第13話 さらに下へ
翌朝、俺とフェリシアは再び冒険者ギルドへ来ていた。
今日は西部ダンジョンの三階を本格的に探索するつもりだ。
依頼掲示板を見ると、ちょうどいい依頼が残っていた。
【ストーンリザードの鱗 三枚納品】
【対象:ベルガント西部ダンジョン第三階層】
【報酬:18,000ジェニー】
「これにしません?」
「前に倒した相手ですし、いいと思います」
依頼書を受付へ持っていく。
「三階のストーンリザードですね」
「はい」
「先日も三階まで行かれたんですよね?」
「一体倒して、すぐ戻りました」
「それでしたら問題ありません。ただし、無理はしないでくださいね」
「分かりました」
手続きを済ませ、ギルドを出た。
今日は新しく買った鋼鉄剣を腰に下げている。
回復薬やロープも持った。
フェリシアも革の胸当てと腕当てを身につけている。
「今日は荷物が多いですね」
「帰りはもっと重くなるといいですね」
「素材で?」
「もちろんです」
「それなら大歓迎です」
◇
西部ダンジョンへ入り、一階を進む。
前回は周囲を確認しながら慎重に歩いたが、道筋はある程度覚えている。
途中で四体のケイブバットに遭遇した。
「《魔弾》!」
一体が床へ落ちる。
俺が仕留め、そのまま次へ向かう。
フェリシアが翼を狙い、俺がとどめを刺す。
四体を倒すのに、それほど時間はかからなかった。
【20P獲得】
【累計獲得P:2,350P】
【保有:240P】
四体分の小型魔石を回収する。
「前より早かったですね」
「動きも分かってますからね」
二階も大きな問題なく通過した。
ケイブラットとは遭遇せず、そのまま三階へ続く階段に着く。
「ここからですね」
「行きましょう」
階段を下りた。
◇
三階。
前に来たときと同じく、魔石灯の数は少ない。
今日は前回より奥まで進む。
しばらく歩いたところで、フェリシアが天井を指した。
「います」
岩に紛れるように、一体のストーンリザードが張りついていた。
「脚からいきます」
「お願いします」
フェリシアが杖を向ける。
「《魔弾》!」
光弾が前脚へ入った。
ストーンリザードがこちらに気づき、壁を走る。
「《魔弾》!」
二発目も同じ脚だ。
体勢がわずかに崩れる。
俺は壁から落ちてくる位置へ先回りした。
「ギャッ!」
地面へ着地したところへ踏み込む。
前回は首の鱗に剣を弾かれた。
今度は最初から脚の付け根を狙う。
「はっ!」
ザシュッ!
「ギャアッ!」
鱗の隙間へ刃が深く入った。
ストーンリザードが身体をひねる。
剣を抜いて腹側へ回り込んだ。
「《魔弾》!」
フェリシアの一発が顔へ当たる。
動きが止まったところで、腹へ剣を突き刺した。
「ギャアアッ!」
巨体が崩れる。
【120P獲得】
【累計獲得P:2,470P】
【保有:360P】
「やっぱり、この剣いいですね」
刃を見る。
前に使っていた剣より、明らかに通りがいい。
「十万ジェニー近くしましたからね」
「その話をされると大事に使いたくなります」
「魔物を斬るために買ったんですよ?」
「そうなんですけど」
ストーンリザードから魔石と鱗を回収する。
依頼に必要な鱗は、あと二枚だ。
◇
さらに奥へ進む。
三階は一階や二階より通路が複雑だった。
行き止まりもあり、同じような岩壁が続いている。
しばらく探索していると、フェリシアが足を止めた。
「アレンさん」
「はい?」
「前に二体います」
曲がり角から少しだけ顔を出す。
ストーンリザードが二体いた。
一体は地面に伏せ、もう一体は壁に張りついている。
「どうします?」
「同時に来られると面倒ですね」
フェリシアが二体を見る。
「右は私が抑えます」
「大丈夫ですか?」
「一体に集中すれば、しばらく足止めできると思います」
「じゃあ、左をできるだけ早く倒します」
「お願いします」
剣を抜く。
フェリシアも杖を構えた。
「行きます」
飛び出す。
二体のストーンリザードが同時にこちらを向いた。
「ギャッ!」
「ギャアッ!」
地面にいた一体が俺へ走る。
もう一体は壁を蹴った。
「《魔弾》!」
フェリシアの攻撃が右の一体の顔へ入る。
俺は左へ向かった。
ストーンリザードが爪を振る。
かわして横へ回り、脚の付け根を斬った。
「ギャアッ!」
太い尻尾が横から来る。
しゃがんでかわす。
「アレンさん、こっちは大丈夫です!」
右のストーンリザードが壁を走ろうとするたび、フェリシアの《魔弾》が脚や顔へ飛んでいる。
俺は目の前の一体へ踏み込んだ。
ストーンリザードが突っ込んでくる。
半歩ずれ、その懐へ入る。
腹へ剣を突き上げた。
「ギャアッ!」
さらに刃を深く押し込む。
巨体が崩れた。
【120P獲得】
【累計獲得P:2,590P】
【保有:480P】
すぐに振り向く。
「フェリシアさん!」
「こっちです!」
もう一体がフェリシアへ向かっていた。
「《魔弾》!」
前脚へ入る。
さらにもう一発。
「《魔弾》!」
同じ場所へ命中した。
ストーンリザードの脚が崩れる。
「お願いします!」
地面を蹴った。
フェリシアとの間へ入り、剣を振り下ろす。
一撃。
続けてもう一撃。
最後に腹へ剣を突き刺した。
【120P獲得】
【累計獲得P:2,710P】
【保有:600P】
「ふう……」
フェリシアが息を吐いた。
「大丈夫でした?」
「はい。でも二体だと忙しいですね」
「一体抑えてもらえて助かりました」
「攻撃より、動きを止める方に集中しましたから」
三体分の魔石と鱗を袋へ入れる。
これで依頼の条件は達成した。
売れそうな鱗は余分に持っていく。
「結構重くなりましたね」
「まだ全然大丈夫です」
「アレンさんに聞く必要なかったですね」
再び歩き始めた。
◇
しばらく進むと、少し広い場所へ出た。
「ここ、地面が違いますね」
フェリシアが足元を見る。
岩ばかりだった場所に、細かな土が混じっていた。
俺も足元を見る。
「穴がありますね」
小さな穴がいくつも空いている。
そのとき、足元からかすかな振動が伝わってきた。
「……何かいる」
「え?」
ドンッ!
「うわっ!」
すぐ横の地面が弾けた。
黒い塊が飛び出してくる。
とっさに後ろへ跳んだ。
鋭い爪が目の前を通る。
「何ですか、あれ!?」
地面へ着地したのは、大型犬ほどの大きさがあるモグラのような魔物だった。
前脚には長く太い爪が生えている。
「ロックモールです! 地面に潜る魔物です!」
ロックモールが再び土へ潜った。
「見えない……」
剣を構える。
どこから来る?
「アレンさん、右!」
フェリシアが叫んだ。
右側の地面が盛り上がる。
横へ動いた直後、ロックモールが飛び出した。
爪をかわし、その胴へ剣を振る。
「ギィッ!」
刃が入った。
ストーンリザードほど硬くない。
「《魔弾》!」
フェリシアの攻撃が背中へ入る。
ロックモールが再び潜ろうとする。
「逃がさない!」
潜りきる前に距離を詰め、剣を振り下ろした。
「ギィッ……!」
ロックモールが動かなくなる。
【80P獲得】
【累計獲得P:2,790P】
【保有:680P】
「地面から来るのは厄介ですね」
「私も土が動かなかったら気づかなかったです」
ロックモールから魔石を取り出す。
大きな爪も売れそうなので、二本回収した。
「また重くなりましたね」
「高く売れるなら歓迎です」
◇
さらに進むと、下へ続く階段が見つかった。
その手前にはギルドが設置したらしい木の札が立っている。
【第四階層】
「ここですね」
フェリシアが階段を見る。
クロードに言われた言葉を思い出した。
三階より下には行かない方がいい。
ここから先だ。
「どうします?」
荷物を確認する。
回復薬はまだ使っていない。
怪我もない。
時間にも余裕がある。
「少しだけ見てみませんか?」
「少しだけですよ」
「危なそうなら戻ります」
「それなら行きましょう」
階段を下りた。
◇
四階へ入って最初に感じたのは、暗さだった。
三階より魔石灯が少ない。
少し先までしか見えない。
「ランタン、出しますね」
フェリシアが昨日買ったランタンに火を入れた。
周囲が明るくなる。
通路自体は三階より広い。
壁には大きな傷がいくつも残っていた。
「これ……」
フェリシアが立ち止まる。
少し先に魔物が倒れていた。
近づく。
「ストーンリザード?」
「ですよね」
三階で何度も倒した魔物だ。
背中の硬い鱗が大きく裂かれ、腹にも深い傷がある。
「何かにやられたんでしょうね」
「かなり大きな爪ですね」
岩壁にも似た傷が残っている。
「今日は本当に入口だけにした方がよさそうですね」
「そうですね」
そう答えた直後だった。
暗闇の奥から低い唸り声が聞こえた。
「グルルル……」
「何かいます」
ランタンの光の先に、二つの目が浮かぶ。
ゆっくりと姿を現した。
狼型の魔物だ。
ただ、これまで戦ってきたグレイウルフより一回り大きい。
全身の毛が黒い金属のように光っている。
「アイアンウルフです!」
「強いですか?」
「グレイウルフとは全然違います!」
「グルアッ!」
言い終わる前に飛び出した。
「速っ!」
横へかわす。
爪が服のすぐ横を通った。
反転も速い。
すぐにこちらへ飛びかかってくる。
剣を振る。
ガッ!
「っ!」
刃が毛皮を滑った。
「硬い!」
「《魔弾》!」
フェリシアの攻撃が胴へ当たる。
だが、アイアンウルフはほとんど止まらない。
「同じ場所を狙えますか!」
「やります!」
アイアンウルフが俺へ飛びかかる。
かわして剣を振る。
また毛皮で滑った。
「《魔弾》!」
一発。
「《魔弾》!」
二発目。
肩へ入る。
「もう一度!」
「《魔弾》!」
三発目も同じ場所へ命中した。
金属のような毛が乱れる。
「そこ!」
踏み込む。
同じ肩へ剣を叩き込んだ。
ザクッ!
今度は入った。
「グルアアッ!」
アイアンウルフが暴れる。
前脚が飛んでくる。
身体をひねってかわし、さらに斬る。
「フェリシアさん!」
「はい!」
「《魔弾》!」
四発目が傷口へ入った。
アイアンウルフが大きくよろめく。
首元が開いた。
「はあっ!」
鋼鉄剣を振り抜く。
「ギャウッ!」
アイアンウルフが地面へ倒れた。
しばらく待つ。
動かない。
【200P獲得】
【累計獲得P:2,990P】
【保有:880P】
「二百……」
「ストーンリザードより多いんですか?」
「かなり」
四階へ入って最初に遭遇した一体でこれだ。
「戻りましょうか」
フェリシアが言った。
「そうですね」
魔石を取り出し、毛皮も持ち帰れる範囲で回収した。
今日はここまでだ。
◇
夕方、ベルガントへ戻った。
ギルドの受付にストーンリザードの鱗を出す。
「三枚確認しました。依頼達成です」
「ありがとうございます」
依頼報酬は一万八千ジェニー。
そのあと、今日集めた素材も査定してもらった。
ケイブバットの小型魔石が四個。
三体分のストーンリザードの魔石と鱗。
ロックモールの魔石と爪。
そしてアイアンウルフの魔石と毛皮。
受付嬢が計算を終える。
「素材の買取は、全部で八万六千ジェニーになります」
「八万六千……」
フェリシアが目を丸くする。
「アイアンウルフの素材が高いんです。毛皮も状態がいいですね」
依頼報酬と合わせれば、十万四千ジェニー。
二人で分けても、一人五万二千ジェニーになる。
「昨日買った剣の半分以上が戻ってきた……」
思わず呟いた。
「一日でですよ」
フェリシアも自分の取り分を見る。
「四階って、本当に稼げるんですね」
「危険なのも分かりましたけどね」
そのとき、視界に表示が現れた。
【依頼達成を確認しました】
【100P獲得】
【累計獲得P:3,090P】
【保有:980P】
「九百八十……」
「Pですか?」
「はい。かなり増えました」
「次も四階へ行きます?」
「その前に、アイアンウルフのことを少し調べましょう」
「賛成です」
知らない魔物が他にもいるかもしれない。
次に入る前に、四階の情報は集めておいた方がいい。
◇
その夜、宿で《会員》を開いた。
【保有:980P】
【基礎能力】
【筋力:352】
【耐久:343】
【敏捷:393】
【魔力:18】
筋力、耐久、敏捷をそれぞれ六回ずつ強化する。
【筋力強化(中)を6回購入しました】
【筋力:352 → 532】
【耐久強化(中)を6回購入しました】
【耐久:343 → 523】
【敏捷強化(中)を6回購入しました】
【敏捷:393 → 573】
【900Pを使用しました】
【保有:80P】
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明日は、この身体を少し動かしてから四階について調べてみよう。
累計獲得P=3,090P
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