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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第7章 セルヴァン王国

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第116話 テリーの一週間

 それから一週間。


 俺たちはバレインに滞在しながら、毎日のように冒険者ギルドの依頼を受けた。


 選ぶのはDランクが中心。


 ウッドボア。


 フォレストウルフ。


 角ウサギ。


 街道近くに現れた魔物の討伐だ。


 俺たち三人にとって、それほど難しい依頼ではない。


 今はテリーを戦いに慣れさせる方が大事だった。


 ◇


 二日目。


「テリー、待って」


「ワフッ!」


 ルナの隣で止まる。


 前方には一頭のウッドボア。


「まだだよ」


「クゥン……」


 行きたそうに前脚が動く。


 それでも飛び出さない。


 ルナが弓を構えた。


 するとテリーが、少し横へ移動する。


「あ」


 昨日は何度言っても射線へ入っていた。


 それが今日は、自分から避けた。


 弓弦が鳴る。


 矢がウッドボアの首元へ突き刺さった。


「もういいよ!」


「ワフッ!」


 テリーが駆け出す。


「ちゃんと待てたね」


 ルナに頭を撫でられ、尻尾を大きく振った。


 褒められていることは、もう完全に分かっているらしい。


 ◇


 さらに数日が経つ。


 テリーは、俺たちの動きまで見るようになった。


 俺が剣を抜けば、前へ出ない。


 フェリシアが杖を構えれば、その先を横切らない。


 そして。


「テリー、右から!」


「ワフッ!」


 白い身体が木々の間を駆ける。


 前方にいたウッドボアが、テリーを警戒して身体の向きを変えた。


 その横腹がルナへ向く。


「そのまま!」


「ワンッ!」


 テリーがさらに横へ回る。


 ウッドボアもつられて動いた。


 弓弦が鳴る。


 矢が首元へ突き刺さった。


 一撃。


「やった!」


「ワフッ! ワフッ!」


 テリーが嬉しそうに戻ってくる。


「テリー、上手だったよ!」


 ルナに抱きしめられると、今度は顔を舐め始めた。


「ちょっと、くすぐったいって!」


「覚えるの早いね」


 フェリシアが笑う。


「最初は邪魔しないように教えてただけなのに」


 いつの間にか、テリーの方から俺たちの動きを見て、合わせるようになっていた。


 ◇


 変わったのは戦闘だけじゃない。


 最初の頃。


 冒険者ギルドへ入る時は、いつもルナに抱かれていた。


 人が近づけば身体を固くし、声をかけられれば胸元へ顔を隠す。


 三日目。


「お、今日も来たな」


 何度か顔を合わせていた冒険者が声をかけてきた。


 テリーはルナの後ろへ隠れる。


 でも今日は、顔だけ出した。


「無理に近づかないであげてね」


 ルナが言う。


「分かってるよ」


 男は少し離れたところへ、味のついていない干し肉を置いた。


「ほら。ここに置いとくぞ」


 テリーがルナを見る。


「大丈夫だよ」


 少し待ってから、ゆっくり近づく。


 匂いを嗅いで。


 ぱくっ。


「ワフッ!」


「食べた!」


 なぜか男の方が嬉しそうだった。


 それから本当に少しずつ、テリーはこの町の人間を怖がらなくなっていった。


 ◇


 一週間が経つ頃には。


「テリー!」


「今日も来たな!」


「ワフッ!」


 自分の足でギルドへ入っていく。


 尻尾も下がっていない。


 毎日顔を合わせる受付嬢や冒険者なら、名前を呼ばれると嬉しそうに返事をする。


「すっかり人気者だね」


 フェリシアが笑った。


「ワフッ!」


 本人もまんざらではなさそうだ。


「テリー、ちょっと得意になってない?」


「ワフッ!」


 ルナが笑う。


 ただ、知らない冒険者が急に手を伸ばすと。


「ウゥ……」


 まだ少し警戒する。


「大丈夫。嫌なら触らせなくていいからね」


 ルナがすぐ隣にしゃがむ。


「クゥン」


 その声を聞くと、テリーも落ち着いた。


 一週間前。


 この建物へ入るだけで震えていた。


 それを考えれば、大きな変化だった。


 ◇


 俺との距離も、少しだけ縮まった。


 依頼を終えた帰り道。


「テリー」


 干し肉を一切れ差し出す。


 以前なら、これだけでルナのところへ逃げていた。


 今日は。


「…………」


 俺を見る。


 肉を見る。


 また俺を見る。


「取ったりしないよ」


 テリーが鼻先を近づける。


 匂いを嗅ぎ。


 ぱくっ。


「……食べた」


「ワフッ」


「ようやくか」


 後ろで二人が笑っている。


「よかったね、アレン」


「長かった」


 そのまま頭も撫でてみようとする。


 すると。


 すっ。


 一歩だけ離れた。


「そこはまだ駄目か」


「ワフッ」


 でも、逃げてはいかない。


 前よりはずっといい。


 ◇


 俺たち自身も、一週間きちんと冒険者として働いた。


 受けた依頼は七件。


 依頼を達成するたびに百ポイント。


 それだけで七百ポイント。


 さらに、俺自身が倒した魔物から合計七百二十ポイントを獲得した。


 一週間で合計千四百二十ポイント。


【保有:12,010P】


【累計獲得P:340,220P】


 ジェニーも増えた。


 依頼報酬。


 討伐した魔物の肉。


 毛皮。


 牙。


 角。


 使える物は、できるだけ《収納》へ入れて持ち帰った。


「《収納》って、本当に冒険者向きだね」


 ルナが言う。


「今さら?」


「便利なのは分かってたよ。でも、大きな魔物を丸ごと持って帰れるのって、すごいことなんだなって」


 確かに。


 普通なら重さや運搬方法まで考えないといけない。


 俺たちには、それがない。


 一週間。


 七件の依頼報酬と素材の買い取りを合わせて、パーティー全体で約二百万ジェニー。


 Dランク中心でも、毎日積み重ねれば馬鹿にならない。


 ◇


 その夜。


 宿へ戻る。


 昼間は魔物を追い。


 ギルドでは名前を呼ばれるたび、少し得意そうに歩いていたテリーは。


「キューン」


 当然のようにルナのベッドへ上がった。


「はいはい」


 ルナが抱き寄せる。


「今日も頑張ったね」


「キューン」


 胸元へ顔を擦りつける。


「外ではずいぶん堂々としてきたのに」


 俺が言う。


「いいの」


 ルナが笑った。


「ここでは甘えていいんだから」


「ワフッ」


 テリーは満足そうに尻尾を一度振り、目を閉じた。


 一週間。


 戦い方を覚えた。


 人間にも少しずつ慣れた。


 俺たちの動きも見るようになった。


 最初は、三人の旅に一匹増えただけ。


 そんな感覚だった。


 でも、今はもう違う。


 テリーもちゃんと、俺たちの仲間だった。


【保有:12,010P】

【累計獲得P:340,220P】


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
あれ? 前話でテリーがあっさり共有を享受してたから、いつの間にかアレンを受け入れてたんだなぁって思ってた 魔物の場合は本人の承諾不要なのかな? 獣魔契約より簡単ね笑
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