↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第7章 セルヴァン王国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
114/201

第114話 久しぶりの依頼

 翌朝。


 ルナの部屋へ行くと、テリーはもう起きていた。


「ワフッ!」


 扉が開いた途端、白い耳がこちらを向く。


 一瞬だけ身体を固くした。


 でも、今日は唸らない。


「おはよう」


 一歩近づくと、テリーはルナの足元へ移動した。


「まだ触らせてもらえないか」


「でも昨日よりいいんじゃない?」


 フェリシアが笑う。


「唸られなかったから」


「少しは信用されたかな」


「どうだろうね」


 ルナがしゃがみ込む。


「テリー、脚見せて」


「ワフッ」


 昨日怪我していた左の後ろ脚を確認する。


 傷は完全に塞がっていた。


 歩き方にもおかしなところはない。


「もう大丈夫そう」


「よかった」


 ルナが嬉しそうに頭を撫でる。


「じゃあ朝ご飯にしようか」


「うん」


 三人と一匹で部屋を出た。


 ◇


 一階の食堂へ降りる。


 朝の時間だけあって、人が多かった。


 旅人。


 商人。


 冒険者。


 話し声に、椅子を引く音。


 皿やカップが触れ合う音まで重なっている。


 階段を下りたところでテリーが止まった。


「クゥン……」


 耳がぺたりと伏せられる。


「大丈夫だよ」


 ルナがすぐにしゃがんだ。


 背中をゆっくり撫でる。


 近くで椅子が大きな音を立てた。


 テリーの身体が跳ねる。


「クゥン!」


「びっくりしたね」


 ルナが抱き上げる。


 胸元へ顔を埋めたテリーを、そのまま優しく抱いた。


「ここにいるから大丈夫」


 何度も背中を撫でる。


 少しすると、強張っていた身体から力が抜けてきた。


「まだ食堂は難しそうだね」


 フェリシアが言う。


「うん」


「だったら部屋で食べよう」


 宿の人に事情を話す。


 食事を部屋へ持っていっても構わないと言ってくれた。


 結局、俺の部屋へ三人と一匹が集まった。


 ◇


「こっちなら平気みたい」


 床へ下ろされたテリーが部屋の匂いを嗅いでいる。


 昨日買った木の器へ水を入れる。


 もう一つの器には肉。


「ほら、テリー」


「ワフッ!」


 さっきまで縮こまっていたのが嘘みたいだ。


 すぐに食べ始めた。


「食欲はすごいね」


 フェリシアが笑う。


「元気な証拠じゃない?」


 ルナは食べる様子をじっと見ている。


 量は多すぎないか。


 ちゃんと噛んでいるか。


 水も飲んでいるか。


 昨日までとは見る目が違う。


 俺たちも朝食を食べ始めた。


 パン。


 野菜。


 焼いた肉。


 やがて自分の分を食べ終えたテリーが、フェリシアの横へ移動した。


「ん?」


 フェリシアの皿をじっと見る。


「テリー?」


「キューン……」


 視線の先は肉だった。


「これが欲しいの?」


「キューン」


「本当に分かりやすいね」


 フェリシアが笑う。


 味のあまりついていない部分を少しだけちぎった。


「少しだけだよ」


 手を差し出す。


 テリーが一瞬だけフェリシアを見る。


 鼻を近づけ。


 ぱくっ。


「ワフッ!」


 尻尾が一気に動き始めた。


「そんなに嬉しい?」


「ワフッ!」


 今度はフェリシアの手へ鼻先を寄せる。


「あ」


「フェリシア、好かれたみたい」


 ルナが笑う。


「本当?」


 フェリシアも嬉しそうだ。


 俺は自分の皿を見る。


 まだ肉が残っている。


「テリー」


 同じように小さくちぎる。


「これ食べる?」


 白い耳が動いた。


「…………」


 手を差し出す。


 テリーが俺を見る。


 肉を見る。


 また俺を見る。


 そして、ルナの方へ移動した。


「なんで?」


 ルナとフェリシアが笑った。


「まだアレンからは嫌みたい」


「肉でも駄目なのか……」


 先は長そうだった。


 ◇


 朝食が終わる。


「今日はどうする?」


 ルナが聞いた。


「冒険者ギルドへ行こう」


「久しぶりだね」


「うん」


 黒狼団の件から国境を越え。


 バレインへ来て、従魔契約を学んで、テリーと出会った。


 普通の冒険者依頼を受けるのは少し久しぶりだ。


「テリーも一緒?」


「もちろん」


 ルナが答える。


 テリーが足元からルナを見上げる。


「でも、ギルドも人が多そうだから抱いていくね」


「その方がよさそう」


 ルナが抱き上げる。


「今日は私から離れなくてもいいからね」


「キューン」


 テリーが胸元へ顔を寄せた。


 ◇


 冒険者ギルドへ着いた。


 扉を開ける。


 やはり朝は混んでいた。


 受付へ並ぶ冒険者。


 掲示板を見る人。


 テーブルを囲んでいるパーティー。


 中へ入った瞬間、いくつもの視線がこちらへ向いた。


「ハーフエルフか?」


「珍しいな」


「あの白いの、犬か?」


「狼じゃないか?」


「従魔みたいだぞ」


 ルナ自身もセルヴァンでは珍しい。


 その腕には白いテリーまでいる。


 目立たない方が難しい。


「クゥン……」


 テリーが身体を固くする。


「大丈夫」


 ルナがすぐに抱きしめた。


「みんな見てるだけだよ」


 耳の後ろをゆっくり撫でる。


「誰にも連れていかせないからね」


「キューン……」


「うん。大丈夫、大丈夫」


 ルナの声を聞いているうちに、テリーの耳が少しずつ元へ戻る。


 見ていると本当に母親が子供をあやしているみたいだった。


「少し落ち着いた?」


「うん。多分」


 受付へ向かう。


 ◇


「おはようございます。本日は?」


「依頼を受けたいんですが、その前に」


 ルナがテリーを抱き直した。


「従魔が増えました」


「従魔ですか?」


「昨日、従魔師組合で登録してもらいました」


「では登録証をお願いします」


 書類を渡す。


 受付嬢が内容を確認していく。


 途中で手が止まった。


「……フェンリル?」


「はい」


 書類を見る。


 テリーを見る。


 もう一度書類を見る。


「この子が?」


「そうです」


「私、初めて見ました」


「やっぱり珍しいんですね」


「かなり珍しいと思います」


 驚いてはいる。


 でも、周りへ大声で知らせたりはしなかった。


「ではパーティー情報へ従魔を追記します」


「お願いします」


 受付嬢が記入していく。


「契約者、ルナ・アルヴェインさん。従魔名テリー。種族フェンリル」


 最後に確認する。


「これで大丈夫です」


「ありがとうございます」


 冒険者ギルドでも、テリーがルナの従魔として登録された。


 ◇


 依頼掲示板へ向かう。


「さて」


 久しぶりの依頼だ。


 討伐。


 護衛。


 採取。


 調査。


 いくつもの依頼書が並んでいる。


 Aランク。


 Bランク。


 俺たちなら受けられるものも多い。


 でも、ルナの腕の中を見る。


「今日は軽い依頼にしよう」


「私たちは普通ので大丈夫だよ?」


「俺たちはね」


 ルナがテリーを見る。


「ああ」


「昨日まで怪我してたし、どれくらい歩けるのかも分からない。

 戦いになった時にどんな反応するのかも知らないし」


「最初から無理させる必要はないね」


 フェリシアが頷いた。


「私もそう思う」


 低ランクの依頼へ目を移す。


 一枚の紙が目に留まった。


【西街道周辺・ウッドボア討伐】


【推奨ランク:D以上】


【バレイン西部の街道沿いの森でウッドボアが増加】


【街道へ接近する個体を討伐すること】


【討伐数に応じて報酬加算】


【状態の良い個体は食肉・素材としてギルドで買い取り】


「……食肉?」


 もう一度見る。


「ウッドボアって食べるんだ」


 ルナも依頼書を覗き込む。


「セルヴァンでは食べるんだね」


 フェリシアが言う。


「ミラディアでは?」


「少なくとも私は聞いたことないかな」


 昨日は怪我をした魔物を助けた。


 そして、今日は別の魔物を討伐して食べる。


「なんか不思議だな」


「魔物を従魔にしたり、食べたりすること?」


「うん」


 フェリシアも依頼書へ目を落とす。


「国が違えば、魔物との付き合い方も違うんだね」


「そうみたい」


「こういうことは、本で勉強しただけじゃ分からないな」


 フェリシアが少し楽しそうに笑った。


「実際に来てみると勉強になるね」


 確かに。


 セルヴァンへ来てから、知らないことばかりだ。


「これにしようか」


「うん」


「私もいいよ」


「ワフ?」


 テリーだけは、何の話か分かっていない顔をしていた。


 ◇


 依頼を受注する。


 バレインの西門から町を出た。


 人通りが減ったところで、ルナがテリーを地面へ下ろす。


「もう大丈夫だよ」


 テリーが周囲を見る。


 街道。


 草原。


 遠くの森。


 鼻を動かす。


 次の瞬間。


「ワフッ!」


 走り出した。


「あっ、テリー!」


 ルナの周りを一周。


 道の端の草を嗅ぐ。


 少し先まで走って、また戻ってくる。


「すごく元気」


 フェリシアが笑う。


「やっぱり外の方が好きなんだね」


「人が少ないから安心するのかも」


 ルナも笑っている。


「ワフッ!」


 テリーがその隣へ並んだ。


 朝の食堂やギルドで縮こまっていた姿とはまるで違う。


 俺は街道の先を見る。


 遠くに目的の森が見えてきた。


 剣。


 フェリシアの杖。


 ルナの弓。


 そして、ルナの隣にはテリー。


 三人と一匹になってから。


 初めて受ける冒険者ギルドの依頼だ。


「じゃあ行こうか」


「うん」


「久しぶりだね」


「ワフッ!」


 久しぶりの依頼。


 少し楽しみになってきた。


【保有:10,410P】

【累計獲得P:338,620P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。