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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第2章 ダンジョンへ行こう

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第12話 十万ジェニーの剣

 翌朝、俺とフェリシアは冒険者ギルドではなく、ベルガントの大通りを歩いていた。


 昨日話していた通り、今日は武器を見るつもりだ。


 通りの両側には何軒もの武器屋が並んでいる。剣や槍を店先に出している店もあれば、防具や杖だけを扱っている店もあった。


「ヴァルディス領とは全然違いますね」


「交易都市ですからね。冒険者も多いですし」


 少し歩いたところで、入口の上に剣と盾を組み合わせた看板が見えた。


「ここ、入ってみませんか?」


「そうしましょう」


 店内へ入る。


 壁一面に剣が並んでいた。


 短剣、長剣、両手剣。形も大きさも様々だ。


 近くにあった値札を見る。


【鉄剣 28,000ジェニー】


【鋼鉄剣 98,000ジェニー】


【強化鋼剣 320,000ジェニー】


「九万八千か……」


 さらに奥へ進む。


【炎牙剣 1,280,000ジェニー】


「百二十八万!?」


 隣でフェリシアも目を丸くした。


「高い……」


「そいつはファイアリザードの牙を使ってるからな」


 声をかけてきたのは、革の前掛けをつけた中年の男だった。


 太い腕を見る限り、店主だろう。


「ファイアリザード?」


「Bランク以上の冒険者が狙う魔物だ。素材自体が高いうえ、加工できる職人も少ない」


 もう一度値札を見る。


 百二十八万ジェニー。


 今の俺たちが買える金額じゃない。


「これが一番高い剣ですか?」


「うちではな」


「もっと高いものもあるんですか?」


「いくらでもあるぞ」


 店主が店の外を指した。


「中央通りをもう少し行くと、高級武具専門の店がある。上級冒険者や貴族が使うような品ばかり置いてる店だ」


「どれくらいするんです?」


「気になるなら見てくればいい。一千万を超える剣も置いてあるぞ」


「一千万……」


 フェリシアの声が小さくなった。


 俺もさすがに想像できない。


「そんなものを買える冒険者がいるんですか?」


「いるから店があるんだよ」


 店主が笑う。


「AランクやSランクになると、ダンジョンの深いところへ潜る連中もいる。

一回の探索で何十万、運が良けりゃ何百万って素材を持ち帰る奴もいるからな」


「そんなに……」


 昨日入った西部ダンジョンが頭に浮かぶ。


 三階で倒したストーンリザードの魔石と鱗は九千ジェニーだった。


 もっと深いところでは、桁そのものが変わるらしい。


「とりあえず見に行ってみます?」


 フェリシアが聞いてきた。


「見てみたいです」


「買えませんけどね」


「見るだけなら無料でしょう」


 ◇


 店主に教えられた道を進むと、すぐにそれらしい店が見つかった。


 先ほどの武器屋とは外観から違う。


 大きなガラス窓の向こうに剣や鎧が一つずつ飾られ、入口には制服を着た店員まで立っていた。


「……本当に入ります?」


「ここまで来たんですし」


 中へ入る。


 静かだった。


 棚へ何本も剣を並べるのではなく、一つ一つの武器に広い場所を使っている。


 近くにあった剣の値札を見る。


【白銀剣 2,450,000ジェニー】


「二百四十五万……」


 その隣。


【雷晶剣 5,800,000ジェニー】


 さらに奥。


 一振りだけ別の台に置かれた黒い剣があった。


【黒竜剣 12,800,000ジェニー】


「…………」


「…………」


 俺とフェリシアは黙って値札を見た。


「千二百八十万……」


 フェリシアがようやく口を開く。


「家、買えそうですね」


「買えるんじゃないですか?」


 近くにいた店員が微笑んだ。


「黒竜の素材を使った品です。現在、当店で扱っている剣では最高額になります」


「実際に買う人もいるんですか?」


「もちろんでございます」


 あっさり返ってきた。


 フェリシアと顔を見合わせる。


「戻りましょうか」


「そうですね」


 今の俺たちがいる場所ではなかった。


 ◇


 最初の武器屋へ戻ると、店主がこちらを見て笑った。


「どうだった?」


「一千万を超えてました」


「言っただろ」


「桁が違いすぎます」


 フェリシアが苦笑する。


「で、兄ちゃんは何を探してるんだ?」


 俺は腰の剣を外して店主へ渡した。


「これより丈夫な剣が欲しいです」


「見せてみろ」


 剣を抜いた店主が刃を確認する。


「ずいぶん傷んでるな」


「硬い魔物と何度か戦ったので」


「ここも欠けてる」


 刃先を指で示された。


「昨日も何か硬い奴を斬っただろ」


「ストーンリザードです」


「それでか」


 店主が剣を鞘へ戻す。


「手入れすればまだ使えるが、これからもダンジョンへ潜るなら買い替えた方がいい。

このまま硬い奴ばかり斬ってたら、いつか折れるぞ」


「何がいいですか?」


「今の剣からなら、この辺だな」


 壁から一本取った。


 さっき見た鋼鉄剣だ。


【鋼鉄剣 98,000ジェニー】


「普通の鉄剣より少し重めだ。持ってみろ」


 受け取る。


 柄を握り、軽く振ってみた。


「……これが重めなんですか?」


 店主の眉が動いた。


「兄ちゃん、見た目より力あるな」


「少し鍛えてるので」


 横を見ると、フェリシアが何か言いたそうな顔をしていた。


 剣をもう一度振る。


 今までのものより刃が厚く、作りもしっかりしている。


「これにします」


「九万八千だぞ?」


「大丈夫です」


 ヴァルディス領を出てから、討伐依頼だけでなくベルガントへ来るまでの護衛依頼でも報酬を受け取ってきた。


 十万近く払えばかなり減るが、宿代や食事に困るほどではない。


 それに、戦っている最中に剣が折れる方が怖い。


「じゃあ決まりだな」


 代金を払い、新しい剣を腰へ下げる。


 古い剣も手入れをして予備として残すことにした。


「次はフェリシアさんですね」


「私は杖がありますよ?」


「防具はどうします?」


 フェリシアが自分の身体を見る。


 旅装の上には最低限の革当てがあるだけだ。


「昨日、ストーンリザードに狙われましたよね」


「でも、避けましたよ」


「毎回避けられるとは限らないでしょう」


「……それはそうですね」


 俺たちは隣の防具屋へ向かった。


 ◇


 フェリシアが選んだのは、軽い革製の胸当てと腕当てだった。


「三万六千ジェニー……」


 値札を見ながら少し迷っている。


「もっと丈夫なのもありますよ」


「重いのは嫌です。魔法を使うときに邪魔になりそうなので」


 胸当てを身につけ、身体をひねる。


 腕も何度か動かした。


「これなら大丈夫そうです」


「いいんじゃないですか」


「じゃあ、これにします」


 会計を済ませて店を出る。


「昨日はお金が貯まってきたと思ったのに、一気に減りましたね」


「また稼げばいいですよ」


「アレンさんならそう言うと思いました」


「実際、それしかないでしょう?」


「まあ、そうなんですけど」


 ◇


 次に向かったのは道具屋だった。


 明日もダンジョンへ入るつもりなので、必要なものを揃えておきたい。


 店内には回復薬、解毒薬、包帯、ロープ、ランタン、保存食などが並んでいる。


 フェリシアが赤い液体の入った小瓶を手に取った。


「回復薬、一本五千ジェニーです」


「結構しますね」


 近くにいた店員が説明する。


「浅い切り傷や打ち身ならかなり楽になります。ただ、深い傷や骨折まで治せるものではありません」


「なるほど」


 それなら持っておく意味はある。


 俺には《回復》があるが、一回使えば50Pかかる。


 軽い怪我にまで使う必要はない。


 それに、フェリシアが怪我をする可能性もある。


「二本ずつ買いません?」


「そうしましょう」


 回復薬のほかに、包帯、ロープ、保存食も買った。


「冒険者って、結構お金がかかりますね」


 店を出たところでフェリシアが言った。


「武器も防具も消耗しますからね」


「回復薬だって一本五千ですし」


「稼いでも使う理由があるってことですね」


 財布はかなり軽くなった。


 その代わり、昨日までより準備は整っている。


 ◇


「まだ昼ですね」


 フェリシアが空を見る。


「近場の依頼を一件やりませんか?」


「いいですよ」


 新しい剣がどのくらい違うのか、俺も確かめておきたい。


 ギルドへ戻り、午後からでも受けられる依頼を探した。


【ゴブリン四体討伐】


【場所:ベルガント北西部】


【報酬:8,000ジェニー】


「これなら近いですね」


「行きましょう」


 ◇


 ゴブリンを見つけるまで、それほど時間はかからなかった。


 街道から少し離れた林の中。


「ギギッ!」


 四体いる。


 錆びた剣や棍棒を持っていた。


「俺が前に出ます」


「はい」


 新しい剣を抜く。


 ゴブリンが一体、棍棒を振り上げて近づいてきた。


 踏み込む。


「はっ!」


 剣を斜めに振り下ろす。


「ギャッ!」


 手応えが違った。


 以前の剣なら骨に当たったところで重さを感じたが、今度の剣はそのまま刃が抜ける。


【10P獲得】


 二体目が横から来る。


 振り向き、剣を走らせた。


【10P獲得】


 三体目も一撃で倒す。


【10P獲得】


 最後の一体がフェリシアへ走った。


「《魔弾》!」


 一発目が肩へ入る。


 それでも止まらない。


「《魔弾》!」


 二発目。


 ゴブリンがよろめきながら剣を振った。


「っ!」


 フェリシアが後ろへ下がる。


 剣先が胸元をかすめた。


 ガッ、と革を擦る音がする。


「フェリシアさん!」


「大丈夫です!」


 フェリシアはそのまま杖を向けた。


「《魔弾》!」


 至近距離から光弾が命中する。


「ギャッ!」


 ゴブリンが倒れた。


 Pの表示は出ない。


 フェリシアが仕留めたからだ。


「怪我は?」


「ありません」


 胸当てには浅い傷が一本ついていた。


「……買っておいてよかったです」


「本当ですね」


 フェリシアが傷を指でなぞる。


「三万六千ジェニー、もう元を取った気がします」


「初日ですよ」


「初日だからこそですよ」


 ◇


 夕方、ギルドへ戻った。


 持ち帰った四体分の右耳を受付へ出す。


 受付嬢が一つずつ確認した。


「四体分ありますね。依頼達成です」


 報酬の八千ジェニーを受け取り、フェリシアと半分ずつに分ける。


 続いて視界に表示が現れた。


【依頼達成を確認しました】


【100P獲得】


【累計獲得P:2,330P】


【保有:220P】


 受付を離れようとしたところで、隣のカウンターから声が聞こえた。


「こちらの魔石と素材ですが、合計七万二千ジェニーになります」


「それで頼む」


 三人組の冒険者が、大きな魔石と牙のような素材をカウンターに並べていた。


 フェリシアもそちらを見ている。


「七万二千……」


 近くにいた受付嬢へ聞く。


「あれも西部ダンジョンですか?」


「はい。四階で採れた素材です」


「四階であれだけ……」


「毎回同じだけ稼げるわけではありませんよ。ただ、深くなるほど高値のつく魔石や素材は増えます」


「そうですか」


 朝の武器屋で見た値札を思い出す。


 百万ジェニーを超える剣。


 高級店には、一千万ジェニーを超えるものまであった。


「明日、三階をもう一度見てみましょうか」


 フェリシアに言う。


「いいですね。昨日はストーンリザードを倒してすぐ戻りましたし」


「三階を探索して、余裕がありそうなら四階の入口まで行ってみたいです」


「分かりました。でも危なそうなら戻りますよ」


「もちろんです」


 ◇


 その夜。


 宿の部屋で新しい剣を鞘から抜いた。


 十万ジェニー近くしただけあって、今日使った感触は今までの剣とはかなり違った。


 机の上には回復薬やロープも揃っている。


 明日は三階をもう一度探索する。


 その先へ行けるかどうかは、そこで決めればいい。


 累計獲得P=2,330P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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