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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第8章 アルスレイン王国

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第126話 ラグナ河を西へ

 朝食を終えた俺たちは、リゼルの冒険者ギルドへ向かった。


「アレンさん、お待ちしていました」


 受付へ行くと、従魔連れ去り事件を担当していた職員が出てきた。


「昨日の件ですが、こちらでも確認が取れました。依頼達成として処理させていただきます」


「ありがとうございます」


「当初お願いしていた調査だけでなく、施設の発見、従魔の救出、犯人の拘束までしていただきましたので、追加報酬も出ています」


「いくらですか?」


「当初の依頼報酬と追加報酬を合わせて、六百万ジェニーです」


「六百万……」


 思っていたより多い。


「それだけのことをしていただきましたから。従魔の被害をこれ以上増やさずに済んだことも大きいです」


「ありがとうございます」


 六百万ジェニーは三人で分けることにした。


 一人二百万ジェニー。


 今回の依頼だけで考えれば、かなり大きな収入だ。


 さらわれた従魔たちは、それぞれ治療を受けているらしい。


 ゼグも薬が抜ければ問題ないそうだ。


「すでに運び出された魔物については、こちらでも引き続き調べます」


「お願いします」


 アルスレインやドラン帝国につながる記録についても、上部組織へ報告してくれるという。


 犯人の取り調べや組織としての調査は、ここから先はギルドに任せるしかない。


【依頼達成】


【100P獲得】


【保有:10,730P】


【累計獲得P:340,440P】


 これでリゼルでやることは終わった。


 ◇


 その日のうちに、俺たちはバレインへ向けて出発した。


 来た時と同じ街道を北西へ進む。


「なんだか変な感じだね」


 二日目の昼。


 隣を歩いていたフェリシアが言った。


「何が?」


「この道、この前通ったばかりだから」


「ああ」


 リゼルへ来た時には、こんなに早く引き返すとは思っていなかった。


「もっとリゼルにいるつもりだったもんね」


 ルナが言う。


「ダンジョンにも行ってないし」


「そうだったな」


 到着した時には、しばらくリゼルで依頼を受けてもいいと思っていた。


 ところが従魔の連れ去り事件を調べることになり、その先でドラン側で強い魔物を集めている奴がいるらしい。


「でも、こういうのも冒険者らしくていいんじゃない?」


「どういうの?」


 フェリシアが聞く。


「最初から全部予定を決めないで、気になることがあったら行き先を変えるのもさ」


「確かに」


 フェリシアが笑った。


「私は好きだよ。そういう旅」


「私も」


 ルナも頷く。


「ずっと予定通りだったら、何が起きるか分からない楽しさもないしね」


「ワフッ!」


 少し前を歩いていたテリーが振り返った。


「テリーもそうだって」


「ワフッ!」


 しばらく歩いていると、今度はルナがテリーを見ながら口を開いた。


「ねえ」


「ん?」


「テリーのお父さんとかお母さんも、あの人たちに捕まってたりするのかな」


 俺とフェリシアもテリーを見る。


「キュ?」


 本人は何の話か分からないらしく、首を傾げた。


「どうだろうな」


 テリーがあの森で一匹だった理由は、まだ分かっていない。


 首には何かで繋がれていたような痕もあった。


 それに、あの施設では強い魔物や珍しい魔物を狙って集めていた。


「可能性はあるかもしれないね」


 フェリシアが言った。


「うん」


 ルナがテリーの頭を撫でる。


「どこかで元気にしてるといいね」


「ワフッ!」


 テリーは嬉しそうに尻尾を振った。


 ◇


 数日後。


「戻ってきたな」


 見覚えのある城壁が見えてきた。


 交易都市バレインだ。


 町へ入ると、さっそく声が飛んでくる。


「あっ、テリー!」


「戻ってきたのか!」


「ワフッ!」


 テリーも嬉しそうに返事をした。


「すっかり人気者だね」


 フェリシアが笑う。


「テリーだからね」


 なぜかルナが得意そうだ。


 アルスレイン行きの次の渡し船は翌朝だった。

 

 宿を取った後、俺たちは従魔組合へ向かった。


 バレインで一つだけ、途中になっていたことがある。


「また来ました」


「おや。戻ってきたんですね」


 以前教えてもらった職員も、俺たちを覚えていた。


「従魔契約の続きを教えてもらえますか?」


「もちろんです」


 前回は感応石を使い、強すぎる魔力を細く安定して流すところまで練習した。


 今回はその続きだ。


 職員の指示通り、感応石へ細く魔力を流す。


「ずいぶん安定しましたね」


「前より慣れました」


「この感覚を忘れなければ大丈夫です。あとは契約したい魔物が、あなたの魔力を受け入れてくれるかどうかです」


「無理やりはできないんですよね?」


「ええ。契約はお互いの同意があって初めて成立します」


 俺も一通りの手順を覚えた。


「私もやってみていいですか?」


 フェリシアが感応石を受け取る。


「もちろんです」


 フェリシアが石へ手を添えると、すぐに淡い光が灯った。


「……できた」


「早くない?」


「非常に安定していますね」


 職員も感心している。


 こういう繊細な魔力の扱いなら、俺より得意だ。


「フェリシアの方が上手だね」


 ルナが笑う。


「まあ、それは認める」


「そんなことないよ」


 そう言いながら、フェリシアは少し嬉しそうだった。


 これで俺もフェリシアも、従魔契約に必要な手順は身につけた。


 あとは相手が受け入れてくれるかどうかだ。


「二人とも従魔を探すの?」


 ルナが聞く。


「無理に探すつもりはないよ」


 フェリシアも頷いた。


「私も。旅の途中で出会えたら、それでいいかな」


「そうだな」


 テリーだって、探して見つけたわけじゃない。


 いつか相性のいい魔物と出会うことがあれば、その時に考えればいい。


 ◇


 翌朝。


 今日の渡し船でアルスレインへ渡ることにした俺たちは、朝から買い出しへ出た。


「時間もあまりないし、手分けしようか」


 フェリシアの提案で、フェリシアは魔道具店へ。


 俺とルナは市場へ向かう。


「なんで私がアレンと一緒なの?」


「ルナの金、俺の《収納》に預けてあるだろ」


「あ、そっか」


 旅で稼いだ金の一部は、盗まれないよう俺の《収納》に入れてある。


「じゃあ、まず食料だな」


 パン。


 干し肉。


 保存の利く野菜。


 水。


 テリーの肉も忘れない。


「あとロープも少し追加しておくか」


「まだあるよね?」


「あるけど予備があった方がいいだろ。それから布と油と、薬ももう少し――」


「アレン」


「何?」


「買いすぎ注意」


「《収納》に入るから大丈夫だぞ」


「入るかどうかじゃなくて、必要かどうかの話」


「使うかもしれないだろ」


「この前もそう言ってなかった?」


 言った気がする。


「今回は水と食べ物を多めにして、それ以外は必要になったら向こうで買えばいいでしょ」


「でも国が変わるし――」


「買・い・す・ぎ・注・意」


「……分かったよ」


 ロープを戻した。


「アレンって、こういうところ心配性だよね」


「準備して困ることはないからな」


「買いすぎてるから止めてるんだけど」


「あっ」


 ルナが突然足を止めた。


「どうした?」


 視線の先には、小さな露店があった。


 色とりどりのアクセサリーが並んでいる。


「ちょっと見ていい?」


「いいよ」


 ルナが一つのイヤリングを手に取った。


 淡い青色の小さな石がついている。


 光が当たると、透明な石の中で色が柔らかく揺れた。


「綺麗」


 ルナが髪を耳にかけ、イヤリングを耳元へ当てる。


「アレン、どう?」


 笑顔でこっちを見るルナはなんか色っぽかった。


「に、似合うよ」


「本当?」


「ああ」


 薄い金色の髪にもよく合っている。


 ルナはもう一度イヤリングを眺めた。


「じゃあ、買おうかな」


「五万ジェニーだよ」


 店主が言う。


「結構するな」


「でも、気に入ったから」


 今の俺たちなら、五万ジェニーで困ることはない。


 それにルナ自身が稼いだ金だ。


「じゃあ、これください」


「毎度あり」


 《収納》からルナの金を取り出して渡す。


 ルナは買ったばかりのイヤリングを、その場で耳につけた。


「どう?」


「だから似合ってるって」


「そっか」


 嬉しそうに笑う。


「じゃあ買い物の続きね」


「薬屋くらいは――」


「買いすぎ注意」


「まだ何も言ってないだろ」


「言うと思ったから」


 先に止められた。


 ◇


 待ち合わせ場所へ戻ると、フェリシアもすぐにやってきた。


「お待たせ」


「何買った?」


「魔力回復薬と、いくつか予備の薬。アルスレインでも同じものが買えるか分からないから」


「さすがフェリシア」


「必要な分だけね」


 ルナが俺を見る。


「聞いた?」


「聞いたよ」


「何?」


「アレンがまたいろいろ買おうとしてたの」


「ああ……」


 フェリシアがすぐ納得した。


「なんでその反応なんだよ」


「あれ?」


 フェリシアの視線がルナの耳で止まる。


「それ、買ったの?」


「うん。どう?」


 ルナが少し髪を上げた。


「似合ってる。綺麗だね」


「でしょ?」


「結構いいやつ?」


「五万ジェニー」


「いいの買ったね」


「アレンも似合うって言ってくれたから、買っちゃった」


「へえ」


 フェリシアが俺を見る。


「何?」


「別に」


 二人が笑う。


 何がおかしいのか分からなかった。


 ◇


 買い物を終えた俺たちは、そのまま冒険者ギルドへ向かった。


「アルスレインへ行くんですけど、ジェニーの両替ってどこでできますか?」


「ええ。バレインはアルスレインとの交易が多いですからね」


 それなら助かる。


「交換比率は?」


「十万ジェニーで金貨一枚、千ジェニーで銀貨一枚、十ジェニーで銅貨一枚です」


 金貨一枚が銀貨百枚。


 銀貨一枚が銅貨百枚ということになる。


「全部替える?」


 ルナが聞く。


「いや。ジェニーも残しておいた方がいいだろ」


 またセルヴァンやミラディアへ戻ることもある。


 俺たちはそれぞれ、手持ちのジェニーの半分ほどをアルスレインの貨幣へ替えた。


 金貨。


 銀貨。


 銅貨。


 同じ金でも、見慣れたジェニーとはまったく違う。


「こういうの見ると、本当に別の国へ行く感じがするね」


 フェリシアが金貨を眺める。


「楽しみ?」


「うん」


「私も」


 ルナも笑った。


 ◇


 その日の昼過ぎ。


 俺たちはバレインを西へ抜け、ラグナ河の船着き場へ来ていた。


 目の前には、対岸が霞んで見えるほど大きな河が広がっている。


 少し前は、向こうからこちらへ渡ってきた。


 今度は逆だ。


「アルスレイン行き、もうすぐ出るぞ!」


 船員の声が響く。


「行こうか」


「うん」


「ワフッ!」


 三人と一匹で渡し船へ乗り込む。


 やがて綱が外され、船がゆっくり岸を離れた。


 バレインの町が少しずつ遠ざかっていく。


 俺たちはラグナ河を渡り、アルスレイン王国へ向かった。


【保有:10,730P】

【累計獲得P:340,440P】



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― 新着の感想 ―
「でも国が変わるし――」「買・い・す・ぎ・注・意」 パーティの資金じゃなく、アレン個人のお金だったら、好きに使わせたらいいと思う。どうせ、使い道のないお金でしょう。
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