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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第9章 ドラン帝国、サハル王国侵攻

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第148話 ベルガントへ

 翌朝。


 俺たちはセレディアの馬市場へ向かった。


「本当に買うの?」


 ルナが聞く。


「うん。急いだ方がいいと思う」


「徒歩なら六日くらいだよね」


「馬なら二日で行ける」


 フェリシアも頷いた。


「だったら、その方がいいね」


 三頭の馬を選ぶ。


 荷物はすべて《収納》へ入れられる。


 だから荷馬車も、荷物用の馬もいらない。


「キュ!」


 ステフはいつも通り俺の肩に乗っている。


「ワフッ!」


 テリーは足元で尻尾を振っていた。


「テリーは大丈夫?」


 フェリシアが聞く。


「多分、馬より速いよ」


「ワフッ!」


「まだ小さいのに」


 馬と必要な馬具を購入する。


 準備を終えると、そのままセレディアを出発した。


◇


 とにかく急いだ。


 朝から馬を走らせる。


 途中で馬を休ませ、水を飲ませる。


 そして、また走る。


 昼も長くは休まなかった。


 夕方まで進み、街道沿いの宿で一泊。


 翌朝は日の出とともに出発した。


「キュ!」


 ステフは俺の肩。


「ワフッ!」


 テリーは馬の横を走っている。


 時々前へ出ては、また俺たちのところへ戻ってきた。


「元気だね」


 ルナが笑う。


「ワフッ!」


「馬より余裕ありそう」


道中ルナの故郷の森の近くを通る


「ルナ、今回は寄れなくてごめんね」


「いいのよ、また来ればいいんだし」


俺達は馬を走らせ北へ進んだ。


◇


 空はよく晴れている。


 春の風も暖かい。


 でも、気持ちは落ち着かなかった。


 スコッティ公爵領。


 ドラン帝国軍。


 前回より大きな軍勢。


 まだ情報は錯綜している。


 本当にどこまで侵攻しているのか。


 兵数はどれくらいなのか。


 何も分からない。


 だからこそ、早くベルガントへ戻りたかった。


◇


 二日目の午後。


「見えてきた」


 ミラディアとの国境を越え、ベルガント領へ入る。


 ここまでは、特に変わった様子はなかった。


 畑。


 村。


 街道を行き交う人々。


「思ったより普通だね」


 ルナが言う。


「うん」


「まだ南だからじゃない?」


 フェリシアが前を見る。


「ベルガントまで行けば何か分かるかも」


 さらに馬を走らせた。


 そして、ベルガントの街が近づいたところで、空気が一変した。


「……何だろう」


 ルナが前を見る。


 荷馬車が多い。


 騎士。


 兵士。


 物資を積んだ馬車。


 さらに進む。


「え……」


 思わず声が出た。


 街門の外に、大勢の人が集まっている。


 家財道具を積んだ荷車。


 大きな荷物を抱えた家族。


 子供。


 老人。


 腕や頭に布を巻いた人もいる。


「これ……」


 フェリシアが呟く。


「避難してきた人たち?」


 ルナが言った。


 ベルガント騎士団の騎士たちが、あちこちを走り回っている。


「スコッティ領から来た方はこちらへ!」


「怪我人は先に治療所へ!」


「家族とはぐれた方は名前を教えてください!」


「水はこちらです!」


 少し離れたところでは、大きな鍋から食事を配っていた。


 簡単な天幕もいくつも張られている。


 以前、ベルガントにいた時とは、まるで別だった。


「こんなに……」


 馬をゆっくり進ませる。


 近くにいた騎士へ声をかけた。


「すみません」


「はい?」


「この人たちは、スコッティ公爵領からですか?」


 騎士が周囲を見る。


「ああ。そうだ」


「そんなに状況が悪いんですか?」


 騎士の表情が曇った。


「昨日から一気に増えた」


「昨日から?」


「ああ。西側の町や村から逃げてきてる」


「帝国軍は?」


「悪い。詳しいことはギルドか騎士団本部で聞いてくれ。こっちも人手が足りない」


「分かりました。ありがとうございます」


 騎士はすぐに別の避難民のところへ向かった。


「かなりまずそうだね」


 フェリシアが言う。


「うん」


 街門をくぐる。


 中も慌ただしかった。


 通りを行き交う騎士。


 物資を積んだ荷車。


 走っている冒険者。


 避難してきた人たちを空いている建物へ案内する者。


「前に来た時と全然違う」


 フェリシアが言った。


 俺も同じことを思った。


「まずギルドへ行こう」


「うん」


◇


 冒険者ギルドへ入った。


 中は人で溢れている。


「すごい……」


 フェリシアが辺りを見回した。


 掲示板。


 受付。


 テーブル。


 いたるところに冒険者がいる。


 装備を確認している者。


 地図を囲んでいる者。


 依頼票を手にしている者。


 荷物をまとめている者。


 前回、ドラン帝国軍が侵攻した時と似ている。


 でも、今回はあの時以上に慌ただしかった。


「クロードさんたちいるかな」


 フェリシアが辺りを探す。


 俺も見回した。


 しかし、どこにもいない。


 受付へ向かう。


「すみません」


「はい」


 忙しそうな女性が顔を上げた。


「スコッティ公爵領のことで聞きたいんですけど」


「冒険者の方ですか?」


「はい」


 ギルド証を出す。


 フェリシアも続いた。


 女性が確認する。


「……Aランク」


 俺を見る。


「アレンさん?」


「はい」


「以前のドラン帝国軍との戦いに参加された方ですね?」


「はい」


 女性がフェリシアのギルド証も確認する。


「フェリシアさんも」


「はい」


 受付の女性の表情が変わった。


「少々お待ちください」


 奥へ行き、別の職員と一緒に戻ってくる。


「お待たせしました。こちらでお話しします」


 近くのテーブルへ移った。


「現在分かっていることをご説明します」


「お願いします」


「まず、ドラン帝国軍がスコッティ公爵領へ侵入したことは確認されています」


「やっぱり……」


「兵数については、まだ正確な数字が出ていません」


「一万を超えているという話を聞きました」


「その情報もあります。それ以上という報告も届いています」


「……」


「現在、かなり情報が錯綜しています」


 セレディアで聞いた話と同じだった。


「スコッティ公爵軍は?」


 俺が聞く。


 職員が少し間を置いた。


「厳しい状況です」


「負けたんですか?」


「そこまでは、まだこちらでも確認できていません。ただ……」


「ただ?」


「避難民が急激に増えています」


 さっき見た人たち。


 西から逃げてきた。


 あの数を考えれば、前線で何か大きなことが起きているのは間違いない。


「ベルガント伯爵は?」


「すでに対応されています」


 避難民の受け入れ。


 食料や寝る場所の確保。


 騎士団の配置。


 さらに。


「冒険者ギルドにも、正式な協力要請が出ています」


「冒険者に?」


「はい」


「どんな依頼ですか?」


「避難民の護衛。負傷者の救出。物資輸送の護衛」


 職員がそこで一度言葉を切った。


「そして、前線での戦闘支援です」


「……帝国軍との?」


「はい」


 ルナが聞く。


「強制ですか?」


「いいえ。あくまでベルガント伯爵からの依頼です。断っても問題ありません」


 冒険者は兵士じゃない。


 そこは前回と同じだ。


「ただし」


 職員が俺とフェリシアを見る。


「Aランク以上の冒険者には、可能なら前線支援に参加してほしいとの要請が出ています」


「Aランク……」


 俺とフェリシアはAランクだ。


「クロードさんたちは?」


「クロードさんのパーティですか?」


「はい」


「既にスコッティ公爵領へ向かわれました」


「もう?」


「はい。伯爵からの要請を受け、すぐに出発されました」


「他の冒険者も?」


「かなりの人数が向かっています。以前の戦いに参加した方も少なくありません」


 周囲を見る。


 装備を整える冒険者。


 地図を確認する人たち。


 出発の準備をしているパーティ。


 みんな西へ向かうつもりなんだ。


「今回も……」


 俺は職員を見る。


「前回と同じような戦いなんですか?」


 職員の表情が曇った。


「それは分かりません。前回とは規模が違います」


「……」


「帝国軍の動きも違うという情報があります」


「どう違うんですか?」


「そこまでは、まだ詳しい報告が届いていません」


 職員が首を横に振る。


「ただ、今回は前回のような牽制だけではないのではないか、と言われています」


「……」


 前回、ドラン帝国が動いた理由はアルスレイン王国の王子とサハル王国の王女の結婚への牽制だった。


 領地そのものを奪うための戦いとは少し違った。


 でも、今回は兵数が違う。


 大量の避難民まで出ている。


 もしかすると、目的そのものが違うのかもしれない。


「アレンさん」


「はい」


「フェリシアさん」


「はい」


「お二人はAランクです。それに、以前の帝国軍との戦闘にも参加されています」


 職員が一枚の依頼書を取り出した。


「ベルガント伯爵から出されている前線支援の依頼について、詳しく説明しましょうか?」


 フェリシアを見る。


 ルナを見る。


 二人とも俺を見ていた。


「お願いします」


 俺は頷いた。


「詳しく聞かせてください」


【保有:124,010P】

【累計獲得P:453,720P】



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