第43章:誓い
病室の午後は静かだった。
窓から差し込む光が、シュートの顔を柔らかく照らしていた。
ミッチが帰ったあと、
シュートはしばらく天井を見つめていた。
(……決勝、どうなるかな)
自分の体がどれほど悪いかは知らない。
ただ、今の状態では「試合に出られないかもしれない」
その程度の認識だった。
だからこそ——
“今できること” をしようと思った。
シュートは母親に声をかけた。
「母さん、僕は父さんと同じ心臓の病気なんだろう?」
母親は驚いてシュートの顔を見た。
「・・・」
「救急で病院に運ばれてきた時、お医者さんは鎮静剤で意識がないと
思っていたようだけど、顔おさんと医者の話は聞こえていたんだ」
「俺、父さんと同じように死ぬのかなぁ」
「あなたの場合は早く見つかったので、きっと大丈夫よ」
「母さん、心配かけてごめんな」
「何を言っているの。あなたは大事な息子よ」
「母さん……お願いがあるんだ」
「どうしたの?」
「しっちゃんとのりっぺを……呼んでほしい。
ちょっと話したいことがある」
母親は少し驚いたが、すぐに頷いた。
「わかったわ。すぐ連絡する」
夕方。
病室のドアが静かに開き、しっちゃんとのりっぺが入ってきた。
「シュート……大丈夫か?」
しっちゃんがベッドに近づく。
「おう……ちょっと疲れただけだよ」
シュートは笑った。
その笑顔は、いつもの“強がり”の笑顔だった。
「この前は、病室から追い返してすまなかった」
「ミッチやしっちゃんやみんなの思いはよくわかった。」
「おとなしく、病院で療養するよ」
しっちゃんは何も言わず、シュートの肩を叩いた。
そして言った
「シュートを決勝戦まで連れていく、お前はキャプテンのままだ」
「キャプテンの腕章を俺に預けてくれ」
シュートはそばの引き出しから腕章を出し、愛おしそうに私た。
「決勝……俺は出られない。だから……しっちゃん。
俺の代わりに……みんなを引っ張っていってくれ」
しっちゃんは腕章を握りしめた。
その手が震えていた。
「……任せろ。」
シュートは嬉しそうに笑った。
「頼んだぞ……相棒」
シュートはのりっぺの方を向いた。
「のりっぺ……ミッチのこと、頼む」
のりっぺは息を呑んだ。
「ミッチ……?」
「ミッチは……宝塚を辞めた。
俺のために……夢をひとつ捨てたんだ」
のりっぺは目を丸くした。
「そんな……」
「だから……支えてやってほしい。
ミッチはマリンカの花だ……優しく強い。けど一人では心配だ」
のりっぺは涙をこらえながら頷いた。
「任せて……絶対に一人にしない」
シュートは安心したように微笑んだ。
しっちゃんとのりっぺが帰る前、
シュートは二人に向かって言った。
「……勝ってくれ」
しっちゃんは腕章を握りしめたまま頷いた。
「勝つ。お前のために……絶対に勝つ」
のりっぺも言った。
「ミッチにも伝えるね。シュートの想いを」
シュートは満足そうに笑った。
「ありがとう……二人とも」
彼の表情は穏やかで晴れやかなものだった。




