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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第6章 南への旅

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102/202

第102話 三人の距離

 翌日の午後。


 俺たちは三人で冒険者ギルドへ向かった。


「いくらになると思う?」


 歩きながら、ルナが聞いてくる。


「分かりません」


「昨日あれだけあったんだよ?」


「数は多かったですけど、魔物によって値段も違いますからね」


「でも百万は超えるよね?」


「さすがに超えると思います」


 フェリシアが答えると、ルナの表情が明るくなった。


「楽しみになってきた」


「昨日からずっと楽しみにしてるじゃないですか」


「だって、あんなにいっぱい倒したんだよ?」


 ギルドへ入ると、受付の女性がすぐにこちらへ気づいた。


「お待ちしていました。査定が終わっています」


 受付へ向かう。


 女性が一枚の紙を取り出した。


「アーマーリザード、ケイブスパイダー、ロックバイソン、その他の素材。

 それから十階層の階層主、ミノタウロスですね」


「はい」


「数が多かったので、解体した上で素材ごとに査定しています。

 特にアーマーリザードの甲殻と、ミノタウロスの角、皮、魔石、戦斧が高額になりました」


 ルナが身を乗り出す。


「それで、いくら?」


「合計で七百二十六万ジェニーです」


「七百二十六万!?」


 思ったより大きな声が出たらしく、近くにいた冒険者が何人かこちらを見た。


「あ……ごめん」


 ルナが声を落とす。


「三等分すると、一人二百四十二万ジェニーですね」


 フェリシアが言う。


「私も二百四十二万?」


「もちろんです」


「……すごい」


 ルナがしばらく固まっていた。


「冒険者ってこんなに稼げるの?」


「今回は特別ですよ」


「ですよね。毎日こんなに稼げたら、みんなお金持ちです」


「それもそうか」


 納得しているが、口元はずっと緩んでいる。


 代金を三等分して受け取る。


 俺は自分の分を《収納》へ入れ、フェリシアも自分の《収納》へしまった。


「ルナの分も預かっておきます?」


「お願い。こんな大金、持って歩きたくない」


「分かりました」


 ルナの金を入れている袋へ追加し、俺の《収納》へ戻した。


 ◇


 ギルドを出て通りを歩いていると、ルナの足が止まった。


「あ」


 視線の先には宝飾店があった。


 この町に来た日にも、ルナが店先で見ていた場所だ。


 窓の向こうには、指輪や首飾り、小さな耳飾りが並んでいる。


 ルナが近づいた。


「やっぱり綺麗……」


 見ているのは、淡い緑色の石を使った小さなイヤリングだった。


「前にも見てましたよね」


「気づいてた?」


「はい」


「何となく好きなんだよね、この色」


 ルナが値札を見る。


「……今なら余裕で買える」


「買うんですか?」


「うーん……」


 かなり迷っている。


 しばらくイヤリングを眺めていたが、やがて自分の服へ視線を落とした。


 森を歩き、ダンジョンでも戦ったせいで、ところどころ傷んでいる。


「やっぱり先に防具かな」


「いいんですか?」


「欲しいけど、これからもダンジョンには入るでしょ?」


「入ると思います」


「だったら先にちゃんとした防具を買う。こっちはまた今度」


 ルナはもう一度だけイヤリングを見る。


「次に来た時、まだあったら買おうかな」


 そう言って宝飾店を離れた。


 ◇


 向かったのは、町でも大きな武器防具店だった。


 店内には剣や槍だけでなく、金属鎧、革鎧、魔術師向けのローブまで並んでいる。


「弓を使われるのでしたら、重い鎧は避けた方がいいでしょう」


 店員がルナの装備を確認する。


「動きやすいのがいい」


「でしたら、こちらはいかがですか」


 奥から持ってきたのは、深い緑色を基調にした服だった。


 身体に沿う上着に、動きを邪魔しない短めの巻きスカート。


 胸や脇腹などには薄い革が重ねられているが、見た目は鎧というより上等な冒険服に近い。

 

 膝下まである焦げ茶色のブーツまで合わせると、森で弓を構えるルナによく似合いそうだった。


「これ、防具なの?」


「魔導布を使った軽装です」


「魔導布?」


「魔力を通しやすい素材を織り込んであります。

 魔力を流すことで布地の強度が上がり、普通の服より刃や衝撃を通しにくくなります」


 ルナが生地へ触れる。


「軽い」


「弓使いや斥候には人気があります。金属鎧ほど頑丈ではありませんが、動きやすさをほとんど損ないません」


「着てみたい」


 ルナが試着室へ入った。


 しばらくして、カーテンが開く。


「どう?」


 深緑の上着と短いスカートは、淡い金色の髪によく合っていた。


 腰回りもすっきりしていて、弓を構える動きを邪魔しそうな部分がない。


「似合ってますね」


「本当?」


「はい」


 フェリシアも笑う。


「すごく似合っています」


「よかった」


 ルナが嬉しそうに腕を上げ、弓を引く動きをしてみる。


「全然引っかからない」


「お値段は九十八万ジェニーです」


「高っ!」


 ルナの動きが止まった。


「魔導布を使っていますので」


「九十八万……」


 さっき二百四十二万ジェニーを受け取ったばかりなのに、かなり真剣に悩んでいる。


 何度か腕を動かし、服の感触を確かめる。


「……買う」


「よろしいですか?」


「うん。これからも冒険するなら、防具はちゃんとした方がいいから」


 購入することになった。


 古い服は俺の《収納》へ入れる。


「アレンとフェリシアは何も買わないの?」


「俺は大丈夫です。剣はドレイクさんに作ってもらったばかりですし、防具もまだ問題ありません」


「私もです。ロッドはまだまだ使えますし、防具も買い替える必要はなさそうです」


「いいなあ。私もいつかドレイクさんに弓を作ってもらいたい」


「いずれ北へ行くことがあれば、聞いてみます?」


「本当?」


「作ってくれるかどうかは分かりませんけど」


「それでも聞いてみたい」


 ルナは新しい服がかなり気に入ったらしく、店を出てからも何度か袖を触っていた。


 ◇


 その日の夜。


 三人で宿の食堂にいた。


 焼いた鳥肉と野菜の煮込みをパンと一緒に食べながら、今後の予定を話す。


「明日からどうします?」


 フェリシアが聞いた。


「そろそろ南へ進もうと思っています」


 ミラディアへ入ってから、思った以上に長く滞在した。


 エルフの村、毒の泉、東部ダンジョン。


 色々あったが、本来の目的地はさらに南だ。


「セルヴァンですね」


「はい」


「私は賛成」


 ルナがすぐに答える。


「私もです」


「じゃあ、明日の朝に出ましょう」


「はい」


「うん」


 話が決まった。


 そこでルナが、俺とフェリシアを交互に見た。


「そういえば、前から気になってたんだけど」


「何です?」


「なんで二人って、ずっと敬語なの?」


「え?」


「え?」


 フェリシアと声が重なった。


「アレンはフェリシアにずっと丁寧に話すし、フェリシアもアレンに敬語でしょ?」


「言われてみれば……」


 フェリシアが俺を見る。


「最初に会った時からこうでしたからね」


「だから、なんで?」


 ルナが首を傾げる。


「どっちかが偉いわけでもないんでしょ?」


「そうですね」


「ほら、また敬語」


「あ……」


 ルナが笑う。


「昨日なんて背中預けて戦ってたじゃん。

 お互い何度も命預けてる仲間なのに、そんなに堅苦しくする必要ある?」


「そう言われると……」


 考えたことがなかった。


 最初に会った時からフェリシアさんと呼び、そのままずっと続いている。


「もう呼び捨てでいいんじゃない?」


「呼び捨て?」


 思わずフェリシアを見る。


 フェリシアもこちらを見ていた。


 目が合った途端、なぜかお互い少し黙ってしまう。


「ほら、アレンから」


「俺から?」


「うん。男なんだから」


「…………」


 ただ名前を呼ぶだけだ。


 なのに妙に言いづらい。


「……フェリシア」


「……はい」


 フェリシアの頬がわずかに赤くなった。


「次、フェリシア」


「わ、分かっています」


「敬語」


「……分かってる」


 今度はフェリシアが俺を見る。


 少し間を置いてから、口を開いた。


「……アレン」


「はい」


 反射的に返事をしてしまった。


 ルナが吹き出す。


「何で二人とも名前呼ぶだけでそんなに緊張してるの?」


「別に緊張してません」


「私も……してません」


「二人とも敬語に戻ってるけど」


「…………」


「…………」


 ルナが声を上げて笑った。


 フェリシアも恥ずかしそうにしながら笑っている。


「じゃあ、明日は朝食を食べたら出よう」


 俺が言う。


「うん」


 フェリシアが答えた。


 まだ少しだけ違和感がある。


 でも、嫌な感じはしなかった。


「アレン」


「何?」


「明日からもよろしくね」


「……うん。フェリシアも」


 また少しだけ気恥ずかしくなる。


 向かいでは、ルナが楽しそうに俺たちを見ていた。


 明日から三人で、さらに南へ進む。


 昨日までと同じ三人なのに、少しだけ距離が近くなった気がした。


【保有:7,390P】

【累計獲得P:335,600P】



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敬語の関係が良かったのにーーー
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