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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第7章 セルヴァン王国

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第118話 リゼル

 バレインを出て、街道を南東へ進む。


 本当なら乗合馬車を使うつもりだった。


 でも、リゼルまで直接向かう便はちょうど出たばかり。


 次は数日後らしい。


「歩こうか」


「そうだね」


「四日くらいなら平気だよ」


「ワフッ!」


 一番嬉しそうなのはテリーだった。


 ◇


 バレイン周辺には、まだ荷馬車や旅人の姿が多かった。


 でも半日も歩けば、それも少なくなっていく。


 街道の両側には緩やかな丘。


 その向こうには、淡い緑の草原が広がっていた。


 風が通るたび、草の穂が波のように揺れていく。


 遠くでは白い鳥が何羽か空を横切っていた。


「綺麗だね」


 フェリシアが言う。


「うん」


 馬車なら、もっと早く着く。


 でも、こんな景色を眺めながら歩く旅も悪くない。


「ワフッ!」


 テリーが突然走り出した。


「テリー?」


 黄色い蝶を追いかけている。


 蝶が右へ飛べば右へ。


 左へ飛べば左へ。


 何度か跳びつくが、まったく届かない。


「何してるんだ、テリー」


「楽しそうだからいいんじゃない?」


 やがて蝶が高く舞い上がった。


 テリーが立ち止まり、見上げる。


「クゥン……」


「残念だったね」


 ルナが頭を撫でた。


 すると、別の虫が目の前を横切った。


「ワフッ!」


「あ、また行った」


 ルナが慌てて追いかける。


 それを見て、フェリシアと笑った。


 ◇


 一日目の夜。


 街道から少し離れた場所で野営する。


 焚き火を起こし、簡単な食事を済ませた。


「見張りはどうする?」


 フェリシアが聞く。


「俺がやるよ」


「一人で?」


「朝になったら《全回復》すればいいから」


 ルナが眉を寄せる。


「でも、Pを使うんでしょ?」


「五百P」


「結構使うじゃん」


「まあね」


 今の保有Pは一万二千十。


 三晩なら千五百P。


 安くはない。


 でも二人がしっかり眠れるなら、その方がいい。


「俺は回復できるけど、二人はできないから」


「……じゃあお願いするけど、何かあったら起こしてね」


「もちろん」


 二人が眠ったあと、焚き火の前へ座る。


 薪の弾ける音が、静かな夜に小さく響く。


 昼間は遠くまで続いていた草原も、今は闇の中。


 代わりに頭上には、町では見えなかった星が広がっている。


 少し離れたところでは、テリーがルナの毛布にくっついて眠っていた。


 ずいぶん旅らしくなったな。


 そんなことを考えながら夜が明けるまで火の番を続けた。


 ◇


 翌朝。


 さすがに眠い。


 肩にも重さが残っている。


 《会員》を開く。


【保有:12,010P】


【全回復 500P】


 使用する。


【500Pを消費しました】


【全回復しました】


【保有:11,510P】


「……やっぱり便利だな」


 眠気が消えた。


 身体の重さもない。


「本当に元気になってる」


 起きてきたルナが不思議そうに俺を見る。


「五百Pするだけはあるよ」


「毎日使うには高いね」


「それは思う。気持ち的にはベッドで寝たいし」


 だから普段はちゃんと寝る。


 宿がない時だけは仕方ない。


 ◇


 二日目の昼。


 街道脇の林から魔物が飛び出した。


 三体。


「来るよ!」


 ルナが弓を構える。


「ワフッ!」


 テリーもすぐに反応したが、勝手には飛び出さない。


 俺が剣を抜くと、横へ離れる。


 フェリシアが杖を向ければ、その先も空ける。


 一頭がルナへ走った。


 テリーが素早く横へ回り込む。


「ガウッ!」


 吠えられた魔物がテリーへ向きを変えた。


 そこへルナの矢。


 一撃で倒れる。


 もう一頭はフェリシアの《魔弾》。


 最後の一頭へ俺が踏み込み、剣を振る。


 倒した。


【40P獲得】


「ワフッ!」


「テリー、上手だったよ!」


 ルナに褒められ、テリーが嬉しそうに尻尾を振る。


 少し前まで俺の剣の前を走り回っていたのが嘘みたいだ。


 その日のうちに、さらに二度魔物に襲われた。


 どれも大した相手ではなく俺自身も三体を仕留めた。


【合計120P獲得】


 もちろん、使える素材は《収納》へ入れておく。


 ◇


 三日目。


 昼過ぎ。


「待って」


 先を歩いていたルナが足を止めた。


「どうした?」


 耳を林の方へ向けている。


「水の音がする」


「川?」


「多分」


 街道から外れ、木々の間へ入った。


 葉の隙間から落ちる光を追うように進んでいくと。


 小さな川が流れていた。


 水は澄み、底に転がる白い石まで見える。


 頭上では枝葉が重なり、街道からこちらの姿は見えそうにない。


「ちょうどいいね」


 ルナとフェリシアが顔を見合わせた。


「水浴び?」


「うん」


「じゃあ俺は向こうにいるよ」


 少し離れた林の入口へ戻る。


 念のため《魔力感知》で周囲も確認しておく。


 しばらくして。


「アレン、もういいよ!」


 声が聞こえた。


 川へ戻ると。


「キューン……」


 びしょ濡れのテリーがいた。


「テリーも洗ったの?」


「ちょっと汚れてたから」


 ルナが濡れた毛を撫でている。


「綺麗になったね」


「キューン……」


 本人はあまり嬉しそうじゃない。


「水、嫌だった?」


「入るまでは平気だったんだけど――」


 その時。


 テリーが身体を大きく震わせた。


 ぶるぶるぶるっ。


「きゃっ!」


「テリー!」


 水滴が二人へ飛ぶ。


「ワフッ!」


 本人だけはすっきりした顔だ。


「もう!」


 そう言いながら、ルナも笑っている。


 木漏れ日が川面で細かく揺れる。


 先を急ぐだけが旅じゃない。


 こんな寄り道も悪くなかった。


 ◇


 二日目と三日目の夜も、俺が見張りを引き受けた。


 そして翌朝。


 それぞれ《全回復》を使用する。


 三泊で。


【《全回復》使用:3回】


【消費P:1,500P】


 さすがに大きい。


 道中で獲得したポイントより、はるかに多い。


 便利だからといって、気軽に使うものじゃないな。


 ◇


 四日目。


 昼過ぎにセレド公爵領を抜けた。


 街道脇に立つ境界石を越える。


 ここから先はオルディス伯爵領。


「入ったね」


「うん」


 境界を越えたからといって、景色が急に変わるわけじゃない。


 同じ空。


 同じ街道。


 畑の向こうには林が続いている。


 知らない土地へ入ったと思うだけで、不思議と周囲が新しく見えた。


 さらに数時間。


 夕日が畑を赤く照らし始めた頃、前方に石壁が見えた。


「あれかな?」


 フェリシアが指を差す。


「多分」


 リゼル。


 バレインほど大きくはない。


 でも、この町が普通の地方都市とは少し違うことに気づいた。


 剣を背負った冒険者。


 泥のついた鎧。


 魔物の素材を積んだ荷車。


 通りには武具屋や薬屋が並んでいる。


「冒険者が多いね」


 ルナが周囲を見る。


「バレインとは全然違うな」


 向こうは商人と荷馬車が目についた。


 ここは武器を持つ人間の方が多い。


 何か理由がありそうだ。


 まずは従魔も泊まれる宿を探し、部屋を取る。


 そのあと、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。


 ◇


 リゼルの冒険者ギルドも賑わっていた。


 依頼掲示板を見る。


「……何これ」


 ルナが呟く。


【地下第二階層・魔石採取】


【地下第四階層・アイアンリザード討伐】


【地下第五階層・護衛依頼】


【未探索区画調査】


 ダンジョン。


 ダンジョン。


 またダンジョン。


「この町、ダンジョンがあるの?」


「みたいだね」


 フェリシアも興味深そうに依頼書を見ている。


 俺も気になる。


 でも、ここへ来た目的は別だ。


「あった」


 ルナが一枚の依頼書を指す。


【従魔連れ去り事件・調査】


【推奨ランク:B以上】


「Bランク?」


 聞いていたより高い。


 依頼書を持って受付へ向かう。


「すみません。この依頼について聞きたいんですが」


 受付嬢が紙を見る。


「従魔の連れ去り事件ですね」


「どうしてBランクなんですか?」


「最初はもっと低いランクの調査依頼でした」


「最初は?」


「はい。ですが数日前、Bランク冒険者が連れていた従魔まで行方不明になったんです」


「強い従魔だったんですか?」


「戦闘にも参加していたそうです。少なくとも、簡単に連れ去れるような従魔ではありません」


 フェリシアと顔を見合わせる。


「盗賊などの集団が関わっている可能性もあります。

 従魔を捕らえる手段を持っているとすれば、相手にかなり腕の立つ者がいることも考えられます」


「それでBランクに」


「はい」


 ルナが依頼書を見る。


 そして、隣にいるテリーへ視線を落とした。


「アレン」


「うん」


「これ、受けよう」


 迷う理由はなかった。


「そのつもり」


「私も賛成」


 フェリシアも頷く。


 依頼書を受付へ差し出す。


「この依頼を受けます」


「分かりました」


 四日かけてたどり着いたリゼル。


 ここでテリーの過去につながるかもしれない調査が始まる。


【保有:10,630P】

【累計獲得P:340,340P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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