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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

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第131話 共闘

 グリーンドラゴンが低く唸る。


 口元には、さっき吐いた緑色の煙がまだ残っていた。


「気をつけて」


 フェリシアが杖を構えたまま言う。


「毒が空気に残ってる」


 床の近くには、薄い緑色の霧が漂っている。


 天井に開いた穴から風が入っているおかげで少しずつ薄くなっているけど、長くここにいるのはまずそうだ。


「早めに片づけたいな」


 俺が言うと、ガイルが大剣を肩に担いだ。


「同感だ」


 簡単に言う。


 でも、相手はドラゴンだ。


 グリーンドラゴンの黄色い目が俺たちを見た。


 次の瞬間。


「来るぞ!」


 ガイルが叫ぶ。


 巨大な身体が動いた。


「速っ!」


 思っていたより速い。


 俺へ向かって前脚が振り下ろされる。


 横へ跳ぶ。


 巨大な爪が石床を削った。


 避けられた。


 そう思った直後。


「アレン、伏せろ!」


 ガイルの声。


 反射的に身体を沈める。


 ブンッ!


 頭上を巨大な尻尾が通り過ぎた。


「危な……」


 俺も尻尾には気づきかけていた。


 でも、ガイルの方が一瞬早かった。


「余所見するな!」


「分かってる!」


 今度はガイルが前へ出る。


 大剣を低く構えた。


 足運びも構えもきれいだ。


 大剣を使っているのに、動きに無駄がない。


 グリーンドラゴンが頭を低くした。


「右!」


 ガイルが突然叫ぶ。


 俺とフェリシアが右へ動く。


 直後。


 太い角が、さっきまで俺たちがいた場所を薙いだ。


「また……」


 フェリシアもガイルを見る。


「なんで分かったの?」


「何となくだ!」


 ガイルは答えながら、もうドラゴンの懐へ入っていた。


 大剣を振り下ろす。


 ガキィンッ!


 硬い鱗に火花が散る。


 傷は入った。


 でも浅い。


「硬ぇな」


「なら――」


 フェリシアが杖を向ける。


「《魔弾》!」


 光が走った。


 ドンッ!


 グリーンドラゴンの肩へ直撃する。


「グオオッ!」


 数枚の鱗が弾け飛んだ。


「すげえな」


 ガイルが思わずフェリシアを見る。


「アレン!」


 フェリシアの声。


「ああ!」


 地面を蹴る。


 砕けた鱗の下。


 守りが薄くなった場所へ飛び込んだ。


 ドラゴンの爪が迫る。


 身体をずらし、そのまま剣を振り抜く。


 ザシュッ!


 深く入った。


 血が飛ぶ。


「グオオオオッ!」


 グリーンドラゴンが大きく仰け反った。


「入った!」


 フェリシアが声を上げる。


 すぐに距離を取る。


 ガイルがこっちを見る。


「お前、強いな」


「え?」


「今度、俺と勝負しようぜ」


「今言うこと?」


「生きて帰ってからでいい」


「嫌だよ」


「なんでだよ」


 こんな状況なのに笑っている。


 変な人だ。


「グオオオオオッ!」


 グリーンドラゴンが翼を大きく広げた。


 地下だから飛び上がることはできない。


 でも、そのまま翼を振り抜く。


 ゴオッ!


 強い風が吹いた。


 土や小石が飛んでくる。


 腕で顔を庇う。


「来るぞ!」


 風の向こうからグリーンドラゴンが突っ込んできた。


「フェリシア、左!」


「え?」


「左だ!」


 フェリシアが跳ぶ。


 直後。


 バキッ!


 天井から巨大な岩が落ちてきた。


 さっきまでフェリシアがいた場所に激突する。


「……本当に何で分かるの?」


「だから、何となくだ!」


 ガイルはもう前を向いていた。


 やっぱり変だ。


 戦い方そのものは、よく鍛えられた騎士に見える。


 でも、時々説明のつかない速さで危険を察知する。


 あの勘まで含めて、ガイルの強さなんだろう。


 グリーンドラゴンが俺たちへ顔を向ける。


 そこで一瞬、脇腹が見えた。


「……?」


 黒ずんだ大きな傷跡。


 俺たちがつけたものじゃない。


 かなり古そうだ。


「アレン!」


 ガイルの声で意識を戻す。


 グリーンドラゴンが口を開いている。


 喉の奥に緑色の光。


「ブレス!」


 三人で散る。


 ゴオオオオッ!


 毒の吐息が石床を飲み込んだ。


 避けた後にも薄い緑色の霧が残る。


「これ以上増えるとまずいよ!」


 フェリシアが叫ぶ。


「ああ!」


 ガイルが大剣を構え直す。


「次で終わらせるぞ!」


 ガイルがフェリシアを見る。


「左前脚、いけるか?」


「うん!」


 今度は俺を見る。


「アレン!」


「分かった!」


 それだけで十分だった。


 ガイルが走る。


 グリーンドラゴンもガイルへ向かう。


 爪が振り下ろされた。


 ガイルが避ける。


 さらに右へ回る。


 ドラゴンの身体もそちらへ向いた。


「今だ!」


「《魔弾》!」


 ドンッ!


 左前脚に直撃。


「グオッ!」


 グリーンドラゴンの身体が傾く。


 ガイルが踏み込んだ。


 大剣を振り上げる。


 斬るんじゃない。


 刃の腹を使い、ドラゴンの顎を下から叩き上げた。


 ドガンッ!


 巨大な頭が大きく揺れる。


 ガイルがそのまま大剣を返し、首元へ叩きつけた。


「アレン!」


 もう走っていた。


 フェリシアが砕いた鱗。


 ガイルが作った隙。


 首元が完全に空いている。


 剣を両手で握る。


「はあっ!」


 振り下ろした。


 ザンッ!


 深く刃が入る。


 血が噴き出した。


「グオオオオオオッ!」


 巨大な身体が暴れる。


「下がれ!」


 ガイルの声。


 三人で一気に離れる。


 ズズンッ!


 グリーンドラゴンが地面へ倒れ込んだ。


 洞窟全体が揺れる。


「やった?」


 フェリシアが杖を構えたまま聞く。


「いや」


 まだ魔力を感じる。


 グリーンドラゴンがゆっくりと頭を上げた。


 傷は深い。


 血もかなり流れている。


 それでも立ち上がる。


「グルルル……」


「しぶといな」


 ガイルが大剣を構える。


 俺も剣を握った。


 でも。


「……?」


 グリーンドラゴンは向かってこなかった。


 一歩後ろへ下がる。


 もう一歩。


「逃げるのか?」


 ガイルが言う。


「いや……」


 違う気がする。


 逃げるなら、そのまま洞窟の奥へ行けばいい。


 グリーンドラゴンはある場所まで下がると、そこで止まった。


 俺たちへ身体を向けたまま動かない。


「何してるんだろう」


 フェリシアが呟く。


 《魔力感知》を広げる。


 グリーンドラゴンの巨大な魔力。


 その後ろ。


「……何かある」


「何が?」


「小さい魔力」


 一つ。


 もう一つ。


「二つある」


 少し横へ動く。


 するとグリーンドラゴンも身体を動かした。


 俺から奥を隠すように。


「隠してる?」


 フェリシアが言う。


 ガイルも横へ移動する。


 グリーンドラゴンが低く唸った。


「グルルルル……」


 傷だらけなのに、退こうとしない。


 その時、地上から差し込んだ光がグリーンドラゴンの後ろまで届いた。


「あれ……」


 岩に囲まれた奥。


 大きなものが二つ並んでいる。


「卵?」


 フェリシアが目を見開いた。


 かなり大きい。


 グリーンドラゴンが俺たちを睨む。


 傷口からはまだ血が流れている。


 それでも卵の前から動かない。


 ガイルが大剣を少し下げた。


「……なるほどな」


 俺も剣を下げる。


 こいつ、最初から――。


「グルル……」


 グリーンドラゴンの唸り声が弱くなった。


 そして。


「……マテ……」


「え?」


 三人とも動きを止めた。


 聞き間違いじゃない。


 グリーンドラゴンが俺たちを見ている。


「今……」


 フェリシアが言葉を失う。


 もう一度。


 低く、掠れた声。


「……マテ……ニンゲン……」


 俺は思わずガイルを見る。


 ガイルも目を見開いていた。


 グリーンドラゴンが――。


 喋った。


【保有:10,730P】

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