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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

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142/204

第142話 王都の夜

 数日後の午後。


「……あれ?」


 ルナが前を見る。


 街道の先。


 遠くに巨大な城壁が見えていた。


「あれが王都?」


 フェリシアが目を細める。


「ああ!」


 ガイルが笑う。


「アルスレイン王国の王都だ!」


 王都へ近づくほど、人の数が増えていく。


 商人の馬車。


 大きな荷車。


 騎士。


 冒険者。


 旅人。


 街道自体も、それまでとは比べものにならないくらい広くなった。


「キュ?」


 俺の肩に乗ったステフが、前を見て首を傾げる。


「見える?」


「キュ!」


 隣では、ガイルの肩にナッシュが乗っている。


「ナッシュ! あれが王都だぞ!」


「キュウ!」


「分かってるのでしょうか?」


「分かってる!」


 コディさんは何も言わなかった。


 もう慣れたらしい。


 さらに進む。


「……大きい」


 ルナが呟いた。


 高い城壁が、左右のずっと先まで続いている。


 巨大な門。


 その前には何台もの馬車が列を作り、大勢の人が出入りしていた。


「こんなでかい街、初めてだ」


 思わず口にする。


 これまでにも王都へ行ったことはある。


 大きな街だって見てきた。


 でも、ここは明らかに規模が違う。


「すごいだろ!」


 ガイルが得意そうに胸を張る。


「うん。こんな大きいの見たことないよ」


「そうだろ!」


「副団長」


 コディさんが前を指す。


「列が進みました」


「おう!」


 俺たちも巨大な門へ向かった。


 ◇


 門を抜ける。


「うわ……」


 フェリシアが声を漏らした。


 外からでも大きいと思っていた。


 でも、中はもっとすごい。


 何台もの馬車が同時に行き交える大通り。


 両側には何階もある石造りの建物が並んでいる。


 店。


 宿。


 商会。


 飲食店。


 人の流れが途切れない。


 遠くには大きな王城まで見えた。


「すごい人だね」


 ルナが辺りを見回す。


「うん」


「キュ!」


 ステフも忙しそうに左右を見ている。


 ガイルたちの馬車と一緒に大通りを進んだ。


 しばらくすると、ガイルがこちらを向いた。


「アレン!」


「何?」


「俺たちはこのまま王都の屋敷に行くぞ!」


「ああ、そうだったね」


 ガイルたちは王都で一泊し、明日にはリオン領へ向かう予定だ。


「父上の手紙も、うちの屋敷から王宮の政務官へ届ける」


「俺たちが直接持って行かなくていいの?」


「ああ」


 コディさんが答えた。


「辺境公家からの正式な書状です。王都屋敷を通して届けた方が、王宮側でも話が早いでしょう」


「なるほど」


「書状をお預かりしても?」


「あ、はい」


 《収納》から封蝋のされた手紙を取り出す。


「これです」


「確かにお預かりします」


 コディさんが丁寧に受け取った。


「王宮から返答がありましたら、アレンさんたちへお伝えします」


「でも、俺たちの宿がまだ決まってないですよ?」


「宿が決まりましたら、ベイルン家の王都屋敷まで知らせに来てください」


「分かりました」


 これなら、何も知らない俺たちがいきなり王宮へ行く必要もない。


「今日はもう屋敷へ行かなくても大丈夫ですか?」


「ええ。書状はこちらで届けておきます」


「ありがとうございます」


「俺たちは明日の朝には出るからな!」


 ガイルが言う。


「もう?」


「ああ! リオンのところに早く行ってやりたい!」


「そうだね」


「ナッシュも一緒だ!」


「キュウ!」


 ガイルが肩のナッシュを見る。


「ステフともしばらくお別れだな!」


「キュ?」


 ナッシュがステフを見る。


「キュ?」


 ステフも首を傾げた。


 二頭がしばらく見つめ合う。


「分かってるのかな」


 ルナが言う。


「どうだろう」


「キュウ!」


 ナッシュが鳴く。


「キュ!」


 ステフも返した。


「また会えるだろ!」


 ガイルが笑う。


「俺たちもな!」


「うん」


「アレン!」


「何?」


「リオンのところに来るの、忘れるなよ!」


「分かってるって」


「絶対来い!」


「機会があったらね」


「よし!」


 ガイルが手を上げた。


「じゃあ、またな!」


「また」


「フェリシア、ルナ、テリーも!」


「またね」


「うん」


「ワフッ!」


「ステフもまたな!」


「キュ!」


「行くぞ、ナッシュ!」


「キュウ!」


 ガイルたちの馬車が別の通りへ曲がっていく。


 若手騎士たちも続く。


 ナッシュはガイルの肩の上から、しばらくこちらを見ていた。


 ステフも俺の肩から見送っている。


「行っちゃったね」


 ルナが言う。


「うん」


「急に静かになった気がする」


 フェリシアが笑った。


「ガイルがいなくなったからかな」


「キュ!」


 ステフが鳴く。


「まだ賑やかな子は残ってるけどね」


「ワフッ!」


「テリーもいた」


 ◇


「まずは宿だね」


「うん」


 大通りを歩く。


 王都だけあって、宿はいくらでもあった。


 だから、すぐ見つかると思っていた。


「申し訳ありません」


「駄目ですか?」


「そちらの……」


 宿の主人がテリーを見る。


「魔物を中へ入れるのは、ちょっと……」


「ワフ?」


 テリーが首を傾げる。


 主人の視線が、今度は俺の肩へ移った。


「それに……」


「ステフ?」


「こ、これは、もしかして……」


 一歩下がる。


「ど、ドラゴンですか?」


「はい。まだ生まれたばかりですけど」


「ド、ドラゴン……」


「大人しいですよ」


「キュ?」


「申し訳ありませんが、魔物はちょっと……」


「そうですか」


 一軒目は駄目。


 その後も何軒か聞いてみた。


 テリーを見て断られる。


 ステフを見てさらに驚かれる。


 外の厩舎なら、と言われた宿もあった。


 でも、生まれたばかりのステフを外へ置いていく気にはなれない。


「全然泊まれないね」


 ルナがため息をついた。


「王都だから宿はいくらでもあると思ってた」


「宿はあるんだけどね」


 フェリシアがステフを見る。


「この二匹と泊まれるところが少ないんだね」


「ワフ?」


「キュ?」


 二頭とも自分たちのことだとは思っていないらしい。


「高そうなところなら大丈夫かな?」


 フェリシアが大通りの向こうを見る。


 ひときわ立派な宿。


 入口には綺麗な馬車が止まっている。


「聞くだけ聞いてみようか」


 ◇


「もちろんご宿泊いただけます」


「本当ですか?」


「はい。魔物をお連れのお客様にも対応しております」


「よかった」


「一泊、お一人様金貨三枚となります」


「……」


「……」


「……」


 三人で黙った。


 一人、金貨三枚。


 三人なら九枚。


 九十万ジェニーくらい。


 払えないわけじゃない。


 最近はかなり稼いでいる。


 でも。


「どうする?」


 ルナが俺を見る。


「……他も探そうか」


「そうだね」


「私も賛成」


「かしこまりました」


 宿を出た。


「泊まれなくはないんだけどね」


 フェリシアが言う。


「うん」


「でも、一晩で金貨九枚はね」


「ちょっと嫌だ」


「アレン、そういうところ変わらないね」


「無駄に使う必要ないだろ」


「ポーションとかはすごい勢いで買うのに」


 また宿探しを始めた。


 ◇


「お腹空いた」


 しばらくすると、ルナが言った。


「俺も」


「宿も見つからないしね」


 その時。


「……いい匂い」


 ルナが立ち止まった。


「どこ?」


「あっち」


 通りの先に小さな店がある。


 看板には、


『ローデン商会』


 と書かれていた。


 店先から湯気が上がっている。


「何売ってるんだろう」


 近づく。


「じゃがいも?」


「みたいだね」


 丸いじゃがいもを割り、その上に黄色いものを乗せている。


 熱で溶けている。


 さらに緑色の葉。


「三つください」


「毎度!」


 代金を払い、紙に包まれたじゃがいもを受け取った。


「熱っ」


「気をつけて」


「うん」


 ルナが一口食べる。


「……!」


「どう?」


「おいしい!」


 目を大きくした。


「何これ。すごくおいしい!」


「そんなに?」


 俺も食べてみる。


 ほくほくしたじゃがいも。


 溶けたバター。


 塩気。


 それに、独特の香り。


「この緑のって何だろう」


 ルナが上に乗った葉を見る。


 店員さんが笑った。


「お客さん、初めてですか?」


「はい」


「これは青葉草っていうんですよ!」


「青葉草?」


「ええ。肉料理なんかにもよく合いますよ」


「あ」


 そういえば。


「ガイルの家で食べた肉にも乗ってなかった?」


 フェリシアを見る。


「あったね」


「やっぱり?」


 ルナも思い出したらしい。


「美味しかったなー」


 もう一口。


「じゃがいもにもすごく合うね」


「だろ?」


 店員さんが嬉しそうに笑う。


「王都でも人気なんですよ!」


「もう一つください」


「ルナ、まだ食べるの?」


「食べる」


「ワフッ!」


「キュ!」


 テリーとステフまでこちらを見ている。


「二人も欲しいの?」


「ワフ!」


「キュ!」


「でも肉の方が好きだろ?」


「ワフッ!」


「キュ!」


「やっぱり肉か」


 少し休んでから、また宿を探した。


 ◇


 さらに何軒か回った。


 空が少しずつ暗くなっていく。


「もう何軒目?」


 ルナが聞く。


「分からなくなってきた」


「私も」


 次の宿へ入る。


 受付には、年配の女性が座っていた。


「三人です」


「はいよ」


「あと……」


「ん?」


 女性がテリーを見る。


 さらにステフ。


「魔物も一緒なんですけど」


「珍しいねえ」


 女性がテリーを見る。


「ずいぶん珍しい犬だね」


「泊まっても大丈夫ですか?」


「部屋を汚さないなら、ペットも大丈夫だよ」


「本当ですか?」


「もちろん」


 ステフを見る。


「そっちの小さい子も一緒?」


「はい」


「変わった子だねえ」


「……そうですね」


 それ以上は聞かれなかった。


「料金はいくらですか?」


 聞く。


 さっきの高級宿とは比べものにならない。


 これなら問題ない。


「ここにしよう」


「賛成」


「やっとだ……」


 ルナが嬉しそうに言う。


「ワフッ!」


「キュ!」


 ようやく宿が決まった。


 ◇


 部屋は二つ取った。


 俺とステフで一部屋。


 フェリシアとルナ、それにテリーでもう一部屋。


 荷物を置いたあと、少し休んでから三人で廊下に出る。


「疲れた……」


 ルナが部屋から出てきながら言った。


「ダンジョンより疲れてない?」


 フェリシアが笑う。


「今日は一回も戦ってないのに」


「宿探しって大変なんだね」


「王都だからすぐ見つかると思ってた」


「数だけならいっぱいあったんだけどね」


 俺も自分の部屋の窓から外を見た。


 もうかなり暗くなっている。


「ベイルン家の屋敷はどうする?」


 フェリシアが聞く。


 宿が決まったら知らせてほしいと言われている。


「今から行く?」


「もう遅いし、明日にしよう」


 手紙自体は、もうコディさんへ渡してある。


 俺たちが知らせるのは、泊まっている場所だけだ。


「返事もすぐ来るわけじゃないしね」


 ルナが言う。


「うん。明日の朝にしよう」


「じゃあご飯?」


「そうしよう」


 三人で階段を下りた。


 ◇


 宿の外へ出る。


「……あれ?」


 思わず立ち止まった。


「どうしたの?」


「明るくない?」


 もう夜だ。


 空は暗い。


 それなのに、大通りはかなり明るかった。


「あれじゃない?」


 フェリシアが上を指す。


 道沿いに、一定の間隔で柱が立っている。


 その上から強い光が広がっていた。


「街灯?」


「多分」


 でも。


「今まで見た街灯と全然違うね」


 ルナが見上げる。


「うん」


 灯りの真下だけじゃない。


 道路。


 店先。


 看板。


 歩いている人の顔。


 少し離れたところまで、はっきり見える。


「ずっと先まである」


 大通りを見る。


 同じ灯りが、ずっと続いていた。


「すごいな」


 王都だからなのか。


 アルスレインだからなのか。


 これまで見てきた街とはかなり違う。


「アルスレインって、すごい国なのかもね」


 ルナが言った。


「うん」


「まだ着いたばかりなのに、知らないものがいっぱいあるね」


 フェリシアも街灯を見上げる。


「そうだね」


 歩き始める。


 すると。


「……また見られてる」


 ルナが小声で言った。


 すれ違う人たちが、次々とこちらを見る。


「あの子、エルフ?」


「耳が違うぞ」


「ハーフエルフじゃないか?」


 ルナを見る人。


「白い犬、綺麗!」


 テリーを見る人。


 そして。


「え?」


「あれ……」


「おい、あれって……」


「ドラゴンじゃないか?」


 俺の肩にいるステフを見る人。


「キュ?」


 ステフが首を傾げた。


「目立ってるね」


 フェリシアが言う。


「そうだね」


 ルナが自分の耳に触れた。


「私もいるし」


「テリーもいる」


「ワフッ!」


「ステフもいる」


「キュ!」


 三人で顔を見合わせる。


「まあ……」


 フェリシアが笑った。


「しょうがないよね」


「うん」


「今さら隠せないし」


 そのまま大通りを歩いた。


 ◇


 しばらくして、肉の焼ける匂いがしてきた。


「ここにしよう」


 店へ入る。


 当然。


 中でも見られた。


「……ドラゴン?」


「白い犬もいるぞ」


「ハーフエルフ?」


「いろいろ言われるのも慣れてきちゃった」


 ルナが言う。


「早いね」


「だって、どうしようもないし」


「それはそうだね」


 席へ座る。


 肉料理。


 パン。


 スープ。


 ステフには小さく切った肉。


 テリーにも肉を頼んだ。


「キュ!」


「ワフッ!」


 二頭とも嬉しそうに食べ始める。


「今日は色々あったね」


 ルナが肉を食べながら言う。


「王都に着いて」


「ガイルたちと別れて」


「ずっと宿探しして」


「じゃがいも食べて」


「街灯に驚いて」


 フェリシアが笑う。


 窓の外を見る。


 夜なのに、大通りはまだ明るい。


 人もたくさん歩いている。


 アルスレイン王都か。


 まだ着いたばかりだ。


 バルド様の書状への返事も待たないといけない。


 ドラン帝国へ行けるのか。


 まだ分からない。


「明日からだね」


 フェリシアが言った。


「うん」


 まずはベイルン家の王都屋敷へ行って、宿を知らせる。


 その後は、王宮からの返事を待とう。


 食事を終え、俺たちは宿へ戻った。


【保有:61,150P】

【累計獲得P:390,860P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
今更だけど、収納スキルがあるなら、亜空間収納の魔法を使っても誤魔化しが効くんじゃないのかな
戦争に参戦してたことがバレてる上に戦功著しい人物が敵対国に入れたらおかしいとおもうがなあ、というか戦争参加してた敵兵からしたらバカにされすぎ
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