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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第6章 南への旅

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第101話 十階層

 ミノタウロスが巨大な戦斧を持ち上げた。


「来ます!」


 次の瞬間、巨体が地面を蹴る。


 速い。


 三メートルを超える身体が、一気に距離を詰めてきた。


「二人とも離れてください!」


 俺が前へ出る。


 戦斧が振り下ろされた。


 横へ飛ぶ。


 ドガンッ!


 石床が砕け、大きな亀裂が走った。


「……すごい力」


 ルナが呟く。


「まともに受けるのは危ないですね」


 フェリシアがロッドを構えた。


 ミノタウロスが戦斧を引き抜く。


 その隙に踏み込む。


「はっ!」


 竜爪剣を脇腹へ振った。


 ザンッ!


「ブオオオッ!」


 刃は入ったが浅い。


 思った以上に筋肉が厚い。


 もう一撃入れようとしたところで、ミノタウロスが戦斧を横薙ぎに振った。


「っ!」


 後ろへ下がる。


 ブオンッ!


 目の前を巨大な刃が通り過ぎた。


「《魔弾》!」


 ドンッ!


 フェリシアの魔弾が胸へ直撃する。


「グオッ!」


 巨体がわずかによろめいた。


「もう一発!」


 二発目が飛ぶ。


 だが、ミノタウロスが戦斧を前へ出した。


 ガンッ!


 魔弾が斧の腹へ当たり、弾ける。


「防いだ?」


 ルナが目を見開いた。


 ミノタウロスは力が強いだけじゃない。


 武器の使い方も分かっている。


「アレンさん!」


「はい!」


 ミノタウロスが戦斧を盾のように構えたまま迫ってくる。


 俺も前へ出て剣を振る。


 ギィンッ!


 竜爪剣と巨大な斧がぶつかる。


 重い。


 巨大な身体と戦斧の重さが、そのまま乗ってくる。


 受け続けるより、かわした方がいい。


 ミノタウロスがさらに押し込んでくる。


 その時だった。


 ヒュンッ!


「ブオッ!?」


 矢が戦斧を握っている右手首へ突き刺さった。


 力が一瞬緩む。


「今!」


 ルナの声。


 竜爪剣を滑らせるように斧から外し、そのまま右腕へ振る。


 ザンッ!


 深く入った。


「グオオオッ!」


 ミノタウロスが腕を引く。


 後ろへ下がった。


「今の狙ったんですか?」


「うん。斧を押してる間、右手首がずっと見えてた」


 ルナはすでに次の矢をつがえている。


 《弓聖》。


 ルナは射る場所を選ぶのが速い。


「次、いきます!」


 フェリシアがロッドを向けた。


 五つの魔弾が浮かぶ。


「《魔弾》!」


 光が別々の方向からミノタウロスへ飛ぶ。


 一発目。


 戦斧で防ぐ。


 二発目。


 身体をずらす。


 三発目。


 肩へ命中。


「グオッ!」


 四発目が脚へ。


 五発目が脇腹へ直撃する。


 防ぎきれない。


 そこへ矢が飛んだ。


 ヒュンッ!


 右膝。


「ブオッ!」


 ミノタウロスの身体が沈む。


「アレン!」


「はい!」


 一気に間合いを詰める。


 だが、ミノタウロスもまだ止まらない。


「グオオオオオッ!」


 片膝をついたまま戦斧を振り上げる。


 俺へ向かって振り下ろそうとする。


 ヒュンッ!


 もう一本。


 戦斧を握る右手へ刺さった。


 わずかに軌道がずれる。


 それだけで十分だった。


 振り下ろされた刃の横へ踏み込む。


 ドガンッ!


 背後で石床が砕けた。


 俺はもう懐へ入っている。


 首。


 そこだけを見る。


「はあっ!」


 竜爪剣を振り抜いた。


 ザンッ!


 深く入る。


「グ……オ……」


 さらに一歩。


 力を込めて最後まで振り抜く。


 ミノタウロスの巨体が傾いた。


 ドォン!


 広間の床が揺れる。


【階層主討伐を確認しました】


【2,000P獲得】


【保有:7,290P】


【累計獲得P:335,500P】


「……倒した」


 ルナがゆっくり弓を下ろした。


「はい」


 フェリシアも息を吐く。


 倒れたミノタウロスを見る。


 やはりこの3人の組み合わせは強い。


 フェリシアの魔弾が防御を崩し、ルナの矢が攻撃のタイミングまで作ってくれた。


 俺はその隙を斬ればいい。


 三人になってから、戦い方そのものが変わっている。


「《弓聖》、どうです?」


 ルナを見る。


「すごい」


 弓を見ながら即答した。


「狙ったところに当てやすいのもそうだけど、どこを狙えばいいか考えるのも前より速い気がする」


「さっきの手首も?」


「うん。あそこを射れば斧がずれるって、すぐ分かった」


 五万Pを使った価値は十分にありそうだ。


 その時だった。


 ゴゴゴゴゴ……。


「何?」


 ルナが振り返る。


 広間の奥。


 何もなかった石壁が左右へ動き始めた。


「やっぱり」


 フェリシアが言う。


 壁の奥に小さな部屋が現れる。


 中央には青白く光る大きな石。


「転移石ですね」


「これが?」


 ルナが近づく。


 台座には短い文字が刻まれていた。


 ――十階層を踏破した者に、道を開く。


「十階層……」


 ルナが読む。


「やっぱりここが十階だったんですね」


「じゃあ、私たち一階から十階近くまで、あの道を通ってきたってこと?」


「そうみたいです」


 フェリシアが来た方向を見る。


「八階付近にいるはずのアーマーリザードが一階まで来ていた理由も分かりますね」


「はい。あの道なら浅い階層まで上がれます」


「でも、なんで最近になって道が開いたんだろ」


「そこはまだ分かりません」


 崩れた岩。


 地図にない天然洞窟。


 十階近くまで続いていた道。


 今回分かったのはそこまでだ。


 なぜ一階とつながったのかは、まだ調べる必要がある。


「ギルドに報告しましょう」


「はい」


「うん」


 その前に、まだ確認していない魔物があった。


「そうだ」


 《収納》から、大型の蜘蛛を一体出す。


「《鑑定》」


【ケイブスパイダー】


【洞窟に生息する大型の蜘蛛型魔物】


【素早い動きと強靭な糸を使って獲物を捕らえる】


「ケイブスパイダー……」


 続けて角を持つ四足の魔物も出す。


「《鑑定》」


【ロックバイソン】


【硬い角と頑丈な身体を持つ大型の四足魔物】


【強力な突進攻撃を得意とする】


「これで報告できますね」


 フェリシアが言う。


「はい」


 二体を《収納》へ戻し、最後にミノタウロスへ触れる。


「《収納》」


 巨体が消えた。


「それも入るんだ……」


 ルナが呟く。


「死んでいれば入りますからね」


「本当に便利」


 三人で転移石へ触れた。


 青白い光が強くなる。


「これで登録されたはずです」


「次は?」


「ベルガントと同じなら、ここから一階へ戻れます」


「そんなことまでできるの?」


「できます」


「……やっぱりダンジョンって不思議」


 もう一度転移石へ触れる。


 視界が青白い光に包まれた。


 次に目を開けると、景色が変わっている。


「……本当に戻った」


 ルナが周囲を見る。


 ダンジョンの一階。


 入口近くにある転移石の前だった。


「便利でしょう?」


 フェリシアが少し笑う。


「これも欲しい」


「持って帰れませんよ」


「分かってるって」


 縦穴に残してきたロープは、そのままにしてある。


 ギルドが改めて調査するなら、地図にない道を確認する目印にもなる。


 俺たちはそのままダンジョンを出た。


 ◇


 町へ戻った頃には、日はかなり傾いていた。


 そのまま冒険者ギルドへ向かう。


 三人で中へ入ると、昨日の受付の女性がこちらに気づいた。


「お帰りなさい。東部ダンジョンはいかがでしたか?」


「浅い階層で魔物が増えていた原因につながりそうなものを見つけました」


「原因ですか?」


「一階の地図では行き止まりになっている場所に、地図にない通路があります」


 受付の女性の表情が変わった。


「詳しくお願いします」


 順番に説明する。


 一階の行き止まり。


 崩れた岩壁。


 その先にあった天然洞窟。


 縦穴。


 八階付近に生息するはずのアーマーリザード。


 さらに深い場所にいた大量の魔物。


 ケイブスパイダーとロックバイソン。


 そして、十階層の階層主のミノタウロス。


 受付の女性は途中から急いで紙へ書き留めていた。


「初日で十階まで行ったんですか?」


「ええ」


「Aランクが二名……とはいえ、依頼を受けたその日に十階層まで調査して階層主まで倒すとは」


 今度はルナのカードを見る。


「ルナさんはBランクですね」


「うん」


「階層主との戦闘にも?」


「三人で戦ったよ」


「なるほど……。かなり腕の立つパーティーですね」


 ルナが少しだけ嬉しそうにする。


 受付の女性は記録を閉じた。


「今回お願いしたのは、浅い階層で魔物が増えている原因の調査と討伐でした。

 ここまで調べてもらえるとは思っていませんでした」


「原因はまだ完全には分かってませんけど」


「十分です。一階から深部へ続く別経路が確認できただけでも大きいです。

 後日、ギルドから調査隊を出すことになるのではないでしょうか」


「縦穴にはロープを残してあります」


「助かります。場所もこの地図に書いてもらえますか?」


「はい」


 一階の地図へ、隠し通路の場所を書き込む。


 受付の女性がそれを確認した。


「当面、この周辺への低ランク冒険者の立ち入りも制限する様に上に伝えておきます」


 俺たちの報告を受けて、すぐにギルドが動き始める。


 何人かの職員が集まり、明日の調査について話を始めていた。


 受付の女性が依頼書へ印を押す。


「東部ダンジョン調査・討伐依頼、達成です」


【依頼達成を確認しました】


【100P獲得】


【保有:7,390P】


【累計獲得P:335,600P】


「依頼報酬は十八万ジェニーです」


「三人で六万ずつですね」


「はい」


 三等分する。


 俺とフェリシアはそれぞれ自分の分を《収納》へ。


 ルナには、預かっていた金の袋を渡した。


「ここに入れておきます?」


「お願い」


 六万ジェニーを加えた袋を、そのまま俺の《収納》へ戻す。


「初めて三人で受けた依頼、終わったね」


 ルナが言う。


「かなり大きな依頼になりましたけどね」


 フェリシアが笑った。


「あ、まだ終わってません」


「何かありましたっけ?」


「素材です」


 受付へ向き直る。


「今日倒した魔物の買取もお願いします」


「もちろんです。どのくらいありますか?」


「かなりあります」


 受付の女性が一瞬止まった。


「……かなり?」


「はい」


 ◇


 案内された買取場で、俺とフェリシアは《収納》を開いた。


「では、こちらへお願いします」


「分かりました」


 まずアーマーリザード。


 続いてケイブスパイダー。


 ロックバイソン。


 一体。


 二体。


 五体。


 十体。


 俺が出している途中で、職員が無言になった。


「まだあります」


「……はい」


 さらに出す。


 買取場の床がどんどん埋まっていく。


「私の方にもあります」


 フェリシアが言った。


 職員がゆっくり振り返る。


「まだあるんですか?」


「はい」


 フェリシアの《収納》からも魔物が現れ始めた。


「ちょっと応援を呼んできます!」


 職員が奥へ走っていった。


 ほどなくして何人もの職員が集まってくる。


「何だ、この数……」


「全部今日の分ですか?」


「はい」


 職員たちが次々に確認を始める。


「最後に大きいのが一体あります」


 そう言うと、何人かがこちらを見た。


「……何でしょう?」


「ミノタウロスです」


 一瞬、静かになった。


「階層主の?」


「はい」


 場所を空けてもらう。


「《収納》」


 ミノタウロスの巨体が現れた。


 ドンッ。


「……本当に丸ごと持ってきた」


「状態もかなりいいぞ」


「戦斧まである」


 職員たちが一斉に集まった。


 角。


 皮。


 筋肉。


 戦斧。


 それぞれを確認していく。


 少しして、責任者らしい男性が並んだ魔物を見渡した。


「申し訳ありませんが、今日中の査定は無理です」


「やっぱりですか」


「この数ですからね。それにミノタウロスは階層主です。素材ごとにきちんと確認したい」


「いつ頃になります?」


「明日の午後までには出します」


「分かりました」


「査定が終わり次第、まとめてお支払いします」


「お願いします」


 買取場いっぱいに並んだ魔物を見る。


 これが全部いくらになるのか。


 今のところ、俺にも全く分からない。


「かなりの金額になりそうですね」


 フェリシアが言う。


「そうですね」


「私にも取り分あるんだよね?」


 ルナが聞く。


「もちろんです。三人で倒したんですから」


「……楽しみ」


 昨日、九万ジェニーを受け取った時より明らかに期待している。


「じゃあ、今日は宿に戻りましょうか」


「はい」


「うん」


 初めて三人で受けた正式な依頼。


 一階の異変を調べるだけのつもりが、地図にない道を見つけ、十階層まで進み、階層主まで倒してしまった。


 原因の全てが分かったわけではない。


 でも、ギルドが明日から本格的に調査することになった。


 そして俺たちには、もう一つ残っている。


 大量の素材の査定結果だ。


 それがいくらになるのかは、明日になれば分かる。


【保有:7,390P】

【累計獲得P:335,600P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
2000P程度のミノタウロスに苦戦し過ぎじゃない? 前のダンジョンでは2000Pくらいの魔物瞬殺してたやん 調査の方も結局、1階層の魔物が増えてる理由にはなってないし、そもそも主人公たちが来るまで開通…
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