↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
146/200

第146話 聖都セレディア

 ミラディア中央部。


 聖都セレディア。


 街へ近づくにつれて、白い建物が増えていった。


 城壁も白い石で造られている。


 門の上には大きな紋章。


 その向こうには、昨日遠くから見えていた大聖堂の塔が空高く伸びていた。


「近くで見ると、もっと大きいね」


 ルナが見上げる。


「うん」


 門をくぐった。


 中へ入ってすぐ、アルスレイン王都とは違う街だと思った。


 広い通り。


 白い石畳。


 左右には商店が並んでいる。


 その間を、白や灰色の服を着た聖職者が歩いていた。


 でも、それだけじゃない。


 大きな荷物を背負った巡礼者。


 家族連れ。


 商人。


 護衛らしい人たち。


 着ている服も様々だった。


「あの人たち、アルスレインの人かな」


 フェリシアが言う。


「多分」


 少し先には、サハルで見かけた服装に似た男たちもいた。


 さらに別の通りからは、見たことのない紋章を付けた荷馬車が入ってくる。


 サハルからセルヴァンへ移動する街道とはちょっと違う。


「色んな国の人がいるね」


 ルナが辺りを見る。


「巡礼に来てる人も多そう」


「ドランから来る人もいるのかな」


「いると思うよ」


「ドランにも信者がいるんだよね?」


「うん。サハルにも、アルスレインにもいるみたい」


 同じ通りを、違う国の人間が歩いている。


 それが、この街では珍しいことではないらしい。


「まずどうする?」


 フェリシアが聞く。


「ギルドへ行こう」


「ドランのこと聞くの?」


「うん」


「ワフッ!」


「キュ!」


 俺たちは大通りを進んだ。


◇


 セレディアの冒険者ギルドは大きかった。


 中へ入る。


 冒険者だけじゃない。


 商人。


 依頼人。


 聖職者らしい人までいる。


「聖職者も来るんだね」


 フェリシアが言った。


「護衛とか魔物討伐の依頼じゃない?」


 ルナが答える。


 受付へ向かった。


「こんにちは」


「こんにちは。ご依頼ですか?」


「いえ。聞きたいことがあるんですけど」


「はい」


「ドラン帝国へ行きたいんです。ここから入れますか?」


 受付の女性の表情が少し変わった。


「ドラン帝国ですか?」


「はい」


「街道はございます。ただ……」


「何かあるんですか?」


「現在、ドラン帝国は外国人冒険者の入国を原則として認めていません」


「……」


 三人で顔を見合わせた。


「冒険者が入れない?」


 フェリシアが聞く。


「外国人冒険者ですね。ドラン国内の冒険者は別です」


「どうして?」


 ルナが聞いた。


「不安定な情勢の影響です。ドランは冒険者を装った偵察や工作員が入国することを警戒している、と聞いています」


「なるほど」


 武器を持っていても不自然じゃない。


 国から国へ移動する人間も多い。


 ドランからすれば警戒する理由はある。


「商人は?」


「必要な許可があれば入国できます」


「聖職者も?」


「はい。条件はありますが」


「冒険者だけ厳しいんですね」


「今はそうなっています」


 ここまで来れば入れると思っていた。


 甘かった。


「ミラディアから、何とかしてもらうことはできないんですか?」


 俺が聞く。


 受付の女性が首を横に振った。


「難しいと思います」


「やっぱり?」


「聖教領として、外国人冒険者を一律に拒否する措置を歓迎しているわけではないそうです」


「反対はしてる?」


「好ましくないという意見はあります。ただ……」


 女性が続ける。


「誰を自国へ入れるかは、ドラン帝国が決めることです」


「……」


「聖教領が命じることはできません」


 それはそうだ。


 ミラディアとドランは別の国だ。


「ミラディアって、ドランとはどういう関係なんですか?」


 ルナが聞く。


「特別にドラン側というわけではありませんよ」


「じゃあアルスレイン側?」


「それも違います」


 女性が少し笑った。


「聖教領は、特定の国と軍事的に結びつかない方針です」


「中立?」


「はい」


「でも、ドランはサハルやアルスレインに攻め込んでるんですよね?」


「聖教領は他国への侵攻には反対しています」


「それでもサハルやアルスレインには加担しない?」


「しないと思います」


「どうしてですか?」


「ドランにも信徒がいますから」


 女性が答えた。


「サハルにも、アルスレインにも、セルヴァンにもいます」


「なるほど」


「聖教領が一つの国の軍事的な味方になれば、別の国に暮らす信徒にも影響が出ます」


 フェリシアが頷く。


「だから、どこか一つの国に味方することはないんですね」


「そう聞いています」


「でも、それだけじゃないよね?」


 ルナが言った。


「はい」


 女性が頷く。


「聖教領だけですべての物資を賄うことはできません。食料、鉄、木材、布、薬……色々なものを周辺諸国と取引しています」


「どこか一つと揉めるだけでも大変なんですね」


「そうですね」


 宗教。


 外交。


 交易。


 どこか一つの国だけにつくことができない。


 この街に色んな国の人間がいる理由が、少し分かった気がした。


「じゃあ、俺たちがドランへ向かうこと自体は?」


「聖教領から出ることを禁じる理由はありません」


「でも向こうが入れてくれないということですね」


「はい」


「特別な許可があれば?」


「入国できる可能性はあります」


「取れますか?」


「現在はかなり難しいと思います」


「……そうですか」


 アルスレインとは違う理由。


 でも結局ドランへ入れないことは同じだった。


◇


 ギルドを出た。


 白い石畳の上を歩く。


「どうしようか?」


 フェリシアが聞いた。


「普通に入るのは無理そうだね」


 ルナが言う。


「そうだね」


 しばらく歩く。


「……こっそり入ることは?」


 フェリシアが言った。


「密入国?」


「うん。国境全部を見張ってるわけじゃないだろうし」


「それはやめた方がいい」


 俺が答えた。


「やっぱり?」


「うん」


 ルナも頷く。


「絶対駄目」


「そこまで?」


「二人とも自分の立場を考えて」


 ルナが俺たちを見る。


「アレンはサハルの貴族家の人間でしょ」


「うん」


「フェリシアはルーフェン帝国宰相の娘」


「そうね」


「二人とも家を出たとはいえ、ドラン帝国に密入国して捕まったら、ただの冒険者が捕まったって話じゃ済まないよ」


「そうだね」


 俺も同じことを考えていた。


 ただ捕まるだけじゃない。


 サハルとの問題になる可能性がある。


 フェリシアなら、ルーフェン帝国まで巻き込む。


「ルーフェン帝国の宰相の娘が、ドランへ密入国……」


 フェリシアが呟いた。


「かなりまずいね」


「かなりどころじゃないと思う」


 ルナが言う。


「それに」


 俺は周囲を見る。


「ミラディアから入ったことが分かったら、この国まで疑われるかもしれない」


「聖教領が手引きしたんじゃないかって?」


「うん」


「それもまずいね」


 ここまで二十四日かけて歩いてきた。


 だからといって、強引に先へ進んでいいわけじゃない。


「密入国はなしだね」


 俺が言った。


「うん」


「私も賛成」


 三人の意見は決まった。


 問題はその先だった。


「じゃあ、どうする?」


 ルナが聞く。


「正式な入国は難しい」


「密入国もなし」


 フェリシアが指を折る。


「特別な許可も簡単には取れない」


「……」


 立ち止まる。


 通りの向こうでは、白い服を着た聖職者たちが歩いていた。


 その横を荷馬車が通り過ぎる。


 色んな国の人がいる。


 この街なら、何か情報があるかもしれない。


「ドランに入るの、諦める?」


 フェリシアが聞いた。


「それも考えないといけないかも」


「ここまで来たのに?」


「うん」


 ドランへ行く。


 ずっと、それを次の目的だと思っていた。


 でも、本当の目的は違う。


「俺たちが調べたいのは、ドランそのものじゃない」


「連れ去られた魔物だよね」


 ルナが言った。


「うん」


 セルヴァンから連れ去られた魔物。


 あいつらが、どこへ運ばれたのか。


 誰が何のために連れ去ったのか。


 それを知りたい。


「だったら」


 フェリシアが言う。


「ドランに入らなくても調べられる方法があるかもしれないってこと?」


「うん」


「この街で?」


「まずは探してみよう」


 セレディアには色んな国の人間がいる。


 商人。


 聖職者。


 巡礼者。


 ドランと行き来している人間だっているはずだ。


「ドランへ入る方法を探すんじゃなくて」


 ルナが言う。


「魔物の行方を知る方法を探す?」


「そう」


「それならまだできそう」


 フェリシアが笑った。


「それでも何も分からなかったら?」


「その時は、ドランを追うのを諦めることも考える」


 二人が頷いた。


「じゃあ、とりあえず」


 ルナが言う。


「宿を探さない?」


「あ」


「まだ決めてなかったね」


「二十四日歩いて、着いてすぐギルドだもん」


 フェリシアが笑った。


「ワフッ!」


「キュ!」


「二人も疲れた?」


 ルナが聞く。


「キュ!」


「ワフ!」


「……疲れてなさそう」


「元気だね」


 三人で笑った。


 まずは聖都セレディアを知ろう。


 ここには、色んな国から人が集まっている。


 ドランへ入れなくてもドランの中を知っている人間ならいるかもしれない。


 俺たちは大聖堂を見上げながら、宿を探して歩き始めた。


【保有:87,610P】

【累計獲得P:417,320P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。