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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

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第128話 地下要塞

「Aランクの冒険者にお願いしたい緊急依頼が入っています」


「緊急依頼?」


 フェリシアが聞き返す。


「はい。バイソンから北へ向かう街道で、今朝大きな陥没事故が起きました」


「陥没?」


「街道の一部が突然崩れ、補修作業をしていた者や、近くを通っていた商人たち九人が地下へ落下しています」


「九人も?」


 ルナが驚く。


「はい。すぐにベイルン騎士団が救助に向かい、三人までは助け出したそうです」


「残りは?」


「まだ地下です」


 受付の女性の表情が曇る。


「救助の途中で、二度目の崩落が起きました」


「二度目?」


「はい。残っている六人が落ちた場所の上が、土砂で塞がれてしまったそうです」


「生きてるんですか?」


「声は確認できています。崩落の直前に、横の空間へ逃げ込めたようです」


 それならまだ間に合う。


「上から掘り出せないんですか?」


「それが難しいようです。地盤がかなり不安定で、下手に土砂を動かせば、さらに崩れる危険があります」


「なるほど」


「そして、二度目の崩落で別のものが現れました」


「別のもの?」


「古い石造りの建物です」


 俺たちは顔を見合わせる。


「地下に建物が?」


「正確には地下要塞らしいです。かなり昔のものですが、入口が崩落で露出しました」


「要塞……」


「調べたところ、その中を抜ければ、取り残された六人がいる場所の近くまで回り込める可能性があるそうです」


 つまり。


 上からは助けられない。


 地下要塞を通って横から向かうしかない。


「それで騎士団が中へ?」


「はい。ただ……」


 受付の女性が少し言葉を止めた。


「中には、かなり多くの罠が残っているようです」


「罠?」


「床から槍が飛び出したり、壁から矢が放たれたり。落とし穴もあったそうです」


「そんな昔の罠がまだ動くんだ」


 ルナが言う。


「古い施設とは思えないほど、多くの仕掛けが残っているそうです。負傷者も出ています」


「それでAランクの冒険者を?」


「はい。ベイルン騎士団から、危険な場所での活動に慣れた高ランク冒険者を派遣してほしいと要請がありました」


 受付の女性が俺とフェリシアを見る。


「ちょうどお二人が来られたので」


「なるほど」


 アルスレインへ入って、まだ半日も経っていない。


 さっきまで肉を食べていたのに、いきなり救助依頼だ。


「どうする?」


 フェリシアを見る。


「私は行くよ」


「私も」


 ルナもすぐに答えた。


「じゃあ受けます」


「ありがとうございます」


 受付の女性がほっとしたように息を吐いた。


「現場までは騎士団の者が案内します。急いでいただけますか?」


「分かりました」


◇


 バイソンを出て、北へ向かう。


 俺たちの前を、ベイルン騎士団の兵士が馬で進んでいた。


 街道には商人や荷馬車の姿が多かったが、しばらくすると人通りがなくなった。


 代わりに見えてきたのは、大勢の兵士だった。


「あそこです!」


 案内してくれた兵士が前を指す。


「うわ……」


 ルナが声を漏らした。


 街道が大きく崩れている。


 道の中央から脇の草地まで、かなり広い範囲が陥没していた。


 周囲にはロープが張られ、何十人もの騎士や兵士が動き回っている。


「思ってたより大きいね」


「ああ」


 近づいて穴の縁から下を見る。


 崩れた土砂の向こう。


 かなり下の方に、壊れた木材や荷車の一部が見えた。


「あの辺りに落ちたんですか?」


「はい」


 近くにいた騎士が答える。


「最初の崩落で九人が下へ落ちました。上からロープを下ろし、三人までは救出できました」


「残りの六人は?」


「あちらです」


 騎士が少し離れた場所を指す。


 崩れた土砂が山のように積み重なっている。


「二度目の崩落で、落下地点の上が塞がれました」


「声は聞こえるんですよね?」


「はい。土砂の向こう側に空間があるらしく、そこへ逃げ込んでいます」


 完全に埋まったわけではない。


 でも。


「ここを掘るのは危ない?」


「ええ」


 騎士が頷く。


「下にまだ空洞が残っています。無理に掘れば、その空間ごと潰す可能性があります」


「じゃあ、別の場所から行くしかない」


「そのために見つかったのが、あちらです」


 騎士が街道の脇を指した。


 斜面の一部が崩れ、石造りの壁が露出している。


 その中央には、地下へ続く入口があった。


「地下要塞?」


「おそらく」


 フェリシアが聞く。


「記録は残ってないんですか?」


「今、領都にも確認を取っています。ただ、この辺りは昔から何度も戦場になっているので、かなり古い施設だと思われます」


 ドラン帝国やセルヴァンと戦ってきた領地。


 船の中で聞いた話を思い出す。


「この中を抜ければ、六人のところへ?」


「構造が完全には分かっていません。ただ、入口から続く通路が崩落地点の下へ伸びています」


「それで騎士団が中へ入ったんですね」


「はい」


 騎士の表情が険しくなる。


「最初に十人ほどで入りました」


「どうだったんです?」


「罠だらけでした」


 腕に包帯を巻いた兵士たちが、少し離れた場所に座っている。


「床を踏めば槍が飛び出し、壁から矢が放たれる。突然足元が抜ける場所もありました」


「かなり危ないな」


「ええ。古い施設とは思えないほど、多くの罠がまだ動いています」


「魔法の罠も?」


 フェリシアが聞く。


「それらしいものもあったそうです。ただ、我々には詳しく分かりません」


「それで撤退した?」


「負傷者が増え始めたため、一度引き上げました」


「全員?」


 騎士が少しだけ間を置く。


「一人だけ残っています」


「一人?」


「騎士団の副団長です」


「副団長が?」


「部下をこれ以上危険に晒せないと言って、自分だけ先へ進みました」


 ルナが目を丸くする。


「一人で?」


「止めたのですが、副団長は聞きませんでした」


「大丈夫なんですか?」


「我々より遥かに強い方です。ただ、地下要塞の構造そのものが分かっていません」


 騎士が俺たちを見る。


「できれば追っていただきたい」


「分かりました」


 俺たちは顔を見合わせる。


「行こうか」


「うん」


「私も大丈夫」


 ルナがテリーを見る。


「テリーはどうする?」


「ワフッ!」


 すぐに返事が返ってきた。


「行くって」


「罠があるんだぞ」


「私のそばから離れないようにするよ。危ないと思ったらすぐ戻るから」


「分かった」


 俺たちは地下要塞の入口へ向かった。


◇


 入口は街道から少し離れた斜面にあった。


 崩れた土砂の間から、石造りの階段が地下へ続いている。


「暗いね」


「ランタンを使おう」


 《収納》からランタンを取り出し、火をつける。


 柔らかな明かりが、地下へ続く石造りの通路を照らした。


 階段を降りる。


 空気がひんやりしている。


 壁も床も石造り。


 かなり古いはずなのに、思ったより形が残っていた。


「ここを騎士団の人たちが通ったんだよね?」


「ああ」


 少し進む。


「待って」


 ルナが止まった。


「どうした?」


「あそこ」


 床を指差す。


 石床の一部に、小さな穴がいくつも開いている。


 その先の壁際に鉄製の槍が転がっていた。


「これが罠か」


「でも、もう動いてないみたい」


 さらに近づく。


 槍は途中から折れていた。


「誰かが壊した?」


 フェリシアが見る。


「騎士団の人たちじゃない?」


「撤退した兵士たちかもな」


 先へ進む。


 今度は壁に何本もの矢が刺さっている。


 床にも折れた矢。


 その中心にある仕掛けは、すでに壊されていた。


「ここも」


 ルナが言う。


「罠が発動した後だね」


 その先には落とし穴。


 手前の床には白い布が結ばれている。


「危険だって分かるようにつけたのかな」


「多分」


 穴を避けて進む。


 さらに奥。


 また罠。


 今度は壁から飛び出したらしい鉄の刃が、根元から曲げられていた。


「……」


「どうしたの?」


 フェリシアが聞く。


「いや」


 周囲を見る。


 入口からかなり進んだ。


 でも、俺たちはまだ一度も罠に襲われていない。


 全部、先に誰かが処理している。


「撤退した兵士たちがここまで来たのかな」


 ルナが言った。


「いや」


 兵士たちは負傷者が増え、途中で引き返したと聞いている。


 それなら。


「副団長って人じゃない?」


 フェリシアも同じことを考えたらしい。


「多分な」


 さらに進む。


 床には砕かれた石の仕掛け。


 壁には切断された鉄製の部品。


 どれも壊し方が雑じゃない。


 必要なところだけを壊し、先へ進んでいる。


「かなり慣れてるね」


 ルナが罠の跡を見る。


「ああ」


 力があるだけじゃない。


 どう動けば安全なのか分かっている。


 また少し進むと、通路の真ん中に太い鉄槍が落ちていた。


 先端から半分ほどが、きれいに斬り落とされている。


「これも?」


 フェリシアが聞く。


「ああ」


 斬られた断面を見る。


 一撃だ。


「……強いな」


「副団長?」


 ルナが聞く。


「たぶん」


 姿はまだ見えない。


 でも、この先を誰か一人で進んでいる。


 騎士団の兵士たちが撤退した地下要塞を、次々と罠を処理しながら。


 俺は暗い通路の先を見た。


「どんな人なんだ?」


【保有:10,730P】

【累計獲得P:340,440P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
「現場までは騎士団の者が案内します。急いでいただけますか?」 「分かりました」 依頼なんだから、対価を確認してから受領するかどうか決めないとね。
ガイルと出会うのでしょうか
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