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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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149/200

第149話 前線へ

いつもこちらの作品を読んで頂きありがとうございます。

本日から1日2話更新(午前7時10分と午後8時10分)とさせて頂きます。


 職員が依頼書をテーブルへ置いた。


【緊急依頼】


【スコッティ公爵領東部・避難民誘導及び護衛】


【推奨ランク:A】


「Aランク?」


 ルナが聞く。


「はい」


 職員が頷いた。


「避難民の誘導だけなら、もっと低いランクでもできるんじゃないですか?」


 フェリシアが聞く。


「通常なら、そうです」


「今回は違う?」


「はい」


 職員が地図を広げた。


「まだスコッティ公爵領内に多くの住民が残っています」


「逃げられてないんですか?」


「帝国軍の進軍が予想以上に早いんです」


「……」


 職員が地図の東側を指す。


「ベルガント伯爵は、残っている住民をできる限りこちらへ避難させるよう指示しています」


「でも、その辺りまで帝国軍が来てる?」


「すでに一部の部隊が確認されています」


「だからAランクなんですね」


「はい。帝国軍との戦闘になる可能性も高い状況です」


 避難民を連れている時に帝国軍と遭遇する可能性がある。


 そういうことか。


「依頼は住民をベルガント領まで連れてくること?」


「そうです」


「帝国軍を倒すことが目的じゃない?」


「違います」


 職員がはっきり答えた。


「一人でも多くの住民を逃がす。それがベルガント伯爵からの依頼です」


「分かりました」


「それと」


「はい?」


「ベルガント伯爵ご本人も前線へ出ています」


「伯爵が?」


「はい。他の貴族家からも騎士団が集まっています」


 職員がいくつか名前を挙げる。


「グレンツ伯爵家。それから、ヴァルディス侯爵家も」


「……」


 思わず顔を上げた。


「ヴァルディス侯爵家?」


「はい」


 父さん。


「アレン?」


 ルナが俺を見る。


「うん」


 家を出てから会っていない。


 ヴァルディス家の跡取りでもなくなった。


 でも、その名前を聞けば何も感じないわけじゃない。


「侯爵本人も前線に?」


「そこまでは確認できていません。ただ、ヴァルディス侯爵家の騎士団が入っていることは確かです」


「そうですか」


 依頼書へ視線を戻す。


「クロードさんたちは?」


「すでに同じ方面へ向かわれています」


「同じ依頼ですか?」


「はい。避難民の誘導と護衛です」


 迷う理由はなかった。


「受けます」


 フェリシアを見る。


「うん」


 ルナも頷いた。


「私も行く」


 職員が依頼書へ印を押した。


「ありがとうございます」


「いつ出ればいいですか?」


「できるだけ早く」


「じゃあ、今から行きます」


「今から?」


「馬があります。荷物も準備できています」


「分かりました」


 職員が地図を指した。


「このまま西へ向かってください。途中にベルガント騎士団の部隊がいます。そこで最新の状況を確認できます」


「はい」


 職員の表情が険しくなる。


「危険だと思ったら、すぐに戻ってください」


「分かりました」


 依頼書を受け取り、ギルドを出た。


 ◇


 そのまま西へ向かった。


 三人とも馬に乗る。


「キュ!」


 ステフは俺の肩。


「ワフッ!」


 テリーは馬の横を走っている。


「本当にすぐ行くんだね」


 ルナが言う。


「うん」


「疲れてない?」


「大丈夫」


「馬は?」


「少し休ませたし、大丈夫だと思う」


 ベルガントの街を出る。


 西へ。


 スコッティ公爵領方面へ。


 街を出てすぐ、東へ向かう人たちと何度もすれ違った。


 荷車。


 馬車。


 歩いている家族。


 騎士に誘導されている集団。


 みんな俺たちとは反対方向へ進んでいく。


「……すごい数だね」


 フェリシアが言う。


「うん」


 さらに進む。


 荷車には家財道具。


 子供を抱いた母親。


 足を引きずる老人。


 血の付いた服を着た男。


 さっきベルガントで見た人たちと同じだ。


 俺たちは、その流れに逆らうように西へ向かった。


 ◇


 しばらく進むと、前方に騎士たちが見えた。


 ベルガント伯爵家の紋章。


「止まってくれ!」


 騎士が手を上げる。


 馬を止めた。


「冒険者か?」


「はい」


 ギルド証と依頼書を見せる。


「Aランク……」


 騎士が俺とフェリシアを見る。


「ベルガント伯爵からの避難民誘導依頼を受けました」


「助かる」


 騎士が息を吐いた。


「今の状況を教えてもらえますか?」


 騎士の顔が険しくなる。


「……かなり悪い」


「スコッティ公爵軍は?」


 少し間があった。


「壊滅状態だ」


「……」


 ルナが息を呑む。


「壊滅?」


「ああ。帝国軍に押し切られた」


 そんな。


「今はどうなってるんですか?」


「北側をグレンツ伯爵軍、東側をベルガント伯爵軍が食い止めている」


「伯爵本人も?」


「ああ。前線にいる」


「……ヴァルディス侯爵家は?」


 騎士が俺を見る。


「来てる」


「騎士団が?」


「ああ。他の貴族家も続々集まってる」


「……」


 サハル側も全力で止めようとしている。


「帝国軍はどれくらいいるんですか?」


「分からん」


「一万以上という話も聞きました」


「それ以上って話もある」


「……」


「今は正確な数を数えられる状況じゃない」


 騎士が西を見る。


「それに、問題は数だけじゃない」


「何かあるんですか?」


 騎士の顔が変わった。


 怒っている。


「民間人まで殺してる」


「……え?」


 フェリシアの声が止まる。


「住民を?」


「ああ」


「戦ってない人も?」


「関係ない」


 騎士が拳を握った。


「老人も、女も、子供もだ」


「……」


 ルナの表情が強張った。


「町や村へ入れば、逃げ遅れた住民まで殺す」


「誰が指揮してるんですか?」


「バスク・ヘイマン」


「バスク……」


「ドラン帝国の将軍だ」


 初めて聞く名前だった。


「かなり過激な奴らしい」


「……」


「だから伯爵は、帝国軍を倒すことより先に住民を逃がそうとしてる」


 それでAランクまで避難民の誘導へ回しているのか。


「俺たちはどこへ?」


 騎士が地図を開いた。


「このまま西へ行ってくれ」


 指を置く。


「リーベ村」


「まだ住民が?」


「ああ。老人や子供が多くて、避難が遅れてる」


「クロードさんたちは?」


「今朝、そこへ向かった」


 少し安心した。


 クロードさんたちがいるなら。


「ただ」


 騎士が言葉を止める。


「何ですか?」


「その先で、帝国軍の部隊が確認されている」


「……」


「クロードさんたちは知ってるんですか?」


「情報が入ったのは、あいつらが出た後だ」


「……まずい」


 フェリシアとルナを見る。


 二人とも同じ顔をしていた。


「行こう」


「うん」


「急ごう」


 馬を進めようとする。


「待て」


 騎士に呼び止められた。


「はい?」


「冒険者への依頼は帝国軍を倒すことじゃない」


「分かってます」


 騎士が俺を見る。


「無茶はするなよ」


「はい」


 すぐに馬を走らせた。


 西へ。


 さらに西へ。


 進むほど、人の姿が減っていった。


 代わりに増えていく。


 捨てられた荷車。


 道端に落ちた荷物。


 壊れた柵。


 誰もいない家。


「アレン」


 フェリシアが前を見る。


「うん」


 西の空。


 黒い煙が上がっている。


「……あれ」


 ルナが呟く。


 地図を見る。


 方向は。


 リーベ村。


「クロードさんたちもいるんだよね」


「うん」


 手綱を握る。


「急ごう!」


「うん!」


「ワフッ!」


「キュ!」


 黒い煙の上がる方へ馬を走らせる。



【保有:124,010P】

【累計獲得P:453,720P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ここ十数話かで「分かってる」というセリフが度々出てくるようになった 分かってなさそうな行動し始めてるのを指摘されてるからだと思うけど
依頼書が「スコッティ公爵領東部・避難民誘導及び護衛」なのに帝国軍を倒すのが目的なのかをギルド職員に聞いてるところは頭悪いのかなって感じる。帝国軍を倒すことも目的なら、帝国軍の掃討や討伐となってるのでは…
「ヴァルディス侯爵家?」 「はい」  父さん。 「アレン?」  ルナが俺を見る。 「うん」 家を出てから会っていない。 スタンピードのあと王都から戻って来たとき会ってたよね?
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