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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第7章 セルヴァン王国

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115/200

第115話 初めての狩り

 西街道沿いの森へ入る前。


 ルナの隣を歩くテリーを見て、ふと思った。


「そういえば」


「どうしたの?」


「テリーも《共有》に入れられるかな」


「テリーを?」


「うん」


 今の《共有》は三人まで登録できる。


 フェリシア。


 ルナ。


 そして、最後の一枠。


「試してみる」


 テリーへ意識を向ける。


 《共有》。


 ――登録できた。


「入った」


「本当?」


 能力を確認する。


【筋力:28+374】


【耐久:31+454】


【敏捷:51+564】


【魔力:58+702】


「どう?」


「敏捷と魔力は、元のルナとほとんど同じくらい」


「えっ、子供なのに私と同じくらい?」


「筋力と耐久はテリーの方が少し高い」


 まだ幼体なのに、これだけある。


 成長したらどうなるんだろう。


 しかも《共有》された今は、


 筋力四百二。


 耐久四百八十五。


 敏捷六百十五。


 魔力七百六十。


 Dランクの魔物が相手なら十分すぎる能力だ。


 その分、俺の身体への負担もわずかに増えた。


 これで《共有》の枠は全部埋まったことになる。


「テリー、変な感じしない?」


「ワフッ!」


 尻尾を振っている。


 本人は元気そうだ。


「じゃあ行こう」


 ◇


 森へ入ってしばらくすると、ルナが足を止めた。


「いた。一頭」


 木々の向こうで、大きな猪のような魔物が地面を掘っている。


 少し近づき、《鑑定》する。


【ウッドボア】


【森林地帯に生息する猪型魔物】


【突進力に優れ、鋭い牙を持つ】


 依頼対象だ。


「まず私がやるね」


 ルナが弓を構え、矢をつがえる。


 その瞬間。


「ワフッ!」


「あっ!」


 テリーが飛び出した。


「テリー!」


 ルナが慌てて弓を下ろす。


 完全に射線の中だ。


 ウッドボアもテリーに気づいた。


「ブモォッ!」


 地面を蹴り、突進してくる。


 俺も剣を抜いて前へ出た。


 だが、テリーがウッドボアの周りを走り回り始める。


「危なっ!」


 これでは剣を振れない。


 テリーがどこへ動くか分からないからだ。


「テリー、そこにいたら撃てないよ!」


 ルナも困っている。


「もう!」


 フェリシアが杖を向けた。


「《魔弾》!」


 威力を抑えた魔弾がウッドボアの頭部へ直撃する。


 巨体が地面へ倒れた。


「…………」


 テリーが倒れたウッドボアを見つめる。


「ワフ?」


 自分が邪魔していたとは思っていないらしい。


「テリー、おいで」


「ワフッ!」


 ルナのもとへ走って戻る。


 ルナはしゃがみ、テリーと目線を合わせた。


「私が弓を向けてる前には出ちゃ駄目だよ」


「キュ?」


「ここ」


 自分の正面を指す。


「ここにテリーがいると、矢が撃てないの」


「キュ……」


「それから、アレンが剣を持ってる時も近づきすぎないでね」


 テリーが首を傾げる。


「すぐ分からなくても大丈夫」


 ルナが頭を撫でた。


「少しずつ覚えようね」


「ワフッ!」


 分かっているのかは怪しい。


 倒したウッドボアを《収納》へ入れた。


 ◇


 二頭目を見つける。


「テリー、待って」


「ワフッ!」


 今度はルナの横で止まった。


「まだだよ」


 ルナが弓を構える。


 ウッドボアがこちらに気づいた。


「ブモォッ!」


 勢いよく突進してくる。


 テリーが前へ出ようとする。


「待って」


「クゥン……」


 前脚が一歩だけ出た。


 それでも、止まった。


「偉い」


 そのまま俺が前へ出る。


 テリーが来ていないことを確認して、ウッドボアとすれ違いざまに首筋へ剣を走らせた。


 巨体が地面へ崩れる。


【40P獲得】


「ワフッ!」


 テリーが駆け寄ろうとする。


「もういいよ」


 ルナが言うと、一気に走ってきた。


「ちゃんと待てたね」


「ワフッ!」


 尻尾が止まらない。


 俺はウッドボアを《収納》へ回収した。


 ◇


 三頭目。


「テリー、待って」


 今度は一度で止まった。


「まだ」


「クゥン……」


 行きたそうにしている。


 それでも動かない。


 ルナの矢が飛んだ。


 首元へ突き刺さり、ウッドボアが倒れる。


「よし!」


 ルナがテリーを見る。


「今の完璧」


「ワフッ!」


 褒められたのが嬉しいらしい。


 ルナの足元をぐるぐる回っている。


「覚えるの早いね」


 フェリシアが感心したように言う。


「うん」


 俺はウッドボアを回収した。


 ◇


 四頭目。


 木の陰にいて、ルナからは急所が見えにくい。


「撃ちづらいな」


「俺が行こうか?」


「ちょっと待って」


 ルナがテリーを見る。


「テリー」


「ワフ?」


「あっちから回ってみて」


 右側を指す。


「向こうから、ぐるっと」


「キュ?」


 テリーが首を傾げる。


 ルナは指で大きく円を描いた。


「こっちじゃなくて、あっち」


 テリーはしばらく考えるようにルナの指先を見ていた。


 そして――走り出す。


「そう!」


 ウッドボアの右側へ回り込んだ。


「ワンッ!」


「ブモッ!?」


 驚いたウッドボアがテリーへ身体を向ける。


 その結果、ルナへ横腹をさらした。


「テリー、そのまま!」


「ワフッ!」


 テリーが少し横へ動く。


 ウッドボアもつられて向きを変えた。


 弓弦が鳴る。


 矢が首元へ突き刺さった。


 ウッドボアが倒れる。


「やった!」


 ルナがテリーへ駆け寄った。


「テリー、できたね!」


「ワフッ! ワフッ!」


 テリーが勢いよく飛びつく。


「わっ!」


 そのままルナの頬を舐め始めた。


「分かった、分かったって!」


 楽しそうな声が森へ響く。


 最初は邪魔しかしていなかった。


 それがもう、ルナの指示に合わせて獲物を動かしている。


「すごいね」


 フェリシアも笑っている。


「教えたら、すぐ覚える」


「フェンリルだからかな」


「それともテリーだからか」


「ワフッ!」


 本人は得意そうだ。


 四頭目も《収納》へ入れた。


 ◇


 帰る途中。


 茂みから、もう一頭のウッドボアが飛び出してきた。


「ブモォッ!」


「テリー、待って!」


「ワフッ!」


 ぴたりと止まる。


 今度は俺が剣を抜いても、前へ出てこない。


「……覚えたな」


 一気に距離を詰める。


 一閃。


 ウッドボアが倒れた。


【40P獲得】


 テリーはルナの隣で待ったままだ。


「もういいよ!」


「ワフッ!」


 その言葉を聞いた途端、倒れたウッドボアへ駆け寄った。


「よくできたね」


 ルナに褒められ、また尻尾が大きく揺れる。


 最後の一頭も《収納》へ回収した。


 これで五頭。


 俺が二頭。


 フェリシアが一頭。


 ルナが二頭。


【保有:10,490P】


【累計獲得P:338,700P】


「今日はこれくらいにしようか」


「うん」


「十分だね」


「ワフッ!」


 テリーも元気よく返事をした。


 ◇


 夕方。


 バレインの冒険者ギルドへ戻った。


「ウッドボア討伐の報告です」


「何頭ですか?」


「五頭です」


 買い取り用の解体場へ移動する。


 《収納》から一頭ずつウッドボアを取り出した。


 職員が傷の位置や肉の状態を確認していく。


「全部買い取れますね。状態もかなりいいです」


「よかった」


 食肉になると聞いていたので、なるべく余計な傷をつけずに倒した。


 それが良かったらしい。


 受付へ戻る。


「ウッドボア五頭を確認しました。依頼達成です」


【依頼達成を確認しました】


【100P獲得】


【保有:10,590P】


【累計獲得P:338,800P】


「依頼報酬が六万ジェニー。五頭の買い取りが二十万ジェニー。合計二十六万ジェニーです」


「ありがとうございます」


 金額としては大きくない。


 でも、今日はそれでいい。


「テリー」


 ルナが呼ぶ。


「ワフッ!」


 すぐに隣へやってくる。


「今日はいっぱい覚えたね」


 ルナが頭を撫でた。


「ワフッ!」


 最初はルナの矢を邪魔して。


 俺が剣を振ろうとしても、その前へ飛び出した。


 それが最後には、ルナの指示でウッドボアを動かせるようになった。


 まだ戦い方を知らない。


 でも、教えればちゃんと覚える。


 三人と一匹の戦い方。


 今日、ようやくその最初の形ができた気がした。


【保有:10,590P】

【累計獲得P:338,800P】

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
「共有」を持ちかけた相手が承認したら共有されるという設定はどこにいったのでしょう。
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