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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

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第129話 副団長

 地下要塞の奥へ進む。


 ランタンの明かりの先には、相変わらず罠が作動した跡が続いていた。


 壁から飛び出した槍。


 床に散らばった矢。


 途中から斬り落とされた鉄の刃。


「本当に一人で進んでるのかな」


 ルナが暗い通路の先を見る。


「そうみたいだな」


「罠を全部処理しながら?」


「たぶん」


 騎士団の副団長なんだから、強いとは思っていた。


 でも、それだけじゃない。


 罠を見つけ、必要なところだけ壊して先へ進んでいる。


 ただ力任せに突破した跡じゃなかった。


「待って」


 フェリシアが足を止めた。


「どうした?」


「ここ、まだ動いてる」


 フェリシアが少し先の床を指す。


 見た目は普通の石床だ。


 ルナも目を凝らす。


「何かある?」


「魔力が流れてる」


 俺も《魔力感知》を使う。


 確かに、床の下から壁へ細い魔力の流れが続いていた。


「魔法の罠か」


「たぶんね」


 フェリシアがしゃがみ込む。


 石の隙間に刻まれた細い溝を調べてから、手をかざした。


「踏むと、ここから魔力が流れる仕組みだと思う」


「何が起きる?」


「そこまでは分からない」


「踏んでみる?」


「やめて」


 ルナに即答された。


「冗談だよ」


 フェリシアが少し笑う。


 やがて、床の下を流れていた魔力が消えた。


「これで大丈夫だと思う」


「解除したの?」


「起動するための魔力を遮断しただけだけどね」


 フェリシアが立ち上がる。


「行こう」


 先へ進む。


 しばらくすると――。


 ガキンッ!


 地下に金属音が響いた。


「何?」


「前だ」


 俺たちは足を速める。


 通路を曲がった先に、一人の男が立っていた。


「……でか」


 ルナが小さく呟く。


 俺も同じことを思った。


 二メートル近くありそうな長身。


 肩幅も広く、鎧の上からでも身体の厚みが分かる。


 銀色の髪を後ろへ撫でつけ、太い眉の下には鋭い目。


 そして、その手に握られているのは大剣だった。


 かなり大きい。


 普通の人間なら、両手で持つだけでも苦労しそうだ。


 男の足元には、太い鉄槍が転がっている。


 根元から斬られていた。


 さっきの音はこれか。


 男がこちらを振り向く。


「誰だ?」


「冒険者ギルドから来ました。救助の応援です」


「冒険者?」


「アレンです。こっちはフェリシアとルナ」


「テリーもいるよ」


「ワフッ!」


 男が俺たちを順番に見る。


「お前たちがギルドから来たAランクか?」


「俺とフェリシアがAランクです」


「そうか。思ったより早かったな」


 男が大剣を肩に担ぐ。


「俺はガイル・ベイルン。ベイルン騎士団の副団長だ」


「ベイルン?」


 この領地と同じ名前だ。


「この領地を治めているベイルン家の?」


「ああ。嫡男だ」


「えっ」


 フェリシアが姿勢を正した。


「失礼しました。ガイル様」


 俺も慌てて頭を下げる。


「申し訳ありません。知らなかったとはいえ――」


「待て待て」


 ガイルが眉をひそめた。


「なんで急にそうなる」


「いや、ベイルン家の嫡男だと分かったので……」


「今は騎士団の副団長として来てる。さっきまで通りでいい」


「ですが……」


 フェリシアが困った顔をする。


「急に話し方を変えられる方がやりにくい」


 ガイルが俺たちを見る。


「普通にしてくれ」


「分かり……」


 思わず言い直しそうになる。


「分かった」


「それでいい」


「二人とも急に変わったからびっくりした」


 ルナが笑う。


「だって領主家の嫡男だぞ」


「でもガイルはガイルでしょ?」


「お前は全然変わらないな」


「変えた方がいい?」


「いや。そのままでいい」


 ガイルが少し笑った。


 意外と話しやすい人かもしれない。


「途中で部下に怪我人が出たんだ」


 ガイルが奥を見る。


「これ以上連れていく方が危ない。だから戻した」


「それで一人で?」


「ああ。その方が早い」


 簡単に言うけど、ここまで相当な数の罠があった。


「途中の罠は?」


「最初の方は部下と処理した。途中からは俺だ」


 やっぱり。


「かなりの数がありましたけど」


「そうだな」


 それだけだった。


 自慢する様子もない。


「それより、まだ六人残ってるんだ」


「はい」


「急ぐぞ」


 ガイルが先に歩き始める。


 俺たちもその後を追った。


 ◇


 ガイルが先頭に立ち、さらに奥へ進む。


 しばらくしたところで、突然ガイルが足を止めた。


「止まれ」


 俺たちも止まる。


「どうしました?」


「あそこは踏むな」


 ガイルが数歩先の床を指す。


 見た目には何も変わらない。


 ルナが目を細めた。


「あ……」


「分かる?」


「うん。あの石だけ、少し沈んでる」


 ガイルが近くに落ちていた小石を拾い、放る。


 石が床に落ちた瞬間。


 ガコンッ!


 床が抜けた。


 その下には、何本もの鉄杭が並んでいる。


「うわ……」


 ルナが穴を覗き込む。


「よく気づいたね」


「何となく嫌な感じがした」


「嫌な感じ?」


「ああ」


 ガイルはそれ以上説明しなかった。


 ルナが少し不思議そうな顔をする。


 落とし穴を迂回して、さらに進む。


 今度は、大きな岩が通路を塞いでいた。


「これじゃ通れないね」


「俺が動かすよ」


 俺は前に出て岩に手をかける。


「大丈夫?」


「たぶんね」


 力を入れる。


 ゴゴゴッ。


 岩が床を擦りながら持ち上がった。


 そのまま横へ運び、通路の端へ置く。


「おお」


 ガイルが俺を見る。


「お前、なかなか力あるな」


「なかなかどころじゃないよ」


 ルナがすぐに言った。


「うん。アレンの力はちょっとおかしいから」


 フェリシアまで頷く。


「おい」


「そうなのか?」


 ガイルが俺を見る。


「まあ、多少は」


「多少じゃないって」


 ルナにまた突っ込まれた。


「ははっ」


 ガイルが笑う。


「面白い奴らだな」


 俺たちはさらに奥へ進んだ。


 地下へ下る階段を降りたところで、足を止める。


「……いる」


「何が?」


 フェリシアが聞く。


 《魔力感知》を広げる。


 壁の向こう。


 少し先に、いくつか魔力を感じた。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 数えていく。


「六人いる」


「分かるの?」


「ああ。たぶん救助する人たちだ」


 人間っぽい魔力が六つ、同じ場所に集まっている。


「この先です」


「よし」


 ガイルがすぐに歩き出した。


 俺も後を追おうとして、もう一度奥へ意識を向ける。


「……?」


 何か感じた。


 六人とは違う。


 もっと遠い。


 でも一瞬だった。


「アレン?」


「いや」


 今は救助が先だ。


 ◇


「誰かいるか!」


 ガイルの声が地下に響く。


 少し間があって。


「おぉ、こっちだ!」


 向こうから声が返ってきた。


「助けてくれ!」


「六人全員いるか!」


「いる! 全員いる!」


 ガイルが小さく息を吐く。


「よかった」


 ルナもほっとした顔をした。


 声は近い。


 ただ、俺たちとの間には大量の岩と土砂が積み重なっていた。


 天井の一部まで崩れている。


「この向こうか」


「ああ」


 一番大きな岩を見る。


「これなら動かせそうだ」


 手を伸ばそうとした瞬間。


「触るな」


 ガイルに腕を掴まれた。


「え?」


「それを動かしたら、上も落ちる」


 ガイルが天井を見る。


 俺も見上げる。


 どこが危ないのか、すぐには分からない。


 ルナが近づいて確認した。


「……本当だ」


「分かる?」


「ここ見て」


 ルナが指差す。


 天井の隙間から、細い砂がぱらぱらと落ちている。


 さらによく見ると、いくつもの岩が重なって天井を支えていた。


 俺が動かそうとした岩も、その一つだ。


「これを動かしたら、上の岩まで落ちる」


「そういうことか」


 危なかった。


 ガイルは近づいて調べる前に止めた。


 ルナがガイルを見る。


「……」


「どうした?」


「ううん」


 ルナが首を振る。


 でも、少し驚いている。


 俺も同じだった。


 強いだけじゃない。


 この人、妙に危険を察するのが早い。


「そっちは大丈夫か!」


 ガイルが土砂の向こうへ声をかける。


「ああ! 怪我人はいるけど、全員動ける!」


「水は?」


「まだある!」


「分かった! 別の道からそっちへ行く! もう少し待ってろ!」


「頼む!」


 六人の無事は確認できた。


 あとは安全に向こう側へ回り込む道を探せばいい。


「奥へ行くぞ」


 ガイルが通路の先を見る。


「この要塞が崩落地点の下まで続いてるなら、別の道があるはずだ」


「はい」


 俺たちは再び歩き出す。


 その時。


「……やっぱりいる」


 足を止めた。


「何が?」


 フェリシアが俺を見る。


 もう一度、《魔力感知》を広げる。


 六人の魔力は分かっている。


 そのさらに奥。


 地下要塞の深いところ。


 さっき一瞬だけ感じたものが、今度ははっきり分かった。


「でかい……」


「魔力が?」


「ああ」


 人間とは比べものにならない。


 六人の魔力が小さく思えるほど、膨大な魔力。


 フェリシアの表情が変わる。


「魔物?」


「分からない。でも、人じゃない」


 ルナがテリーを見る。


 テリーも暗い通路の奥を見ていた。


 耳が立ち、白い毛がわずかに逆立っている。


「テリーも気づいてる」


「グルル……」


 低い唸り声。


 ガイルが肩に担いでいた大剣を下ろす。


「どこだ?」


「六人がいる場所より、さらに奥です」


「近いのか?」


「まだ距離はあると思います」


 ガイルが暗闇の先を見る。


「まず六人を助ける」


「はい」


「そいつのことは、その後だ」


 俺も頷く。


 今はそれでいい。


 ただ――。


 もう一度、奥へ意識を向ける。


 地下要塞のさらに深い場所。


 そこにある巨大な魔力が、ゆっくりと動いた。


【保有:10,730P】

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最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ガイルーーー!!きたーーー!つながったーー
ストーリーの交差が楽しみです。
ついにガイル・ベイルン登場ですね。物語のリンク、わくわくします。時系列がこちらの方が進んでいる感じですが、リオンはこの時点で何歳なのか?外れではなく超当たりスキルと気が付くのか??今後のお話の展開が楽…
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