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エルダニア大戦記  作者: 志摩 伊純
第0章:小男爵家五男と二人の幼馴染

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第4話 港湾防備大演習


 透き通るような青空の下、約千名を半分に分けた、青、赤の両陣営が港都ルミナ郊外の大規模演習場に控えていた。


 『ルミナ港湾防備大演習』


 港都ルミナの治安、防衛を担う全衛兵のうちの半数が年に一度、一堂に会し行う軍事演習だ。残り半数は来年に回される。


 僕は初めて参加するのだが、古株の同僚に聞いた話では、ルミナ沿海伯家のお偉い方も観覧するとかで、気を抜けない演習なのは間違いない。


 先日の休暇から二週間ほどが過ぎていた。


 苦手な帳面仕事を相手に、ときにブルーノをなだめ、ときにガレスに泣きつき、なんとか今日まで過ごしてきた。


「アズール、見てみろよ。 なんだかいけ好かないお偉いさんたちが、こっちを品定めしてるぜ」


 演習場で待機していた僕たちだが、ルミナ沿海伯の上層部の入場が遅れていて、しばらく待たされていた。


 ようやくお偉い方々が入ってこられて着席し始めたのを見て、ブルーノがしらけた様子で僕に告げてきた。


「あの真ん中の一番豪華な椅子に座ってるのが、オーレリアン様かな?」


 オーレリアン・ルミナ沿海伯。セントリア帝国の四方を任される大貴族の一角で、ルミナ潟岸一帯を統治するとても偉いお方だ。


 帳面や、人から聞いた話でしか知らない、とても高い身分の方で、僕からすれば見上げすぎて首が痛くなるくらいかけ離れた位置にいる存在だ。


 まだ壮年といっていい歳に見える。厳しそう、というよりは温和そうな、人が良さそうな雰囲気だ。


「おそらくそうだろうな、俺も初めて目にしたが、聞き及んでいる容姿と合致するので間違いないだろう」


 横にいるガレスも見ていたようで、会話に参加してきた。


「ということは、左右にいるのが家宰のカシアン様と港務総監のテオバルト様か。どっちがどっちかはわからないけど」


 家宰のカシアン様。港務総監のテオバルト様。この二人も名前は帳面で見たことがあるけれど、顔までは知らない。


 僕は目を凝らして、観覧席を凝視していた。


 ルミナ沿海伯家の重鎮が勢ぞろいだ。


「ようし、お前ら揃っているな」


 事前の会議から戻ってきたエランさんが、やや緊張した面持ちで小隊のみんなへ声がけしている。


「昨日伝えてある通り、我がエラン小隊は、青軍の左翼に組み込まれる。 これから作戦を伝えるので聞き漏らさんようにな」


 エラン小隊……。港南衛兵詰所に所属する衛兵の中で、本日の通常勤務担当を除いた全員が参加している。


 総勢三十四名だ。


「序盤は、青軍右翼がまず攻勢に出る」


 エランさんは、いつもよりキリっとした感じだ。


「中央と我らが所属する左翼は、赤軍の出方を見つつ、相手右翼が出てくるようであれば、いったんこれを受けて耐える」


 なるほど。序盤の左翼は守勢と。


「そして、青軍の右翼が相手左翼を後退、ないしは撃破させたら、それに呼応し、中央と足並みをそろえ攻勢に出る」


 この演習は、両軍の陣奥に軍旗が立てられており、これを先に奪った方が勝ちという条件になってる。


 当然、それをさせまいと、お互いに中央は厚めの配置になりやすい……らしい。聞いた話だけど。


 なので、だいたい左右どちらからかを崩してから包囲するように攻め立てる、というのが王道だ……と、これも受け売りだけど。


「ブルーノ、しっかり待つんだぞ。一人で抜け駆けするな」


 あ、エランさんがブルーノにくぎを刺している。


「あいよー。まあ、心配しなさんなって」


 ブルーノは意外にも気負った様子もなく、興奮もしてもおらず、どちらかというとあまりやる気はなさげだ。


「こんなおままごとに熱くなれっかよ」


 あ、なるほど。小さくブルーノが呟いた一言が聞こえてきて納得する僕。


「ブルーノ、行くときは言うからね、勝つよ」


 僕はブルーノだけに聞こえる声で伝える。


「お? おうよ、アズールがやる気なら、いっちょ気合い入れなおすかぁ」


「アズール、あまり発破をかけるな。 やりすぎるぞ」


 ガレスが冷ややかな目でブルーノを見ている。


「大丈夫だよ。ちゃんと見てるから」


 うん、大丈夫。ちゃんとやれる、きっと。



 大規模演習場は、単なるひらけた平地ではなく、港都の街を想定したような木造小屋やら、土嚢、防柵、水路、またそれにかかる桟橋なども作りこまれている。


 青軍は、港都防衛を想定した守備側。赤軍が港都へ攻めこむ敵役で攻撃側だ。


 僕たちは守備側の青軍だ。


「今回は港都防衛を想定した守備担当の配置になる!!」


 開始前に、青軍総司令官になるダリオ・メルク水軍頭が青軍全員を集め訓示する。


 赤軍はロドリック軍務長が見ているらしい。


 水軍頭が陸戦をやる青軍の総司令というのは少し珍しいらしく、近くの古株が「今年の青は貧乏くじだな」と小さく笑っていた。


「港湾衛兵隊の本分は、港都防衛である! 何としても軍旗を守り、赤軍軍旗を奪取するのだ!」


「うおぉぉぉぉぉ」


 青軍、約五百名が雄たけびを上げる。


「それでは、各部隊、配置につけ!」


 エラン小隊は、駆け足で左翼の初期配置位置へ向かう。


「よーし、お前ら事前の作戦通り、ここを死守しつつ、右翼の突破を待つ」


 左翼側は、倉庫街を模した木造の張りぼて建造物が立ち並んでおり、通路となる部分の要所要所に防柵が立てられている。


 僕たちは左翼のほぼ中央にあたる広めの通路を死守する担当だ。防柵、土嚢を改めて調整しつつ、不備がないかを確認していた。


 左翼はエラン小隊と、もうふたつの小隊を合わせて、おおよそ百二十名ほどだ。中央と右翼はやや厚めに配置し、中央が約二百名、右翼が約百八十名となっている。


 赤軍の配置は、まだわからない。


 僕たちは、静かに開始されるのを待っていた。



 戦端は、突然開かれた。


 赤軍左翼が、一斉に青軍右翼が展開している水路側に強襲!


 ざっと見ただけでも二百名を超えているかもしれない。いや、三百近いかも。


 青軍右翼は、攻勢を仕掛ける担当だったが、明らかに数が劣勢で攻めるどころか守勢に回らざるを得なくなっている。


「エランさん、ここは中央に右翼の支援を要請するべきでは?!」


 副官がエランさんに進言するが、エランさんは首を振る。


「左翼側から余計なことを進言せずとも、ダリオ水軍頭が適切に判断されるだろう。 お前らはここを死守することをまずは考えろ!」


 出だしから作戦がかみ合っていない、大丈夫だろうか。


「赤軍、右翼を確認! こちらへ進軍しています。接敵までおよそ百二十秒!!」


 斥候担当が駆け足で戻り、エランさんへ報告。


 攻めるはずだった青軍右翼は、もう押されている。


 そして守るだけでいいはずだった僕たち青軍左翼にも、赤軍右翼が回り込んできた。


「よし、お前ら配置についているな、絶対ここを通すなよ!!」


 エランさんが檄を飛ばす。


 まだ、僕の見える位置に赤軍はいないが、ガレス、ブルーノと共に、防柵を前にその時を待つ。


 「きたぞー!!」


 誰かが叫んだ。


 赤軍右翼は、演習場の外側ギリギリを大きく迂回する形で接近してきていた。僕たちは中央側なので、すぐに接敵とはならず、最左翼の小隊がまずぶつかる形になりそうだ。


「エランさん、最左翼を支援しましょう! 相手は青軍右翼に戦力を集中しています。おそらくこちらへはそれほど数を出せないはずです!」


 副官が近づく赤軍を凝視しながらエランさんへ上申する。


「ならん、持ち場を離れるな……」


「ですが!」


「くどい!」


「くっ」


 見える限りでは、最左翼にとりつこうとしている赤軍は五十名だ。確かに耐えるだけなら防柵や土嚢などを効果的に使えば問題ないとは思うが……。


「何故、エラン殿は、あの赤軍を一気に叩き潰して、逆に攻勢に出るという手を取らん……」


 ガレスが、めずらしくじれったいという表情で唇をかんでいる。


「確かに……。僕もそんなに軍略には明るくはないけど、各個撃破の機会なんじゃないかとは思う」


「当初の役割とは変わってしまうが、右翼が守勢に回った今、逆に我々左翼が攻勢に出ねば、この戦いは負けるぞ」


 ガレスは右翼側の激しい攻防を見つめながらこぶしを握り締めている。


「どうするよぉ? アズールが行けっていうなら行ってくるぜ」


 ブルーノが、ちょっと散歩行ってくる、みたいなノリで聞いてきた。


「いや、僕にはそんな権限はないよ、ここはエランさんの指示に従おう」


「あいよー。 まあ、これはもう負け戦ぽいけどなぁ」



 右翼は攻勢に出る気勢をそがれたが、それでもまだ頑張って耐えていた。攻め立てる赤軍は、右翼の二倍弱の数。


 青軍の中央も少数の支援は出してはいたが、何故か、本格的な増援を取らない。


 そして、左翼側にも動きが出た。


「赤軍、増援です! ざっと百名!!」


「なんだと!!」


 エランさんが叫ぶ。


「赤軍は中央に人を配置しておらんのか?!」


「わかりません、ただ、攻勢は強まっております!」


 みるみる赤軍の増援が最左翼に接近し、取りついていく。


 最左翼は四十名ほどで、対する赤軍の右翼は今は百五十名に届こうかという数になってきている。これは左翼全体で受けるべき数なはず。


 しかし、エランさんは動かない。


「いかんぞ、ここを死守だ。 青軍右翼が突破するまで耐えるのだ」


「最左翼……突破されます!!!」


 数の暴力で、最左翼を飲み込んだ赤軍が、一気にエラン隊まで進軍してくる。


「お前ら!!絶対死守だああ!!」


 叫ぶエラン。


 ぶつかり合う、赤と青。


「ぐっ、抜かせるかぁ」


 僕も防柵と盾を使い、なんとか赤軍を凌ぎつつ、どんどん押し寄せる相手をなんとか押し返そうと必死だ。


 隣では、ガレスが木製の短槍で的確に足元を払い、出足をくじいている。倒れた相手を踏んでまではさすがに乗り越えてこない。


「最左翼はどうなっているー!なんとかできんのかー!!!」


 エランさんが悲鳴のような大声をあげ、最左翼方面を見ている。


「エランのおやっさん。 ちっと本気出していいかい?」


 ブルーノが不穏な空気を醸し出しながらエランさんを見ている。


「あぁ? いいから何でもやって守り切れ!!」


 指揮棒を振りながら、エランさんが叫ぶ。


「よっしゃ。いっちょやりますか。 せっかく向こうさんから来てくれてるしなぁ!」


 ニヤリと、ブルーノが笑い、持ち場を離れて一人赤軍へ突撃していった。


「あ、ブルーノ! だめだよ!!」


 僕は盾で攻撃を防ぎながら、ブルーノを目で追う。


「いや、いったんこれでいい。 アズール、ロウ、コナン、リオ! ブルーノに続くぞ。 ブルーノがこじ開けた穴を突っ切る形で最左翼まで突き走る!!」


 ガレスが叫ぶ。


 よくわからないが、こういう時のガレスは間違えない。


「……わかった! いくよ、みんな!」


 一人先行したブルーノを何とか追いかけるために、目の前の相手を凌ぎつつ、隙を窺う。


 押し寄せる、赤軍に一人突っ込んだブルーノだが、すごい。


 まるで子供を投げ飛ばすかのように、吹っ飛ばしていき、ブルーノが進む先に道ができる。


「あ、おまえらー!!」


 エランさんが何か叫んでいるが、もう遅い。


「ブルーノに続けー!!!」


 気が付けば、ガレス、ロウ、コナン、リオだけではなく、他にも何名か参加し、一気に突き崩していく。


 赤軍も進ませまいと必死に抵抗してくる。


 ブルーノは丸太のような棍棒を振り回し、赤軍を吹き飛ばしながら進路を作っていく。


 僕も訓練用の木剣と盾で応戦しながらブルーノの後を追う。


 ガレスはブルーノと並び立ち、木の短槍で赤軍をけん制しつつ、道を切り開いている。


「最左翼が見える!!」


 ブルーノとガレスの先にまだ必死に抵抗中の最左翼が見えた。


「このまま突っ切るよ!」


 前に見えているブルーノとガレス以外、誰が付いてこれているのかもわからない。でも、必死に叫んだ。


 ガレスが先に、小隊にたどり着き、ブルーノは周りの赤軍を蹴散らしている。


 僕は滑り込むように、陣内に入り込んだ。


 続けて、ロウ、コナン、リオ、他二名も入り込む。


「エラン小隊です! 援軍にきました。」


「た、助かる!! なんとか凌げてはいるが凌ぐだけで精一杯だった!!」


 陣内の衛兵が息も絶え絶えに答えてくれる。


「ここの全軍で押し返す。エラン小隊の本体と挟み撃ちにするぞ」


 ガレスがそう提案してくる。


 悪い案じゃない、むしろ良案に思える。


 指揮官だと思われる人物は、一瞬考えるそぶりをしたが即断した。


「いい案だ。 よし、お前らいくぞ!」


 そして、挟み撃ち開始だ!!


 ……と、意気込んだその時、青軍の右翼が崩壊した。



 それからは一方的だった。


 崩壊した右翼は、押しに押し込まれ、勢いを増した大勢の赤軍は、一気に青軍中央の側面をつく。


 これに呼応し、赤軍の中央も前進。


 数では、赤軍中央は、百名ほどと多くはない。


 それでも赤軍左翼と中央に半包囲されれば青軍中央はまともに応戦できない。


 青軍左翼も、これからというところでの右翼の崩壊で、ますます混乱が大きくなり、思うように動けない。


 そして、そのまま赤軍が青軍中央を飲み込み、軍旗が倒れ、青軍は負けた。


「演習、終了である!!!」


 銅鑼を叩き鳴らした音が響き渡り、終了の合図が僕のところまで聞こえてきた。



 負けた。


 演習とはいえ、ここからというところでの敗北はやはり悔しい。


「青軍の左翼はなかなかやるなぁ。うちの左翼がもたもたしてたらやばかったかもだぜ」


 赤軍右翼の衛兵が素直に褒めてくれる。


「ええ、もう少しでしたね。でも、赤軍の作戦、指揮が見事でした」


 僕も思ったことを素直に返し、お互いに今日の頑張りをたたえ合いつつ、ブルーノとガレスに合流した。


「ここからだってーのによぉ! そもそもエランのおっさんが早く決断してりゃ勝ててたぜ?!」


「そういうな、おそらくより上位の命令が、持ち場の死守だったのだろう」


 そうだとしても、これが実戦だったら……。


 僕がエランさんの立場だったら決断できただろうか。


 わからない。わからないけど、しなければいけないと思った。


 しかし、結果的に、エランさんを騙すようにして最左翼まできてしまったが、後で怒られるかもしれない。 


「よし、エラン小隊の皆、本体に帰るよ!」


 ブルーノ、ガレス、ロウ、リオ、コナンに付いてきてくれた二名が頷く。


 とはいえ、帰るというほどの距離でもなく、歩いて一分ほどで、エランさんのいる本体へ到着。


「お前らなあ……俺は何でもやれとは言ったが、あそこまで行けとは言ってないぞ」


 エランさんは本気では怒ってはいないようだけれど、一応、という感じで言ってきた。


「まあ、最左翼が潰れなかったのも事実だ。今回は、俺の命令をよく解釈したってことにしとく」


「はあ、ありがとうございます」


「まあ、来年だな、またがんばろうや」


 エランさんは、ひらひらと手を振りながら、本部の方へ歩いていった。



 観覧席では、オーレリアンが演習の一部始終を見届け、ため息をついていた。


「守備側が負けたようだが、大丈夫なのか?」


 そばに控えている家宰のカシアンが資料に目を通しながら答える。


「はい、今年は赤軍に精鋭が集中していたとのことで、概ね想定通りの結果ではないかと」


「ほう、守備隊が落とされるのが想定通りと?」


「はい、むしろ赤軍の精鋭たちに攻める側の心理や作戦を学ばせて、今後の守りに活かす、というのが主題のようです」


「なるほどな、であれば、納得できる話ではある」


「ロドリック殿の強い意向のようで」


「では、ダリオには苦い役回りだったか」


「水路ならともかく、陸の広い演習場では、少々不慣れかと……」


 オーレリアンは、神妙にうなづき、椅子に深く座りなおした。


「しかし、青軍の左翼はよく粘ったな。最終的に数では劣勢だったが」


「そのようですね、私も軍事には疎いので、良し悪しはわからないのですが、あとで戦いの詳細を報告させましょうか?」


「いや、それには及ばん。 負けは負けだ」


 オーレリアンとカシアンは、まだ熱の冷めやらぬ演習場を見下ろしながら、ひとまずの成果を確認し合うのであった。



 作戦自体は成功したが、赤軍の右翼の者たちの表情はさえない。


「なんだよ、あの鬼みたいな二人は」


「ああ、馬鹿でかいだけじゃなく、的確に薄いところを狙ってきやがった」


「でもよ、今回は敵味方ってことだが、青軍もルミナ家で仲間だぜ? 頼もしいじゃねーか」


「それはそうだな、名前なんつったっけ、ブルーノとガレスっていったか?」


「ああ、なんか冴えないやつが名前呼んでたな」


「ブルーノとガレスか、名前は覚えておこう」


 赤軍の右翼は、しばらくブルーノとガレスの話で盛り上がっていた。



 参加者全体での集合の後、オーレリアン様からの訓示をいただき、軍事演習は終了となった。


 エラン小隊は、一度、港南詰所に戻るのかと思ったのだが、「全員は入れんし、現地解散とする!」と、エランさんが言い解散。


 ガレス、ブルーノと、とぼとぼ港都ルミナに向かい歩いている。


「今日のは演習だけれど、こういう大勢での戦いって初めてだった」


 僕は誰に言うでもなく、つぶやいた。


「ああ? 俺もだぜ? だいたい一人か、いてもガレスの二人だったしなあ」


「俺もそうだ。だが書面で仕入れた知識を、現場でどう活かすかをいろいろ学べて有意義ではあった」


 あ、そういうことなのか。


「ブルーノについていって、ってのはまさにそれ?」


「そうだ、あれはいい学びになった。 あとエラン殿も反面的に」


「あ、だめだよ、ここだけの話にして」


「ああ、二人以外にはこんな話はせん」


 エランさんが聞いていないか、きょろきょろしてしまったが、近くにはいなくてよかった。


「二人なら、きっともっと活躍して上を目指せるよ」


 僕がふと漏らした言葉に、二人が止まる。


「アズールよぉ。そうじゃねえよ」


「そうだぞ」


 ブルーノとガレスが僕を見つめる。


「アズール、お前が行く先に、戦いがあれば俺たちがお前の鉾になり、盾になる」


「んあ? 難しいこというなって。 アズールがやれっていったらやる、それだけだ」


 ブルーノが真剣な瞳で僕を見つめている。


「どんな戦いでもな! アズール、お前が俺たちを使うんだ」


「そうだ、お前が俺たちを使え。そして、今より上へ行くんだ」


 二人との付き合いは長い。


 それこそ、本当に子供のころからだ。


 二人ともいい兄貴分で、そして何故か僕を立ててくれる。


 男爵家の五男で、実家では弟のノエル以外には、ほとんど相手にされなかった僕だけど、この二人だけはずっと一緒にいてくれた。


「そっか、うん。なんでこんな僕に、って思うけれど、頑張るよ」


「おう、頑張って使ってくれや!!」


「アズールは、まだ自分の立ち方を知らないだけだ。これから覚えればいい」


 二人は、時々こういうことを言う。


 まるで、僕が本当に二人の上に立つ人間みたいに。


 僕にはまだ、その意味がよく分からない。


 ただ、二人が冗談で言っているわけではないことだけは、分かっていた。


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