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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

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第130話 世界は広い

 俺たちは六人がいる場所へ回り込める道を探して、さらに奥へ進んだ。


 しばらくすると、通路が二つに分かれている。


「どっちだ?」


 ガイルが立ち止まった。


 ルナが目を閉じる。


「……右かな」


「分かるの?」


「少しだけ風が来てる。それと、人の声も右の方から聞こえる気がする」


 さすがだ。


 俺には声までは聞こえない。


 《魔力感知》を広げる。


 右の通路の先。


 六人分の魔力がある。


「ルナの言う通り。右だ」


「お前も分かるのか?」


「《魔力感知》で六人の位置が分かります」


「便利だな、それ」


「結構便利です」


 俺たちは右の通路へ進んだ。


 少しずつ壁の状態が悪くなっていく。


 ひび割れた石。


 天井から伸びた木の根。


 崩れた場所には土まで入り込んでいる。


「要塞の端に近いのかな」


 ルナが壁を見る。


「たぶんね」


 さらに進む。


「……聞こえる」


 ルナが足を止めた。


「人の声?」


「うん。近い」


 俺も《魔力感知》を使う。


 六人の魔力が、さっきよりはっきりしていた。


「もうすぐです」


「よし」


 ガイルが歩く速度を上げる。


 少しして、俺にも声が聞こえてきた。


「救助に来たぞ!」


 ガイルが大声で返す。


「こっちだ!」


 近い。


 急いで進む。


 通路の先。


 崩れた壁の間に、人が通れそうな隙間ができていた。


「ここだ」


 ガイルが中を覗く。


 俺たちも続く。


「いた!」


 ルナが声を上げた。


 六人。


 男が四人。


 女性が二人。


 服も顔も土だらけになっている。


 腕を押さえている人もいた。


 それでも全員、自分の足で立っている。


「本当に来てくれた……」


 一人が力が抜けたように、その場へ座り込んだ。


「怪我は?」


 ルナがすぐに中へ入る。


「腕を打った奴と、足を捻った奴がいる」


「見せて」


 ルナが怪我人のところへ向かった。


 テリーも後ろをついていく。


「クゥン……」


「大丈夫だよ」


 ルナがテリーの頭を撫でてから、怪我の状態を確認する。


 フェリシアも水を渡していく。


「飲めますか?」


「ああ。ありがとう」


 俺も周囲を見る。


 ここは地下要塞の一部が崩れてできた空間らしい。


 上から大量の土砂が落ちている。


 でも、俺たちが来た側には人が通れる隙間が残っていた。


「この道なら戻れそうだな」


 ガイルが言う。


「途中の罠は止めてあります」


「なら問題なさそうだ」


 六人の顔にも少しだけ安堵が浮かぶ。


 助けられる。


 そう思った、その時だった。


 ズズ……。


「ん?」


 足元が微かに揺れた。


 ルナが顔を上げる。


「また崩れる?」


「いや」


 俺はすぐに《魔力感知》を広げた。


 違う。


 さっき感じた巨大な魔力。


 動いている。


「来る」


「何が?」


 フェリシアが杖を握る。


「さっき感じたやつだ」


 ズズズズ……。


 揺れが大きくなる。


 テリーが立ち上がった。


「グルルル……」


 白い毛が逆立つ。


「な、何だ?」


 六人の顔色が変わる。


「全員、壁際へ!」


 ガイルが叫んだ。


 その直後。


 ドンッ!


 奥の石壁が大きく揺れた。


「え?」


 ドンッ!


 二度目。


 石の隙間から砂が落ちる。


 その直後だった。


 バキッ。


 頭上から嫌な音がした。


「上!」


 ルナが叫ぶ。


 見上げると、天井に亀裂が走っていた。


 一本。


 二本。


 それが一気に広がっていく。


「離れろ!」


 ガイルの声と同時に、俺たちは後ろへ下がった。


 バキバキバキッ!


 天井の一部が崩れ落ちる。


 大量の土と石が降ってきた。


 腕で顔を庇う。


 でも。


「……明るい」


 フェリシアが呟いた。


 崩れた天井の向こうから、光が差し込んでいる。


「地上まで穴が開いたみたい」


 ルナが上を見る。


 どうやら最初の陥没で薄くなっていた部分が、さらに崩れたらしい。


 差し込んだ光が、舞い上がった土埃を照らしている。


 さっきまでランタンの明かりしかなかった地下が、一気に明るくなった。


「これなら見えるな」


 ランタンの火を消し、《収納》へ戻す。


 その時。


 ドガァンッ!


 三度目の衝撃。


 今度は正面の石壁が吹き飛んだ。


「危ない!」


 ガイルが大剣を振る。


 飛んできた大きな石が、空中で真っ二つになった。


 俺もルナたちの前へ出る。


 土煙が広がる。


 地上から差し込む光の中に、巨大な影が浮かんだ。


「……何だ、あれ」


 緑色の鱗。


 太い角。


 巨大な頭。


 その奥には、地下要塞とは比べものにならないほど広い天然洞窟が続いている。


 黄色い目が、こちらを見た。


 《鑑定》。


【グリーンドラゴン】


【大型の竜種】


【非常に硬い鱗と高い魔力を持つ】


【毒性を持つ吐息を使用する】


「ドラゴン……」


 フェリシアが息を呑む。


「グリーンドラゴン?」


 ルナも目を見開いた。


 さっき感じた巨大な魔力は、こいつだった。


「グオオオオオッ!」


 咆哮が響く。


 空気が震えた。


「ひっ……!」


 助けに来た六人が後ずさる。


「全員、来た道を戻れ!」


 ガイルが叫んだ。


「走れる奴は先に行け! 怪我人を支えてやれ!」


 六人が慌てて動き始める。


 ドラゴンの前にガイルが出た。


 大剣を肩から下ろす。


「アレン」


「はい」


「そいつらを頼む」


「一人でやるんですか?」


「あぁ!久しぶりに歯応えある相手と戦えそうだ!」


 グリーンドラゴンがこちらへ踏み出した。


 ズンッ。


 それだけで地面が揺れる。


「行け!」


 ガイルの声が飛ぶ。


 次の瞬間。


 グリーンドラゴンが巨大な前脚を振り下ろした。


「ガイル!」


 ルナが叫ぶ。


 でもガイルは動かない。


 大剣を構えたまま、じっとドラゴンを見ている。


 爪が迫る。


 当たる。


 そう思った直前。


「ふっ!」


 ガイルが半歩ずれた。


 巨大な爪が、身体のすぐ横を通り過ぎる。


 同時に踏み込む。


 大剣が振り上げられた。


 ガキィンッ!


 硬い鱗と刃がぶつかる。


 火花が散った。


「グオッ!」


 グリーンドラゴンの前脚に傷が走る。


「傷をつけた……」


 フェリシアが呟く。


 ガイルは止まらない。


 ドラゴンが反対側の前脚を動かした時には、もうその場にいなかった。


 一歩。


 さらに一歩。


 巨体の懐へ入る。


 大剣を横薙ぎに振るった。


 ガンッ!


 首元の鱗が一枚飛ぶ。


「強い……」


 思わず声が出た。


 あれだけ大きな大剣を使っているのに、動きに無駄がない。


 豪快に振り回しているようで、違う。


 相手が動く前に、次に攻撃が来る場所を読んでいる。


 そこから外れながら、自分が攻撃できる位置へ入る。


 どこかで見たことがある。


 クロードさんだ。


 相手の攻撃を怖がらず、逆に前へ出る。


 クロードさんも、似たような戦い方をしていた。


 でも――。


 ガイルの方が強いかもしれない。


 クロードさんだって相当強い。


 ドラン帝国との戦いでは、《双剣聖》の一人まで倒している。


 そのクロードさんと比べても、ガイルの動きにはほとんど隙がない。


 しかも。


 見た感じでは、俺たちとそこまで年齢も変わらない。


 アルスレインには、こんな人がいるのか。


 世界は広いな。


「グオオオオオッ!」


 グリーンドラゴンが身体を大きく捻った。


「ガイル!」


 巨大な尻尾が横から迫る。


 ガイルが大剣を立てた。


 ドガァンッ!


「ぐっ!」


 まともに受けた。


 ガイルの身体が吹き飛ぶ。


 地面を転がり、壁の手前で止まった。


「ガイル!」


 俺が叫ぶ。


 でも。


「……いてぇな」


 ガイルはすぐに起き上がった。


 口元を手の甲で拭う。


 笑っている。


「本当に大丈夫なの、あの人」


 ルナが呆れたように言う。


「強いけど、一人じゃ危ないよ」


 フェリシアが杖を握る。


「ああ」


 振り返る。


 六人はすでに通路へ入り始めていた。


 ただ、怪我人もいる。


 外まで無事に戻れるとは限らない。


「アレン」


 ルナが俺を見る。


「私がこの人たちを連れて戻る」


「ルナが?」


「途中には罠もあるし、怪我してる人もいるでしょ」


 確かに。


 ルナなら耳も目もいい。


 一度通ってきた道なら、危険な場所も覚えている。


「テリーも私と来て」


「ワフッ!」


「分かった」


「二人はガイルを手伝って」


「ああ」


「気をつけろよ」


「そっちもね」


 ルナが六人の方へ走る。


「みんな、こっち! 慌てなくていいから!」


「ワフッ!」


 テリーもその後を追った。


 これで救助者はルナに任せられる。


 俺は剣を抜いた。


 フェリシアも杖を構える。


 ガイルの隣まで走る。


「逃げなくていいのか?」


 ガイルが俺を見る。


「救助する人たちはルナに任せました」


「だから、ここからは手伝います」


 フェリシアが続ける。


 ガイルが笑った。


「そうか!お前達も強そうだな!」


 グリーンドラゴンがこちらを睨む。


 三人になったのが分かったのか。


 低く唸りながら、頭を下げた。


「グルルルル……」


 その口が開く。


 フェリシアがすぐに反応した。


「待って。魔力が集まってる」


 ドラゴンの喉の奥。


 緑色の光が強くなっていく。


「散れ!」


 ガイルが叫ぶ。


 俺たちは同時に飛んだ。


 次の瞬間。


 ゴオオオオオッ!


 緑色の吐息が放たれた。


 さっきまで立っていた場所を飲み込む。


 石の床から白い煙が上がった。


「これ……」


 フェリシアが顔をしかめる。


「毒か」


 《鑑定》にあった通りだ。


 まともに浴びるのはまずい。


 グリーンドラゴンが再び低く唸る。


 ガイルが大剣を構え直した。


「面倒な奴だな」


「ですね」


 俺も剣を構える。


 フェリシアが杖を向けた。


 地上から差し込む光の中。


 巨大なグリーンドラゴンが、俺たち三人を睨んでいる。


 今度はこっちの番だ。


【保有:10,730P】

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