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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第7章 セルヴァン王国

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第123話 制圧

「逃がすな。出口を塞げ」


 男の声で、周囲の動きが変わった。


 さっきまで好き勝手に動いていた連中が、通路を塞ぐように広がっていく。


「魔法使いから押さえろ!」


 男がフェリシアを指した。


「近づけ! 魔法を使わせるな!」


 判断は速い。


 フェリシアが危険だと分かっているらしい。


「行け!」


 男たちが一斉に動いた。


「フェリシア!」


「大丈夫!」


 返事と同時に光が走る。


「《魔弾》」


 ドンッ!


「うわっ!」


 先頭の男が持っていた剣が手元から弾き飛ばされた。


 だが、後ろの連中は止まらない。


 二人が左右へ分かれ、さらに別の男がその間を抜けてくる。


 さっきまでの連中より動きがいい。


 どうやら指示を出している男が戻ったことで、少しはまともに連携できるようになったらしい。


「グルアアアッ!」


「こっちも何とかしないとな」


 俺の前では、暴走した魔物がまだ立ち上がろうとしている。


 口の端には血。


 前脚にも傷がある。


 何度も鉄格子へ身体をぶつけ、自分で傷を増やしていた。


 痛みを感じていないのか、それでも俺を睨んでいる。


「……駄目だな」


 できるだけ傷つけずに止めようとしてきた。


 でも、このままじゃ逆だ。


 押さえれば暴れる。


 力を緩めれば起き上がる。


 そして、自分の身体が壊れるまで暴れ続ける。


「無傷で助けるのは諦めよう」


 多少の怪我で済ませて、今ここで止める。


 その方がいい。


「ごめんな」


 俺は魔物から手を離した。


「グオオオオッ!」


 待っていたように跳ね起きる。


 石床を蹴った。


 巨体が一気に迫る。


 さっきまでなら、横へ力を逃がしていた。


 でも、今度は逃がさない。


 真正面から両腕を出す。


 ドンッ!!


 地下全体へ響くほどの衝撃。


 それでも俺の足は動かなかった。


「グッ!?」


 魔物の方が止まる。


 前脚が石床を掻いた。


 それでも一歩も前へ出られない。


「やっぱり、これくらい力を入れれば止まるのか」


 さっきまでは相手の身体を壊さないように、俺の方から力を逃がしていた。


 今回は違う。


「グルアアアッ!」


 魔物が爪を振るう。


 振り下ろされた前脚を掴んだ。


「っと」


 振り切らせない。


 そのまま前脚を引き、重心を崩す。


 魔物の巨体が傾いた。


 腰を入れる。


 ドンッ!


 身体ごと石床へ転がした。


「グルッ!」


 それでも起き上がろうとする。


「まだ動くのか」


 やっぱりすごい。


 普通ならこれで終わっている。


 薬のせいで、自分の限界すら分からなくなっているんだろう。


 魔物が頭を振り、また立とうとする。


「だったら」


 俺は頭の位置を見る。


 こめかみは危ない。


 首も駄目だ。


 殺すつもりはない。


 気絶するだけでいい。


「これで寝てくれ」


 顎先を狙う。


 拳を短く振り抜いた。


 ドンッ!


「グッ……」


 魔物の頭が揺れる。


 巨体から力が抜けた。


 そのまま石床へ倒れ込む。


「……」


 起きてこない。


 胸は動いている。


「よし」


 呼吸もある。


「ちょっと怪我させたけど……」


 これでいい。


 これ以上、自分の身体を傷つけることはない。


 ◇


「囲め!」


 フェリシアの前では、男たちが距離を詰めていた。


「一斉に行け!」


 三人が同時に動く。


 一人が正面。


 左右から二人。


「《魔弾》」


 ドンッ!


 正面の男の剣が飛ぶ。


「今だ!」


 右から別の男が飛び込む。


 剣を横薙ぎに振った。


 フェリシアが頭を少し下げる。


 刃が髪の上を抜けた。


「なっ――」


 そのまま一歩。


 フェリシアが男の懐へ入った。


 ロッドを両手で握る。


「えいっ!」


 ゴンッ!!


「ぐあっ!」


 男の身体が浮いた。


 二、三歩ではない。


 そのまま後ろにいた男まで巻き込み、二人まとめて石床へ転がる。


「……」


 周囲が止まった。


 フェリシア本人も、自分が吹き飛ばした男を見る。


「ちょっと強かったかな」


 魔法を封じるために距離を詰める。


 普通の魔法使いなら正解だ。


 でも、《共有》で身体能力まで上がっているフェリシアには逆だった。


「何してる!」


 さっき指示を出していた男が怒鳴った。


「下がれ!」


 男自身が前へ出る。


 動きが速い。


 他の連中とは明らかに違う。


 低い姿勢から一気に距離を詰めた。


 フェリシアへ剣を突き出す。


「フェリシア!」


 俺が声を上げるより早く。


 フェリシアは身体を半歩ずらしていた。


 剣先が服の横を抜ける。


「なっ!?」


 男の顔が変わった。


 速い。


 きっと普通の冒険者なら反応できない。


 でも、今のフェリシアには見えている。


 男が剣を引く。


 その前にフェリシアの手が動いた。


 ロッドを振り上げる。


 ゴンッ!!


「ぐっ!」


 脇腹。


 男の身体がくの字に折れた。


 それでも踏ん張る。


「まだだ!」


 無理やり剣を振るう。


 フェリシアは後ろへ下がらなかった。


 ロッドを横に構える。


 ガキンッ!


 ミスリルのロッドと剣がぶつかった。


「っ!?」


 押されたのは男の方だった。


 一歩。


 二歩。


 後ろへ下がる。


「馬鹿な……」


 男が自分の剣を見る。


「魔法使いだろ……?」


「そうだけど?」


 フェリシアが不思議そうに答える。


 男が歯を食いしばり、もう一度前へ出た。


「うおおっ!」


 上段からの斬撃。


 フェリシアが横へずれる。


 空振り。


 そのまま。


「ごめんなさい!」


 ゴンッ!!


 ロッドが男の腹へ入った。


「ぐあっ!」


 身体が浮く。


 さらに一歩踏み込む。


 男が顔を上げるより早く。


 フェリシアのロッドが肩口へ振り下ろされた。


 ゴンッ!


「がっ……」


 男が膝をつく。


 そのまま前へ倒れた。


 動かない。


「……」


 地下が静かになった。


 周りの男たちが、倒れた男とフェリシアを交互に見る。


 フェリシアはロッドを持ったまま首を傾げた。


「もうやめませんか?」


 誰も答えない。


 俺も魔物のそばから立ち上がる。


「まだやるなら相手するけど」


 男たちが今度は俺を見る。


 さっきまで暴れていた大型魔物。


 鉄格子を壊し、石床まで砕いていた魔物が、俺の後ろで気絶している。


 そして、自分たちの中で一番強かった男はフェリシアにロッドで殴り倒された。


 カラン。


 一人が剣を落とした。


「……降参する」


 続いてもう一人。


「俺もだ」


「やめる」


 次々と武器が床へ置かれる。


「最初からそうしてくれればよかったのに」


 俺の言葉にフェリシアも頷いた。


 ◇


 《収納》からロープを取り出して、男たちを縛っていく。


「息は?」


「あるよ」


「よかった」


 誰も殺してはいない。


 最後の一人を拘束した時。


 階段の方から足音が聞こえた。


「誰か来る」


 フェリシアがすぐロッドを構える。


 俺も階段を見る。


「アレン!」


「ルナ?」


 階段からルナが降りてきた。


 その後ろ。


「ワフッ!」


 テリーもいる。


「二人とも大丈夫!?」


「ああ」


「大丈夫だよ」


 ルナが駆け寄ろうとして止まった。


 地下を見渡す。


 床には縛られた男たち。


 気絶している男。


 さらに少し離れた場所には、暴走していた魔物が倒れている。


 そして俺とフェリシアは無傷で立っていた。


「……終わったの?」


「うん」


 フェリシアが頷く。


「今終わったところ」


「もう?」


「まあ……」


 俺は気絶している魔物を見る。


「ちょっと時間かかったけど」


「十分早いよ」


 ルナが男たちを見る。


 次に魔物を見る。


 最後に俺たちを見る。


「急がなきゃって思って走ってきたんだけど……」


「ごめん」


「なんで謝るの?」


 ルナが呆れたように笑った。


「でも、無事でよかった」


「ワフッ!」


 テリーもルナの横から声を上げる。


 その直後。


 テリーが足を止めた。


「クゥン……」


 耳が伏せられている。


 地下の檻。


 拘束された従魔たち。


 棚に並ぶ薬品。


 机の上の針。


 それらを順番に見ていた。


「テリー」


 ルナがすぐにしゃがむ。


「大丈夫だよ」


「キューン……」


 テリーが身体を寄せる。


「もう何もされないからね」


 ルナが抱き寄せた。


 やっぱり、この場所にある何かを知っているのかもしれない。


「ルナ」


「うん?」


「ちょっと診てほしい」


 さっき気絶させた魔物を指す。


「薬を打たれて暴れてたんだ。止める時に少し怪我させた」


「分かった」


 ルナがテリーを撫でてから、魔物のそばへ向かう。


 呼吸。


 目。


 口元。


 脚。


 頭。


 一つずつ確認していく。


「命に関わる怪我はなさそうだよ」


「よかった」


「口と脚に傷があるのと、頭も少し腫れてるけど……」


「最後に殴って気絶させた」


「薬が効いたまま暴れ続けるよりはよかったと思う」


「俺もそう判断した」


「ただ、薬については私じゃ分からないな」


「ギルドで調べてもらおう」


「うん」


 ルナが立ち上がる。


「あ、それならもうすぐ来るよ」


「ギルドの人?」


「うん。中から大きな音がし始めて、見張りたちも慌てて中へ入っていったから、連絡役の人に応援を呼んでもらったの」


「さすがルナ」


「二人だけじゃ危ないと思ったんだけど……」


 ルナが床に転がる男たちを見る。


「必要なかった?」


「いや、助かるよ」


 首を振る。


「この人数を連れて帰るのも大変だし、捕まってる従魔もいる」


 ここにはゼグらしきブラックハウンドを含め、何匹もの従魔が残されている。


 薬品。


 実験記録。


 まだ調べていない部屋もある。


 俺たちだけで全部やる必要はない。


「まずは、この子たちを助けよう」


「うん」


 ルナが頷く。


 テリーも、その横から檻を見つめていた。


 遠くから複数の足音が近づいてくる。


 ギルドの応援が到着したようだ。


 戦いは終わった。


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【累計獲得P:340,340P】



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