
その先では帝国軍の部隊まで確認されている。
「……」
手綱を握りながら考える。
この先、本格的な戦闘になるかもしれない。
前回の戦争では、《剣聖》とも戦った。
今回はそれ以上の規模だ。
「フェリシア、ルナ」
「何?」
「少し止まっていい?」
「どうしたの?」
街道脇で馬を止める。
二人も続いた。
「今のうちに能力を上げておこうと思う」
「あ」
フェリシアがすぐに気づいた。
「P使うの?」
「うん」
《会員》を開く。
【保有:124,010P】
【累計獲得P:453,720P】
「十二万P使えるのか」
「そんなにあるの?」
ルナが驚く。
「ここ最近、使ってなかったからね」
「全部使う?」
「ほとんど」
「また?」
フェリシアが苦笑する。
「でも、全回復の分は残すよ」
全回復は一回五百P。
四千P残せば、八回使える。
「四千十P残す」
「本当にぎりぎりまで使うんだね」
「この先、何があるか分からないから」
負けた後にPが残っていても意味がない。
今まで何度もそう思ってきた。
まず現在の能力を確認する。
【名前:アレン・ヴァルディス】
【会員ランク:プラチナ】
【基礎能力】
【筋力:2,120】
【耐久:2,560】
【敏捷:3,240】
【魔力:3,980】
「かなり上がってる」
最後に確認してから、ずっと戦ってきた。
セルヴァン。
アルスレインのダンジョン。
南西の森。
ミラディアでも三週間、何度も魔物を倒した。
Pで買った分だけじゃない。
戦った分だけ、俺自身の基礎能力も伸びている。
「どう上げるの?」
ルナが聞く。
「全部。でも魔力は多めにする」
「魔力?」
「フェリシアもルナも使うから」
《共有》で、俺の能力は二人にも渡る。
特に魔力はフェリシアの《魔弾》、ルナの回復魔法にも大きく関わる。
長い戦闘になるなら余裕が欲しい。
「じゃあ使うよ」
《会員》を操作する。
【筋力強化(極) 5,000P】
【耐久強化(極) 5,000P】
【敏捷強化(極) 5,000P】
【魔力強化(極) 5,000P】
【一回の購入につき基礎能力値+400】
筋力を五回。
【筋力:2,120 → 4,120】
耐久を五回。
【耐久:2,560 → 4,560】
敏捷を六回。
【敏捷:3,240 → 5,640】
そして。
「魔力は八回」
「八回?」
フェリシアが聞き返す。
「うん」
【《魔力強化(極)》を8回購入しますか?】
【必要:40,000P】
「買う」
【魔力:3,980 → 7,180】
【合計120,000Pを使用しました】
【保有:4,010P】
「……っ」
身体の奥から一気に力が湧き上がる。
視界まで変わったように感じた。
もう一度確認する。
【基礎能力】
【筋力:4,120】
【耐久:4,560】
【敏捷:5,640】
【魔力:7,180】
「七千……」
思わず声が出る。
最初の頃。
俺の魔力は十八しかなかった。
それが今では七千を超えている。
「あっ」
フェリシアが自分の手を見る。
「来た?」
「うん。一気に」
「私も」
ルナも身体を確かめている。
《共有》を開く。
【共有メンバー:3名】
【フェリシア・ロート】
【ルナ・アルヴェイン】
【テリー】
【共有率:20%】
【共有値】
【筋力:824】
【耐久:912】
【敏捷:1,128】
【魔力:1,436】
「千四百三十六……」
フェリシアが呟く。
「魔力だけで?」
「うん」
「それだけで私の元々の能力を遥かに超えてるんだけど」
フェリシアが自分の能力を確認する。
【名前:フェリシア・ロート】
【筋力:38+824】
【耐久:42+912】
【敏捷:58+1,128】
【魔力:91+1,436】
「……すごい」
「どう?」
「魔力が千五百を超えてる」
フェリシアが杖を握った。
「《魔弾》、今までと同じ感覚で撃ったらまずそう」
「最初は抑えてね」
「うん」
「私も見る」
ルナも能力を開く。
【名前:ルナ・アルヴェイン】
【筋力:34+824】
【耐久:37+912】
【敏捷:62+1,128】
【魔力:69+1,436】
「……敏捷、共有だけで千超えてる」
「うん」
「ちょっと動いてみていい?」
「気をつけて」
ルナが馬から降りる。
軽く地面を蹴った。
「えっ!?」
一瞬で数メートル先へ移動する。
慌てて止まった。
「危なっ!」
「だから気をつけてって」
「こんなに変わると思わなかったんだもん」
ルナが戻ってくる。
「慣れるまで抑えた方がいいね」
「うん」
「ワフ?」
テリーがルナを見上げている。
「あ。テリーもだ」
ルナがしゃがんだ。
テリー自身は、以前能力を確認してからほとんど戦っていない。
基礎能力はほぼ変わっていない。
【テリー】
【筋力:28+824】
【耐久:31+912】
【敏捷:51+1,128】
【魔力:58+1,436】
「すご……」
ルナが目を丸くする。
「ワフ?」
「テリー、すごく強くなったよ」
「ワフッ!」
尻尾を勢いよく振った。
「でも走らないでね」
「ワフ?」
「今急に全力で走ったら、私でも怖いから」
「ワフッ!」
「返事だけはいいんだから」
「キュ?」
俺の肩にいるステフが首を傾げる。
「ステフは《共有》に入ってないからそのまま」
「キュ!」
ステフには《共有》していない。
まだ幼い。
少し飛べるようになった。
火も少し吐けるようになった。
でも、戦闘経験はない。
これから行く場所は、ステフには危険すぎるかもしれない。
「それと、布陣を決めておこう」
二人が俺を見る。
「俺が前に出る」
「うん」
「フェリシアとルナは後ろから援護して」
「分かった」
「うん」
「ルナはテリーとステフも見ててほしい」
「任せて」
ルナが二匹を見る。
「テリーもステフも、私のそばにいるんだよ」
「ワフッ!」
「キュ!」
「前に出ちゃ駄目だからね」
「ワフッ!」
「キュ!」
《共有》中の自分の能力も確認した。
三人へ能力を渡している分、俺自身には十五%の負担がある。
【《共有》適用中】
【筋力:3,502】
【耐久:3,876】
【敏捷:4,794】
【魔力:6,103】
それでも十分高い。
「これなら」
戦える。
表示を閉じる。
西を見る。
黒い煙はまだ上がっていた。
「行こう」
「うん」
三人とも馬へ乗る。
再びリーベ村へ向かった。
◇
村が近づく。
煙がどんどん濃くなっていった。
「焦げ臭い」
フェリシアが言う。
「うん」
風に乗って煙が流れてくる。
やがて。
村の入口が見えた。
「……」
壊れた柵。
倒れた荷車。
地面に散らばった荷物。
焼けた家。
「クロードさんたちは?」
「分からない」
馬をゆっくり進ませる。
その時。
「アレン……」
ルナの声がした。
「何?」
視線を追う。
街道の脇。
人が倒れている。
馬を止め、近づく。
鎧は着ていない。
武器も持っていない。
普通の服だった。
「……」
動かない。
「死んでる……」
フェリシアが小さく言った。
その先にもう一人。
さらに向こうにも。
帝国兵じゃない。
騎士でもない。
村の人たちだ。
「なんてひどいことを……」
ルナが呟く。
騎士から聞いていた。
民間人まで殺している。
でも、聞くのと見るのは違った。
クロードさんたちは?
残っている住民は?
帝国軍は?
どうなっているかわからない。
竜爪剣の柄を握った。
「行こう」
「うん」
「……うん」
俺たちは、死体が転がるリーベ村へ足を踏み入れた。
【保有:4,010P】
【累計獲得P:453,720P】
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