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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

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第141話 二つの卵

 ブランカを出る前。


 ベイルン家の屋敷で、バルド様に呼び止められた。


「そうだ。これも持っていけ」


「これ?」


 部屋の隅を見る。


 そこには、大きな木箱が二つ置かれていた。


 中には。


 グリーンドラゴンから預かった二つの卵。


「持っていくんですか?」


「ああ」


 バルド様が頷く。


「元々、お前たちが直接託されたものだからな。ここで預かったのは一時的なものだ」


「でも、旅で運んでも大丈夫ですか?」


「そのために箱を作らせた」


 近づいて見る。


 木箱の中には柔らかい布が何重にも敷かれている。


 卵が動かないように固定されていた。


「温度が下がりすぎないようにもしてあります」


 クリスさんが言う。


「定期的に状態を確認してください」


「分かりました」


「馬車もあるしな!」


 ガイルが箱を覗き込む。


「俺たちが運べば問題ない!」


「副団長」


 コディさんが横から言う。


 こうして、二つの卵も一緒に王都へ向かうことになった。


 ◇


 ブランカを出て、王都へ向かう。


 今までとは違い、かなりの大所帯になった。


 俺たち三人とテリー。


 ガイル。


 コディさん。


 ハガーさん。


 若手騎士十人。


 馬車。


 そして、二つの卵。


 旅は順調だった。


 朝の休憩では、ガイルに稽古へ付き合わされる。


「行くぞ、アレン!」


「朝から元気だなあ」


「朝だからだ!」


「意味分からないよ」


 木剣を構える。


 地面を蹴る。


 ガンッ!


 ガイルが受ける。


「速い!」


「ガイルもね」


 横へ回る。


 それでもついてくる。


 やっぱり反応がいい。


「もう一回!」


「まだやるの?」


「当然だ!」


「副団長」


 少し離れたところからコディさんの声。


「そろそろ出発します」


「もう少し!」


「駄目です」


「何でだ!」


「予定通り進むためです」


「……分かった!」


 ガイルが木剣を下ろす。


「コディって、ガイルより強いんじゃない?」


 ルナが小声で言った。


「戦ったらガイルだと思うよ」


 フェリシアが答える。


「でも言うこと聞かせるのはコディさんの方が強そう」


「それはそうかも」


 聞こえたのか。


「お前ら!」


 ガイルがこっちを見る。


「早く行こう」


「話を逸らすな!」


 ◇


 街道で魔物に遭遇することもあった。


 森の近くを通った時。


「前にいる」


 《魔力感知》。


「何体?」


「六体くらい」


 少し進む。


「グオオッ!」


 オーク。


「俺が行く!」


「俺も!」


 ガイルと同時に前へ出る。


「左お願い!」


「任せろ!」


 一体目。


 首。


 二体目。


 胴。


 横ではガイルの大剣がオークを吹き飛ばしている。


「《魔弾》!」


 後ろからフェリシア。


 青白い光が飛ぶ。


 別の一体へ直撃。


 シュッ!


 ルナの矢。


「ワフッ!」


 テリーも飛び込む。


 若手騎士たちが武器を抜く頃には。


「……終わった?」


 ハガーさんが周囲を見る。


「終わったみたいです」


 コディさんが答える。


「もう終わりか!」


 ガイルが不満そうに言う。


 そんな日が何日か続いた。


 ◇


 三日目の昼。


 街道脇で休憩を取る。


 馬に水を飲ませる。


 騎士たちは食事の準備。


 俺は馬車へ向かった。


「卵見るの?」


 ルナがついてくる。


「うん」


 毎日何度か状態を確認している。


 今のところ特に変化はなかった。


 馬車へ乗る。


 二つの箱。


 蓋を開ける。


「大丈夫そう」


 ルナが卵を見る。


「うん」


 触れてみる。


 少し温かい。


「そろそろ生まれたりするのかな」


「どうだろう」


「ドラゴンの卵って、どれくらいで孵るんだろうね」


「分からないな」


 その時だった。


 コツ。


「……ん?」


「何?」


 ルナが俺を見る。


 コツ。


 また音。


「今、鳴った?」


「うん」


 二人で卵を見る。


 コツ。


 コツ。


「アレン!」


「これ……」


 ピシッ。


 殻に細い亀裂が入った。


「割れた!」


 ルナが声を上げる。


「フェリシア!」


 呼ぶ。


「どうしたの?」


 フェリシアが馬車へ来る。


「卵!」


「え?」


 見る。


 ピシッ。


 亀裂が広がった。


「生まれるんじゃない?」


 その声を聞いたのか。


「何!?」


 ガイルまで走ってきた。


「ドラゴンが生まれるのか!?」


「副団長、走らないでください!」


 後ろからコディさん。


 ハガーさんと騎士たちまで集まってきた。


「近いよ」


「見えないだろ!」


「ガイルの身体が大きいから、後ろの人が見えないんだよ」


「あ」


「副団長」


「下がる!」


 少しだけ後ろへ移動する。


 ピシッ。


 ピシピシッ。


 卵の殻が内側から押される。


 小さな穴が開いた。


「キュ……」


「鳴いた!」


 ルナが目を大きくする。


 穴から小さな鼻先が出てきた。


 薄い緑色。


「本当にドラゴンだ」


 フェリシアが呟く。


 さらに殻が割れる。


 小さな頭。


 前脚。


 翼。


 身体。


 最後に尻尾。


 ころん。


「キュ……」


 出てきた。


「小さい……」


 ルナがしゃがみ込む。


 あの巨大なグリーンドラゴンからは想像できない。


 テリーよりも小さい。


 身体は俺の腕に乗せられるくらい。


 鱗はまだ柔らかそうな薄緑色。


 翼は身体に比べると少し大きい。


 立とうとして。


 ふらっ。


「危ない」


 手を出す。


 幼竜が俺の手にぶつかった。


「キュ?」


 俺を見る。


「大丈夫?」


「キュ」


 そのまま俺の手へ前脚を乗せる。


「アレンのところに来た」


 ルナが笑う。


「たまたまだよ」


「そうかな?」


 幼竜が俺の腕をよじ登ろうとする。


「キュ! キュ!」


「ちょっと待って」


「気に入られたみたいだね」


 フェリシアも笑う。


 その時。


 コツ。


「え?」


 もう一つの箱。


 コツ。


「こっちも!」


 今度は全員がそちらを見る。


 ピシッ。


 二つ目の卵にも亀裂。


「おお!」


 ガイルがまた前へ出る。


「近いって!」


「今度は見たい!」


「さっきも見ただろ!」


 ピシピシッ。


 殻が割れる。


「キュウ……」


 最初の子より少し低い声。


「出てくるぞ!」


 ガイルが身を乗り出す。


「副団長、顔を近づけすぎです」


「大丈夫だ!」


「何がですか」


 殻が大きく割れた。


 もう一頭。


 同じ薄緑色の身体。


 少しだけ大きい。


 殻から出ようとして。


 ふらっ。


「あっ」


 箱の縁から落ちそうになる。


「おっと!」


 ガイルが両手で受け止めた。


「危ないだろ!」


「キュ?」


 幼竜がガイルを見る。


「大丈夫か?」


「キュウ」


 そのままガイルの服を前脚で掴んだ。


「おお!」


「……」


「見たか!?」


 ガイルが嬉しそうに俺たちを見る。


「俺を選んだぞ!」


「落ちそうになったところを助けてもらっただけじゃない?」


 ルナが言う。


「違う! 絶対俺だ!」


 コディさんが幼竜へ手を伸ばす。


「一度こちらへ」


「キュウ!」


 幼竜がガイルの胸へしがみついた。


「ほら!」


 ガイルがさらに得意そうになる。


「俺だ!」


「……確かに離れませんね」


「だろ!」


 ガイルが大笑いした。


「俺についてくるか?」


「キュ!」


「よし!」


 勝手に話が決まっている。


「アレン」


 ルナが俺の腕を見る。


 最初に生まれた幼竜も、まだ俺にしがみついていた。


「こっちも離れないね」


「本当だ」


「キュ」


「二頭とも男の子みたいだね」


 フェリシアが言う。


「そっか」


 ガイルが腕の中の幼竜を見る。


「じゃあ名前つけないとな!」


「もう?」


「必要だろ!」


「まあ、呼び方はあった方がいいね」


「決めた!」


「早っ」


 ガイルが幼竜を持ち上げる。


「お前はナッシュだ!」


「キュ!」


「おお! 気に入った!」


「返事しただけじゃない?」


「ナッシュ!」


「キュ!」


「ほら!」


「……まあいいか」


 俺の腕の幼竜を見る。


「お前も名前いるよな」


「キュ?」


 じっと俺を見る。


 少し考える。


「ステフ」


「ステフ?」


 ルナが聞く。


「うん」


「キュ!」


 幼竜が俺の腕へしがみつく。


「ステフ」


「キュ!」


「こっちも気に入ったみたい」


 フェリシアが笑った。


 ナッシュ。


 ステフ。


 二頭のグリーンドラゴン。


 どちらも男の子。


「よろしくな、ナッシュ!」


「キュウ!」


「よろしく、ステフ」


「キュ!」


「ワフ?」


 テリーが近づいてきた。


 ステフを見る。


「キュ?」


 ステフもテリーを見る。


 鼻先同士が近づく。


「ワフ」


「キュ」


 ステフが前脚を伸ばし、テリーの鼻へ触れた。


「ワフッ!」


「仲良くできそうだね」


 ルナが笑う。


「ナッシュも来い!」


 ガイルがナッシュを近づける。


「キュウ!」


「ワフ?」


「キュ!」


 今度は三頭で顔を見合わせている。


「なんか増えたな」


 ハガーさんが笑った。


「旅がさらに賑やかになりましたね」


 コディさんが言う。


 確かに。


 ◇


 その日の夕方。


 食事の時間。


 俺たちが肉を食べていると。


「キュ」


 ステフが俺の膝の上からテーブルを見ていた。


「何?」


「キュ」


 視線。


 肉。


「これ?」


「キュ!」


「食べるのかな」


 小さく切る。


「熱いから待って」


 少し冷ましてから渡す。


 ぱくっ。


「……」


 もぐもぐ。


「キュ!」


「食べた」


 ルナが笑う。


「もっと欲しそう」


「キュ! キュ!」


「分かったって」


 もう一切れ。


 その向こう。


「ナッシュ! 食うか!」


「キュウ!」


 ガイルが肉を渡す。


 ぱくっ。


「おお! 食った!」


「副団長」


 コディさんが見る。


「小さく切ってください」


「これくらい大丈夫だろ!」


「生まれたばかりです」


「分かった!」


 小さく切る。


「ほら!」


「キュウ!」


「よく食うな!」


「そもそも赤子に肉をあげても良いのでしょうか?」


「わからないけど、食べてるんだから良いんじゃないのか?」


「それを管理するのも飼う側の役目ですな」


「ああ!」


 ナッシュはもう次の肉を見ている。


 ステフも同じ。


「二頭とも肉好きみたいだね」


 フェリシアが言う。


「ドラゴンだからかな」


「ワフッ!」


「テリーも肉好きだよね」


「ワフ!」


 肉好きが三頭になった。


 ◇


 それから数日。


 ナッシュとステフは、少しずつ旅に慣れていった。


 ステフは俺の近くにいることが多い。


 歩く時は足元。


 馬車では俺の隣。


 テリーの後ろをついていくこともある。


 ナッシュはガイルからあまり離れない。


 ガイルの肩へよじ登ったり。


 荷物を覗いたり。


 騎士たちの間を歩き回ったり。


「ナッシュ! 勝手に行くな!」


「キュウ!」


「そっちは馬だ!」


「キュ!」


「副団長に似ましたね」


 コディさんが言う。


「どこがだ!」


「落ち着きがないところです」


「俺は落ち着いてる!」


 ハガーさんが笑った。


 そして、ある日の昼。


「あれ?」


 ルナが声を上げた。


「アレン、見て」


「何?」


「ステフ……浮いてる?」


 地面から少しだけ離れている。


 十センチくらい。


 翼を小さく動かしながら。


 ふよ。


 ふよ。


「キュ!」


「飛んでる?」


 フェリシアが見る。


「飛んでるっていうより、浮いてるね」


 ステフが少し前へ進む。


 ふよふよ。


 そして。


 ぽてっ。


 地面へ降りた。


「キュ……」


「疲れた?」


 抱き上げる。


「キュ!」


「でも浮いたよ」


「すごいね」


 ルナが頭を撫でる。


 その時。


「おおおおおっ!」


 少し離れたところからガイルの声。


「ナッシュも浮いたぞ!」


 見る。


 ナッシュも。


 ガイルの目の前で、地面から少し浮いている。


「飛べ、ナッシュ!」


「キュウ!」


「もっと高く!」


「副団長」


 コディさんが止める。


「まだ生まれて数日です」


「でも浮いてるぞ!」


「だからといって無理をさせないでください」


「ナッシュならいける!」


「キュウ!」


「本人もやる気だ!」


「人ではありません」


 みんなが笑った。


 ナッシュ。


 ステフ。


 まだ本当に小さい。


 飛ぶこともできない。


 ふよふよと少し浮けるだけ。


 でも、確実に成長している。


「ステフ」


「キュ?」


「そのうち空飛べるようになるのかな」


「キュ!」


 返事をするように鳴いた。


「楽しみだね」


 ルナが言う。


「うん」


 王都までは、もう少し。


 俺たちの旅は、二頭の幼竜が加わって、前よりずっと賑やかになっていた。


【保有:61,150P】

【累計獲得P:390,860P】



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